エピソード26 ウィルの願い(脚本)
〇洞窟の深部
「誰か────」
「ウィルを止めろおおおおおおおお!!!!」
ただならぬ事態に、男性陣はウィルを取り囲んだ
ティサの側に、逸早く駆けつけたのは、
レストだった。
続いて、地季、レイノスも駆けつけた
レスト「止血・・・!!」
地季「もうやってる・・・!!」
レスト「回復!!」
レイノス「やってる・・・!!」
レイノス「けど・・・!!」
レスト(おねがい おねがい)
レスト(回復、届いて・・・!!)
ウィル「あのさぁ・・・」
ウィル「僕たちの邪魔、しないでくれる?」
ウィル「せっかく、 お母さんに会えるかもしれないのに」
ジン「何、わけわかんねーこと言ってんだ!?」
ジン「おまえ、自分が何やったか、 わかってんのか!?」
ウィル「もう、邪魔だから、あっち言って!」
「うわあっ!!」
影利「ちょっと、今のって・・・!!」
色時「風・・・でしたね・・・」
氷河「どういう事だ!? 風華の話では、彼の能力はたしか・・・」
〇洞窟の深部
レスト(ダメ・・・)
レスト(心音、弱く・・・なって・・・)
レスト(助からない・・・)
地季「くそッ・・・ここまでか・・・!」
レイノス「・・・・・・・・・・・・」
地季「レスト、レイノス!?」
レストとレイノスの身体が、ほんの少しだけ透けているように見えた。
地季「君たち、透けてないか!?」
「・・・・・・・・・・・・!?」
ジン「お、おい・・・!!」
ジン「もしかして、俺たちも透けてないか!?」
エクスト「そ、そんな・・・!!」
レグルス(バカな、早すぎる・・・!!)
レグルス(それほどまでに、 ウィルの力が強いのか・・・!?)
レグルス「なっ・・・!!」
レグルス(この私が、透けているだと・・・!?)
レグルス(ジェルバーンとメイは・・・!?)
ジェルバーン「くっ・・・ こりゃ、キツいな・・・」
メイ「えっ!?」
メイ「あ、あんた、 今一瞬、顔が変わらなかった!?」
ジェルバーン「ありゃー、バレた?」
レグルス(時の能力を持つジェルバーン・・・)
レグルス(おそらく、自分自身の時の流れを 遅くして、消滅に抗っている・・・)
レグルス(それはわかる・・・が、 何故だ!?)
レグルス(何故、メイは消えかかっていない!?)
レグルス(ジェルバーンが、メイにも技を 使っている風には見えない・・・)
メイ「お、お兄ちゃん・・・」
〇洞窟の深部
メイ「お兄ちゃん・・・嘘でしょ・・・?」
メイ「お兄ちゃんが、 人を傷つけるなんて・・・」
ウィル「ああ・・・やっぱり、 僕とメイは”まだ消えない”のか・・・」
ウィル「時間、かかりそうだなぁ・・・」
ウィル「でも、セ=シルの子孫同士は傷つけられないし、待つしかないかぁ・・・」
ウィル「・・・・・・・・・・・・」
ウィル「おまえはね、妹じゃない」
メイ「・・・・・・え?」
ウィル「おまえは、妹じゃない」
メイ「な、なに言ってるの? お兄ちゃん・・・」
メイ「あっ、もしかして、血のつながりの ことを言ってるの?」
メイ「それだったらあたし、最初から知ってたし、全然気にしてないよ!」
ウィル「おまえはね、”器”なの」
メイ「”うつわ”・・・?」
ウィル「そう。万が一僕の寿命が来た時のための、 ”器”」
ウィル「そうやって、母体を決めておいて、」
ウィル「僕の力を少しずつ分け与えていくの」
ウィル「妹にしたのは、僕から離れないように したかったから」
ウィル「母親はダメだよ」
ウィル「・・・だって、子どもを平気で 捨てちゃうもんね」
メイ「ちょっと待って、お兄ちゃん・・・ 器って・・・母体って・・・」
メイ「・・・・・・・・・・・・え?」
メイ「そんなのうそだあああああああ!!」
ジェルバーン「ウィル、てめぇ・・・!!」
ウィル「大丈夫だよ、メイ。 君の出番はないみたい」
ジェルバーン「そういうことじゃないだろうがぁ!!」
ウィル「・・・・・・」
ジェルバーン「えっ? 今・・・・・・」
ジェルバーン(ウィルが、何かに見えたような・・・?)
〇洞窟の深部
風華「レグルス!! これは一体、どういうことですか!?」
ジェルバーン「俺も聞きたいですね、レグルス様」
風華「あなたは、たしか・・・」
ジェルバーン「ジェルバーンさ。 ハンスの町以来だねぇ♪」
ジェルバーン「さて、聞かせてもらいましょうかね・・・」
風華「あなたは、先程言いましたね・・・ 『ウィルを救いたい』と・・・」
風華「あなたは、もしかして・・・」
風華「ウィルと結託して、 自ら消えようとしていた・・・!?」
レグルス「・・・・・・・・・・・・」
風華「沈黙は、 肯定とみなしますよ。レグルス」
レグルス「終わらせるべきだ」
風華「・・・え?」
レグルス「アイ=リーンの子孫と、セ=シルの子孫の 因縁を、終わらせるべきだ」
風華「だけど、それがあなたたちが消えていい 理由にはならないはずです!」
レグルス「ウィルを救えば・・・ ・・・できるかもしれない」
風華「どういう、ことですか・・・!?」
レグルス「・・・まさか、ウィルがあそこまで やるとは、想定外だった・・・」
〇中東の街
数年前────
レグルス(雨か・・・)
レグルス「・・・ん?」
レグルス「ほう・・・。珍しい者がいたものだ」
レグルスが見たのは、神獣だった。
神獣「わあ、驚いた」
神獣は、人間を襲っていた。
神獣が手にしている人間は、すでに事切れていた。
神獣「僕を怖がらないなんて、風麗以来だよ」
レグルス「神獣! おまえは、風麗を知っているのか!?」
神獣「昔、会った事があるよ。 僕の姿を見ても、怖がらなかったんだ」
レグルス「風麗は・・・元気にしていたか?」
神獣「その時はね。 お腹に赤ちゃんがいるって言ってたよ」
神獣「でも、赤ちゃんを産んで、 しばらくしたら死んじゃったみたい」
レグルス「そう・・・か・・・。風麗は、 昔から身体が弱かったからな・・・」
神獣「君も、風麗を知っているの?」
レグルス「ああ、そうだな」
神獣は、風麗を知る人物に出会えて、
少し心が晴れやかになった。
レグルス「神獣よ。なぜ人間を襲う?」
神獣「んー・・・ いらないから」
レグルス「いらない?」
神獣「この《エデン》に、人間はいらない」
神獣「元々、人間なんていなかったんだよ? それなのに・・・」
レグルス「私も、人間だが?」
神獣「・・・君は、 僕を怖がらないから、いいや」
神獣「殺してもつまんなさそう」
レグルス「そうか・・・」
レグルス「神獣よ、 人間を襲うのはやめにしないか?」
神獣「僕だってやめたい」
神獣「でも、無理なんだ。 これは、僕の本能なんだ」
レグルスには、まるで神獣が助けを求めているかのように見えた。
レグルス「神獣、 おまえの本当の望みはなんだ・・・?」
神獣「本当の・・・望み・・・」
神獣「おかあさんに、会いたい」
レグルス「お母さん?」
神獣「僕を捨てたおかあさん」
レグルス「会ってどうする? 恨み言のひとつでも言うのか?」
神獣「わかんない・・・。 でも、ただ、会いたい」
レグルス(神獣の母親・・・。 おそらく、神話が史実だとするなら・・・)
レグルス(この神獣の母親はセ=シル)
レグルス(しかし、 セ=シルはもうこの世には・・・)
レグルス「神獣よ、残念ながら、セ=シル・・・ おまえの母親はもう・・・」
神獣「知ってるよ。わかってる」
神獣「でも、 僕の望みはおかあさんに会うことなんだ」
神獣「ねえ、 どうすれば、おかあさんに会える?」
レグルス「そうだな・・・」
レグルス「まず、人間を襲う事をやめる事だ」
神獣「やめたら、次はどうしたらいい?」
レグルス「セ=シルの子孫として生きる事だ」
レグルス「そうすれば、いつか母親に会える」
神獣「神獣のままでは、 おかあさんに会えないって事?」
レグルス「そうだ。神獣は寿命が長すぎる上、 寿命が来たら次の生命体を探し、 永遠に生き続ける事になる」
レグルス「生きていては、母親に会えない」
神獣「じゃあ、僕が死ねばいいってこと?」
レグルス「ただ死ねばいいというものでもない」
レグルス「セ=シルの子孫としてでないと、 母親と同じ場所に行けないからだ」
神獣「どうして、 君はそんな事を知っているの?」
レグルス「私も、セ=シルの子孫だからだ」
自分の母親の子孫だと知ったからか、
神獣はこちらのいう事をよく聞くようになった。
神獣「おかあさんには、いつ会えるの?」
レグルス「セ=シルの子孫の均衡が崩れれば、 我々は生きていけなくなる」
レグルス「会えるのは、その時だな」
神獣「もし、その均衡・・・? が崩れなかったら?」
レグルス「その時は、私がこの世から去ろう。 そうすれば、均衡が崩れる」
レグルス「神獣としてでなく、セ=シルの子孫として 生きていれば、おまえも一緒に消える」
神獣「そう、なんだ・・・」
神獣「わかった。 僕、もう人を殺したりしない」
神獣は、人の姿になった。
ウィル「僕は、ウィル」
レグルス「私は、レグルスだ」
ウィル「レグルス、君を、信じるよ」
〇洞窟の深部
風華(レグルス・・・ そこまで考えていたなんて・・・!)
風華(私たちは、魔術を封印するという 使命にばかり囚われて・・・)
風華(そこまで見抜けていなかった・・・!)
風華(いえ、それよりも・・・)
風華(ウィルの正体が神獣だったなんて・・・!)
レグルス「ウィル! こうなってしまったのは、 私の責任だ!」
レグルス「だが、約束したではないか!」
レグルス「もしこの計画が失敗したら、 私がこの世から去ると!」
レグルス「これ以上他人を傷つけると、おまえは おまえでなくなって・・・」
レグルス「セ=シルに会えなくなるぞ!!」
ウィル「あのさぁ、レグルス」
ウィル「僕、君を信じるとは言ったけど・・・」
ウィル「セ=シルの子孫は信じられないや」
レグルス「な・・・っ!?」
ウィル「だって、考えてもみてよ」
ウィル「僕は、もう何万年と生きてるんだよ?」
ウィル「だけどその間にどちらの子孫も 絶えることがなくて、」
ウィル「君たちが今生きているんじゃないか」
ウィル「普通ならそんなこと、ありえる?」
ウィル「セ=シルの子孫同士は傷つけあえないし、」
ウィル「ましてや自害なんて無理なんだ」
ウィル「子孫を作ろうとしなくても、何かしらの 運命が働いてできちゃう」
ウィル「カートとティサのようにね」
ウィル「だから、僕はもう待てない」
ウィル「もう何万年も待ったんだから・・・」
ウィル「だから、もういいよね!?」
レグルス「ウィル!!」
レグルス「・・・・・・ウィル!! ダメだ、神獣の姿になるな・・・!!」
「う・・・ア・・・ア・・・あ・・・」
「うああああああああああああっっ!!」
〇洞窟の深部
神が創りし獣「ウ・・・グ・・・ぁ・・・」
紅蓮「おいおい、嘘だろ・・・?」
ジン「あれが・・・ウィル!?」
吹雪「ちょっとヤバいんじゃねぇか・・・?」
神獣からさらに変化してしまったウィル。
ウィルは、このまま暴走してしまうのだろうか────?
ウィルくん…😭
男の娘は…幸せになってほしいす…😭
でも悲劇の気配が…🥺
あやは こんらんしている!
セ=シル側の属性、ええと、風はカートでしたっけ?
ウィルは何だったっけ……?メイは?アイ=リーン側は名前ですぐわかるけど、セ=シル側は難しい😂
ウィルの風の力は神獣の力ってことかな?
器というのは……寿命が来たときに移る宿?消えにくいのは神獣の力?
レグルスは自殺するつもりだったってこと?でも自殺はできないんですよね……わざとやられるつもり、みたいな?
えええええ!?
予想が幾度も覆る!!
着地点が分からない……