ヴィラントピア(脚本)
〇仮想空間
ようこそ『ヴィラントピア』へ!
オンラインゲーム『ヴィラントピア』は
怪人の怪人による怪人のための世界
無法が法のアウトロー、日陰に蠢く秘密結社、闇を持って闇を正すダークヒーロー・・・とにかく怪人なら何でもよし!
カイジンスーツを身に纏い、
怪人の世界を遊び尽くせ!
──さあ!”怪人"の世界に飛び込もう!
〇ニューヨーク・タイムズスクエア
ゴーレムコマンダー「──へへ、もう終わりだな」
Guy骨「一人を大勢で・・・初心者狩りなんて最低だ!」
ゴーレムソルジャー「ハァ?何言ってんだ、ここはヴィラントピアだぜ」
ゴーレムコマンダー「ヴィランは汚くて当然!マナーなんてない! ──オラァ!」
Guy骨「わああ!」
???「──ちょーっと待ったぁ!」
〇空
???「──とうっ!」
???「フッ」
???「よいしょ」
〇ニューヨーク・タイムズスクエア
???「そこまでだ!」
???「それ以上続けるなら──ローグハンターが相手になるぜ!」
ゴーレムソルジャー「やべぇ、怪人狩りだ!」
ゴーレムソルジャー「ガチヴィランを成敗するっていうあの・・・!?」
???「そのとぉーり!」
???「最近このエリアで初心者狩りが横行してると聞き来てみれば・・・」
???「いきなり会えちゃったね」
???「『アイアンゴーレム』で統一されたメンバー・・・お前ら『ゴーレムアーミー』だな」
???「知ってんのか黄竜!」
黄竜(カイジン態)「昔、そこそこの強さとまあまあな数でチームバトルの大会をそれなりに荒らしたパーティーだ」
???「へー。ディアンも知ってた?」
ディアン「うん。一回だけヴィランNEWSに載ってて」
ディアン「ロボットシリーズの『アイアンゴーレム』は好きなカイジンスーツだし覚えてるよ」
ディアン「アグニがここ来る前の記事だから、アグニは知らないと思うけど」
アグニ(カイジン態)「おう、知らねぇ!」
アグニ(カイジン態)「ともかく──ヴィラントピアの治安を乱す野郎は、1匹残らず狩ってやるぜ!」
ゴーレムコマンダー「好き勝手言いやがって・・・ぶちのめせお前ら!」
「応!」
〇ニューヨーク・タイムズスクエア
「オラァ!」
黄竜(カイジン態)「──遅い」
「ガハッ・・・」
黄竜(カイジン態)「退屈だな」
「でりゃーっ!」
ディアン「・・・」
ディアン「終わったかな?」
ゴーレムソルジャー「攻撃が効いてねぇ!?」
ゴーレムソルジャー「こいつ硬ってぇ・・・!」
ディアン「それじゃ──お返しだよっ!」
「ぐああ!」
ディアン「さあ、どんどんやっちゃおう!」
アグニ(カイジン態)「喰らえっ!」
「ああああ!」
アグニ(カイジン態)「一丁上がり!」
ゴーレムコマンダー「──!」
〇ニューヨーク・タイムズスクエア
ゴーレムコマンダー「バカな・・・」
アグニ(カイジン態)「残りは──お前だけだっ!おりゃあ!」
黄竜(カイジン態)「ムゥン!」
ディアン「ハッ!」
ゴーレムコマンダー「──」
〇ニューヨーク・タイムズスクエア
アグニ(カイジン態)「よっしゃ!成敗!」
アグニ(カイジン態)「──大丈夫か?」
Guy骨「はい、ありがとうございました」
ディアン「災難だったね。君、初心者かい? ガチヴィランには気を付けるようにね」
Guy骨「ガチヴィラン?」
ディアン「ヴィラントピアは怪人になって遊ぶゲームなんだけど、怪人って事を違反行為の盾にするプレイヤーも多いんだ」
ディアン「そういう輩はゲームを乱す本当の悪──ガチヴィランって呼ぶのさ」
Guy骨「そうなんですね・・・あの、皆さんは一体?」
アグニ(カイジン態)「俺達は『ローグハンター』! ガチヴィランを陰ながら成敗するダークヒーローだ!」
ディアン「・・・ってのは建前で、本当はアグニがカッコつけて暴れたいだけなんだけどね」
アグニ(カイジン態)「ハハハ!ま、懲らしめてるのは本当だしいいじゃんか!」
アグニ(カイジン態)「どうだ?俺達、カッコよかったか?」
Guy骨「ええ・・・」
黄竜(カイジン態)「アグニ。運営に通報済ませたぞ」
アグニ(カイジン態)「サンキュ、黄竜。 ──じゃ、俺達はこの辺で!またな!」
Guy骨「あ・・・はい! ありがとうございました!」
〇怪しいロッジ
ローグハンター:アジト
ディアン「アグニ、ヴィランチャット見た? 昨日のこと話されてたよ」
アグニ「マジか!どれどれ・・・」
シティエリアの初心者狩り、ボコられたらしいぜ
怪人狩りだろ?
どんどんガチヴィラン◯してくれ
でも運営以外に取り締まられるのはなんかなぁ
運営だけじゃ限界あるしこういうのも必要だろ
やられる基準がわからないの怖いじゃん
誰でもやるような、ちょっとしたマナー違反でも標的にされかねない
アグニ「なんか・・・荒れてない?」
ディアン「まあ、僕らのやってる事って勝手な自治だから」
ディアン「よく思わない人もいるよ」
アグニ「そーいうもんか」
ディアン「昨日の初心者狩りは明らかにゲームに悪影響を与える行為だし、そういうのだけ慎重に選んでやっていけばいいさ」
黄竜「よう。 どうした、浮かない顔して」
ディアン「や、黄竜。実はね──」
黄竜「──そんなことか。ディアンの言う通り、ターゲットを精査していくしかないだろう。 アグニが続けたいならな」
アグニ「続けるさ!悪を裁く悪はカッケーからな!」
ディアン「アグニの原点は格好良いなんだね」
黄竜「モチベーションは大事だ。特に娯楽はな」
ディアン「黄竜は何をモチベーションにしてるの?」
黄竜「強者と闘う事だ。 いずれバトルのランキングを制覇するためにも、様々な相手と闘いたい」
黄竜「ガチヴィランには強い者も多い。 ・・・昨日はハズレだったが」
アグニ「ディアンは?」
ディアン「僕は色んなカイジンスーツを見ることかな。ガチヴィランには面白い改造してる人多いし」
ディアン「昨日のアイアンゴーレムの改造も性能は今ひとつだったけど方向性は面白かったね。防御力の高いスーツだけどそれをわざわざ捨てて」
ディアン「機動性とパワーを上げるカスタムだったよたぶん初心者狩りだけを目的としてたから防御は多少落ちても問題なくてそれよりも標的を」
ディアン「逃がさないために連携が取り易いようにしたんだろうね考案者のいやらしい性格と滲み出て凄く興味を惹かれたよあとデザインは」
「わかったわかった!もういい!」
アグニ「聞くまでもなかったな」
ディアン「ごめんごめん、ついね」
黄竜「ともかく、怪人狩りは今のとこ誰かに迷惑をかけてるわけじゃないんだ。 アグニがやりたいことを見失わなかったら大丈夫さ」
ディアン「そうだね。標的の調査はちゃんとやるし、心配ないよ」
アグニ「サンキュー! 俺、これからも頑張るぜ!」
ディアン「うん。 ──ところで、今日の活動なんだけど」
ディアン「ちょっとこのメール見てくれる?」
アグニ「差出人『ドール・レジスタンス』・・・」
黄竜「聞いたことないパーティーだな。内容は?」
ディアン「一言で言うと──挑戦状かな」
〇渋谷駅前
アグニ「場所、ここでいいのか?」
ディアン「もう一回メール確認しようか」
拝啓ローグハンター様
常日頃より皆様の活躍は聞き及んでおります
しかし、今のやり方はヌルいと言わざるを得ません
我々が正しいやり方をお見せします
自らを腑抜けと認める勇気がありましたら所定の日時・場所にてお待ち下さい
敬具
ディアン「──で、場所はここ。時間ももうすぐだね」
アグニ「何度見てもムカつくなコレ・・・」
黄竜「腹が立ちすぎて逆に笑えるぞ俺は」
ディアン「まずは会おうよ。シバくかボコるかは話した後でも遅くないし」
(一番キレてる・・・)
???「・・・」
アグニ「ん?」
黄竜「どうしたアグニ」
アグニ「あの怪人なんか見た事あるなって」
ディアン「え?ああ、あれはたぶん──」
???「・・・」
プレイヤー「わあああ!」
「──!?」
〇荒廃した街
アグニ「オイ!何やってんだお前!」
黄竜「ここは非戦闘エリア、攻撃不可のはずだぞ」
ディアン「明らかなチート行為。ガチヴィランだね」
???「君達がローグハンターか」
マグニ「初めまして。ドール・レジスタンス代表、マグニだ」
ディアン「君が?」
黄竜「今のは何のつもりだ」
マグニ「悪を為さぬ者に、悪の裁きを下す」
アグニ「やめろぉぉっ!」
アグニ(カイジン態)「ローグハンターの名の下に──成敗してやる!」
黄竜「アグニ!」
黄竜(カイジン態)「俺も加勢に──」
???「させません」
霧雨「私は霧雨。貴方の始末をさせて頂きます」
黄竜(カイジン態)「邪魔だっ!」
ディアン(僕達も攻撃はできるのか)
ディアン「黄竜、冷静に──」
ディアン「!」
???「当然、君も行かせない」
バンドウ「俺、バンドウってんだ。以後お見知り置きを」
ディアン「・・・よろしく。以後なんて──君達にはないと思うけど」
〇廃墟の倉庫
アグニ(カイジン態)「何であんな事した!」
マグニ「怪人狩りだ」
アグニ(カイジン態)「どこがだよ!俺達がやってんのと真逆だろ!」
マグニ「君はヴィラントピアで何を楽しむ?」
アグニ(カイジン態)「え?それは──好きにキャラ作ったり、友達と話したり、バトルとかイベントやったり」
マグニ「それはここでないとダメか?」
マグニ「アバターを作り、バトル等の色んな要素で遊ぶ。 そんな事はこのゲームじゃなくとも出来る」
マグニ「何故わざわざヴィラントピアを選ぶ?」
マグニ「そこに”怪人”でないとやれない事があるからじゃないか?」
アグニ(カイジン態)「ぐあっ!」
マグニ「邪悪な怪人、悲しき怪人、優しい怪人・・・」
マグニ「最近は様々な怪人の在り方が描かれているように思う。素晴らしい事だ」
マグニ「──だが」
マグニ「私は徹底的に邪悪を為すのが怪人と考える」
マグニ「ヴィラントピアを知って心が踊った。 理想の怪人になり悪逆を果たせると思った」
マグニ「だが実際はどうだ!誰も彼も行儀良く、道徳を守り──他のゲームと何も違わない!怪人になる意味がない!」
マグニ「ここに巣食う奴らは怪人の皮を被った人間だ!怪人を名乗る資格はない!」
アグニ(カイジン態)「それで皆を襲ったのか」
マグニ「そうだ!気に入らぬ者を裁く、君達の義賊行為と何が違う? 私は!私が望むヴィラントピアを作る!」
アグニ(カイジン態)「──っ」
マグニ「貴様らはヴィラントピアの癌だ。怪人でありながら秩序を尊ぶ、忌むべき存在だ」
マグニ「貴様らを絶望させこのぬるま湯に終止符を打つ!」
アグニ(カイジン態)「・・・いや」
アグニ(カイジン態)「ぬるま湯でも、お行儀良くても──怪人になる意味はある」
マグニ「何だと?」
アグニ(カイジン態)「”憧れ”だよ」
アグニ(カイジン態)「俺は、ガキの頃見たダークヒーローをとにかくカッケーと思ったから、今ここで同じ事をしてる」
アグニ(カイジン態)「ここで、憧れが叶ったんだ」
〇荒廃したショッピングモール
アグニ(カイジン態)「黄竜は強い怪人に憧れたって言ってた」
アグニ(カイジン態)「子供の頃見た怪人みたいに滅茶苦茶強くなるって」
〇荒廃した街
アグニ(カイジン態)「ディアンは怪人の多彩さに憧れてる」
アグニ(カイジン態)「もっと色んな怪人を見てみたいって」
〇廃墟の倉庫
アグニ(カイジン態)「みんな、憧れを持ってここに来た」
マグニ「──私は、邪悪に憧れた」
マグニ「貴様を倒せば、我が憧れも叶う」
アグニ(カイジン態)「──大魔王ドール」
マグニ「!」
アグニ(カイジン態)「俺がガキの頃見てたヒーロー番組のボスだ」
アグニ(カイジン態)「お前、そいつと瓜二つだよ」
アグニ(カイジン態)「邪悪じゃなくて──ただ純粋に、ドールがカッケーて憧れてそんなカイジンスーツにしたんじゃないのか?」
アグニ(カイジン態)「なんとなくそう思うんだよ。 俺も、怪人がカッケーって思い続けて今ここにいるから」
マグニ「──そうだな。確かにそうだ」
マグニ「だが、悪への憧れもしかとあるのだ」
マグニ「禁忌とされるからこそ惹かれる、抗いようのない憧憬が」
アグニ(カイジン態)「──そうか」
アグニ(カイジン態)「俺はローグハンターだ」
アグニ(カイジン態)「憧れを手にした者、悪を狩る悪として、お前を倒す。 倒してヴィラントピアを守る」
マグニ「私は大魔王だ」
マグニ「憧れを追う者、邪悪を司る者として、貴様を倒す。 倒してヴィラントピアを理想郷とする」
アグニ(カイジン態)「──オオオオオ!」
マグニ「──ガアアアア!」
〇渋谷駅前
数日後
新型カイジンスーツ、3体発表!
エイリアンシリーズ『スティングレイザー』!
インセクトシリーズ『ワスピオン』!
デビルシリーズ『フレイム』!
本日19時より、デモンストレーションバトルをライブ放送!見逃すな!
「──カッケ〜!」
アグニ「ライブ放送楽しみだな!」
マグニ「どの怪人と闘るのだろうか」
ディアン「星拳王かキャプテン・ウルフかなあ」
ディアン「どっちもバトルランキング常連で人気スーツだし、新型の相手としては申し分ないよね」
「成程〜!」
黄竜「──おい」
黄竜「俺がログインしてない数日に何が起きた」
ディアン「あっ黄竜。久しぶり」
黄竜「ディアン。俺ら、マグニを運営に突き出したよな?」
ディアン「うん、アグニと引き分けてぶっ倒れてた所を捕まえてね」
ディアン「でもアグニがアイツは更生できる!って運営に直談判して」
ディアン「僕らの活動に全面協力するって条件でBANは免れたんだ」
黄竜「ガバガバだなここの運営!」
マグニ「宜しくお願いします!」
「お願いします!」
黄竜「ええ・・・」
ディアン「あ、なんかガチヴィランっぽい報告上がってる。この近くだよ」
アグニ「うし!それじゃあ──」
黄竜「・・・全く」
アグニ(カイジン態)「──行くぜ!」
そのゲームに何を求めるかの見解の違いでイザコザが起きるのは仕方ないですね。ヴィラントピアではちょっとしたイザコザも怪人同士の戦いになってしまうので良くも悪くも迫力があるなあ。マグニの「お前たちは怪人の皮を被った人間だ」ってセリフに笑ってしまった。そりゃそーだろ、と。このゲーム、最終的にはプレイヤーも淘汰されて落ち着くべき形に落ち着いて面白くなりそう。
好き勝手やっていいよっていうのが、個人の解釈によってその範疇が異なるからこういういざこざって起こるよなって、読んでて納得。自警も度を過ぎると、危険だしなー。んー、ダークヒーローものって妙に考えさせられることがある。
ヴィラントピア…運営がどういう目的で作ったゲームなんだろうと…、怪人同士で戦うため…?
人間実名性がなくなると好き勝手にやる人もいればルールを押し付ける人もいて…中々人間性が垣間見える面白そうなゲームだなあと思いました。