リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

第十話 消滅する天使(脚本)

リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

今すぐ読む

リリウム〜罠に嵌まった天使〜
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇荒廃した教会
ユリナ「ヒクイ、どうしてあんなこと・・・・・・」
カスアリウス「あぁでもいわなきゃ、収まらなかっただろ」
カスアリウス「さて、猶予は三日だ。どうせ罠だとわかっているだろうが、準備はしておかねぇとな」
アルテミシア「けど、魔界への道って、全部天界が把握して見張っているはずっすよね?」
アルテミシア「こんなところに、道はなかったと思うっすけど・・・・・・」
カスアリウス「それは、正規ルートだけだ。小さな空間の穴は、他にもいくつもある。この場所にもな」
ユリナ「そっか。 だから人間は教会を建てて塞ごうとしたのね」
カスアリウス「ああ。けど、十年前俺が魔界から来たことで、穴が開いちまった」
カスアリウス「一応閉じておいたんだが、奴には気づかれたらしい」
アルテミシア「でも、空間の穴を開けたり閉じたりするのって、専門的な知識がいるんじゃないっすか?」
カスアリウス「ああ。俺は魔界を出るときに、ひとしきり学んできたからな」
ユリナ「そっか。だから、ヒクイが必要なのね?」
カスアリウス「まぁこの町にいる悪魔の中では、俺しかできねぇだろうな」
アルテミシア「じゃあ、道を開ききるまでの三日間のうちに、ウチらはあいつを倒さなきゃならないってことっすね?」
カスアリウス「別に、無理して倒す必要はねぇよ」
アルテミシア「え?」
カスアリウス「奴は、勝手に魔界へ帰ってくれるんだ。 見逃せば、襲ってくることはねぇだろ」
ユリナ「ヒクイ、それはできないよ」
カスアリウス「勝算もねぇのに?」
ユリナ「今はまだない。でも、ヒクイはそれが嫌だから、一人で何とかしようとしたんだよね?」
カスアリウス「・・・・・・道を開くってことは、俺も一緒に魔界まで行く必要があるからな」
ユリナ「戻りたくなかったんだよね? それなら、行かせるわけにはいかないよ」
ユリナ「倒す方法は、わたしが考える」
カスアリウス「決断するのが怖いと、いっていたくせに?」
ユリナ「怖いけど、ヒクイを守りたいもの」
カスアリウス「俺は悪魔なんだぞ?」
ユリナ「でも、わたしの大事な協力者だよ」
アルテミシア「コホンッ! 惚気ているところ悪いっすけど、早く帰って皆んなと作戦会議するっよ!」
アルテミシア「それに、ヒクイはこの戦いが終わったら、処遇を決めるっすからね!」
ユリナ「えー・・・・・・」
カスアリウス「ちょっと待て。以前、天界に裏切りものがいるといっていたな?」
カスアリウス「誰かわからねぇ以上、ヘタをすると作戦が筒抜けになるぞ」
アルテミシア「何の話っすか?」
ユリナ「あ・・・・・・。帰り道、話す」

〇広い和室
ユリナ「――というわけ」
ヨモギ「そんな! 裏切りものなんて、ここにはいないっすよ!」
ヨモギ「小天使は皆んな同期だからよく知っているし、末天使だって──」
ヒクイ「落ちつけ。ここにいるとは限らねぇ。 まぁ、いない保証もねぇが」
ヨモギ「だーかーらー!」
ユリナ「落ちついて、ヨモギ」
ヨモギ「先輩も疑っているっすか?」
ユリナ「まだ何ともいえないわね」
ユリナ「うちの支部に勤めているヨモギの同期は、ドラセナを合わせて四人だっけ?」
ヨモギ「そうっす!」
ユリナ「いいなぁ。 わたしなんか、イリスだけだったんだから」
ヒクイ「話が脱線しているぞ・・・・・・」
ヒクイ「どうせ小天使なんて大した戦力にならねぇし、作戦に入れなくてもいいだろ」
ヨモギ「何をー!!」
ユリナ「あ、お客さん?」

〇広い玄関
リンドウ「ユリナ様! 天界にいるドラセナと通信が繋がりましたわ!」
ユリナ「本当か、リンドウ!?」

〇黒
ドラセナ「リリウム様! よかった、連絡がとれないから心配していたんです」
ユリナ「監獄の様子はどうだ?」
ドラセナ「今は落ちつきをとり戻しています。 状況の把握も進みました」
ユリナ「そうか。詳しく話してくれ」
ドラセナ「あの、リリウム様。その前に、人払いをお願いできますか・・・・・・?」

〇古風な和室(小物無し)
ユリナ「・・・・・・で、どうした?」
ドラセナ「今回の脱獄事件ですが、檻に外から術がかけられて、こじ開けられた形跡がありました」
ユリナ「・・・・・・外から?」
ドラセナ「はい。 それも、威力を考えますと、小天使以上です」
ユリナ「あのとき、小天使以上で監獄内にいたのは誰だ?」
ドラセナ「そちらにいる追跡班の三名と、わたしです」
ドラセナ「リリウム様とイリス様は事件発生時、外にいたことが確認されておりますので」
ユリナ「容疑者は四名か・・・・・・」
ドラセナ「その・・・・・・確証はありませんが、最初に脱走に気づいたのは、アルテミシアです」
ユリナ「アルテミシアが裏切りものだと?」
ドラセナ「わかりません・・・・・・。 ですが、気をつけてください」
ヒクイ「・・・・・・」

〇広い和室
ヨモギ「先輩! 昨日、ドラセナから何か情報はあったっすか?」
ユリナ「あ・・・・・・うん、悪魔を閉じこめていた檻が足りなくて、大変なんだって」
ユリナ「修理費もかさんだらしいし・・・・・・」
ヨモギ「へ〜、そうなんすね!」
ユリナ(ヨモギがわたしたちを裏切るなんて、ありえない)
ヨモギ「今年も予算厳しかったっすもんね。 他には、何かあったっすか?」
ユリナ(でも、他の子たちにも、怪しいところは見当たらない)
ユリナ(まずいな、重要な戦力の小天使を頼れないのは・・・・・・)
ヨモギ「先輩? 怖い顔して、どうかしたっすか?」
ユリナ「・・・・・・えっ、いや、何でもない! それより、ヒクイは?」
ヨモギ「ヒクイなら、朝早くから教会に詰めているっす」
ヨモギ「道を開くために、いろいろやることがあるみたいっすね」
ユリナ「そっか・・・・・・」
ユリナ(天界にいるドラセナは結界の中に入れないだろうけど、裏切りものは誰・・・・・・?)
ヨモギ「あとでヒクイにお昼ご飯を持っていくっすけど、先輩も行くっすか?」
ユリナ「あ、うん。行く!」

〇荒廃した教会
ユリナ「ヒクイ、調子はどう?」
ヒクイ「あぁ、それなりに忙しいな。召喚魔法に近い準備をしないといけねぇから」
ヨモギ「これ、差しいれっす!」
ヒクイ「サンキュー!」
ヒクイ「・・・・・・って、ユリナ! 魔法陣を踏むんじゃねぇ!」
ユリナ「え? わ、ごめん! きゃあ!」
ヒクイ「おい、水がこぼれたじゃねぇか・・・・・・イテッ!」
ヒクイ「このペットボトルの水・・・・・・聖水か?」
ユリナ「え? 聖水なんて飲んだら、いくらヒクイでも・・・・・・」
ヒクイ「おい、どういうつもりだ? ヨモギ!」
ヨモギ「あーあ、バレちゃったっすか・・・・・・」
ユリナ「ヨモギ、どういうつもり!?」
ヨモギ「どうもこうも、そいつは悪魔っすよ? 捕縛または始末対象っす」
ヨモギ「協力者のフリをして、ウチらを裏切るつもりっすよ!」
ヒクイ「ミルヴスを倒そうと画策している俺たちを、先に始末しようという算段か?」
ヨモギ「な、何をいっているっすか!」
ヒクイ「奴らが天界から人間界へ逃げたとき、とり逃がしたのはお前だったらしいな」
ユリナ「そういえば、今朝もドラセナとの通信内容をやたらと知りたがっていたよね・・・・・・」
ヒクイ「つまり、お前が裏切りものだったというわけだな?」
ヨモギ「ご、誤解っす!」
ヒクイ「天界から奴らを逃がし、俺たちの情報も売ろうって魂胆か」
ユリナ「そんな・・・・・・」
ヒクイ「ミルヴスに作戦をもらされる前に、こいつは始末しねぇとな」

〇炎

〇荒廃した教会
ヨモギ「だったら、やられる前にやってやるっす!」
カスアリウス「当たらねぇよ!」
ヨモギ「うわぁ!」
ユリナ「ヨモギが・・・・・・あ、跡形もなく消えた・・・・・・」
カスアリウス「これで、裏切りものの心配はなくなった。 奴を倒すことに専念するぞ」
ユリナ「あ、待ってよ!」
???「・・・・・・」

次のエピソード:最終話 嵌められた天使

コメント

  • ヨモギ、ヨモギさんが…_:(´ཀ`」 ∠):

  • ヨモギ……ヨモギさん?……ヨモギぃ……

ページTOPへ