読切(脚本)
〇幻想空間
???「はじまりの『A(エース)』となるか」
???「終わりの『ジョーカー』となるか」
???「選べ」
〇オフィスのフロア
上司「すごいじゃないか!」
上司「期待しているぞ!」
村上のお尻をさする上司
村上「失礼します」
イケメンサラリーマン「ごくろうさま」
イケメンサラリーマン「あの、村上君 今度ご飯でも・・・」
村上「殴れる?」
アレを殴れるなら
村上「考えてもいい」
〇学食
OL「クリスマス好きぴが海外連れてってくれるの!」
OL「村上さんは彼に何してもらうの?」
村上「ロマンティックなデート」
OL「どんな?」
村上「カウンター席で素敵な夜景を見ながら オーガニック料理 そこで彼は私の夢を叶えてくれる」
〇女性の部屋
村上「買ってきた」
藤樫「残念、色違い これはうまくねぇんだ」
藤樫「ってことでいってらっしゃい」
村上「その前に汗流させて」
村上を抱きしめる藤樫
村上「臭いよ?」
藤樫「いいよ別に」
村上「お好きに」
〇女性の部屋
村上「青?」
藤樫「緑だって」
藤樫「今度は間違えんなよ」
村上「いってきます」
藤樫「やっぱいい」
村上にキスをする藤樫
藤樫「メリークリスマス」
村上「まだあと数日ある パチンコ?」
藤樫「ブブ~ 競馬でした」
村上「健闘を祈る」
藤樫「愛してる」
〇渋谷のスクランブル交差点
上司「お待たせ!」
村上「持ってあげる」
おばあさん「すまんねぇ ありがとう」
村上「当然」
〇繁華な通り
藤樫「腹たつわぁ!せっかく確変だったのに!ぜってぇあの店イカサマしてるだろ!」
藤樫「ざけんなおらぁ!」
藤樫「あらら?大丈夫ばあちゃん」
おばあさん「すみませんねぇ」
藤樫「当然!」
藤樫「てめぇら! 見てんだったら手ぇかしてやれやクズ!」
〇テーブル席
友達「クズ! 別れなそんな男」
村上「純粋なだけ」
村上「自分に正直 それは何物にも変えられない 宝物の体験なの」
友達「だけど・・・」
藤樫「わりぃ!頼みがあるんだけど・・・」
友達「ちょっと・・・」
藤樫「愛してるよ! 俺の天使」
キスをする二人
去る藤樫を目で追っていくと
窓の外に
泣いている子供がいた
村上「天使はあなたの方」
友達「さようなら」
〇ラーメン屋のカウンター
上司「なんだって」
村上「つまらない」
村上「何もかも刺激が足りないの 明日からもう行かないわ」
上司「そ、それは 会社を辞めるって事・・・」
上司「な!?何をする!?」
村上「あら、早いのね」
上司「わかったぞ!復讐だな!彼氏に私が君にハラスメントをした事をチクって・・・」
藤樫「ハラスだぁ!?殺すぞてめぇ!」
村上「あなたをここに呼んだのは辞めると伝えるため」
村上「彼にはあなたの事を言った事がない それに私は 彼にここに来るよう呼ばれただけ あなたと会うためじゃない」
上司「じゃあなんで殴った!」
村上「そういう人だから」
男の人と一緒にいた
だから殴った
村上「あなただけじゃなく誰でもそうする 私が男といるだけで」
上司「そんなむちゃくちゃな・・・」
藤樫「ごちゃごちゃうるせぇな! マジで殺るぞ!」
藤樫「おやじ ラーメン」
村上(汚いラーメン屋のカウンター席で)
〇渋谷のスクランブル交差点
村上「人でごった返す渋谷の夜景を見ながら ニンニクたっぷりのオーガニックラーメンを食べる」
上司「イ!イカれてる!?」
村上「そして彼は私の夢を叶えた」
〇ラーメン屋のカウンター
汚らしく豪快にラーメンをすする藤樫
村上(こんな人他にいない)
村上「で?クリスマスの前日にこんな素敵な店に呼び出して何する気?」
村上「まさかあなたがサプライズ?」
藤樫「夢を見たんだ とても怖い夢」
村上「それで呼んだの?怖い夢を見て?」
藤樫「何がおかしい!」
村上「いいえ 続けて」
藤樫「夢で誰かが俺に聞くんだ」
藤樫「エースかジョーカー どちらになりたいか選べって・・・」
〇幻想空間
???「Aは始まり。簡単に言えばAは正義の味方。ヒーローだ。全ての悪から守る者」
???「ジョーカーは終わり。全てを破壊する者。ヴィランや怪人と言えばわかりやすいか」
藤樫「その後、俺はエースになって怪人を倒した。皆俺を讃え感謝した。英雄となった」
村上「疑似体験?ありがちな夢ね」
藤樫「今度はジョーカーになった 逃げ惑う人々を襲った・・・」
〇ラーメン屋のカウンター
藤樫「肉を裂き内臓をえぐる感触が 脳裏から離れない 痛みに泣き叫ぶ人間の感情が俺の心に響く」
恐ろしくて二度とあんな事をしたくない
藤樫「だけど・・・」
村上「それで 藤樫はどっちを選択をしたの?」
ラーメンをすする藤樫
〇女性の部屋
キャスター「・・・社の会社員が謎の危険生物に殺害されました」
〇オフィスビル
キャスター「政府は外出を全面禁止と・・・」
〇渋谷のスクランブル交差点
警察官「い!いたぞ!?」
母「何してるの!お外に出ちゃダメって・・・!?」
母「離れなさい!」
女性警察官「お母さん! 行ってはダメです!」
母「どいて!あの子を助けないと・・・」
警察官「き、君!何をしている!?」
村上(ごめん藤樫 私、あなたに秘密があるの あの時言おうと思っていたんだけど)
どうしても告白できなかった
〇幻想空間
村上「教えて 今まで人はどちらを多く選んできたの?」
???「性善説(せいぜんせつ)と 性悪説(せいあくせつ)を知っているか?」
村上「人間は元々善の心を持っている生き物 それが性善説 その逆が性悪説で・・・」
???「ありえない」
村上「ありえない? それってどういう・・・」
???「他の人間を攻撃し 誹謗中傷を言い そうやって人間は傷つけ合う それは何故か」
???「愛し合う喜びや助け合う素晴らしさを 人間は皆知っている その美しさを知っているからこそ それを求め傷つけるのだ」
村上「確かに 喜びや楽しみという物の良さを 知らなければ そもそも争いは起きないのかも」
???「例えば宗教には様々な考えがあり それぞれの主張がある お互いどちらも譲らずに戦争が起きる」
???「政治や科学 あらゆる物にそれぞれの言い分がある だからこそ争いが起きるのだ」
だがどうだろう?それらはどちらかが完全に正しくもう一方は全くの間違いと言えるだろうか?
???「答えは否」
???「それが善 では悪は?」
???「サタンとメドューサが争うか? 鬼と悪魔はどうだ? そうだ、争わない」
悪は単色
しかし善の色は無数なのだ
人間は善の塊なのだ
悪などありえん
素晴らしき生命体
その素晴らしさを
心の奥で知っていてるからこそ
それを求め殺し合う
???「光に群がる蛾のように」
???「愚か者の集合体」
それが人類だ
???「従って・・・」
村上「人間は」
村上「誰もAを選ばない?」
???「時間だ お前はどちらを選ぶ?答えよ」
村上「最後にもう一つだけ!」
村上「Aを選んだ人間って 今までどのくらいいたの?」
???「いない」
村上「一人も?」
???「そうだ」
村上「もし」
村上「Aを選ぶ人間がいるとしたら それは一体どんな人?」
〇渋谷のスクランブル交差点
村上「正しい心 ずっとそれを知りたかった」
村上「だからあなたを愛したの 何より美しいから」
村上「できないよ 私には・・・」
やるんだ
村上「愛してるいるよ 何よりも」
〇女性の部屋
藤樫「ボロ負け」
村上「いつもの事」
藤樫「景品 これで勘弁してくれ!」
村上「・・・まさか」
藤樫「誕生日おめでとう」
村上「最高だよ 藤樫」
藤樫「それはお前だ 村上」
キスをする
〇渋谷のスクランブル交差点
母「怪人を殺して!」
女性警察官「やれ!」
警察官「とどめをさせ!!」
ニンゲン「〇✕△□*$#&%@+¥!?」
女の子「死んじゃえ化け物!」
村上「善の色は無数?」
なんて汚い・・・
村上「全部ミキサーに入れたら おいしいミックスジュースになるか ドロドロのヘドロになるか 試してみようかぁぁぁ!!!」
藤樫「ホントいい奴だな 村上は!!」
〇女性の部屋
藤樫「優しくなきゃこんなクズに金をあげない」
村上「なるほど そうとも言えるわね」
藤樫「いつ見てもかわいいなぁ笑顔」
藤樫「天使の笑顔だな!」
村上「・・・やめて」
藤樫「あれ?照れてる?」
〇渋谷のスクランブル交差点
村上「行って・・・」
村上「行け! 行ってくれよ藤樫!!」
村上の涙を拭く『藤樫』
村上「・・・バカ」
女の子「おねぇちゃん ありがとう」
村上「・・・当然」
女の子「おねぇちゃんは?ヒーロー?」
村上「さぁ わからない 逆に聞きたいよ」
村上「お前達は何者なのか・・・」
母「大丈夫?何かあったの?」
女の子「ううん・・・ なんでもない」
村上(そうか)
こう見えてたのか?
村上(藤樫 あんたも結局烏合の衆だったの?)
村上(変わり者は私の方だったって事? 色は違うけど同じ光 私もただの蛾?)
村上(変わり者なんて いないって事なのかな・・・ なぁんだ)
村上(傑作!)
掌に溜めたエネルギーを
人間達に向ける
母「あ、あなたそれ・・・ どうするつもり!?」
村上「わからない 何が正しくて何が悪いのか 藤樫ならそれを教えてくれた」
村上「でもあの人はいない あの人もただの『普通』の一部だった」
ねぇ
あなたにわかる?
人の善悪ってモノが
警察官「やめろ!」
女性警察官「あなたは一体何者なの!?」
村上「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
村上「私は」
性善説と性悪説のくだり、興味深く拝読しました。善を知るからこそ善を求めて悪を為すというアンビバレントな存在が人間なんだなあ。村上と藤樫の関係性はどこか刹那的でありながらも、他人の理解を端から期待しない振り切れ具合がステキでした。
すごく深い話ですね。
人の価値観にもよるとは思いますが、私もクズだとは思えませんでした。
ただ感情のままに動かされる人間の方が、よほど人間ではなく怪物なのではないでしょうか。
人間が持つ悪の部分は、大部分が内に秘められているのだと思います。他人に目に見える悪の部分でも、相手がそれをどう解釈するかで違いますね。