累ヶ淵オーバーレイ

芝上阿南

Layer2:Scanning(脚本)

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〇汚い一人部屋
累「まさかあれだけ苦労して、拾ってきたのが エビの尻尾の情報とはね」
累「アレは機械の目から見ても、 無意味な情報だったのか」
累「そりゃ、そうだよな・・・」
累「ん?抽出結果に、すごいサイズのデータがある」
累「どれどれ・・・ 『Lynx』・・・? リンクス、って読むのかな」
累「断片的なデータばかり・・・ なんだろう、これ」
累「これ、全部暗号化されてるな。 それも高度に」
累「なんだろう、これ」
累「今日作ったクローラに、ネットワーク上のLynxデータを走査させよう」
累「これだけ断片化されてても、 数が集まれば少しは全貌が見えるだろう」

〇電脳空間
  startup ThreadThrum;
  import requests;
  search_word = 'lynx';
玉石くん「loading・・・ ・・・finished.」
  玉石くんたち、“lynx”の情報を捜して
玉石くん「また変な任務が来たな」
玉石くん「なんであれ、任務には違いないさ」
玉石くん「次の走査対象はリンクスだってよ。 サイズだけ馬鹿でかいジャンクファイルだ」
玉石くん「あんなの集めて、いったいどうしようってのかねえ」
玉石くん「さあな、少なくとも海老の尻尾よりはマシだろうさ」
玉石くん「ちげえねえ」
玉石くん「ま、さっさとやっちまおう。 何処から捜す?」
玉石くん「これまでの傾向からして、やはり情報の出入りが極端に少ない場所だろう」
玉石くん「心当たりがある、行こう」

〇荒廃した市街地
玉石くん「いつ来てもぞっとしない場所だな」
玉石くん「こんなところに価値ある情報があるとは思えねえが・・・」
玉石くん「我々は価値なき情報を走査するプログラムだ」
玉石くん「つくづく命令者サマは酔狂なことを考えるもんで・・・」
玉石くん「しかし、寂れてる場所なんてネットワーク上にいくらでもあるだろ?」
玉石くん「何故ここだと思った?」
玉石くん「この場所だが、外部からの情報の流入が15年ほど途絶えている」
玉石くん「対照的に、外部へ出す情報の量が増え続けている」
玉石くん「にもかかわらず、残っているのはデータを出した痕跡のみ」
玉石くん「ここを発信源としたデータが何なのか どこへ向かったのかは誰も知らないってわけか」
玉石くん「馬鹿でかい暗号化ジャンクファイルの発信源としては、この上なく怪しいな」
玉石くん「しかし、見ての通り荒涼としている。 大規模データが集積しているようには見えないが・・・」
玉石くん「大変です!」
玉石くん「どうした、新入り」
玉石くん「あっちのほうで、大規模なデータの移動が始まってます!!」
玉石くん「すごい数、すごい量です!! あんなの見たことありません!!」
玉石くん「ビンゴってとこだな」
玉石くん「よし、我々も向かおう」

〇骸骨
玉石くん「おいおい、こりゃどういうことだ」
玉石くん「恐らくはデータを、.lynxという独自の形式にして捨てているんだ」
玉石くん「データを捨ててる? 大規模デジタル不法投棄ってか」
玉石くん「.lynxは、高度に暗号化してまで隠したいようなデータなんだろ?」
玉石くん「何故わざわざこんな回りくどいことを・・・」
玉石くん「判らない」
玉石くん「ひとつ言えるのは、この廃棄施設の水源に、とてつもなく大きなデータを処理している領域があること」
玉石くん「そこへ行けば、.lynxデータの正体が見えてくるはず」
玉石くん「おいおい、まさかそんなキナ臭いところ、 行く気じゃないだろうな」
玉石くん「オレは御免だぜ。 そんな大規模処理領域のセキュリティ・プログラムとやりあうのは」
玉石くん「俺たちの任務はあくまで走査だ」
玉石くん「ここで捨てられてる.lynxデータを手当り次第に持ち帰るだけで、先方は満足する」
玉石くん「・・・」
玉石くん「おい、頼むぜ相棒 いったいどうしちまったってんだ」
玉石くん「──我々には、情報収集効率化のため、 好奇心がプログラムされている」
玉石くん「まさかそれが理由ってんじゃねえだろうな」
玉石くん「・・・」
玉石くん「俺たちに組み込まれた好奇心のアルゴリズムは、あくまで価値判断基準の一つに過ぎねえ」
玉石くん「危険を冒してまでこだわるもんじゃねえはずだろ!?」
玉石くん「──承知している、だが」
玉石くん「私は走査する、走査しなければならない」
玉石くん「君は廃棄データを持ち帰り、命令者に報告しろ。 私はこの先の処理領域を走査する」
玉石くん「・・・」
玉石くん「・・・ったく、しゃあねえな」
玉石くん「オイ、新入り!!」
玉石くん「はい!お呼びでしょうか!先輩」
玉石くん「オマエに重要な指令を与える」
玉石くん「このフォルダは、他にウジャウジャしてる.lynxデータとは違う」
玉石くん「一部解号されている。 詳しく分析すれば、多少は大規模処理領域の手掛かりが得られるだろう」
玉石くん「これを命令者のもとに確実に届けて欲しい」
玉石くん「はっ・・・はいっ!!」
玉石くん「それで・・・先輩たちは・・・?」
玉石くん「俺たちは、ちょっと野暮用がある」
玉石くん「暫く戻らないかもしれねえが、まあ、大丈夫だから心配するなよ」
玉石くん「では、行ってくる。 あとのことは、頼む」
玉石くん「はい!お気をつけて!!」

〇汚い一人部屋
累「まさか、玉石くんたちがここまで大量の.lynxデータを持ち帰るとはね」
累「それに、驚くべきはこれだ」
累「わざわざ、人間が解析しやすいような情報をリマインドしてくるなんて」
累「そんな機能実装したっけなあ」
累「まあいい、これでリンクスの尻尾が掴める。 何日かかっても解析してやるぞ!!」

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