よしおの漫画

明里灯

過去短編 銅の漫画(脚本)

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〇ボロい家の玄関
銅「たのもう!!」
足塚おさむ「なんだ小僧?」
銅「足塚先生! 俺は漫画家を目指しています!」
銅「どうかご教授いただけないでしょうか!」
足塚おさむ「忙しくてそれどころではないし、 弟子をとれるような人間ではない」
銅「少しのお時間でいいんです! 俺の漫画を読んでください!」
足塚おさむ(困ったな・・・)
足塚おさむ(一度くらいは読んでみるか)
足塚おさむ「読ませてみろ」
銅「やった!!」

〇古風な和室(小物無し)
銅「先生、どうでしょうか?」
足塚おさむ「うむ」
銅「ごくり・・・」
足塚おさむ「全然おもしろくない」
銅「そんなはずは!!」
足塚おさむ「一つずつ説明していくぞ・・・」

〇土手
銅「死ぬほどダメ出しされた・・・」
銅「でも、ちょっと言いすぎなんじゃないか?」
銅「俺はもっと書けてるはず」
銅「まさか俺の才能に嫉妬を?」
銅「そういうことか!」
銅「よーし、また書いて 持っていくぞ!」

〇ボロい家の玄関
銅「たのもー!!」
足塚おさむ「うるせぇ!!」
足塚おさむ「またお前か」
銅「次は自信作っす!」
足塚おさむ「分かった読むからジュースでも飲んでおけ」
銅「やった!」
銅「ジュースなんてやっぱ金持ちなんすね!」
足塚おさむ「おとなしくしておくんだぞ」
銅「もちろんっす!!!」
足塚おさむ「うるせぇ!!!」

〇古風な和室(小物無し)
銅「どっすか?」
足塚おさむ「全然ダメだ」
銅「えぇ!?」
足塚おさむ「まずここだな・・・」
足塚おさむ「次にここが・・・」
銅「その1コマ足す必要あります? すんごい些細なことっすよ」
足塚おさむ「足すのと足さないのでは どちらがいい?」
銅「そりゃ足したほうが いいかもしれないっすけど」
足塚おさむ「ではやはり足すべきだ」
銅(そんなところ誰も気にしないのに・・・ ただの当てつけだよ・・・)

〇土手
銅「くくく・・・」
銅「ははははは!!!」
銅「先生の嫉妬はひどいな!」
銅「俺の漫画を全否定しやがって!!」
銅「次こそは!」

〇古風な和室(小物無し)
銅「どっすか?」
足塚おさむ「ダメだな」

〇土手
銅「あぁあああああああああ!!!!」
銅「足塚のバカ野郎!!!!!」
銅「うじむしうんこ野郎!!!」
銅「もう二度と行くもんか!!!」
銅「バーカ! バーカ! アーホ!!」

〇古いアパート
  足塚がクソ野郎だと分かって以来、
  俺はあの家に足を運ばなくなった
銅(ここがドキワ荘・・・)
銅(漫画家の卵たちが集まる場所!)
  今度こそ
  素晴らしい同胞たちに出会える
  俺の胸は期待で張り裂けそうだった

〇大きな箪笥のある和室
銅「新作描けましたよ!」
遠藤「お、どれどれ・・・」
遠藤「おもしろいじゃないか!」
遠藤「歴史に残る作品だよ!」
銅「そっすよね!」
銅「遠藤さんのも最高っすよ!!」
銅(これだよこれ あこがれていた切磋琢磨する関係!)
銅「漫画楽しいっすね!」
  やっと同胞たちと出会えた
  そう思っていたが──
  ある日の夜中──

〇古いアパートの廊下
銅「あれ?」
銅「遠藤さん、こんな夜中にどうしたんすか?」
遠藤「あ・・・いやその・・・」
銅「歯切れ悪いっすね どうしちゃったんすか?」
遠藤「それが・・・」
遠藤「ドキワ荘を出ようと思って・・・」
銅「え!?」
銅「あんなにすごい漫画描いてるのにっすか?」
遠藤「・・・」
遠藤「本音ではそう思ってないよね?」
銅「・・・」
遠藤「なかなか連載も取れない 担当者もつかない」
遠藤「もう三十になるし、 もうこれまでなんだよ・・・」
遠藤「漫画はあきらめないといけない」
遠藤「そうじゃないと・・・」
遠藤「ずっと辛いだけだ」
銅「遠藤さん・・・」

〇土手
銅「・・・」
銅「本気で漫画を批評してくれたのは・・・」
銅「足塚先生だけだったな・・・」
銅「足塚先生はおべっかなんてないんだ」
銅「例え相手が子供でも、 本気で漫画家を目指してるなら・・・」
銅「真剣で応えてくれる」
銅「俺・・・真剣だったのかな?」
銅「先生・・・」
銅「俺、本気で漫画家になりたいよ・・・」

〇ボロい家の玄関
銅「すみませーん!」
足塚おさむ「何だ、小僧か」
銅「先生、俺・・・」
足塚おさむ「俺は忙しい」
銅「はい・・・」
足塚おさむ「原稿もってきたなら早く見せろ」
銅「先生・・・!」

〇古風な和室(小物無し)
銅「・・・」
足塚おさむ「・・・」
銅「どうでしたか?」
足塚おさむ「入りが悪い もっと興味を引く事件から入れ」
足塚おさむ「それから・・・」

〇土手
銅「・・・」
銅「相変わらずボロクソだったけど・・・」
銅「すがすがしい気持ちだ!」
銅「何年も行ってなかったのに・・・」
銅「先生はずっと待っててくれた」
銅「先生・・・」
銅「先生は当てつけで細かいことを 言っていたんじゃない」
銅「どんなに細かいことでも優劣はある」
銅「一つも妥協するな・・・ それを伝えたかったんだ」
銅(だってそうだろう・・・)
銅「先生の押し入れの中には・・・」

〇古風な和室(小物無し)
銅「・・・え?」
足塚おさむ「1000ページ分ある」
足塚おさむ「たった一つの作品の1話目のボツだ」
銅「こ・・・これだけ書き直しを?」
足塚おさむ「その・・・」
足塚おさむ「以前、お前に言い過ぎた」
足塚おさむ「俺自身が細かいタチだから それをお前にも求めてしまった」
銅「謝らないでください!」
銅「俺がここに来たのは・・・ 先生の誠意に気づいたからです」
銅「子供の俺にも手を抜かなかった」
銅「漫画に対してそこまで真摯な人・・・ 見たことないですよ」
足塚おさむ「そ・・・そうか」

〇土手
銅「きっと・・・」
銅「どっちでもいいと思ったとき、 作品から情熱は失われるんだ」
銅「俺はあの人の姿を見て、 そう思った」
明里灯(あの人ずっと独り言、 つぶやいてるなぁ)
銅「よし・・・」
銅「描くぞ!!!」
銅「そして、俺はあんたを超える!!」
銅「名前は銅だけど!!」
銅「キンピカキラキラの金になって 輝いてみせるぜ!!!」
足塚おさむ「うるせぇ!!!」
銅「先生!!」
足塚おさむ「金玉がどうしたってんだ?」
銅「いやぁ、あははは!!」
足塚おさむ「今日はよい酒日和だぞ!」
足塚おさむ「おごってやるからついてこい」
銅「ホントっすか!!!」
  おしまい

コメント

  • じいちゃんと先生にこんな過去が…幼いじいちゃんにも容赦ない先生が素敵ですね!
    そして突然の作者登場に笑いました😂モヒカン(笑)

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