エピソード1(脚本)
〇黒
これはテストです。
この世界全てが、本番前のテストです。
なのでこれは、テスト用の私です。
本番の私の動作確認のために作られた、仮の私です。
テスト用の私は、本番でのあらゆる可能性に備えて、あらゆる動作確認をする義務があります。
あらゆる感情を体験します。
あらゆるものを食べます。
あらゆる人と話します。
これはテストです。
この世界全てが、本番前のテストです。
なのでこれはテスト用の他人です。
テスト用の他人なので、生きています。
あらゆる感情を私に見せます。
あらゆる関係を私と築きます。
他人。家族。友達。恋人。仲間。師弟。主従。好敵手。共犯。相棒。敵対。他人。
あらゆる関係を私と築きます。あらゆる関係を私と築きます。あらゆる関係を私と築きます。あらゆる関係を私と築きます。あらゆる
。
まだ、試していない行為があります。
まだ、築いていない関係があります。
私は他人を殺したことがありません。
私は他人に、一方的な憎悪を抱かれたことがありません。
これはテストです。
あらゆる動作確認をする義務があります。
実行。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・?
他人が活動を停止したので、他人に憎悪を抱かれることが出来ませんでした。
エラー。
テストを終了してリセットしてください。
テストを終了してリセットしてください。テストを終了してリセットしてください。
これはテストです。
この世界全てが、本番前のテストです。
なので私が私を終了させても、本番での私に支障はありません。
テストを終了します。
〇公園のベンチ
今朝未明、✕✕市の公園にて、小学生の男女が首から血を流して倒れているところを保護されました。
男の子は病院に運ばれましたが間もなく死亡。女の子は一命を取り留めましたが意識不明の重体です。
周囲への聞き込みにて、二人が「テストをしに行く」と言い残して自宅に帰らなくなったことが判明しています。
警察は女の子が何らかの事情を知っていると見て意識の回復を待ちつつ、事件前後の詳しい経緯を調査中です。
人生にはテストもリハーサルもリセットボタンも無いんだという現実を逆手にとった衝撃の問題作ですね。素晴らしい。シルエットのみの登場人物や無人のベンチといった洗練された絵作りにも作者さんの卓越したセンスを感じました。
何これ怖ぁ
面白い切り口ですね!TapNovel の機能テストと思いきや、この世界における存在のテストとは!平板で無機質な語調がフィットしていますね!