菖蒲刀

福山 詩(フクヤマ ウタ)

【五人目】諸刃の剣、命これまで(脚本)

菖蒲刀

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〇森の中
紋付き袴の男「菖蒲じゃないの 人間違い いや刀違い」
菖蒲(ねえ 何故こいつがアンタの事知ってるの)
  目を潰っていろ
菖蒲「・・・」
紋付き袴の男「わかった〜冗談なんだろ〜 菖蒲なんだろ〜 も〜あや」
紋付き袴の男「ごぼ」
菖蒲「・・・」
菖蒲「恨んだ男は 全員斬ったでしょう」
菖蒲「誰なの」
  こいつは村雨
  "妖刀 村雨"

〇森の中
菖蒲「アンタ以外にも人に憑く 刀がいたのね」
菖蒲「まあ もう斬ってしまったけれど」
紋付き袴の男「ゔ」
紋付き袴の男「ンん゛ 〜ンぎぃ         ああ゛を」
紋付き袴の男「ぐえぇ」
紋付き袴の男「あゝ 嗚呼 酷いじゃないかぁ 菖蒲ェ」
紋付き袴の男「出会い頭に ごふ 俺を斬り殺すなんてぇ」
村雨「やっぱり俺達      早く夫婦になった方が良い                ゥへっ♡」
村雨「ぐえぇ」
村雨「ああ゛〜〜〜〜      イッデェエ〜〜〜〜」
菖蒲「・・・え」
菖蒲「ねえ その紋付道中ずっと着」
村雨「うぶっ」
村雨「あやっ アッ」
村雨「菖蒲ぇえ」
  刀は斬っても死なない
菖蒲「じゃあ なんで斬るのよ」
  こいつが嫌いだから
菖蒲「・・・」
菖蒲「村雨も人間の体を借りているのでしょう」
菖蒲「借りている生身を斬ったら死ぬのが普通よ」
  否 こいつは別だ

〇黒
  村雨は妖力が強すぎるんだ
  だから持ち主になった人間は
  
  その身を刀に捧げれば
  不死の力を手に入れる
  その代わり
  意志を失い
  
  人であったことを忘れ
  その身はおろか
  
  魂まで村雨に食いつくされる

〇森の中
菖蒲「珍しくアンタのことを 愛してくれいるんだから」
菖蒲「そのまま 夫婦になれば いいじゃない」
  お前 もし私の立場なら
  
  あの刀と一緒になりたいか
菖蒲「絶対に嫌」
村雨「ア八ッ あひっ 菖蒲ぇ」
  来るぞ 構えろ
村雨「俺がお前を幸せにしてやる」
菖蒲「ぅぐ」
村雨「だからさっさと契りを結ぼう」
菖蒲「んん」
菖蒲(一撃が 重い)
  まずい 押されている
村雨「俺の剣先と菖蒲の剣先が触れ合って あアッ ああ〜〜〜」
  黙れ
村雨「そうだ 聞いてくれよ菖蒲」
村雨「俺は強い 人間の意志を乗っ取れるぐらいに」
菖蒲(こいつ 力が増していく)
村雨「どうだろう」
村雨「今菖蒲が体を借りている この女を斬り殺して」
村雨「この俺が借りている男の体で 俺と菖蒲 二つの刀を持つというのは」
菖蒲「ッ」
村雨「名案      だろう」
  この娘の体では 限界がある
  一旦 退く
  
  今のお前に勝ち目は無い
「首狩りめ 覚悟」
  !?
菖蒲「んあ      ぐ」
灰色帯の男「ようやく見つけたぞ」
灰色帯の男「お前が逃げたせいで 俺の娘は首狩りに疑われ しょっぴかれた」
旦那の父親「息子の仇 覚悟」
みすぼらしいの着物の男「アイツを殺ったのはお前ェだよなぁ そのせいでこちとら追われる身なんだヨ」
厚化粧の女「アタシの男を殺っちまったのもアンタかい」
  なんだい この頓珍漢達は

〇城下町
  罪を犯し

〇古びた神社
  力でねじ伏せ

〇森の中
  信頼を裏切り

〇墓石
  守る相手を傷つける

〇黒
  恨まれて当然 殺されて当然
  そうゆう男しか居なかっただろうに
  女の敵しか いなかったろうに
  感謝して欲しいくらいだよ
  
  なのに
  なのに

〇森の中
「憎い 憎い その娘に復讐を」
「憎い 憎い 殺してあの人の仇を」
「殺せ        殺せ その娘を殺せ」
  可笑しいねぇ
  いつの間にやら
  
  こちらが恨まれている
菖蒲「っう く」
  ・・・
  一つ 提案がある
菖蒲「何 はあはあ 手短に言って」
  完全に
  お前の体を乗っ取れば
  
  今ここにいる野良猫共を
  全員始末できると言ったら
  どうする
菖蒲「ここで死ぬか」
菖蒲「殺すか」

〇広い和室
  不思議 あの時と同じね
宿屋の娘「あんたに殺されるくらいなら 殺してやる」

〇森の中
菖蒲「スゥー」
菖蒲「フゥー」
菖蒲「いいわよ」
  お前は 私に体を渡すと
  そうゆうわけだな
菖蒲「どの道このままだと私はもう助からない」
菖蒲「だったら この際」
菖蒲「最期まで付き合ってあげる」
  ・・・
  相 分かったぁ

〇森の中
菖蒲「やっと」
菖蒲「やっとだ」
菖蒲「自由に動ける体を手に入れた」
菖蒲「う さっきの傷がまだ」
菖蒲「・・・」
菖蒲「村雨」
菖蒲「この野良猫共を掃除してくれ」
村雨「白髪の菖蒲も か  くぁわ  可愛」
菖蒲「村雨 頼む」
村雨「え〜」
村雨「菖蒲の頼みは聴いてやりたいが」
村雨「何か見返りがないと頑張れんなぁ」
菖蒲「・・・」
「この戦いが終わったら」
「私を好きにしていいぞ」
村雨「・・・」

〇古民家の居間
紺帯の子「菖蒲 おっさんのとこに戻ってくるといいな」
草色の帯の男「そうだなぁ きっとどこかの男の刀になって」
草色の帯の男「その男に嫉妬しているんじゃ ないかなぁ」
紺帯の子「ずっーと思ってたんだけどさ」
紺帯の子「おっさんが”菖蒲”の話をすると 人間みたいに感じるんだよな」
草色の帯の男「え」
草色の帯の男「ああ 作った刀達は皆 人間同然だよ」
紺帯の子「達?」
草色の帯の男「そうだ ”妖刀 村雨”あれも俺が作った刀だ」
紺帯の子「まだ妖刀を作ってたのかよ」
草色の帯の男「”村雨”は”菖蒲”に偉く惚れててな 引き離すのに大変だったんだ」
紺帯の子「ん ん~と」
紺帯の子(なんだか このおっさん 不気味だな)
紺帯の子(話も大分聞いたし 帰ろ)
紺帯の子「なあ 俺もう帰らねえと」
草色の帯の男「ああ そうだったな」
草色の帯の男「買いに来たんだったな 包丁 で どれにする」
紺帯の子「うちで前使っていたのと 同じ形にするよ」
草色の帯の男「分かった 毎度あり」
草色の帯の男「うん そうだな この形なら」
草色の帯の男「お前みたいな子供にもよく馴染むだろうな」
紺帯の子「・・・」
紺帯の子「ぇ」

〇森の中
村雨「菖蒲」
村雨「お待たせ」
村雨「全部掃除したよ」
菖蒲「・・・」
菖蒲「助かった 礼を言う」
村雨「菖蒲」
菖蒲「なんっ 急に触るな」
村雨「・・・」
菖蒲「んっ」
菖蒲「そんなに強い力で掴まれると 痛いじゃないか」
村雨「掃除を手伝ったら」
村雨「お前ェさんを好きにしていいと」
村雨「確かに言ったよな」
菖蒲「・・・」
村雨「なんだよその顔」
菖蒲「村雨 お前の事だから」
村雨「夫婦になろうと頼み込んでくると思ったか」
村雨「それはそれ これはこれだと思うんだ」
村雨「俺は」
菖蒲「おい 村雨 雨が降っているんだ・・・!」
「重い・・・」
「こうやって 人肌で触れ合うのはいつぶりだっけか」
「村雨・・・ウッ」
「十年・・六十年・・・百年・・・?」
「まあいいか」
  くそ やはり娘の腕っぷしでは敵わない
「村雨 悪いけど 刺された傷口が痛むんだよ」
「ああッ 触るな」
「傷口ミてやるよ」
「もうこの娘を取り込んだんだ どうせすぐに治る」
「斬られた痛みもすぐに」
「良くなる」
「・・・」
「嗚呼 そうゆうことかい」
村雨「ん あや」
村雨「を゛お゛っ!?」
村雨「何っ すんだょ」
菖蒲「これを待っていたんだろう」
村雨「ああっ!? やっ? !? 今はちがっ」

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コメント

  • 冒頭から予想外の展開がいくつもあって凄く面白かった❗内容ぎっしりで濃い✨
    男刀をたてろって刀つくんだねやっぱり😂✨

    刀鍛冶の人へのイメージが急に変わって、そこも今まで全然気づかなくてびっくりしました😆
    アニメーションもかなり面白い😂赤に染まりすぎ感容赦ない😂👍

  • 更新ありがとうございます🙇
    菖蒲と村雨の痴話喧嘩?
    (村雨の思いが一方的ですが)
    語り口調に比べて会話劇がクスッと笑える内容で、面白かったです。
    菖蒲が葛藤している状態で何を見つけるのか、更新楽しみにしています。

  • 表紙で言う『感情移入するな』とは、この辺りからの事でしょうか? この前のお話までは割と感情移入しちゃっていたものでして…😅

    乗っ取り菖蒲と乗っ取られ菖蒲の行方はいったい…?

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