変わらぬ思い…

神社巡り

エピソード1(脚本)

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〇ネオン街
  私は伝説の怪人・・・
  世界を救った英雄と謳われている・・・
  しかし何て事は無い・・・
  ただ、そこに偶然居合わせただけだ・・・
  私には何の力も無い・・・
良子「ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ・・・」
おっさん「あっ!!」
おっさん「ありがたや・・・ありがたや・・・」
  道行く人は私の姿を見ただけで歓喜し涙を流す・・・
  正直に言ってかなりウザい・・・私は普通に生きていきたいだけなのだから・・・
香織「あっ、先輩また道に迷ってたんですか?」
良子「えっ?迷ってなんかないわよ・・・だってこの先の居酒屋でしょ?」
香織「そっちじゃないですよ・・・そそっかしいんだから・・・ケタケタ・・・」
  この娘の名前は香織・・・今日は月に1度の女子会に来ていた・・・
香織「こっちですよ!! 行きましょう・・・」

〇大衆居酒屋
良子「じゃあ、盛り上がってきたので隠し芸やります・・・」
良子「ゾンビのモノマネ・・・」
良子「うごぉ・・・うううう・・・うううう・・・」
香織「・・・・・・・・・・・・」
  モノマネは予想以上にすべった・・・
良子「しかし2人きりだと盛り上がらないわね・・・」
香織「そんなことないです!! 楽しいですよ・・・先輩と一緒だもの・・・」
良子「ちょっとお手洗いに行ってくるわ・・・」
  私には友達が少ない・・・世間から崇め奉られているので遠回しに距離を置かれる・・・
  しかし私の事を慕ってくれる香織がいればそれで良かった・・・この娘は私の内面を見てくれている・・・
成金A「やあ、お姉さん・・・ 僕と遊びに行かない・・・」
香織「ごめんなさい・・・ 私、連れと一緒なんです・・・」
成金A「そんなのほっといてさぁ・・・僕、お金持ってるよ・・・」
香織「ほっといてなんか行けませんよ!!」
成金A「いいじゃん!! 行こうよぉ・・・」
???「ちょっと何をしていらっしゃるの!!」
成金A「うわぁ・・・伝説の怪人、アマゾネスだ・・・」
  世間では何故だか私の事をアマゾネスと呼んでいる・・・しかし私は良子だ!!
良子「皆が楽しんでいる公共の場で迷惑を考えなさい!!」
成金A「ああ・・・アマゾネス様・・・ありがたや・・・ありがたや・・・」
  男はその場に這いつくばった・・・
  感極まってあと2,3時間はこのまま動くことはないだろう・・・
香織「先輩、そろそろ場所を変えましょうよ・・・」
良子「そ、そうね・・・」

〇ネオン街
良子「香織と出会えて本当に良かったわ・・・あなたがいなければ私はずっとボッチよ・・・」
香織「そんな・・・こっちこそです・・・ 先輩には仕事でも私生活でもお世話になっていますから・・・」
  私はこれでも仕事をしいている・・・目立つ事は避けたかったので裏方の職業をしていた・・・
???「良子さんですね・・・」
良子「あなたは・・・?」
イエローカンパニー社員A「わたくしイエローカンパニーのモノです・・・今日はあなたを私どもの会社にスカウトにやってきました・・・」
良子「スカウト・・・? でも私、職場を変えるつもりは無くてよ・・・」
イエローカンパニー社員A「あ・・・そうですか・・・」
???「おい!話を聞いたらやられるぞ!!」
イエローカンパニー社員A「あっ・・・ついうっかり・・・」
イエローカンパニー社員B「気をつけろよ!!」
良子「???」
イエローカンパニー社員B「わが社に来て頂けたら今以上の報酬をご用意させて頂きます、わが社は社員設備も充実しておりきっと良子さんも満足されるでしょう」
イエローカンパニー社員B「何よりあなたの待遇は補償いたします、ビジネスとしての実績は他より劣っていますが・・・ペラペラペラペラペラペラペラ・・・」
  しかし良くしゃべる男だ・・・私の質問やら返答を遮るように息次ぐ間もなく話続けている・・・
良子「私、他に行くつもりはありませんので!!」
イエローカンパニー社員B「は、はあ・・・そうですか・・・」
イエローカンパニー社員A「あっ・・・待って下さい・・・」
香織「あれはいったい何だったんでしょうね・・・」
良子「本当・・・何だったのかしら・・・」

〇小さい会議室
良子「良いですか・・・今回の企画で重要なのは高齢の身寄りのないお年寄りや、両親のいない幼い子供達を救うことにあります・・・」
良子「わが社には何のメリットも無いと思われがちですが、立派な社会貢献です・・・」
良子「いずれはわが社にとって大きな利益になる事は間違いないのです・・・」
社長「う、うむ・・・わかった・・・確かにそうだ・・・」
社長「今回の件は君に一任しよう・・・」
良子「ありがとうございます!!」
香織「先輩、上手く行きそうですね!!」
良子「そうね・・・」
  私の企画がボツにされることは無い・・・どんなに無謀と思われる企画で何故かすんなりと通る・・・
  余りにも余裕なので少し不気味さを感じていた・・・社長は私の事が好きなのではないだろうか・・・?
良子「罪な私だわぁ・・・」

〇公園のベンチ
良子「あ~あ・・・今日も一日中外回りで疲れたわ・・・」
良子「生きて行くって本当に大変ね・・・」
香織「先輩~!!先輩~!!」
良子「そんなに慌ててどうしたのよ・・・?」
香織「なんか凄い事になってますよ・・・!!」
香織「あれを見て下さい!!」
  香織は上空を指さした・・・

〇UFOの飛ぶ空
エイリアンA「私たちはこの惑星を占拠する・・・ 先住民のお前たちは必要がないので全て排除する・・・」
エイリアンA「猶予は与えるがこの惑星にお前たちの居場所は無い・・・」
  突如として現れたエイリアンは理不尽な要求を人類に突き付けた・・・
  それを身近で聞いた地上の民衆は「この世のおわりだぁー」と言って右往左往している・・・
  政府に対応を任せるしかないが、そんな猶予はないだろう・・・
  私はその場にあった石を投げてエイリアンの気を引いた・・・
  またしても人類ピンチの場に私は居合わせてしまった・・・何もできない私だが見て見ぬふりは出来なかった・・・
エイリアンA「ん?(あれは怪人・・・何でこんな惑星に・・・)」
  私はエイリアンに向かってこっちに来るように指示した・・・

〇公園のベンチ
  エイリアンは私の存在に気が付くとゆっくりと私の元へと降りてきた・・・
エイリアンA「お前は何者だ・・・?何で怪人がここに居る!?」
良子「あのねぇ・・・大人しく話を聞いてたけど何なの占拠って!?」
エイリアンA「お前たちの星を占拠して私たちがここに住むのだよ・・・」
良子「随分なご都合主義ね!! 言ってて恥ずかしくは無いの!?」
エイリアンA「ま、まあ・・・恥ずかしいかな・・・(ん?何か納得してしまう・・・)」
良子「大体、突然押しかけてきて元々いた人間を排除するなんて迷惑な話よね!?」
エイリアンA「確かに・・・元々の住民は迷惑だな・・・」
良子「あなた方がこちらの立場ならどうするの!? こんな理不尽な要求受ける訳無いわよね!?」
エイリアンA「そうだ!受ける訳がない!」
良子「そんな子供でも理解できる様なことを、あなた達はやろうとしてるのよ!! 恥を知りなさい!!」
エイリアンA「恥ずかしい事をしてしまいました・・・すみません・・・」
良子「わかったらとっとと帰りなさい・・・」
エイリアンA「は、はい・・・」
  エイリアンは帰っていった・・・
香織「やりましたね!先輩・・・」
香織「いつもありがとうございます!! さすがです!!」
良子「???」
良子「何の話? 私はエイリアンを説得して帰って貰っただけなんですけど・・・」
香織「先輩、気が付いてないんですか? 説得する力が尋常じゃないの・・・?」
良子「ん? 説得する力が尋常じゃない?」
  確かに私は人から否定された事など一度も無い・・・しかし周りもそんなものだと思っていたし深く考えた事は無かった・・・
  しかし私の説得する能力が人より高いというのであれば納得する部分は多々ある・・・企画がボツにならなかったのもその一つ・・・
  考えてみれば前回の世界滅亡と言われた時も・・・災害級のドラゴンを瞬く間に説得して帰した・・・
  私は何の能力も無いと思っていたが・・・これで世界を救っていたのだろうか・・・?
良子「・・・・・・・・・・・・」

〇オフィスのフロア
  私は確かに伝説の怪人だった・・・
良子「さあ、今日も張り切っていくわよ! 資料は持った・・・?」
香織「はい! 大丈夫です!!」
  だからと言って何も変わった所は無い・・・何時もの様に頑張って自分のできる事をクリアする・・・
  世界を救った英雄と崇め奉られようが・・・怪人の格好で罵られようが・・・私は私だ・・・
  いつもと変わらぬ笑顔で接してくれる香織がそばにいる・・・
  私は変わらず自分の道を歩み続ける・・・
  私の思いはいつだって変わらないのだから・・・
  END

コメント

  • まさか良子の持つ地球を救う能力が説得「力」だったなんて!ひとくちに「力」といってもいろんな種類がありますもんね〜。見た目が怪人であることと一切関係ない「力」というところがまたいい。後輩の香織だけは良子の説得をあっさり跳ね返しそうですね。

  • いいですねー、社会の中に自然と溶け込む良子さん。彼女のブレない筋の通った言動こそが、その説得力に厚みを持たせているのでしょうね。オンリーワンの異能の怪人さんですね!

  • ただ淡々と、当たり前のこととして人に諭し、結果的にそれで人が救われても、当たり前のこととして驕らず、己の道を進む。
    カッコいいです、良子さん!

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