恩暮呂堂の 貧乏絵師

福山 詩(フクヤマ ウタ)

最終話 恩墓呂堂の貧乏絵師(脚本)

恩暮呂堂の 貧乏絵師

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〇畳敷きの大広間
  恩暮呂堂から縁が姿を消して・・・
  一年後
兼巻さん「いつもありがとうございます」
重兵衛「おい アゲル! 久しぶりだねぇ!えぇ? 元気ィしてたかい?」
お菊「アゲルちゃん 相変わらず忙しそうだね」
兼巻さん「重兵衛さん!お菊さん! いやぁ~嬉しいですね 会いに来てくださったのですか?」
重兵衛「おう! ちょいと近くを通ったもんでな!」
重兵衛「それにしてもよ! すげぇ人だな!秀仙堂!」
兼巻さん「ハハ、うちなんて、そんな」
兼巻さん「恩暮呂堂には負けますよ」

〇古びた神社
町民「いや〜良い絵を買えたぜ! かかぁの手土産に丁度いいやぁ」
千羽「もう、平吉さんたら うちの絵を奥さんのご機嫌取りに使わないで下さいよ」
町民「わりぃ わりぃ ここの絵を買って帰ると喜ぶからよ」
町民「ちーはーねーちゃん! みたらし団子買ってきたよ お食べ」
千羽「お滝さん! も~気を遣わなくていいのにぃ! わぁ、でも、おいしそぉ!」
町民「おい滝! まーた絵をまけてもらおうって 魂胆だろ!」
町民「何言ってんだい! 恩暮呂堂を若い夫婦で切り盛りしてるんだ!応援したいだけだよ!」
千羽「うふふ ありがとう」
町民「しっかし 惣七も幸運だね~!」
町民「こんな別嬪な彫師を嫁に貰うなんてよ!」
町民「そうそう! 惣七には勿体ないよ」
千羽「やめてよ 二人とも」
ヤマブキ「んなー」
町民「ははは! そうだろ山吹!お前もそう思うだろ!」
ヤマブキ「クンクン」
千羽「あ! だめよ山吹。 みたらし団子なんか食べたら喉につかえちゃうわよ」
千羽「あなたには後でお魚あげるから」
ヤマブキ「にゃー」
町民「この猫も幸せもんだね 恩暮呂堂、こんなに繁盛してよ 俺より良いもん食ってんじゃねぇか?」
町民「もうすぐ開店して一年だっけ? ずっと賑わってるわよね」
千羽「惣七がいつも 色んな処から妖怪画を描く絵師を 連れて来るから」
町民「そうね、ここの絵は種類も豊富で 流行りもとりいれていて」
町民「ほんっとに飽きないのよね」
町民「そうだな! 次の新作の絵が楽しみだねぇ!」
町民「じゃあ またね千羽ちゃん 今度またお菓子持ってくるからね」
千羽「二人とも いつもありがとね またお待ちしています」
千羽「・・・」
千羽「開店からずっと来てくれてるお客さん、 ありがたいわ」
千羽「あれから一年か」
千羽「色々あったけど あっという間だったなぁ」
千羽「縁さんの絵も 最初は人気だったけど」
千羽「いまじゃすっかり隅に追いやられて」
千羽「絵の流行りすたりって私達が思っているよりもずっと早いのね」
「おおーい 千羽ちゃーん」
千羽「お客様が呼んでる」
千羽「はい! 今行きます!」
千羽「あら?」
千羽「こんにちは!」
千羽「どうぞお店の中 覗いて行ってください」

〇祈祷場
惣七「いらっしゃい!」
惣七「お客さん!うちは初めて?」
惣七「ここは恩暮呂堂 妖怪画専門の問屋だよ」
惣七「へぇ!お客さん 妖怪画好きなのか!」
惣七「俺もだ! しかしアンタ服がボロボロだな!? 大丈夫かい?」
惣七「絵ばかり買い漁っているから 服を買う金がない?」
惣七「おいおい 筋金入りの絵好きだな!」
惣七「でもなんか楽しそうだな」
惣七「ふんふん、 欲しかった絵がやっと手に入ったんだな!」
惣七「どんなの買ったんだ?見せてくれよ!」
惣七「うわ! 水が!」
惣七「いや、 濡れてない」
惣七「え・・・」
惣七「・・・!!」
惣七「見間違えるはずがない・・・」
惣七「お客さん!? これをどこで!!!」
惣七「いや、この絵を描いた絵師は今どこに!!?」
惣七「え? 言えない? なんでだよ」
惣七「素性を明かさないと約束してる?」
惣七「・・・」
惣七「・・・うぅ」
惣七「あぁ、いや、すまない」
惣七「そうだ、そうだったな 素性は明かさないんだったな」
惣七「そうか まだ絵を描いてるんだな」
惣七「そうだよな 純粋に絵を描くことが好きだったもんな」
惣七「良かった・・・ 色んな人に自分の絵を見て欲しいって言ってたもんな」
惣七「ああ、この絵 買ってくれるのか?」
惣七「毎度あり! じゃ お代は三文・・・」
惣七「・・・?」
惣七「え?落とした? 一両持ってきたのに?一文しかない?」
惣七「・・・」
惣七「アハハ! そうだ、そうなんだよ! そうだったな!」
惣七「悪いな、 アンタの不幸を笑ってるんじゃないんだ」
惣七「ただ、懐かしくて」
惣七「俺も昔苦労したもんだ 金がないと色々大変だよな」
惣七「今回はただであげるよ」
惣七「で。 その代わりと言っちゃあなんだが」
惣七「この絵 竜神の絵を描いた 絵師に見せてくれないか」
惣七「そうか! 見せてくれるか! ありがとな!」
惣七「え?お代?後日払いに来るの? いいよいいよ」
惣七「それよりさ」
惣七「貧乏なんかに 負けんじゃねぇぞ!」

〇黒
  こうして 恩暮呂堂は 町で一番の
  
  問屋になったとさ
  やれやれ、一時はどうなることかと
  
  思ったけど 惣七のやつ うまくやったね
  ・・・
  ン〜?
縁(えにし)「あんれ〜?」
縁(えにし)「アンタ、アタシが見えてんのかい?」
縁(えにし)「え?ずっと会いたかったって?」
縁(えにし)「そりゃ〜嬉しいね〜」
縁(えにし)「ま、アタシはアンタのこと 少しも知らないがねェ」
縁(えにし)「恩暮呂堂の貧乏絵師 面白かったかい?」
縁(えにし)「最後まで読んでくれて ほんと 嬉しいよ」
縁(えにし)「アンタも 貧乏には 気を付けなよ」
縁(えにし)「まァ アタシの 力なんだけどね♡」

次のエピソード:エピソード1(ボイス付き)

コメント

  • めでたく大団円での最終回。
    目には見えず会うことはできなくても「縁」が切れることは無いのですね。
    いい話をありがとうございます。

    完走お疲れ様でした。

  • ✨👏✨👏✨👏✨👏✨👏✨👏✨👏✨
    感動のエンディングでした✨
    「貧乏という過程」はやりたい事を諦めるか続けるかの境界線なのかもと思わされました❗

    あとお店のチラシを包み紙として拡散したシーン、
    葛飾北斎の版画を陶器の包み紙として使っていたら外国の人の目に止まって世界的に有名になったエピソードからきてるのかな⁉️
    私は先月その話を知って、詩さんこれを参考にしたのかな⁉️と思いました🙌

  • (;゚∀゚)=3ファーーーーッ!!なんて綺麗な結末。
    連載完結おめでとうございます&お疲れ様でした

    出会い、成長し、別れ、そしてまた出会う様な匂わせ。素敵過ぎる。
    名前通り、縁がありますように。

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