菖蒲刀

福山 詩(フクヤマ ウタ)

【四人目】鯉口切っても、餡子は甘い(脚本)

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〇墓石
赤い着物の娘「母ちゃん いつも見守ってくれてありがとう」
赤い着物の娘「どうか」
赤い着物の娘「私達を守って」
赤い着物の娘「さむ 早く帰ろ」

〇古民家の蔵
青い帯の子「姉ちぁゃん 腹へったぁ」
赤い着物の娘「よしよし もうすぐ父ちゃん 帰ってくるから」
「おおーい けぇえったぞ ゲーップ」
赤い着物の娘「また飲んできたのか」
赤い着物の娘「ほら 姉ちゃんのへそくりだ これで蕎麦でも食べて来な」
青い帯の子「え 姉ちゃんと父ちゃんは」
赤い着物の娘「いいから行きな 暫く帰って来ちゃだめだよ」
青い帯の子「うん・・・」
茶色い帯の男「おおー---い 居ねぇのかぁ 出迎えはあぁ」
赤い着物の娘「大きな声出すんじゃねーよ 酒臭いな もう」
赤い着物の娘「仕事はどうしたんだよ 貰えるように頼みに行ったんだろ」
赤い着物の娘「だから私が稼いだ金を 道中で使えるように渡しといたのに」
茶色い帯の男「ァ?」
厚化粧の女「ねえ まだ話終わらないの」
茶色い帯の男「外出てろ」
厚化粧の女「すぐ来てよ」
青い帯の子「父ちゃん 今の人誰」
赤い着物の娘「お前 また女を」
茶色い帯の男「誰がお前だ 親に向かって」
青い帯の子「父ちゃん やめて」
茶色い帯の男「うるせーチビ」
赤い着物の娘「チビに手出すな」
青い帯の子「姉ちゃん」
赤い着物の娘「う」
赤い着物の娘「いい加減にしろよ 毎日毎日」
赤い着物の娘「母ちゃん 最後までアンタのこと信じてたのに 病気の母ちゃんほっぽって」
茶色い帯の男「あァ~~? 子供が親に偉そうに物を言うんじゃねぇ」
赤い着物の娘「殴りたいなら 殴れよ」
茶色い帯の男「・・・来い」
赤い着物の娘「チビ 外出てな」
「イタッ 離せよ」
「良いから来い お前はほんっっっとに 女らしくねえ」
青い帯の子「わー---ん わー---ん」
青い帯の子「わー---ん」

〇城下町
赤い着物の子「父ちゃ~ん どこ~」
茶色い帯の男「おうっ 待たせたな」
赤い着物の子「何してたんだ 母ちゃん心配してるよ」
茶色い帯の男「これやるよ 土産だ」
赤い着物の子「ん?」
赤い着物の子「何これ」
茶色い帯の男「今日は賭けに勝ったからな わからんが 饅頭だ」
赤い着物の子「ははは なんだよそれ いただきます」
赤い着物の子「もぐもぐ」
赤い着物の子「うわ甘 これ餡子甘すぎだよ」
茶色い帯の男「父ちゃんにもくれ バク」
茶色い帯の男「むぐ ・・・なんだよ うめぇじゃあねぇかぁ」
赤い着物の子「あはは うっそだ~ 顔がしかめっ面」

〇古民家の蔵
赤い着物の娘(あの時の 餡子 甘すぎたなぁ)
青い帯の子「姉ちゃん 姉ちゃん」
赤い着物の娘「ちび ごめんね 怪我してない?」
青い帯の子「俺は大丈夫 それより姉ちゃんが」
赤い着物の娘「あたしは大丈夫 アイツは」
青い帯の子「父ちゃん お酒きれたからまた出てったよ 女の人と」
青い帯の子「姉ちゃん ごめんよ 俺 酔った父ちゃんおっかなくて」
赤い着物の娘「謝るんじゃない アンタは悪くない おっかなくて当然だ」
赤い着物の娘「ちび 明日までの辛抱だ」
青い帯の子「え」
赤い着物の娘「明日は母ちゃんの命日だ その日までの辛抱なんだよ」

〇古民家の居間
紺帯の子「なあ 夫婦の事件が起きてから ”妖刀菖蒲”はどうなったんだ?」
草色の帯の男「本当なら俺のところへ戻ってきて 包丁や鍬なんかに生まれ変わる予定だった」
紺帯の子「でも ”菖蒲”はここには無いんだろ?」
草色の帯の男「ああ」
草色の帯の男「盗まれたんだよ 護送の途中で」

〇黒背景
  盗人二人は”菖蒲”を盗んだ後
  
  金に目が眩み
  裏の筋を使って
  
  受け渡しちまった
  まあ
  
  刀は盗まれたことがすぐに分かって
  一人は
  
  捕まったらしいけどな

〇古民家の居間
草色の帯の男「もう一人は とんずらしたらしいが」
草色の帯の男「”菖蒲”の呪いで 殺されているかもしれないな」
紺帯の子「・・・」
草色の帯の男「ま ただの噂だよ」
紺帯の子「噂なんだよな ただの噂」
草色の帯の男「ああ」
草色の帯の男「だから 行方は知れないが」
草色の帯の男「何処かで 元気にやっていることを 願ってるよ」

〇城下町
茶色い帯の男「うィ〜ヒック」
厚化粧の女「キャハハ 呑み過ぎだよ」
菖蒲「あの男があんたが斬りたい最後の相手」
  そうだ
  確かにあの男だ
菖蒲「それで もうやるの」
  嗚呼
菖蒲「じゃ 早速」
赤い着物の娘「わ うわ」
赤い着物の娘「やめろ」
茶色い帯の男「さ〜て飲み直しだ〜」
菖蒲「あら」
赤い着物の娘「うちの父ちゃんに何しようとしたんだよ」
菖蒲「・・・」
菖蒲「娘に見つかったわよ」
赤い着物の娘「アイツを殺すな」
  ・・・
赤い着物の娘「父ちゃんを殺すのは」
赤い着物の娘「私だ」
菖蒲「どうする」
  放っておけ
  一端 退く
赤い着物の娘「誰だ あの人」
赤い着物の娘「あの男禄でもないから 色んな人に恨まれているんだ」
赤い着物の娘「早く準備を進めないと」

〇畳敷きの大広間
紋付き袴の男「あの〜スイマセ〜ン」
紋付き袴の男「この辺に菖蒲って女は来ませんでしたかね〜」
茶色い着物の男「ここの賭場に女はめったに来ないよ 前は髪の長い子が来てたけど」
紋付き袴の男「あらら〜そうですか〜」
紋付き袴の男「また 一足遅かったか〜」
みすぼらしいの着物の男「・・・」

〇森の中
みすぼらしいの着物の男「オイ」
紋付き袴の男「あい」
みすぼらしいの着物の男「お前あの女剣士の仲間か」
紋付き袴の男「菖蒲に会ったんですか」
みすぼらしいの着物の男「五月蠅ぇ」
みすぼらしいの着物の男「そいつは俺の手下を殺ったんだ お陰で俺は迷惑してんだ」
紋付き袴の男「菖蒲 ここへ来たんですね」
紋付き袴の男「もうすぐ もうすぐ菖蒲に会える」
みすぼらしいの着物の男「おい ゴラァ 待ちやがれ」

〇墓石
「・・・」
青い帯の子「母ちゃん あの世で元気にしてるかな」
赤い着物の娘「くぅ ごめんな 母ちゃん」
青い帯の子「姉ちゃん」
赤い着物の娘「ごめん 姉ちゃんがしっかりしないと」
赤い着物の娘「チビも母ちゃんも心配するよな」
青い帯の子「あの 姉ちゃん」
赤い着物の娘「心配すんなよ これから全部うまくいく」
赤い着物の娘「父ちゃん あんなだけど 二人で 支えあって生きていこう」
青い帯の子「うん 父ちゃん また仕事してくれるかな」
赤い着物の娘「二人で母ちゃんにお願いしよう」
赤い着物の娘「昔父ちゃんが使ってた 仕事道具 錆びを落としたんだ」
赤い着物の娘「ここにお供えして 母ちゃんにお願いしよう」
青い帯の子「うん 母ちゃんお願いします 父ちゃん お仕事してくれますように」
赤い着物の娘「よし じゃあ 先帰ってな」
赤い着物の娘「墓を掃除して帰るから」
青い帯の子「俺も手伝うよ」
赤い着物の娘「いいって いいって ほら 行きな」
青い帯の子「う うん」
赤い着物の娘「・・・」
赤い着物の娘「さて 準備は整った あとはアイツをここへ呼んで」
赤い着物の娘「これで 最期だ」

〇墓石
茶色い帯の男「なんだ こんなところに連れ出して」
赤い着物の娘「・・・」
赤い着物の娘「今日何の日か覚えてるか」
茶色い帯の男「知るかよ」
赤い着物の娘「・・・」
赤い着物の娘(踏ん切りついた)
赤い着物の娘(これで心置きなく)
茶色い帯の男「おい」
茶色い帯の男「お前 俺を殺そうとしてるだろォ」
赤い着物の娘「・・・」
赤い着物の娘「何 言ってんだ」
茶色い帯の男「誤魔化すんじゃねぇ」
茶色い帯の男「わかんだよ そうゆう勘が働くんだよォ」
赤い着物の娘「っぎゃ」
茶色い帯の男「お前ぇはよォ」
茶色い帯の男「いつか やらかすんじゃないかと 思ってたぜぇ」
赤い着物の娘「う 離れろ」
茶色い帯の男「お前ェが俺ヲ 殺したいんならよォ」
茶色い帯の男「殺される前に」
茶色い帯の男「殺しちまえばいいんだよなァ」
赤い着物の娘「! うぐっ」
茶色い帯の男「っが」
赤い着物の娘「ハぁハぁハぁ」
赤い着物の娘「くそ なんでだよ」
赤い着物の娘「なんでアンタは最後までそうなんだよ」
赤い着物の娘(こうなることは 分かってた)

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コメント

  • ねーちゃんかわいそう😭😭😭
    これは感情移入しました‼️
    菖蒲の本心も気になる‼️続き気になるなぁ✨

  • キツいのはバイオレンスより、その行為に至るまでの感情や記憶ですよね。なかなか辛かったです。
    やっとあの男がきましたね。
    次回楽しみです。

  • どんなに最低でも親は親…たまに見せた優しい一面が脳裏をよぎって憎みきれないのが苦しい😭
    姉弟に代わってとどめを刺してあげる菖蒲刀の人情味ある一面…?😆
    ついにすべての男を斬って…そして、紋付袴の男は何者なのか…?

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