エピソード4.早苗と魔法のクッキー(脚本)
〇高級マンションの一室
清く正しく美しく
それが我が如月家に伝わる教訓だ
その言葉を胸に
今日も勉学に励みなさい
如月 早苗「はい、お父様」
〇役場の会議室
如月 早苗「以上でクラス委員会議を終了します。 クラス委員の皆様お疲れ様でした」
ガヤガヤガヤ・・・・・・
如月 早苗「あっ、朝平(あさひら)さん。 ちょっと待って!!」
朝平 真実「何かしら?私の方は貴女に待たされる理由なんてないのだけれども?」
如月 早苗「そ、そんな冷たい事を言わずにさ。 ほら、同じクラス委員長同士じゃない?」
朝平 真実「同じクラス委員なら、今私のクラスがどういう状況か分かってくれるわよね?」
如月 早苗「あぁ、野上さんの所、大変よね。 野上さんは学校に来ているの?」
朝平 真実「貴女馬鹿なの?家が火事になったのよ? 昨日今日で学校に来れる訳ないでしょ」
如月 早苗「でも、連絡ぐらいは来てるでしょ?」
朝平 真実「こんな大変な時に連絡が来られても対応に困るわ。落ち着いてから関係者各位に連絡するのが普通でしょ?」
如月 早苗「そ、それは、そうだけど・・・・・・」
朝平 真実「貴女がウチの野上に恋人の伊集院君を盗られて動向を知りたい気持ちは否定しないけど、」
朝平 真実「少しは周りを見て行動する事を覚えなさい」
朝平 真実「それじゃあ私はこれで失礼するわね。 さようなら、如月さん」
如月 早苗「・・・・・・そんなつもりで聞いた訳じゃないのに」
〇華やかな寮
如月 早苗「後片付けをしていたら遅くなっちゃった」
生徒A「あーあ。受験勉強かったるいなぁ〜」
生徒B「だよな〜。どっかに何でも願い事が叶う道具が転がってねぇかな〜」
生徒A「アハハ〜その発想マジウケる〜♪そんな都合の良い道具が転がってる訳ないじゃん!」
生徒B「いや、でも、最近ネットで話題になってんじゃん?なんでも願い事が叶うクッキーってやつ」
生徒A「はいはい。そんな眉唾物に頼る位なら、神頼みをする方がまだマシだわ」
如月 早苗「神頼みかぁ・・・・・・」
〇神社の本殿
如月 早苗「神社にお参りなんて久し振りね。 はぁ、気持ちがギュッと引き締まるわね」
立木 望「おや。参拝客の方ですカ?」
如月 早苗「きゃっ!!」
如月 早苗(何この人。いつの間に私の後ろにいたの!? 気配を察するどころか足音も聞こえなかったんだけど!?)
立木 望「驚かせてすいませン。 僕はこの神社の関係者でス」
如月 早苗「かっ、関係者の方でしたか。失礼しました」
如月 早苗(関係者って事は宮司さん? この不気味な感じ、とてもじゃないけど、神職に就いているなんて信じられないわ)
立木 望「ンフフ」
如月 早苗「ど、どうかされましたか!?」
立木 望「いエ、神様に愛されていそうな見目麗しいお嬢さんでも、悩みを解消する為に神社へ来るのだなぁと思いましテ・・・・・・」
如月 早苗「ど、どうしてそれを!?」
立木 望「おヤ、当たっていましたカ。 当てずっぽうだったのですガ・・・・・・」
如月 早苗(なんて失礼な人なの!?これ以上会話すると余計なストレスを抱えてしまいそうだわ!?)
立木 望「おや、怒ってしまいましたカ。仕方がありませんネ。失礼な事をしたのは僕の方ですシ・・・・・・」
立木 望「お近付きの印に宜しければコチラを差し上げまス」
如月 早苗「さっきから貴方は一体何を考えているんですか!?人の神経を逆撫でする言葉を吐いたかと思えば、お菓子を渡すなど・・・・・・」
如月 早苗「一体どんな育ちを受けたのですか!?」
立木 望「フフッ、とても清く正しく美しくと教え込まれた家で育った人とは思えない発言ダ」
如月 早苗「貴方、何故我が家の家訓をご存知で!?」
立木 望「ンフフ、また当たっちゃっタ」
如月 早苗「不愉快だわ!!失礼します!!」
立木 望「いいよ。君はまた必ず僕の所に来てくれル」
立木 望「種は既に芽を出してきているからネ 逃がさないヨ。迷える子羊さン?」
〇高級マンションの一室
如月 早苗「ただいま戻りましたわ」
如月 才「早苗、今何時だと思っている」
如月 早苗「お父様、申し訳ございません」
如月 才「またあの伊集院とかいうパリピと夜の街を繰り出していたのか?」
如月 早苗「彼はそんな人ではありません!」
如月 早苗「それに私は、もう彼とはお別れしました」
如月 才「そうか、それは良い事だ。 恋は我が家の家訓である清く正しく美しくと反対を行く悪き行為だ」
如月 早苗「・・・・・・」
如月 才「早苗、お前は美しく賢い娘だ。 時期が来たら、お前に相応しい婿を用意してやろう」
如月 才「それまでは清く正しく美しくありなさい」
如月 早苗「はい、お父様・・・・・・」
〇教室
翌日
担任「出席を取るぞー」
担任「東、宇崎、江藤、緒方・・・・・・」
担任「二宮、野上・・・・・・」
担任「おっと、野上は暫く休むと連絡が来ていたな」
担任「朝平、すまんが野上が登校してきたら、勉強の面倒を見てやってくれんか?」
朝平 真実「構いませんよ。元よりそのつもりでしたし、今までと変わりがありませんから」
担任「いやぁ、助かるよ!」
担任「それじゃあ今日の予定じゃが、そろそろみんな大好き文化祭の開催日が迫ってきておる」
担任「ワシとしてはメイド喫茶かバニーガールカフェを希望したいところじゃが、PTAがうるさいからのう」
担任「まぁ、クラスのみんなで話し合って無難な出し物でまとめておいてくれや」
朝平 真実「バニーガールカフェ・・・・・・」
朝平 真実「男女皆でバニーガールのコスプレするの、良いわね。なんとしてもこの企画を押し通したいところだわ」
〇学校の廊下
如月 早苗「野上さん、今日も来ていないのね」
押尾 歩夢「如月さん、どうしたの? 早くしないと次の授業に遅れちゃうよ?」
如月 早苗「あっ、ごめんなさい」
押尾 歩夢「野上さんまだ来てないんだね」
如月 早苗「そ、そうね。 心配だわね・・・・・・」
押尾 歩夢「いい気味ね」
如月 早苗「えっ!?」
押尾 歩夢「如月さんから伊集院君を奪った女だもん。 不幸になって当然よ」
押尾 歩夢「火事だけじゃあ物足りないから、いっその事思いつく限りの罰が降り掛かるといいね」
如月 早苗「滅多な事を言ってはいけないわ。 人の不幸を願うと必ず自分にも返ってくるのよ?」
押尾 歩夢「だからといって人の恋人を取った女を慈悲の心で許せっていう方が無理があるわよ」
如月 早苗「そ、それは・・・・・・」
押尾 歩夢「ねぇ、如月さん」
如月 早苗「なっ、何?」
押尾 歩夢「一緒に野上さんに裁きを下してやりましょう」
如月 早苗「そんな、はしたない事!! 死んでもお断りだわ!!」
押尾 歩夢「あれ、如月さんにしては珍しいね」
押尾 歩夢「それじゃあお言葉を返すけれど、 廊下で大声を上げる行為は、如月さんの考えでは、はしたない行為に該当しないの?」
ざわ、ざわ、ざわ
如月 早苗「!!」
生徒A「如月さんいきなり大声を上げてどうしちゃったのかしら?」
生徒B「伊集院に振られたから気でも狂ったんじゃね?」
生徒C「でも如月さんって、人間味が少ない人だったから、ちょっと好感持てるかも」
生徒D「でも学校でいきなりヒスを起こすのはNG。 そりゃあ伊集院も逃げ出すわな」
如月 早苗「・・・・・・」
お父様
どうしたら、
清く正しく美しく生きられますか?
〇役場の会議室
朝平 真実「如月さん、ちょっと良いかしら?」
如月 早苗「朝平さん、珍しいわね。 貴女から私に話しかけてきてくれるなんて」
朝平 真実「そうね、今日は珍しい事続きね」
如月 早苗「・・・・・・」
朝平 真実「ごめん。デリカシーがなかったわね」
如月 早苗「いいわよ。 特に気にしてなかったから」
朝平 真実「そう、それならいいけど」
如月 早苗「そ、そんな事より、何か用事でもあったんでしょう?」
朝平 真実「えっ、あっ、そ、そうね」
朝平 真実「如月さん、魔法のクッキーってご存知かしら?」
如月 早苗「魔法のクッキー? そういえば昨日もそんな事を言っていた生徒がいたわね」
朝平 真実「最近学生達の間で話題になっているの」
朝平 真実「そのせいでちょっと学生達の間ではイザコザが発生していて、その事で近日委員長会議が開かれるみたいだけど・・・・・・」
朝平 真実「規制が入る前に貴女試してみたら?」
如月 早苗「どうしてそんな事をいきなり私に言うわけ?」
朝平 真実「そこは重要な事ではないわ。 大事なのはその情報を知って、貴女がどうするかよ」
朝平 真実「ネットで検索すればすぐに出てくるわ それじゃあ、私はこれで」
如月 早苗「・・・・・・」
如月 早苗「私は・・・・・・」
如月 早苗「私の願いは・・・・・・」
恐ぁっ! でもちょっと気になる展開…… ❤
今度は早苗さんが主人公に!彼女の視点だと、叶香さんの騒動もまた違った角度から見えてきますね。そして、ネットでも広まる魔法のクッキーの存在、何やら不穏な展開ですね