#2 愛してる(脚本)
〇魔法陣で荒れた教室
腰を抜かした倫太郎の前、銃を構えた蕪木が立っている。銃口からは煙が出ている。
星野倫太郎「じゅ、銃を、撃った・・・本物・・・!」
星野倫太郎「僕、生きてる・・・」
星野倫太郎「う、うわああああ!」
倫太郎は蕪木から逃げるように陣の壁を叩くが、やはり陣からは出られなかった。
蕪木研二「ふふふ、ふははははっ!」
研究員「蕪木さん、なに考えてるんですか! もし陣を貫通してたら・・・」
蕪木研二「してない、してないよ!」
蕪木研二「見ろ。陣も無傷。この坊やも無傷。 すごい、やっぱりこの陣は本物だよ!」
星野倫太郎「・・・うう、どうして、こんなことに。 ねえ、あなた一体誰なんですか。 何か知ってるんですか!?」
蕪木は倫太郎を無視して、どこかへ電話をかけ始めた。
星野倫太郎「なんなんだ、この人・・・」
辺りを見回すと、陣の周囲では瓦礫の撤去と機材の設置が並行して行われている。
星野倫太郎「これ、現実なのかな。頭がおかしくなりそうだ・・・」
蕪木研二「それは困る。君は大事なサンプルなんだから」
星野倫太郎「え」
蕪木研二「いやー、挨拶も無しに発砲したりして悪かったね。謝るよ。 私は蕪木研二(かぶらぎけんじ)」
蕪木研二「軍の防衛監察本部特殊事案対策室室長兼緊急対策本部本部長だ。よろしくね」
星野倫太郎「えっ、防衛、監察室・・・えっと・・・」
蕪木研二「あー、肩書なんていいから。 私の仕事は一つ。 この陣がなんなのか調べることだ」
星野倫太郎「陣を調べる・・・。ここから出してくれるんですか!?」
星野倫太郎「お願いです、早く出してください。 もう頭がおかしくなりそうで・・・」
蕪木研二「だから、これから調べるって言ってんじゃん。 ちっ、頭悪い奴は苦手なんだよな・・・」
蕪木研二「ん、この本は?」
蕪木は床に捨てられた本を拾いあげる。
星野倫太郎「それ! それに書いてあった魔法陣を書いたらこんなことになったんです!」
星野倫太郎「多分そこにこの陣の消し方が・・・」
蕪木研二「いやー、関係ないと思うよ。 あっちの陣は全く発生条件違ったし」
星野倫太郎「あっち・・・?」
蕪木研二「うん、あっち。あのね、陣が出たのはね、ここだけじゃないんだ」
〇魔法陣のある研究室
研究員「【英語】 いや、しかしいきなり会話させるというのは・・・」
研究主任「【英語】 これも実験の一つだよ」
研究主任「【英語】 ・・・おい、イズ」
イズ「【英語】 は、はい・・・」
研究主任「【英語】 もう一つの陣の少年と話してみるか?」
イズ「【英語】 もう一つの陣・・・」
イズ「【英語】 わ、私以外にも、陣に捕らわれた人がいるの!?」
研究主任「【英語】 ああ。少し待ってろ、いま向こうの様子を確認する」
〇魔法陣で荒れた教室
蕪木が電話するのを、倫太郎が見ている。
蕪木研二「【英語】 えー、いきなりですか。 ええ、まあ大丈夫だとは思いますけどー」
蕪木研二「ねえ、倫太郎くん」
星野倫太郎「は、はい・・・」
蕪木研二「君、もう一つの陣の子と話したい?」
星野倫太郎「は、話せるんですか?」
蕪木研二「てか、話させろって向こうが言ってきた。アメリカの奴らはすぐ実験したがるから、困っちゃうよねー」
星野倫太郎「アメリカ? もう一つの陣はアメリカにあるんですか。もう少し詳しく──」
蕪木研二「あ、ビデオ通話来た。 はい、ごゆっくりどうぞー」
星野倫太郎「そんな、いきなり・・・!」
蕪木がスマホの画面を倫太郎に向けた。
画面にはイズが映っている。
星野倫太郎「あ、えっと、どうも・・・」
イズ「【英語】 ・・・こんにちは」
星野倫太郎「そっか、英語なんだ。どうしよ、英語は、苦手で・・・」
イズ「【英語】 私はイズ。あなたは?」
星野倫太郎「【英語】 あ、わたしの、なまえは、ほしのりんたろうです」
イズ「【英語】 倫太郎・・・」
星野倫太郎「【英語】 うん」
イズ「【英語】 あなたも、いま陣の中に?」
星野倫太郎「えーっと・・・。あれ、声が聞こえづらくて、なんて言ってるか。あはは・・・」
蕪木「英語できないだけでしょー」
星野倫太郎「もう少し近くで・・・」
星野倫太郎「あ、痛っ!」
倫太郎は画面に顔を近づけようとして、勢いよく陣におでこをぶつけた。
蕪木「はぁ、ダメダメな坊やだね」
イズ「【英語】 いまおでこをぶつけたの? それは陣の壁にぶつけたの? ねえ!」
星野倫太郎「うう、もっと英語の勉強しとくべきだった・・・」
蕪木「【英語】 代わりに答えるけど、彼は間違いなく陣の中にいるよ」
蕪木「【英語】 なんなら彼に向けて発砲してみようか?」
イズ「【英語】 私だけじゃない、私だけじゃないんだ。 ああ・・・」
イズはその場にへたり込んでしまう。
星野倫太郎「あれ、大丈夫ですか? どこか具合でも悪いんですか?」
イズ「うっ、うう・・・」
イズはボロボロと涙を流し始めた。
星野倫太郎「え! ほんとに、どうしたんですか!? えーっと、アーユー・・・」
イズ「【英語】 ずっと独りぼっちみたいな気分だったから。気が変になりそうで・・・」
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