読切(脚本)
〇川沿いの公園
ジュニア「ギャオオオッ!!」
通行人「ウワーッ 街中に怪人が出現したー!!」
通行人「逃げろ逃げろ・・・」
エディー「逃げろ━!」
ジュニア「ウワアアーッ!?」
「カ、カーット!」
〇街中の公園
ジョージ「ちょっ、スーツが破れて中身が出てる!」
エディー「あ、ホントだ」
ジュニア「台本と違うから、焦ったよ」
〇公園の入り口
マックス「なんか公園の方が騒がしいっスね・・・」
〇街中の公園
マックス「こんな所で何やってんスか?」
ジョージ「おお、マックス君! 映画撮ってんの」
マックス「映画?」
ジョージ「そうか、知らないか」
ジョージ「映画ってのは演技をカメラで撮影したのを、スクリーンに映して大勢で楽しむものらしい」
マックス「へぇ〜、人間がしてた娯楽っスか」
ジョージ「そうそう」
〇本屋
本屋で手にした本に書かれててさ
オレら地球人を滅亡させた途端、ヒマになったじゃん
だから地球人のマネしてみようって、思いついたわけ
ジョージ「おもしろそうだな やってみっか」
〇街中の公園
マックス「なるほど」
マックス「それで、今撮ってるのはどんなシーンなんスか?」
ジョージ「街中に怪人が現れて、地球人が逃げまどうシーンだ」
ジョージ「だが、ちょっと問題が発生してだな・・・」
エディー「動くと身に着けた人型スーツが破けちゃうんだよ」
マックス「トゲが突き破って裂けちゃうんスね」
ジョージ「それだけでなく、トゲが浮き出て不自然な見た目にもなるんだよな・・・」
ジョージ「両方解決できる良いアイデアはないものか・・・」
「う〜ん・・・」
マックス「トゲを削るってのはどうスか?」
ジョージ「それだ! たまたまだがヤスリを持ってるぞ」
エディー「その覚悟はできてない!」
ジョージ「問答無用!」
ジョージ「役作りのために歯を抜いたって地球人もいたらしい」
ジョージ「良い映画を作るためには、多少の犠牲は付きものなんだ・・・」
エディー「いや、やらないからね・・・」
ジョージ「オレだってしたくない、こんなこと!」
ジョージ「だがな、避けては通れない道なんだ」
エディー「聞いて! やらないって言ってんの!」
ジョージ「ジュニアよ、このヤスリでやってくれ」
ジュニア「オヤジがそこまで言うなら・・・」
〇モヤモヤ
ジュニア「エディーさん、失礼します!」
エディー「待て待てッ!」
〇街中の公園
ジュニア「イテテ、乱暴だなー」
エディー「それはコッチのセリフだ!」
マックス「やっぱ削るのはダメっスね」
エディー「そんなの分かりきってるだろ!」
マックス「他にアイデアを考えないといけないっスね」
ジョージ「そうは言ってもどうしたら・・・」
ジョージの妻「あら、アナタ達ここにいたのね 3時よ、おやつにしましょ」
ジョージ「そうだな」
マックス「ママさん、こんちわっス」
ジョージの妻「こんにちは」
ジョージの妻「おやつたくさんあるからアナタ達もいらっしゃい」
マックス「やったー」
〇綺麗な一戸建て
「ただいま」
〇シックな玄関
ジョージの妻「エマ、留守番ありがとね」
エマ「おかえり、戻るの遅いから先におやつ食べちゃったよ」
エマ「ってお兄ちゃんのお友達もいる」
ジョージの妻「公園で一緒にいたから招待したの」
ジョージ「エマ、作ってもらった人型スーツなんだけど、破けたから縫い直してくんない?」
エマ「アァッ、作るの時間かかったんだから大事に扱ってよ!」
エマ「もう・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
「いただきます」
モグモグ・・・
「おいしい〜」
マックス「さすがママさん料理上手っスね」
ジョージの妻「フフフ、ありがと」
ジョージ「初めて見るおやつだな」
ジョージの妻「”ゼリー”って言うのよ」
ジョージの妻「何度も試して、やっと満足いくものができたの」
ジョージ「失敗するとどうなるんだ?」
ジョージの妻「これが失敗作」
ジョージの妻「”ゼラチン”ってのを溶かす量で、硬さが変わるんだけど・・・」
ジョージの妻「入れすぎて、硬くなりすぎちゃったの」
ジョージ「確かにさわると弾力がスゴいな」
ジョージ(この弾力、どこかで覚えが・・・)
ジョージ「なぁ、この失敗作の硬さで大量に、そうだな・・・」
ジョージ「寸胴鍋5個分くらい、今すぐ作ってくれないか?」
ジョージの妻「なんで失敗作がそんなに必要なのよ」
ジョージ「いいから! 頼む作ってくれ」
ジョージの妻「・・・分かったわよ」
〇街中の公園
ジョージの妻「とりあえず鍋1個分できたわよ」
ジョージ「ごくろう様、残りも頼む」
ジョージ「エディー、準備できてるな?」
エディー「言われた通り、人型スーツ着ましたけど・・・」
ジョージ「おいジュニア!」
ジョージ「首の継ぎ目から、そのゼリーを流し込むんだ」
ジュニア「これを? ・・・エディーさん、注ぎますよ」
エディー「ヌルヌルして気持ちわる・・・」
ジョージ「じゃんじゃん入れろー」
ジョージの妻「ハイ、鍋2個目 忙しいわねー」
ジュニア「入れますよー・・・」
エディー「アチッアチッ! まだ冷めてないぞ!」
ジョージ「がまんしろー」
〇空
〇街中の公園
エディー「お、重い・・・」
ジョージ「オオッ、いい感じだ」
マックス「そうなんスか? 意図がよく分からないっスけど・・・」
ジョージ「エディーの体を触ってみな」
マックス「ツンツン・・・」
マックス「アッ、人の肉の感触に近い!」
ジョージ「だろ! 失敗作のゼリーを触れたとき、似てると思ったんだよ」
ジョージ「これで地球人っぽくなったな」
マックス「でも、メタボ姿になったっスけどね・・・」
ジョージ「しかもだ・・・ オイ、ちょっと動いてみろ」
エディー「エッ、またスーツが破れるんじゃ・・・」
ジョージ「いいから」
エディー「エッホ、エッホ・・・」
エディー「あれ? 破れる気配がない」
ジョージ「トゲとトゲの空間をゼリーが埋めてるから破れない」
ジョージ「これで問題は解決したぞ 撮影続行だ!」
〇空
次の日──
〇川沿いの公園
「ウオオオッ!!」
〇街中の公園
ジョージ「もっと激しく暴れろー」
マックス「今日も撮影っスか」
マックス「これはどんなシーンなんスか? 怪人同士で戦ってるっスけど・・・」
ジョージ「これは・・・」
〇荒廃した街
人類はついに滅亡寸前まで追い込まれた
〇研究装置
逆転を狙い人類がとった手段
それは、怪人から採取した細胞を用いて、自ら怪人になることだった
怪人と怪人の力を手にした人類との、最終決戦が幕を開ける!
〇街中の公園
ジョージ「そんなシーンだ」
マックス「へぇ〜、盛り上がりそうっスね」
マックス「まぁ現実ではあっけなく人類を滅亡できたっスけど」
ジョージ「それだとつまらないからな エンタメよエンタメ」
ジョージ「はいカーット!」
エディー「イテテ、ジュニアは馬鹿力だな」
ジュニア「すみません、大丈夫ですか?」
ジョージ「休憩してくれ オレは映像を確認する」
〇川沿いの公園
ジュニア「セイ!」
エディー「ヤー!」
〇街中の公園
ジョージ「うーん、動きは良いんだけどいまいち迫力に欠けるな・・・」
マックス「なんか物足りないっスね」
ジョージ「何が足りないんだ?」
エディー「そろそろお昼の時間ですね」
エディー「傷の手当てもしたいし、ご飯にしません?」
ジョージ「そうだな、みんなオレんちでメシ食ってけ」
〇綺麗な一戸建て
〇おしゃれなリビングダイニング
ジョージ「なぁ、コイツらの分も昼メシ用意できるか?」
ジョージの妻「良いわよ」
ジョージの妻「でも、まだ準備中だから待たせちゃうわね」
ジュニア「そんならオレ疲れたし横になってよ」
ジョージ「オイ、少しは家の手伝いしろよ」
ジュニア「明日からするー」
マックス「あ、ウチ手伝うっスよ 何すればいいスか?」
ジョージの妻「うどん作ろうと材料用意してるから、生地をこねるのをお願いするわ」
マックス「了解っス」
エディー「ジョージさん、救急箱ってあります?」
ジョージ「あぁ、どこだったかな・・・」
エマ「こっちにあるよ」
エマ「ついでにエディーさんの体型、測らせてね」
エディー「エッ、なんで!?」
ジョージ「映画のラストシーンでオマエのダミーが必要でな、それでだ」
エディー「なるほど・・・」
ジョージ「コイツいびきかいて寝てやがる 誰に似たんだ」
ジョージの妻「アナタでしょ」
ジョージ「オイ! にしてもスゲー音だな」
ジョージ「本物よりリアルっつーか、こっちの方が怪人の鳴き声にふさわしい気がするぜ」
〇おしゃれなキッチン(物無し)
マックス「生地がなじんできたっス 次はどうしたら?」
ジョージの妻「コシを出すために、台に叩きつけてちょうだい」
マックス「こうっスか?」
〇おしゃれなリビングダイニング
ジョージ「あちこちでうるせーな・・・」
ジョージ(待てよ、”本物よりリアル”)
ジョージ(それと、生地を叩きつける音 何かひらめきそうな・・・)
〇おしゃれなキッチン(物無し)
ジョージ「ちょっ、このカメラの映像に合わせて叩きつけてみてくれ」
マックス「こんな感じっスか?」
〇川沿いの公園
ジュニア「セイ!」
エディー「ヤー!」
〇おしゃれなキッチン(物無し)
ジョージ「これだよこれ! メッチャ迫力出てんじゃん!」
マックス「その場で録った音よりも、こっちの方がパンチに勢いが付いてみえるっスね」
ジョージ「オレ、他にも映画に使えそうな音を鳴らすものがないか探してくるわ!」
マックス「エッ、昼ご飯は・・・って行っちゃった」
ジョージの妻「困った人ねー、熱中し出すと周りが見えなくなるんだから」
〇見晴らしのいい公園
その後も多くのアイデアをもって、困難を克服し
映画はついに完成
そして──
〇コンサート会場
迎えた上映日
「お楽しみください」
〇UFOの飛ぶ空
「地球のみなさん、我々はアンドロメダ怪人」
「我々の住む惑星が寿命を迎え、宇宙船で脱出」
「当てもなくさまよっていたら、地球にたどり着きました」
〇コンサート会場
マックス「このシーン、エマちゃんが描いた絵が使われてるんスよね」
エマ「そうだよ 完成まで1週間かかったな」
マックス「家に飾りたいくらい、上手っスね」
〇UFOの飛ぶ空
「我々はアナタ達に危害を加えるつもりはありません」
「どうか仲良く、この地球に住まわせてくださ・・・」
「ギャ━━━ッ! 地球人に攻撃されたー!」
〇コンサート会場
エマ「まぁ、秒で破壊されたけどね・・・」
マックス「・・・そうなんスか」
〇秘密基地のモニタールーム
ジュニア「姫! ダメだ血が止まらない・・・」
ジョージの妻「わたくしの命、これまでのようです・・・」
ジョージの妻「王子、あなたと共にいられて、わたくしは幸せでした」
ジョージの妻「あなたと仲間達が末永く繁栄することを、天から見守っております」
ジュニア「姫、姫ッ・・・」
「ウアアアーッ」
〇コンサート会場
マックス「ママさん演技上手っスね」
ジョージの妻「フフフ、ありがと」
ジョージの妻「でも、大画面に映されるとなんだか恥ずかしいわね」
〇UFOの飛ぶ空
〇秘密基地のモニタールーム
マックス「王子! 宇宙船が限界っス」
マックス「撤退か反撃か、今すぐ判断を願うっス!」
ジュニア「総員に告ぐ・・・」
ジュニア「全地球人を根絶やしにしろ! 出撃だ!」
〇コンサート会場
エマ「マックスさんも映画に出てたんだ」
マックス「そうっス! 自分も参加したくなっちゃって・・・」
マックス「ウチの演技、どうっスか?」
エマ「普段のしゃべりのままじゃん ヘタクソだね」
マックス「えぇ・・・」
〇高層ビル群
ジュニア「ギャオオオッ!」
エディー「ウワーッ 人が次々と踏みつぶされている!」
エディー「どこか隠れる場所は・・・」
エディー「み、見つかった!?」
エディー「ヒッ、来るな来るな 来るな━━━ッ!」
〇コンサート会場
マックス「ウワッ、潰されて血が飛び散った」
マックス「どうやったんスか?」
ジョージ「赤く着色したゼリーで、人型スーツの中を満たしたんだ」
ジョージ「リアルだろ」
〇空
上映は順調に進み、映画はラストシーンを迎える──
〇砂漠の基地
エディー「オラオラオラッ!!」
ジュニア「つ、強い、なぜだ・・・」
ジュニア「たとえ地球人が怪人の力を100%発揮したとしても、互角になるはずなのに・・・」
エディー「この地球は我ら人類のものだ」
エディー「”怪人に奪われる訳にはいかない”」
エディー「この強い想いが、わたしに強大な力をもたらしているのであろう」
ジュニア「そうか、だが我ら怪人にも強い信念がある」
ジュニア「”地球人を滅ぼす”という強い信念が・・・」
ジュニア「今まで以上の全力を尽くし、キサマと立ち会おう!」
エディー「エッ、剣? 素手で戦うって取り決めじゃなかった?」
ジュニア「ヤーッ!」
エディー「痛い痛い! ちょっ、たんまたんま!」
ジュニア「真剣勝負でたんまと言われて、待つヤツがどこにいる!」
エディー「イヤ、そうだけどそうじゃないというか・・・」
ジュニア「ごたごた抜かすなー!」
ジュニア「デヤ━━━━━ッ!!」
「ギャアアアッ!!」
〇テクスチャ3
ジュニア「勝利だ・・・」
ジュニア「我ら怪人の勝利だー!」
終幕──
〇コンサート会場
ジョージ「終わった、観客の反応はどうだ?」
マックス「静まり返ってるっスね・・・」
ジョージ「エッ、ダメだった?」
マックス「拍手喝采、大歓声っスよ!」
ジョージ「よかった、やったぞ━━━ッ!」
ジュニア「さすがだぜオヤジ!」
ジュニア「オーイ、みんな集まれ! 胴上げだ!」
「それッ」
「ワッショイ、ワッショイ!」
〇東京全景
「ワッショイ、ワッショイ!」
〇空
「ワッショイ、ワッショイ!」
ジョージ「天にも昇る心地って、こういうことか」
マックス「イヤ、怪人のフルパワーで胴上げするから、マジで天に昇ってるっスよ!」
〇居酒屋の座敷席
「カンパーイ!」
ジョージ「ク〜ッ、酒がうめー!」
マックス「よかったっスね」
マックス「あ、そうそう・・・」
マックス「ラストのエディーさんが切られたシーンって、どうやって撮影したんスか?」
マックス「ダミーに見えないくらい、リアルだったんスけど」
ジョージ「あぁ、アレ本当だよ」
マックス「本当? 本当とは・・・」
ジョージ「だからコイツ、マジで切っちゃったんだよ」
ジュニア「演技に熱中するあまり役に入りこんで、ついね」
マックス「最近エディーさんの姿を見ないと思ったら・・・」
ジョージ「次はどんな映画を撮るかな・・・」
ジョージ「そうだ、死体を使ってホラー映画にするか」
ジュニア「ナイスアイデア」
マックス「何、次の話を決めてんスか! 少しは反省しろ!」
全身のトゲをヤスリで削るとか流石怪人、狂気の沙汰だぜぇ〜
怪人たちのホームドラマ…こんなのありかよ😂楽しく読ませてもらいました!コメディタッチに見えてところどころ殺伐してるの怪人ならでわですね。
怪人たちがワイワイ映画撮ってる描写がすごく可愛かったです😆思わず混ざりたくなりました🌟
好きなことで集まれる仲間っていいですね🤗
エディー!😭
ラストのオチは怪人ならではですねぇ。
序盤からヤスリとかその覚悟はできていないとかで爆笑でした🤣