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きせき

エピソード35-鴇色の刻-(脚本)

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〇教会の控室
明石青刻「さて、これからはどうしましょうか」
黒野すみれ「(どうする・・・・・・か?)」

〇風流な庭園
  確かに、毒針を用意したのを夕梨花さんだった。

〇大きな日本家屋
  そして、その毒針をトキが拾って、秋川さんに渡す。

〇風流な庭園
  トキから毒針を受け取った秋川さんは・・・・・・

〇教会の控室
黒野すみれ「(不幸な偶然・・・・・・一応、流れは分かったけど、何かが引っかかるんだよな)」
  確信できるようなものがある訳ではないが、
  まだ何か、見落としている気がしている。
黒野すみれ「(そもそも、夏坂さんが亡くなったのは本当に事故だったのか。それに・・・・・・)」
  それに私は説明のできない胸騒ぎを感じていた。
黒野すみれ「(仮に、春刻がこのまま姿を現しても、彼が死んでしまうような・・・・・・)」
黒野すみれ「(そんな嫌な予感が・・・・・・)」
明石青刻「気になることがまだある・・・・・・という感じですね」
黒野すみれ「えぇ、でも、それを確かめるにはどうしたら良いのか。それが分からなくて・・・・・・」
黒野すみれ「あ、そう言えば、警察から何か、言ってきましたか?」
  色んなことが降りかかるように起こり、失念していたが、
  私は胡蝶庵の月見櫓に火を放った人間として
  この家の監視下に置かれているような状態だ。
  すると、彼は息を少し吐き出した。
  視線を漂わせ、私を見つめる。
明石青刻「そうですね。おそらくですが、」
明石青刻「もうこれ以上、貴方が胡蝶庵を放火したという疑いは持たれないでしょう」
黒野すみれ「これ以上?」
明石青刻「あぁ、月見櫓で発見された2人の解剖がされることになったんです」
黒野すみれ「・・・・・・」
明石青刻「彼らのうち、1人は弾痕があり、それが致命傷になり死亡」
明石青刻「もう1人は重度の一酸化中毒によって、死亡した」
明石青刻「状況から見て、後者が前者を殺害後、月見櫓に遺体を運び、遺体を始末しようとしたが、」
明石青刻「誤って、自らも焼死した。というような見解になるかと思います」
明石青刻「銃殺されていることで遺体が戻ってくるのはもしかすると、今月末かも知れないですけど」
黒野すみれ「・・・・・・」
明石青刻「・・・・・・」
  嫌な沈黙が続く。
  ただ、これ以上、ここにいても、時間が無駄だろう。
黒野すみれ「私は本邸に戻ってみようと思います」

〇貴族の部屋
  何ができるか分からないが、見落としがないように
  悔いがないように資料を見てみるつもりだ。

〇教会の控室
明石青刻「成程。長い夜になりそうですね・・・・・・あ、でも、朝も待ってくれないでしょうけど」
黒野すみれ「えぇ、でも、もうすぐ終わる・・・・・・気がするんです」
  全てが何らの形で・・・・・・

〇地下室

〇教会の控室
明石青刻「そう・・・・・・ですね・・・・・・。いつだって何だってそうです」
明石青刻「終わらせることはできる。いつか・・・・・・」
黒野すみれ「えぇ、きっと・・・・・・」
  私達は有明荘を去ると、本邸へ向かう。

〇車内

〇宮殿の門
明石青刻「じゃあ、すみれさん、また何かありましたら、連絡をしてください」
明石青刻「すぐ駆けつけますので」
黒野すみれ「えぇ、何か、あったら、連絡します」
  私は以前、玄人さんから名刺をもらっていた。

〇洋館の廊下

〇宮殿の門
黒野すみれ「(あ、そうだ。トキのことも聞いておこう。自分で連絡しても良いけど)」

〇ラブホテルの部屋

〇宮殿の門
黒野すみれ「(寝ていたら、悪いし)」
  私は青刻さんにトキのことを聞いてみる。
  すると、青刻さんも聞いてきた。
明石青刻「トキさんですか?」
黒野すみれ「えぇ、もし、起きていたら、心配している筈なんです」
黒野すみれ「起きたら、私もいなくなってるし、青刻さんや玄人さんもいないし」
  私はそこまで言うと、青刻さんはすっと目を閉じた。
明石青刻「あぁ、彼女なら僕が屋敷を出た頃はまだ眠っていましたよ」
明石青刻「ねぇ、玄人くん?」
玄人「え、あ、はい・・・・・・」
玄人「私もまだ少し眠いですしね。無事に黒野様を送り届けられて良かったです」
  そう言うと、玄人さんは欠伸を1つする。
黒野すみれ「(確かに、眠らされていたと言ってたし。いつもよりは静かだったな、玄人さん)」
  私は早く玄人さんを返す為にも、本邸の方へ入った。
玄人「これで、良かったんでしょうか?」
明石青刻「あぁ、トキさんのことは黙っていた方が良いと思う」

〇ラブホテルの部屋

〇宮殿の門
明石青刻「消えてしまっていたんです。なんて言ったら、」
明石青刻「彼女を心配させるだけで、時間が徒らに経ってしまうだけだよ」
玄人「そうですね・・・・・・」
明石青刻「それに僕は彼女ではないけど、僕が彼女なら行きそうなところは分かる」
玄人「それはどこですか?」
明石青刻「それはおそらく・・・・・・彼女の前に」

〇貴族の部屋
黒野すみれ「ふぅ・・・・・・」
黒野すみれ「(リエさんが部屋にやって来る前に1つでも資料を読んでおかないと・・・・・・)」
  と言うのも、リエさんは私が本邸に帰ってきたら
  すぐに出迎えてくれた。

〇城の廊下
リエ「おかえりなさいませ、黒野様」
リエ「ご無事だったんですね。良かった! 本当に良かったです!」
リエ「あ、夕食のご用意もできておりますよ」
黒野すみれ「・・・・・・」

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(本当は呑気に食事をとってる場合じゃないんだけど、)」
黒野すみれ「(折角、作ってもらったのを無碍にもできないしな)」
  私は用意してもらった食事をリエさんに無理を言って、
  折りに詰めてもらうことにすると、部屋に戻ってきた。
黒野すみれ「(あともう少し。もう少しだけ頑張れば・・・・・・)」
  すっかり暗くなった部屋に私は電気をつける。
  すると、私は思わぬ光景を目の当たりにした。

〇貴族の部屋
物部トキ「こんばんは。すみれちゃん」
黒野すみれ「と、トキ・・・・・・」
  何故、こんなところにトキがいるのだろうか。
黒野すみれ「(いや、考えてみれば、その可能性もないことはなかった)」

〇装飾された生徒会室
「やばい。すっかり、遅くなっちゃったな」
  学生の頃、部活が思いの外、遅くなった時のことだ。

〇土手
  もう待っていないだろうと私はいつもトキと帰る時に
  通る道を通ってみると、彼女はそこにいた。
物部トキ「すみれちゃん、お疲れ様♪」
  一度は帰ろうとしたものの、何だか、気になって
  私を待っていてくれたトキ。
物部トキ「じゃあ、帰ろうか」
「う、うん」
物部トキ「あ、もし、良かったら、久し振りにうちに寄っていかない?」
「トキの家に?」
物部トキ「うん。お母さんがご飯を作り過ぎしまったみたいで」
物部トキ「しかも、そんな日に限って、色々、食べるものをもらったりして・・・・・・」
物部トキ「まぁ、草輔さんと約束があるなら無理にとは言わないけど・・・・・・」
  黒野草輔は私の父で、父は私が高校生になると
  公判やら研修やら仕事で
  よく県外に行っていた。
「いや、父さんが帰ってくるのは明日だから今日は適当に済ませる気だったんだ」
「だから、嬉しいけど、迷惑じゃない?」
物部トキ「ううん、迷惑なんかじゃないよ。大体、迷惑なんて思ってたら誘わないし」
物部トキ「じゃあ、行こ!! 今日は物部家はすき焼きだったんだけど、」
物部トキ「いつの間にか、こーんな大きな鯛の塩焼きとかちらし寿司を寿司樽ごともらったりして」
物部トキ「おまけに、ケーキとかタルトとか甘いものも凄いもらってさ」

〇黒
  これは完全なる余談だが、
  私はこれで何度か助けられたことがある。
黒野すみれ「ある時はバスの事故に巻き込まれなかったり、」
黒野すみれ「またある時は家の近くで起こった通り魔事件の被害者になることも避けられた」
黒野すみれ「偶然と言われれば、偶然なんだろうけど、ここぞと言う時に私は彼女に救われてきた」

〇貴族の部屋
黒野すみれ「もしかして、貴方も未来から来ていたりする?」
  私は完全に頭がおかしい台詞を言う。
  だけど、目の前の友人は吹き出したり、否定したり
  することなく、微笑むだけだった。
  そればかりか、何故か、賛辞を口にする友人。
物部トキ「すみれちゃんはやっぱり凄いね。ここまで辿りつけちゃった・・・・・・」
黒野すみれ「・・・・・・」
  私は目の前の友人ではなく、1番過去の友人との会話を
  思い出す。

〇森の中
  つまり、私自身が初めてトキと出会った時。
  瞬間。

〇貴族の部屋
黒野すみれ「こんにちは。貴方にも変えたい過去をあるの?」
黒野すみれ「それが私達が交わした最初の言葉だった」
  昔のことにも関わらず、強く正確に残る言葉。
物部トキ「うん。そうだね。でも、ごめんね。それは2度目の出会いなんだ」
黒野すみれ「2度目・・・・・・?」
物部トキ「うん」
物部トキ「私がそうなれば良いと望んだ2度目の・・・・・・出会いなんだ」
黒野すみれ「トキが望んだ・・・・・・?」
物部トキ「・・・・・・」
  先程とはうって代わり、彼女は口少なくなる。
黒野すみれ「(目の前の友人にも変えたい過去があったってことなのか)」
黒野すみれ「(こんな結末になったとしても・・・・・・)」

次のエピソード:エピソード36-鴇色の刻-

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