エスケイプ・サンクチュアリ

穂橋吾郎

#4 終わりの始まり(脚本)

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穂橋吾郎

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〇研究室に改装された教室
  倫太郎とイズがテレビ通話で話している。
星野倫太郎「【英語】 あとは、単語を増やしたいよね」
イズ「【英語】 そうだね。きれいな響きの言葉だと」
イズ「Est-ce français? (フランス語かな?)」
イズ「【フランス語】 (文学的な言葉も豊富だし)」
星野倫太郎「【フランス語】 それもいいけど」
星野倫太郎「Entä suomalainen. (フィンランド語はどうかな)」
星野倫太郎「【フィンランド語】 雪に関する言葉だけで何種類もあったりして、面白いよ」
イズ「【フィンランド語】 いいね! 素敵な言葉をたくさん詰め込もうよ・・・」
星野倫太郎「うん。もうすぐ、だもんね・・・」
イズ「うん、そうだね・・・」
  ピー。コード、確認しました
星野倫太郎「あ、蕪木さんが戻ったみたい」
イズ「わかった、また後でね」
  倫太郎が画面に手をかざすと、通信が切れた。
蕪木「今日はどこの国の言葉で話してたんだい?」
星野倫太郎「色々です」
星野倫太郎「いま、二人だけのオリジナルの言葉を作っているので、色んな言語から綺麗な単語を集めようって、話していたんです」
蕪木研二「はは、すごい次元の遊びをするようになったな」
  蕪木は近くのソファに倒れこむように座り、酒を飲み始めた。
星野倫太郎「今日も、実験はしないんですか?」
蕪木研二「実験・・・? なんの?」
星野倫太郎「陣の、謎を解く実験ですよ」
蕪木研二「ああ・・・」
蕪木研二「ねぇ、じゃあ教えてよ。これ以上何を実験しろっていうの?」
蕪木研二「30年、手を尽くした。 そして、なんの成果もあげられなかった」
蕪木研二「わかったことは『陣については、何もわからない』。ただそれだけだ」
星野倫太郎「諦めてしまったんですか?」
蕪木研二「とっくに諦めていたよ。国も、他の研究員も、こんな陣のことなんてもう忘れている」
星野倫太郎「蕪木さんは、見捨てずにいてくれました」
蕪木研二「しがみついただけだ。 ホントに無様なもんだよ。 科学で何でも解明できると思い込んで」
蕪木研二「でも、陣にはまるで歯が立たなかった。 プライドを捨てて、黒魔術だの錬金術だのに頼って、それでもだめだった」
蕪木研二「ふふふ・・・・・・私にはもう、何も残っていない」
星野倫太郎「僕も同じです。何も残っていない」
蕪木研二「・・・せめて、君らを陣から出してやれればよかったな」
星野倫太郎「僕らに情でも移りましたか?」
蕪木研二「自分で言うんじゃないよ、そういうことは」
星野倫太郎「そうですね。あ、蕪木さん」
蕪木研二「?」
星野倫太郎「ありがとうございました」
蕪木研二「・・・なんだ、お別れのあいさつみたいに」

〇魔法陣のある研究室
  イズが陣に手を当てて、目を閉じている。
イズ「・・・・・・」
イズ「【英語】 そっか、明日・・・」

〇研究室に改装された教室
  倫太郎が陣に手を当てて目を閉じている。
星野倫太郎「・・・・・・」
  ジー、ジジッ、ジー・・・
星野倫太郎「うん、なるほど」
  ジジジッ、ジージッジー・・・
星野倫太郎「そうか、明日・・・」

〇研究室に改装された教室
蕪木研二「うっ、頭痛ぇ・・・」
星野倫太郎「Kion pri? (どうかな?)」
イズ「Jes, mi pensas, ke ĝi estas vere bona! (うん、すごくいいと思う!)」
星野倫太郎「Do ni faru tion. (じゃあ、そうしよう)」
イズ「Jes. ・・・Rintaro, ĝis revido. (うん。・・・倫太郎、また、後でね)」
星野倫太郎「Jes, poste. (うん、また後で)」
蕪木研二「いまのが、オリジナルの言語?」
星野倫太郎「・・・ええ。ようやく完成しました。間に合ってよかった・・・」
蕪木研二「間に合った?」
蕪木研二「・・・ずいぶん楽しそうに話していたけど、デートの約束でもしていたのかい?」
星野倫太郎「はい。陣から脱出して会えたら、まず何をしようか決めていたんです」

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