《エデン》

草加奈呼

エピソード23 兄弟の再会(脚本)

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〇薄暗い谷底
  砂漠下の冷たい鍾乳洞の中で、一人の男の足音が響く。
  モステアから伸びていた光の道しるべを
  逸早く見つけ出し、
  そして偶然にもモステアより鍾乳洞に近い土地にいた男、レグルスだった。
  今回の事件で、二人は久々に対面することになる。
レグルス(ものすごい瘴気だ・・・ 私一人で来て正解だった・・・)
レグルス(他の仲間が入れるように、 この瘴気を取り払っておくか・・・)

〇荒野
  数分前──
  ジェストール領内
  
  ゴルド砂漠付近
ジン「ようやくカートが見つかったかぁ。 これで、俺たちも助かるんだな!」
エクスト「ジン・・・。こういう事は、 お互いの気持ちがないと・・・」
ジン「わーってるよ。 でも、こっちの命がかかってんだぞ?」
レスト(わたし・・・伝えた・・・ あの子に・・・でも・・・)
レスト(わからない・・・)
レイノス「・・・・・・・・・・・・」
ジェルバーン「まあ、俺としては? 女の子が傷つくのは見たくないかなー」
メイ「はあ・・・ あんたは、相変わらずね・・・」
ウィル「それで、どうするの? みんなで乗り込むの?」
レグルス「・・・いや」
レグルス「ここはまず、カートの兄である 私に任せてもらいたい」
ジン「そりゃないぜ、レグルス様!」
ジン「俺はカートのやつを一度ブン殴らないと 気が済まないってのに!」
レグルス「『まずは』と言っただろう。 もちろん、君たちにも後から来てもらう」
ジン「はぁ・・・わかったよ・・・」
レグルス「それから、もしアイ=リーンの子孫が 来たら、丁重に通してやってくれ」
エクスト「足止めしなくていいんですか?」
レグルス「ここへ来て、我々が争う理由はない」
エクスト「たしかに・・・」
メイ「レグルス様、あたしも行っちゃ ダメですか? 助けになりたいんです」
レグルス「この先、何が起こるかわからない」
レグルス「だから、君たちには万全の状態で いてもらいたいんだ」
レグルス「まずは私が先陣を切り、 大丈夫なようだったら来てもらおう」
メイ「は、はい・・・」
ウィル(うわぁ、普段あんな顔しないくせに。 絶対、あの笑顔に騙されてる・・・)

〇薄暗い谷底
  長く暗い通路を進んでいくと、少し先に
  二つの微かな光が見えた。
  なにかと目を凝らしてみると、その周りにぼんやりと人影が見えた。
  ・・・いや、
  それは“人”のものではなかった。
  人の姿をしてはいるが、
  カートを守る“魔”の者────
  ティサであった。
ティサ「・・・・・・誰ですの?」
レグルス「カートはどこだ?」
ティサ「アイ=リーンの子孫・・・?」
レグルス「違う。私は・・・」
レグルス「・・・・・・!!」
ティサ「アイ=リーンの子孫でない者は、 即刻立ち去りなさい!!」
レグルス(カートの守護者か・・・)
レグルス(おそらく、アイ=リーンの子孫以外は 通すなと命令されている・・・)
レグルス(通常なら、 この者にアイ=リーンの子孫を 始末するように命令するはず)
レグルス(カート・・・おまえはこの運命を 受け入れているのか・・・?)
ティサ「忠告を無視するなら、攻撃を続けますわ!」
  空を斬る音を立ててウィップの先はレグルスに向かっていく。
  しかし、レグルスはいとも簡単に攻撃をかわした。
  向かってくる方向は、音でわかる。
  薄暗さは、闇の使い手であるレグルスにとっては何の意味も持たないが、攻撃の軌道が見えていたわけではない。
  わずかな空気の振動、そしてレグルスの闇の能力である『予知』で避けたのだ。
ティサ「なっ・・・、私の攻撃を・・・!」
レグルス「今一度問う。 カートはどこだ?」
ティサ「くっ・・・・・・!!」
レグルス「ここを通すなと カートに命令されているのか?」
  ティサはもう一度攻撃を仕掛けようとしたが、すでに懐に入り込まれていた。
ティサ「・・・っ!?」
  レグルスの姿を見た途端、一瞬隙を見せてしまった。
  あまりにも、その姿がカートに似すぎていたからだ。
  その隙にレグルスは、ティサの横を通り抜け、奥へと歩いて行った。
ティサ「ま・・・待って!!」
ティサ「カート様を・・・ どうするつもりですの・・・?」
レグルス「安心しろ、殺しはしない。 ・・・そうなることは、我々には・・・」
レグルス「・・・いや、《エデン》には不都合だ」
  ティサは、その言葉を信用して後ろ姿を
  見送るしかなかった。

〇洞窟の深部
  レグルスが、カートのいるであろう場所へ
  辿り着くのに数分はかかった。
  長い通路の先に、開けた空間があった。
  仄かにランタンの光が通路へ漏れていた。
  おそらく、ここが終点だろうと、レグルスは臆せず中へ入った。
???「・・・ティサ?」
  響く足音を聞いて、カートは苦しそうに
  顔を上げた。
  目の前に立つ人物を見て、カートは一瞬、
  鏡でも見ているような感覚に陥った。
  だが目の前の自分は、膝をつきカートの
  顎を片手で持ち上げた。
  夢でも見ているのだろうか?
  カートはそう思ったが、次の瞬間、はっと気づく。
カート「まさか・・・兄さん!?」
レグルス「無様な姿だな、カート」
カート「・・・・・・・・・・・・」
レグルス「魔術の力を手に入れて、 一時の優越感を得た気分はどうだ?」
カート「優越感など・・・」
カート「優越感など、持った事はない・・・!」
レグルス「フン、どうだか・・・」
レグルス「それにしても、今までどうやって魔術の 力を抑えていた?」
レグルス「疾うに魔術に支配されていても おかしくないだろう?」
カート「それは・・・」
カート「兄さんこそ、どうしてここがわかった?」
レグルス「ふっ・・・はぐらかすか。 まあ、いいだろう」
レグルス「アイ=リーンの子孫の動向を探っていた。 その上で、モステアの王女と接触した」
カート「風華に・・・!?」
レグルス「風麗によく似ていた・・・」
レグルス「それはさておき、彼女に接触した おかげで、アイ=リーンの子孫の動向を より深く知る事ができた」
レグルス「そこへ、先日の一筋の光だ。おそらく、 神具が集まり宝玉が光ったのだろう」
レグルス「カート、その隠しきれていない光は、 宝玉のものではないか?」
カート「・・・・・・!!」
レグルス「アイ=リーンの子孫でないおまえが、 なぜ宝玉を持っている?」
レグルス「当ててやろう・・・」
レグルス「その宝玉が、魔術の力を抑えていた!」
カート「・・・・・・」
カート「・・・その通りだよ、兄さん・・・」
レグルス「おまえがしでかした事で、他のセ=シルの 子孫たちは命の危機に晒されている」
レグルス「それは、わかっているな?」
カート「・・・俺に、何をしろと? 謝罪でも求めるのか・・・?」
レグルス「謝罪したければするがいい。 私は、私のやるべきことをさせてもらう」
カート「兄さんの、やるべきこと・・・?」
レグルス「ウィル、そこにいるだろう」
ウィル「あれぇ? こっそり来たのに、 バレちゃった♪」
レグルス「カート、彼はウィル。 セ=シルの子孫・・・我々の仲間だ」
レグルス「ウィルのことを、 よく覚えておいてほしい」
カート「覚えて・・・? それは、一体どういう意味・・・?」
ウィル「わ〜。本当に、レグルスそっくりだね! よろしくね、カート!」
カート「よ、よろしく・・・?」
レグルス「では、アイ=リーンの子孫が来るまで、 待たせてもらおう」
  レグルスとウィルは、一体何をしに来たのか・・・。カートは不思議に思った。

次のエピソード:エピソード24 魔術解放

コメント

  • いよいよ物語が核心に迫ってきましたね。カートの真意や如何に!?

  • やはりレグルスが先でしたね。
    うーん、ウィルをどう使うのか……
    彼は何か特別能力あったかなぁ、見た目が衝撃すぎてなんも覚えてない😅

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