エピソード3(脚本)
〇事務所
週刊誌を脇に抱えた有島が、慌てて駆け込んでくる。
三倉聡子「有島さん! 週刊誌!」
有島孝雄「見た! どうなってやがる!」
〇店の入口
〇レトロ喫茶
山木俊介「すみません。 いま、何かとマスコミが騒がしくて、こんな格好で」
三倉聡子「単刀直入ですが、週刊誌の件です」
山木俊介「ええ、プライベートを騒がれるのは苦痛ですが、悪妻と離れられないよりはマシですから、構いません」
有島孝雄「・・・・・・」
山木俊介「まあどうあれ、これで世論は僕の味方になった。違いますか?」
三倉聡子「そうだと思います」
山木俊介「なにせ不貞を働いたんだ。 裁判になったとしても、グッと勝てる確率が高くなりましたよね」
有島孝雄「・・・ちょっとタイミングが良すぎる」
「?」
有島孝雄「美奈さんはとても用心深い人だと思うからです」
有島孝雄「アイドル時代も、引退してからも、こんなスクープされるようなことはなかったのに」
三倉聡子「どういうことですか?」
有島孝雄「もしかしたら・・・ですが、美奈さんの周りの人間・・・たとえば行動範囲などがわかる人間がスクープに協力したんじゃないかって」
山木俊介「・・・・・・」
三倉聡子「それって」
有島孝雄「一つの可能性です」
山木俊介「仮にそうだとしても、僕にとって追い風が吹いていることに変わりはない」
有島孝雄「・・・ええ」
山木俊介「とにかくお願いしますよ、僕はあいつと離れられさえすればそれでいいんだ」
〇レトロ喫茶
三倉聡子「有島さん、今回の週刊誌の件。 山木さん本人によるタレこみだとお考えですか」
有島孝雄「だろうな」
三倉聡子「えっ!? 証拠あるんですか?」
有島が机の上に週刊誌を置く。
有島孝雄「この写真にある乗用車のバックナンバー、途中までしか映ってないが、山木さんが普段使っているものと同じだ」
有島孝雄「もちろん、美奈さんは普段、この車を使用していない」
三倉聡子「そんな! だとしたら彼のやり方は卑怯じゃないですか」
有島孝雄「だが確証があるわけではない。 卑怯かどうかなんて言うな。 依頼人を信じなくて何が弁護士だ」
三倉聡子「それは・・・」
有島孝雄「なんて、いつもの俺なら言うのかな」
三倉聡子「?」
有島孝雄「山木さんの夫婦の結婚生活を知る、第三者を探してみよう。少し調べてみたい」
三倉聡子「でも、夜は別件の打ち合わせが入っていますが」
有島孝雄「そっちは後回しでもいいだろう。 今はこっちが優先だ」
三倉聡子「・・・ふふ」
有島孝雄「どうした?」
三倉聡子「いえ、こういう時、いつもの有島さんならなんて言うのかなって」
有島孝雄「・・・・・・」
三倉聡子「有島さん、ちょっと変わりましたね」
有島孝雄「そ、そんなことはない。 それより、この不倫相手とされる男を特定できないか?」
有島孝雄「探偵を使ったっていい。 何か分かるかもしれない」
三倉聡子「いいですけど、資金は——」
有島孝雄「そんなもん、山木さんから取ればいいだろう。 お金は持ってそうだしな」
三倉聡子「了解しました」
有島孝雄「・・・・・・」
有島孝雄「・・・ったく、俺はなにがしたいんだ」
〇事務所
恋恋恋、恋じゃなーい♪
2人が出会った夏じゃなーい♪
美奈「お願いします。 どうか私を助けてください!」
有島孝雄「!?」
美奈「いま離婚されると、私・・・」
有島孝雄「ミーナ・・・!」
有島が美奈の肩に手を伸ばす。
しかし、その手は幽霊のようにすり抜ける。
有島孝雄「!?」
〇事務所
有島孝雄「・・・・・・」
有島孝雄「夢かよ・・・どうりで若いと」
ブー・・・ブー・・・
有島孝雄「はい。ああ、三倉か」
「有島さん、夜分に失礼します。 美奈さんの祖母にあたる、文江さんという方のアポが取れました!」
「明日にでも会ってくれるそうです」
有島孝雄「・・・そうか」
有島は電話を切ると、肩で一つ大きなため息を吐く。
〇古いアパート
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