竜と夜明けの彼方まで

白星ナガレ

ep.8 本当の君(脚本)

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〇城の客室
ラノ「クレムの正体って・・・?」
ティカ「・・・クレムはお前のことを信用している」
ティカ「だから言うが、奴は帝国出身なんだ」
ラノ「クレムは、確か・・・ この王国の偉い人なんだよね?」
ラノ「帝国出身って、あんまりよくないんじゃ?」
ティカ「まあ、そうだな あんまりどころか、すごくよくない」
ティカ「国民にバレれば、ただではいられんな」
ティカ「で、帝国出身故──奴は魔法が使える」
ラノ「やっぱり、そうなんだ・・・」
ティカ「やっぱり? 知っていたのか?」
ラノ「僕を助けてくれたとき、使ってたんだ」
ティカ「──お前を助けるために魔法を・・・」
ティカ「ラノ、お前クレムから相当気に入られてるな 私からすれば記憶喪失の不審者だけどな」
ティカ「で、本題に入るが──お前が命からがら 採ってきた薬草は魔力を吸う効果がある」
ティカ「クレムがやられた毒は魔法によるものだ つまり薬草のおかげでその毒は消えた」
ティカ「が──あれは効果が強すぎる」
ティカ「おそらくクレムの潜在的な魔力まで 吸ってしまったことだろう・・・」
ラノ「魔力・・・?」
ティカ「魔法を扱うのに必要な第六感だ そんなことまで忘れているのか?」
ティカ「よければ医師として脳を診てやろう タダ故、予後の保証はしないが・・・」
ラノ「え、遠慮しとくよ」
ティカ「お前はクレムと帝国に行く予定だと 奴から聞いたが・・・大丈夫か?」
ラノ「どういう意味?」
ティカ「魔力を失ったクレムなんて ヘラヘラしてるだけのポンコツ──」
クレム「なんか・・・俺の悪口言ってませんでした?」
ティカ「ハハ、まさか! かわいい患者の悪口など言わないさ・・・」
ラノ「クレム!」
ラノ「もう動いて大丈夫なの?」
クレム「ラノさんのおかげで、この通りです!」
クレム「本当にありがとうございました! ・・・それと」
クレム「・・・ごめんなさい 危険な目に遭わせてしまって・・・」
ラノ「そんな・・・僕の方こそ謝りたいんだ クレムには守られてばかりで──」
ティカ「えー、悪いが私は退散するよ 興味の沸かない会話が始まりそうだからな」
ティカ「君たち二人共、まだまだ本調子じゃない くれぐれも無理せず存分に話したまえ」
ティカ「じゃあな」
「・・・・・・・・・」
ラノ「えーと、とにかく──本当にごめん」
ラノ「でも、もう助けられるだけじゃなくて 戦うことに決めたんだ」
ラノ「もう僕のためにクレムが傷つかないように 隣に立って戦うよ」
ラノ(僕にはルディがついてるしね)
クレム「ラノさん・・・それって──」
ラノ「あ、この剣は、えーと、王様に──」
クレム「・・・その剣を扱えたんですか?」
ラノ「え、うん、一応はね ・・・ちょっと、制御しきれなかったけど」
クレム「剣を振るえたんですか?」
ラノ「うん、できたけど・・・」
ラノ(そういえばチューニャが剣を使おうとしたら 剣に弾かれたみたいで使えなかったな・・・)
クレム「なるほど・・・どこからそれを?」
ラノ「城の地下で迷ってたらルディの声が 聞こえて──」
ラノ「声の元を探したら この剣にたどり着いたんだ」
ラノ「ルディが剣を通して教えてくれたけど、 この剣はルディの半身だとか・・・?」
クレム「ルディさんの半身・・・」
ラノ「僕もよくわからないんだけどね・・・」
クレム「・・・そうですか」
クレム「それは空の剣と呼ばれ、古くから 城に眠っていた特別な品です」
クレム「・・・その剣を使えるということは・・・ ラノさん、君は一体──」
ラノ「今の音は・・・?」
クレム「ああ、そうだ 今日は・・・」
クレム「ラノさん、ちょっと外に出ましょう! 先に着替えて待ってますね」
ラノ「・・・なんなんだ、一体・・・?」

〇綺麗な港町
ラノ(部屋にあった服を適当に着ちゃったけど よかったかな・・・)
クレム「ラノさん! お待たせしました」
ラノ「あ、クレム、ごめん 僕だけ楽そうな格好で・・・」
クレム「いえ、俺こそ暑苦しい格好ですみません 一応、城に仕える身なので・・・」
ラノ「そういえば、さっきの音って一体──」
クレム「あれが、音の正体ですよ」

〇花火

〇綺麗な港町
ラノ「すごい・・・あれも魔法?」
クレム「・・・いえ、あれは花火です 人の手で作られたものですよ」
ラノ「あ──そっか、王国では 魔法を使わないんだよね・・・」
クレム「ラノさん、どこでそれを・・・」
ラノ「チューニャから聞いたよ それと、ティカからも・・・」
ラノ「クレム、君・・・帝国生まれなんでしょ?」
ラノ「僕を助けたのも、魔法を使って・・・」
クレム「──その通りです」
クレム「他の人には秘密にしてほしいです 特別なときにしか魔法は使いませんから」
クレム「・・・ラノさんも、教えてくれますか? あなたが、どこで生まれたのか──」
ラノ「僕は──」
ラノ「・・・僕は、記憶がないんだ」
ラノ「一番古い記憶は歳が7 つくらいの頃かな ・・・目が覚めたら洞窟だった」
ラノ「雲の国、アークトピア ──親もいなくて、何も知らない・・・」
ラノ「僕は、そこで生きるしかなかったんだ」
クレム「記憶が・・・そうだったんですね」
ラノ「僕たち、お互いのことまだ何も知らないね」
ラノ「でもクレムが、空から来た怪しい奴を 助けてくれるような人ってことは知ってる」
ラノ「自分が傷ついてまで、怪しい奴を 助けてくれる人ってことも知ってる」
クレム「・・・そんなできた人間じゃないです、俺」
クレム「俺も、ラノさんのこと知ってますよ」
クレム「空から来て、竜と友だちで、その友のため 知らない地で頑張っていること」
クレム「俺のために危険を冒して 薬草を採ってきてくれたこと・・・」
クレム「俺は、君を助けたいんです」
クレム「ラノさんがよければ、 俺も君と一緒に行かせてください」
ラノ「もちろん── むしろ僕から頼みたいくらいだよ」

〇花火
ラノ「これからもよろしくね、クレム」
クレム「よろしくお願いします、ラノさん」

〇綺麗な港町
ラノ「それにしてもすごいね、花火」
クレム「・・・あれは人類の叡智の象徴なんです」
クレム「王国は──非現実的なことがらに対して 否定的な国柄なんですよ」
クレム「人の手で生み出した科学を信じている、 娯楽である花火すらも作る余裕がある・・・」
クレム「そんなアピールのひとつです ・・・平和の祭典の前夜祭においてね」
ラノ「平和の祭典?」
クレム「終戦から十年──その記念の祭典です」
ラノ「それって、帝国との・・・」
クレム「はい・・・もう二度と、争いなんて 生むべきじゃない──」
クレム「・・・なんてね、できる範囲で 平和の道を築いていきたいですよね」
ラノ「・・・そうだね」
ラノ(ねえクレム、僕はあの言葉を どうしても信じられないんだ・・・)

〇草原の道
チューニャ「クレム様はね、死にたいんだよ」

〇綺麗な港町
ラノ(君は死にたいの? ──なんて、聞けるわけないじゃないか)
クレム「どうかしました?」
ラノ「ううん、何でもないよ・・・ もっと色々知りたいなって思っただけ」
クレム「そうですね、俺ももっと話したいですよ」
クレム「ラノさんが知ってること、 全部聞きたいくらいです」
クレム「・・・ラノさん、 古代文明キクロスって知ってます?」
ラノ「・・・キクロス・・・」
ラノ「知らない・・・」
ラノ「けど、聞き覚えが──」
ラノ(──頭痛がする・・・)
ラノ(頭が──割れそうだ・・・!)
クレム「知らないのなら・・・いいんです すみません、変なことを聞いて」
ラノ「い、いや・・・」
クレム「古代文明は、このリカステア王国の 成り立ちにも関係あるんですよ」
クレム「また明日にでも、ゆっくり話しましょう」
クレム「それじゃあ、また明日・・・ おやすみなさい、ラノさん」
ラノ「うん、おやすみ」
ラノ「キクロス・・・ とても大切なことだったような・・・」

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