第三話 知らないままで(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
栄田 駿「・・・・・・・・・・・・」
栄田 駿「じゃあ、そろそろ始めようか」
栄田 栞里「始めるって、何を・・・?」
栄田 駿「美雪、音楽よろしく」
栄田 美雪「大丈夫だよ! ポチッとな」
栄田 智「汝、栄田 駿」
栄田 智「あなたは目の前の女性を妻として 永久に愛し続けることを誓いますか?」
栄田 駿「ーーーー誓います」
栄田 栞里「え? え?」
栄田 美雪「お母さん、あなたは」
栄田 智「お母さんじゃないだろ 佐伯だよ。さ・え・き!」
栄田 美雪「あっ! そうだ! 佐伯 栞里。あなたは」
栄田 美雪「栄田 駿を夫として 永久に愛し続けることを誓いますか?」
栄田 栞里「それって、どういう・・・」
栄田 智「お母さん! 誓いますって言うんだよ!」
栄田 栞里「あ、えっと。 ちか・・・います」
栄田 智「今ここに、二人は夫婦としての 約束を交わしました!」
栄田 美雪「二人に神の祝福あらんことを!」
栄田 栞里「え、えーっと・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
栄田 栞里「わっ!」
栄田 栞里「ど、どうしたの? この料理・・・」
栄田 智「すごいでしょ! これ全部お父さんが作ったんだよ!」
栄田 美雪「今日は、『けっこんきねんび』なんだよ!」
栄田 智「バカ、そんなのお母さんわかってるよ!」
栄田 美雪「そっか」
栄田 駿「栞里、驚かせてごめん」
栄田 駿「子供たちがどうしても 結婚式が見たいって言うもんだから」
栄田 栞里「そ、そうだったの・・・」
栄田 駿「・・・栞里」
栄田 栞里「な、何?」
栄田 駿「10年前、こんな僕と結婚してくれて 本当にありがとう」
栄田 駿「この10年間、ただの一日も 幸せを感じない日はなかった」
栄田 駿「これまでも、これからもずっと 君を愛してる」
栄田 栞里「あ、ああ・・・」
栄田 栞里(ダメ・・・涙が止まらない!)
栄田 栞里(どうしてよ・・・!)
栄田 栞里(どうしてこんなに大好きなあなたを 疑わなきゃいけないの!)
栄田 美雪「お母さん、泣いてる・・・」
栄田 智「これは嬉し泣きっていうんだよ! 美雪は子供だなぁ」
栄田 美雪「わ、わかるもんっ!」
栄田 駿「智、美雪。 神父さんの役をしてくれてありがとう」
栄田 智「お父さん、お腹減ったー!」
栄田 美雪「美雪も!」
栄田 駿「じゃあ、お母さんが準備できたら ご飯にしよう」
「はーい!」
食事が始まっても
私の涙はなかなか収まらなかった
それは愛する夫を疑わなくては
ならない悲しみの涙であり
唯一の家族を失わずに済んだという
安堵の涙だった
〇一戸建て
ショックなことがあったせいだろう
私は久しぶりに
祖母が亡くなる時の夢を見た
〇病室(椅子無し)
佐伯 慶子「栞里・・・いるのかい」
佐伯 栞里「おばあちゃん! 私だよ。すぐ側にいるよ!」
佐伯 慶子「手を握っておくれ・・・ああ本当だ 栞里の手だねぇ」
佐伯 栞里「ごめんなさい! 到着機が遅れて、 なかなか帰ってこれなかったの!」
佐伯 慶子「わかってるよ。栞里は千草に似て とても優しい子だからね・・・」
研修医「血圧低下。危険な状態です」
主治医「馬鹿、んなことわざわざ言う奴があるか 黙って手を動かせ!」
佐伯 慶子「悔しいねぇ・・・」
佐伯 慶子「せめてあんたの花嫁姿を見てから 逝きたいと思ってたんだけどね」
佐伯 栞里「そんな縁起でもないこと言わないでよ」
佐伯 栞里「最近はアプリで婚活が出来るんだよ その、ちょっと気になる人もいるし」
佐伯 慶子「そうかい。そりゃ良かった」
佐伯 慶子「千草が早くに死んじゃったからね 栞里、あんたは幸せになるんだよ」
佐伯 栞里「うん・・・うん・・・」
佐伯 慶子「あんたを独りにしてしまう ばぁばを許しておくれ・・・」
佐伯 栞里「おばあちゃん!」
研修医「先生、カテコラミンにも反応が・・・」
主治医「ああ。そうだな・・・ 佐伯さん。よろしいでしょうか」
佐伯 栞里「よろしいってどう言うことですか!」
佐伯 栞里「おばあちゃんの手はまだこんなに 温かいんですよ!」
主治医「残念ですが、脈拍もなく、 心電図でも波形が消失しています」
佐伯 栞里「嘘、うそよ・・・」
主治医「7月28日、16時13分、ご臨終となります」
佐伯 栞里「いやあああ! おばあちゃん!」
両親を事故で亡くし、女手ひとつで
育ててくれた祖母が亡くなって
私は独りになった
これは、その時の記憶だ
〇豪華なベッドルーム
栄田 栞里「・・・・・・・・・・・・!!」
栄田 駿「栞里?」
栄田 栞里「ごめんなさい、駿 起こしちゃった?」
栄田 駿「もしかしてあの夢かい?」
栄田 栞里「うん、ここのところ なかったんだけど・・・」
栄田 駿「大丈夫?」
栄田 栞里「あっ・・・」
駿は優しく私を抱き寄せた
栄田 駿「君には僕がいる、智も美雪もいる」
栄田 駿「もう独りじゃないんだよ」
栄田 栞里「うん・・・うん・・・」
〇一戸建て
栄田 駿「おいで、栞里。 怖い夢は忘れてしまおうよ」
栄田 栞里「うん・・・」
駿を疑って不安になった心を
彼に埋めてもらうなんて
我ながら情けないな、と思う
でも、私には彼しかいないのだ
今だけはと言い訳しながら
私は彼の優しさに埋もれた
〇一戸建て
しかしそんな夜更かしは
当然翌日に影響が出るわけで
私と駿は裸のまま
三回目のスヌーズで目を覚ました
栄田 栞里「えっ!? 朝7時!? 嘘でしょ?」
栄田 駿「いや、本当に朝だ! 僕、子供たち起こしてくる!」
栄田 栞里「待って、駿! そのまま行っちゃ駄目っ! シャワーも浴びないと!」
栄田 駿「そ、そうだね!」
〇飾りの多い玄関
栄田 駿「智、美雪! 行くよ!」
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またまた~、引きを作るのがお上手!
不穏な予感でぐいぐい興味が引かれます。
不穏さはわかるのに、真相の予想がつけられないのがすごいです。
一体何が、何が~!
めちゃくちゃ幸せなのに、タイトル回収がまだという事は、この後にきっととんでもないことが待ち受けてるんですね…😱
怖いから蓋をして、見なかったことにする。知らなければ幸せなことも、世の中にはたくさんある。傷付きたくないヒロインの気持ちに、胸が痛くなりました。
愛は綺麗なものですが、それにすがってしまうのは一番危険なものかもしれない……そんなことを、考えさせられました。
それにしても七菜ちゃんの洞察力とか横とのつながりが凄すぎて、彼女の正体が気になってしまいました(笑)