菖蒲刀

福山 詩(フクヤマ ウタ)

【二人目】切っ先、眩しく光り錆びる(脚本)

菖蒲刀

福山 詩(フクヤマ ウタ)

今すぐ読む

菖蒲刀
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇屋敷の大広間
旦那の父親「さて お前達は晴れて夫婦となった」
旦那の父親「山伏の家系を継ぎ お互いこれからも精進するように」
「はい」
旦那「・・・」
嫁「旦那様 どうかなさいましたか」
旦那「いやァ」
旦那「今日は一段と その」
嫁「旦那様 また物が浮いております」
旦那「おっと しまった」
旦那「ハハハ まだどうにもこの力を操れないな」
旦那「感情が昂ぶると 勝手に物が浮いてしまう」
旦那の父親「この力を使いこなしてこそ立派な山伏だ 励みなさい」
旦那「はい 父上」
嫁「ふふ」
嫁「嫁として精いっぱい旦那様を 支えていきます」
旦那「頼んだよ」
旦那の父親「これは 祝儀の武具 魔除けの「菖蒲刀」だ」
旦那「これから二人で頑張っていこう」
旦那「山伏としての誇りを 持って」
嫁「はい」
  祝儀?魔除け?
  所帯持ちの男なんぞに
  
  興味はない

〇城下町
  一方 菖蒲が逃げた 宿屋
紋付き袴の男「あの~スイマセ〜〜ン」
灰色帯の男「はいはい なんでしょう」
灰色帯の男「あんた 旅の人か?」
紋付き袴の男「ええ まあハイ~」
灰色帯の男「悪いけど この宿は休業中だ 最近 物騒な事件があってね」
紋付き袴の男「あ~イヤイヤ 俺ここに泊まりたいんじゃなくってですね~」
紋付き袴の男「この宿に 菖蒲って人泊まってませんでしたかね〜?」
灰色帯の男「はあ 名前だけ言われてもね」
紋付き袴の男「あ〜 そうですよね〜」
紋付き袴の男「ん~何と言うかですね~ ん~言葉で言うのが、どーも、ん~ あ!凄く」
紋付き袴の男「それはそれはきれ~な女なんですよ~」
灰色帯の男「そうゆう人は知らないけどね」
灰色帯の男「今、女の人殺し、"首狩り"が逃げてるから あんまり、この辺うろつかない方がいいよ」
紋付き袴の男「いや~参った参った~ 女の美しさを例えるってのは 剣しか握ってこなかった俺に言わせりゃ こりゃどーも、難しいですな~」
紋付き袴の男「え?何です?"首狩り"って?」
灰色帯の男「女の人斬りだよ おまけに変装してるらしい」
灰色帯の男「なんだか どの女もおっかなく見えてね」
灰色帯の男「只でさえ かかぁにびくびく してるっつーのに」
紋付き袴の男「・・・」
紋付き袴の男「あははははは」
紋付き袴の男「ふぅ~ん そ~ですか~」
紋付き袴の男「まあ 女はおっかないもんですよ~」

〇黒
菖蒲「次 アンタが斬りたいのは どんな男?」
  山伏の男だ
菖蒲「山伏 って何」
  山へ籠り修行をする者達だ
  物を浮かせたり
  
  死んだ者の魂と会話したり
  珍妙な技を使う変態共
  男は 目元が涼しい 色男だったが
  
  山伏というのは どうも気色が悪い
菖蒲「随分な言いようね」
  私はその男と
  
  どこぞの野良猫との
  
  祝儀の武具として預けられた
  だが ある日
  
  嫁が私で 怪我をした
  それからは 不吉だと言って
  
  私を手放した
  なんとも勝手な話だろう
菖蒲「・・・」
菖蒲「それで その男 今はどこにいるの」
  ・・・
  この中だ
菖蒲「・・・」
菖蒲「嘘」
  嘘などついてどうする
  
  見ろ 嫁が出てきた
菖蒲「・・・あれが 嫁?」

〇神社の本殿
嫁「もうこんな時間 洗濯をして ご飯を作って それからそれから」
嫁「ああ 早くしないと あの人が帰ってきてしまう」
  カタカタカタカタ
嫁(恐ろしくて 体が震える)
「おい!」
嫁「ひ!」
旦那「どうして洗濯一つ 終わってないんだ!」

〇黒
菖蒲「ねえ 旦那はどこ」
  あいつだ
菖蒲「・・・」
菖蒲「嘘」
菖蒲「目元の涼しい色男は?」
  月日というのは 人を変えてしまう
菖蒲「だって」
菖蒲「変わりすぎじゃない 何もかも」
  欲しい物を手に入れたら
  人は 変わってしまうんだ

〇神社の本殿
旦那「俺が帰るまでに終わらせておけと」
旦那「言っただろうが!」
嫁「ごめんなさい ごめんなさい」
嫁「許してください 許してください」
旦那「お前は俺の言う事だけ 聞いていれば良いんだ!」
旦那「お前には先祖代々引き継ぐ 山伏の嫁である自覚がない!」
嫁「ごめんなさい ごめんなさい」
旦那「その言葉 何度も聞いたぞ!」
嫁「あぁ・・・」
旦那「惨めったらしく 倒れるのはやめろ!」
旦那「そうやって! 俺を悪者に仕立て上げたいんだろう?」
嫁「ごめんなさい ごめんなさい」
旦那「今日は会合を交えた食事会だ 大事な日なんだ」
旦那「全員分の食事を今すぐ準備しろ!」
嫁「・・・はい」
嫁(あぁ 祝儀を上げる前は あんなに優しかったのに・・・)

〇屋敷の大広間
嫁「全員分のお食事をご用意しました」
  カタカタカタカタ
旦那「・・・」
旦那「なんだこれは?」
嫁「ひ!」
旦那「こんなまずい飯があるか!?」
旦那「米はぐちゃぐちゃ 魚は骨を抜いていない 漬物は辛すぎて食えたもんじゃない」
旦那「この役立たず! お前は山伏の嫁として失格だ」
嫁「うぅ・・・」
  カタカタカタカタ
嫁「ごめんなさい ごめんなさい 許してください 許してください」
旦那「どうしてくれるんだ お前のせいだ・・・お前の・・・!」
嫁「! 旦那様お怒りを鎮めて下さい!」
旦那「うるさぁああああぁい! 俺を怒らせたお前のせいだぁあぁあー!」
嫁「お待ちください! また部屋が壊れてしまいます!」

〇怪奇現象の起きた広間(血しぶき無し)
嫁「あぁっ」
旦那「うがあぁああ また物を壊してしまったじゃないか」
旦那「お前が俺を怒らせるからだ お前のせいだぁあぁあー」
嫁(殴られる)
菖蒲「こんにちは」
旦那「何だあ! どこから入った!?」
旦那「お前もこの山伏の力を使って 殺すぞ!?」
菖蒲「・・・」
菖蒲「そうやって 自分のお嫁さんも 殺したの」
旦那「あァン!? 嫁ならここにいるだろ ずっと」

〇怪奇現象の起きた広間
  カタカタカタ
嫁だったモノ「カタカタカタ カタカタカタ カタカタカタ カタカタカタ」
旦那「うるさい!」
旦那「聞いただろ!謝るしか能のない奴なんだ!」
菖蒲「彼女 何か言った?」
嫁だったモノ「カタカタカタカタ」
  さあ
  しかし この嫁
  旦那に 殺されても尚
  魂まで 囚われている
  全く だから嫌いなんだよ
  
  人間 特別な力を手に入れたところで
  私利私欲の為にしか 使わない
菖蒲「血だらけの 部屋で 独りでいたから」
菖蒲「おかしくなって しまったのね」
菖蒲「だってあなた  洗濯を自分でやって ご飯を自分で炊いて」
菖蒲「この 亡骸に いつまでも 文句を垂れているだけなんだもの」
菖蒲「壁の血はお嫁さんのものかしら? ずっとこのままにしてあるなんて」
菖蒲「悪趣味だわ」
旦那「何をわけのわからないことを」
旦那「お前も俺のせいだというのか!?」
旦那「寄ってたかって俺を悪者にしやがって」
旦那「あの刀もこいつが勝手に触ったのが 悪いんだ」
旦那「だから俺が斬ってやったんだ」
旦那「自業自得だったんだよ」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:【三人目】目貫き通りは、お見通し

コメント

  • 和作品の進化が凄い✨ホラー好き好き😍
    変わりきった旦那ボイスまで‼️確かに七色インコ🐥
    手塚治虫作品の主人公です⤴️


  • 面白い話に声が入り目茶苦茶楽しんで読ませて頂いています。妖刀菖蒲は女さんなのでしょうが、声に惚れそうになってしまいました。

  • 真相を知る前の私「カタカタカタとは??」
    知った後の私「ヒエエエエエ!!?」
    和風が大好きかつ実は死んでいる展開が大好きなので、もうやばいくらい好きです! 死んだ後も生前のようにふるまい続ける幽霊、本当にいいですよね! 着物の骸骨キャラがいい味出してます!

コメントをもっと見る(13件)

成分キーワード

ページTOPへ