〇荒野
　　ジェストール領内
　　
　　ゴルド砂漠付近
ジン「あーっ、もう！　まだかよ!?」
メイ「あれっ？　お兄ちゃんは？」
レスト「・・・いない？」
ジェルバーン「んー、俺は見てないな」
エクスト「私も、見てないわ」
ジン「あのヤロ、まさか抜け駆けしやがった!?」
メイ「えーっ？　いつの間に!?」

〇荒野
　　風華たちは、色時の転移術で洞窟入口の
　　近くまで来た
色時「僕の時の能力が役に立って良かった！」
風華「ありがとう、色時。こんなに一瞬で 来られるとは思ってなかったわ」
風華「ここにカートが・・・」
？？？「あれっ？　もしかして・・・」
ジン「おおっ、麗しの姫様じゃないか！ 待ってたんだぜ」
紅蓮「テメェ・・・ また風華を攫おうってのか!?」
ジン「そんなわけないだろ・・・」
ジン「姫様には、カートと 結ばれてもらわないと困るんでね」
「テメェ、ぶっ叩く!!」
エクスト「ちょっとジン、頼み方ってものが あるでしょう!?」
エクスト「・・・・・・・・・・・・」
ジン「エクスト、おまえ・・・」
エクスト「こっちの方が、本来の私よ。 王女に謁見、ましてや献言するなら、 こちらの方がいいでしょ？」
ジン「そうだけど・・・」
エクスト「王女様・・・」
　　エクストは、風華の前で跪いた。
エクスト「王女様、私たちセ＝シルの子孫の顛末は、 もうお聞きでしょうか？」
風華「はい・・・仲間から、聞きました」
エクスト「では、単刀直入に言います」
エクスト「私たちの命を、お救いください！」
風華「それは・・・」
ジン「・・・・・・・・・・・・」
　　それを見たジンも、エクストの隣で
　　跪いた。
（あのジンが、土下座・・・!?）
ジン「頼む・・・いや、頼みます！」
ジン「俺・・・俺は、エクストが助かるなら、 自分はどうなってもいいと思っていた・・・」
ジン「だけど、俺が死んでもダメなんだ・・・！ どんな罰でも受ける!!」
ジン「受けるから、エクストと、他のヤツらを 助けてやってくれ・・・!!」
風華（ああ・・・カート・・・ あなたは本当に・・・）
風華（なんてことをしてくれたの・・・ モステアだけでなく、 他のセ＝シルの子孫まで・・・）
風華（私の・・・心まで・・・）
エクスト「申し訳、ありません・・・ あなたに、辛い選択を・・・」
風華「ごめんなさい。 私は、答えが出せませんでした」
風華「だから、ひとつだけ決めてきたのです。 カートに会ってから、答えを出そうと」
エクスト「では・・・」
風華「ええ、行きましょう。 カートのところへ」

〇洞窟の深部
　　洞窟内
レグルス「そろそろか・・・」
カート「アイ＝リーンの子孫が・・・来る？」
カート「兄さん、俺は運命を受け入れるつもりだ。 兄さんたちには悪いが・・・」
カート「風華が来たら、宝玉を返す。 それで俺は封印されて、終わりだ・・・」
レグルス「無論。 私はおまえを助けるつもりなど毛頭ない」
レグルス「しかし、宝玉は今、私に預けてもらおう」
カート「兄さん、なぜ・・・!?」
レグルス「”おまえの意識があると”、 王女の決断が鈍るだろう？」
レグルス「さっさと魔術に呑み込まれるんだな」
　　レグルスは、強引に緑に輝く宝玉を奪った
カート「兄さ・・・・・・」
カート「う・・・ぐ・・・」
カート「ぐあああああああああああああっっ!!」

〇薄暗い谷底
紅蓮「今の声は!?」
風華「おそらく、カートが・・・！」
ジン「くそっ！　まさかレグルス様、先に ぶっ叩いたんじゃ!?」
ジェルバーン「いやぁ、それは考えにくいね。 魔術には神具による攻撃しか効かない と思うし」
吹雪「・・・待て、誰かいるぞ!?」
ティサ「アイ＝リーンの、子孫・・・？」
風華「あなたは・・・？」
ティサ「私は、ティサ。 カート様を守る者・・・」
紅蓮「・・・俺たちと、戦うつもりか？」
ティサ「いいえ」
ティサ「カート様から、アイ＝リーンの子孫は 通すように、命令されていますわ」
紅蓮「なんだって!?」
風華「カートは・・・やはり 受け入れているのですね・・・」
ティサ「はい・・・」
ティサ「本当ならば、私はカート様をお守りする ため、あなたたちと戦わなくてはなりませんわ・・・」
ティサ「だけど、あの人は・・・」
ティサ「私は、カート様の命令に逆らえませんの・・・」
風華「・・・・・・・・・・・・」
風華「ごめんなさい・・・ 私たちは、魔術を、カートを封印します」
ティサ「あなたが、風華・・・？」
風華「・・・はい」
　　ティサは、風華の名を聞くと道を開けた。
風華「・・・ありがとう」
　　一行は、奥へと進んでいった。
ティサ（さようなら・・・カート様・・・）

〇洞窟の深部
風華「カート!?」
ジェルバーン「やれやれ、 すでに魔術化が進んでいるようだね」
ジン「レグルス様、一体どういう事ですか!?」
レグルス「申し訳ない・・・私が来た時には、 もう手遅れだったようだ・・・」
レグルス「私たちも、運命を受け入れるしか なさそうだ・・・」
ジェルバーン（手遅れ・・・？ 私たちが来た時には・・・？）
ジェルバーン（おかしいな・・・）
ジェルバーン（レグルス様がここに入ってから、 結構な時間が経っているはずだ・・・）
ジェルバーン（魔術化したカートを、今までただ ぼーっと見ていた・・・？）
ジェルバーン（そんな馬鹿な・・・）
ジェルバーン（レグルス様、まさか・・・）
ジン「くそっ！　これじゃあ、何のために ここまで来たんだよ!?」
ジン「俺たちは、 何のために生きてきたんだよ!?」
ジン「とにかく、このままじゃ気が治まらねぇ！ １発ぶん殴ってやる!!」
エクスト「ジン!!」
ジン「っりゃあああああああ!!」
ジン「攻撃が・・・弾かれ────」
ジン「が・・・は・・・っ!!」
紅蓮「みんな、構えろ!! こいつには神具の攻撃しか効かない!!」
影利「でも、風華の宝玉は!? カートが持ってるんでしょ!?」
色時「弱らせて 取り返すしか無さそうですね・・・！」
レグルス「風華」
風華「レグルス・・・」
風華「すみません、やはり私は・・・ あなたたちの”風”にはなれません」
レグルス「そうだろうと思っていた」
レグルス「まあ・・・カートがあれでは、 すでに無理な話だがな・・・」
風華「もしかして、何か策が・・・？ それとも、消えるのを覚悟して・・・？」
レグルス「策？　そんなものはない」
レグルス「これを、君に渡しておこう」
　　レグルスは、風華に風の宝玉を渡した
レグルス「これで、魔術を封印したまえ」
風華「なぜあなたが・・・？ カートに奪われていたはずなのに」
風華「取り返してくれたのですか・・・？ でも、なぜ・・・」
風華「魔術を・・・カートを封印すれば、 あなたたちは・・・」
風華「レグルス、 あなたは、何を企んでいるのですか？」
レグルス「企む？ ふふ・・・滅相もない」
レグルス「私はただ、 ウィルを救いたいだけだ」
　　レグルスは、それだけ言って風華から離れた
風華「ウィルを・・・救う・・・？」