エピソード6(脚本)
〇安アパートの台所
悪魔さん「・・・できたわ! 食べてみて!!」
天使さん「いただきます!」
今日は朝からケーキ三昧だった
天使さん「・・・クリームのまろやかな甘みと生地の上品さが絶妙にマッチしています。フルーツの酸味も爽やかで」
天使さん「こんなおいしいケーキは初めて食べました! お店開けるのでは?」
悪魔さん「ちょっと、そんなに褒めてもイチゴとベリーをふんだんに使ったケーキしか出ないわよ! 食べる?」
天使さん「是非!」
悪魔さん「待ってなさい今切り分けて・・・・・・」
んん? 私、なんで普通に美味しいケーキつくりを???
天使さん「まだですか~?」
悪魔さん「あ、そ、そうね。今持ってくわ。そうね・・・」
そうだ。私は天使に貰ったレシピ本で、人間を苦しみのどん底に貶めるワサビ入りケーキの代わりを作ろうとしていたのだ
それが天使がリクエストしてくるから楽しくなってこんなことに・・・!!
天使さん「うーん・・・いちごのケーキも美味しいです~」
それにしても、こいつ幸せそうに食べるわね。天使と悪魔は敵同士なのに・・・
悪魔さん「はっ!? まさか・・・」
天使さん「な、なんですか急に!?」
悪魔さん「天使、あんたもしかして・・・私がこうなることを見越してレシピ本を渡した?」
こうなること
→私が普通のケーキ作りにはまってワサビ入りケーキの代役を作り忘れること
天使さん「・・・」
天使さん「なんのことでしょうか?」
・・・こいつ
また私の邪魔を
悪魔さん「流石に2ヶ月近く一緒にいればあんたの腹黒い手の内が読めるんだからね!」
言ってやった。
心の読めない私に心を読まれてこれは悔しかろう
と、思いきや
天使さん「それでも私の思い通りにケーキを作ってくれる悪魔さんは素敵です! まるで天使のよう!」
悪魔さん「わ、私は悪魔なんだからね!!」
天使さん「ああ、悪魔さん!!」
〇住宅街の道
悪魔さん「ムカつく! しばらく家に帰らないでやろうかしら!!」
でも、行く当てはないし・・・ビジネスホテルとか? お金がもったいないのよね・・・
赤坂熊子(あかさかくまこ)「お困りですか!!」
悪魔さん「うわッ!?」
悪魔さん「な、なんだ熊子じゃない・・・」
いきなり現れないでほしい
悪魔さん「なんのよう?」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「昨日の夜からアクマさんが出てくるのを待っていました!」
昨日の夜からって・・・ストーカー!
悪魔さん「110・・・っと」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「け、警察は勘弁してください!!」
熊子は華麗な土下座を繰り出してきた
悪魔さん「次はないわよ?」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「は、はい! アクマさんいつもよりお優しいです・・・何かあったんですか?」
悪魔さん「そうね・・・ちょっと天使と喧嘩?しちゃって。家に居づらいと言うか」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「! なら私のお家に来ませんか? 実は昨日から友達とのお泊りを実現したくて私、アクマさんを夜通し見張って──」
悪魔さん「いい、それ以上聞きたくないわ」
やっぱりこいつ警察に突き出した方がいいのかも・・・
赤坂熊子(あかさかくまこ)「それでは、いきましょうか!」
悪魔さん「ちょ!? わ、わたし行くって言ってな──」
〇空き地
赤坂熊子(あかさかくまこ)「着きました。 ここが私のお家の入り口です」
悪魔さん「だから、私まだ泊まるって言ってな──どこに家があんのよ?」
悪魔さん「え」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「せい!」
〇魔界
熊子が切り裂いた空間の先に広がるのは地獄だった
〇空き地
悪魔さん「え・・・・・・嘘、地獄じゃない」
夢にまで見た地獄の懐かしい景色。もう、見れないかと・・・!
悪魔さん「・・・・・・え、ちょ? でも待って?」
悪魔さん「ってことは、あんたいつも地獄からこっちに通ってるっていうの!?」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「そうですよ? その方が力が尽きる心配がありませんからね。地上で悪魔の力が尽きたら取り戻すのに大変ですし」
悪魔さん「えらい目にあってる私の前で言うそれ!? 地獄に帰るのを面倒がって横着しなければ私も悪魔の力失ってなかったのよ!」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「す、すみません・・・」
悪魔さん「てか、あんたその姿! 暴走してないじゃない! いつもの乱暴な口調の人格はどうしたの!」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「それなら心配いりませんよ。私の意思で悪魔化した時は私が体の主導権を握っていますので」
悪魔さん「どうでもいいわよそんなこと!」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「聞いてきたのに・・・」
お、落ち着け私・・・とはいえ、地獄に帰れるチャンスじゃない。優等生悪魔のおかげってのがやっぱり癪だけども──
悪魔さん「ま、まあ今回は、あなたの願いであるお泊り会を開催する為だし? 私が地獄に戻れるのは私の力よね? ね?」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「何故自己弁護のような物言いを?」
一歩地獄に足を踏み入れようとすると──
〇魔界
なにやら結界のようなものが──
〇空き地
悪魔さん「? ちょっと先に進めないんだけど?」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「おかしいですね? 悪魔であるアクマさんが地獄に入れないなんて」
悪魔さん「あ、ちょうどいいところに通りすがりの悪魔がいるわ。ちょっとあんた!」
声を掛けると悪魔がこちらに来た
〇魔界
デビルさん「!? ちょっとちょっとそこの悪魔! 駄目じゃない生きてる人間なんて!」
デビルさん「連れて行くなら、死なせるか、殺すかしないとさ! 常識でしょ!?」
〇空き地
赤坂熊子(あかさかくまこ)「え? あ、あの? アクマさんはれっきとした悪魔で──」
〇魔界
デビルさん「はぁ? 何言ってんの君? その子どう見ても人間だよ?」
〇空き地
悪魔さん「わ、私じゃな──」
〇魔界
デビルさん「ま、どっちにしろ地獄の結界で生きてる人間は入ってこれないし・・・いいや。じゃ、ここは締めてくからね!」
〇空き地
・・・・・・
赤坂熊子(あかさかくまこ)「え、えーっと・・・」
悪魔さん「言わないで! それ以上言ったら友達やめるからね!」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「あ、アクマさん私のこと友達だと思ってくれて――ごにょごにょ」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「で、でも! 言わせてください! アクマさんが人間という下等な種族になったとしても私たちは友達で──」
悪魔さん「うわああああああ!!」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「アクマさん!? お泊りは!!」
〇広い公園
悪魔さん「お終いよぉ! 私はもう地獄に帰れないんだ!下等な人間として生きていくしかないんだわ!!」
「へぶっ!?」
悪魔さん「痛ったいわね! 道端にゴミおいてんじゃないわよ! これだから人間はッッ!!」
いら立ち紛れにデカいゴミを蹴りつける
「ぐっ・・・」
悪魔さん「へ?」
悪魔さん「・・・・・・」
エルエル「お腹・・・すい──」
これ、ゴミじゃなくて人じゃない!!