彼が姫プで私が騎士で

雛田

姫川湊のパソコン大作戦〜後編〜(脚本)

彼が姫プで私が騎士で

雛田

今すぐ読む

彼が姫プで私が騎士で
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇電器街
岸田 彩音「・・・予想以上に高いな、パソコンというものは」
姫川 湊「為替の影響をモロに受けるからな。あとは半導体不足という市場の状況にもよるか」
岸田 彩音「なるほど、これが「今は買い時じゃない・・・!」ってやつッスね!」
姫川 湊「いや、まあパソコンぶっ壊れてるんだから買い時も何も買わなきゃいけないだろ」
岸田 彩音「ぐぬぬ・・・」
岸田 彩音「最新のゲーミングパソコンを安く手に入れるにはどうしたらいいのか」
姫川 湊「自作する?」
岸田 彩音「オイ、こちとら低Dexやぞ」
  ちなみにDexとはステータスにおける器用さのことである。テストに出るよ!
岸田 彩音「いや、でも自作はアリかもしれない 姫川、頼んだ」
姫川 湊「いや、俺もそこまでは出来ないよ? ある程度の知識はあるけど一から組み立てるのはめんどくさ・・・いや、自信ないかな」
岸田 彩音「今めんどくさいって・・・」
姫川 湊「社内ネットワークと業務用端末でバトロワ」
岸田 彩音「はい・・・」
姫川 湊「でもまあ、pc詳しい知り合いはいるからちょっと聞いてみようか」
岸田 彩音「割と姫川って交友関係広いよなぁ」
姫川 湊「そうかい?」
  そう言って姫川はスマホを触り始める。
  滑らかな手つきで・・・いや、なんかすごい雑な操作してるぞ
岸田 彩音「じー」
  私はそっと姫川のスマホを覗き込んだ。
  (あんまりよろしくないことだが)
岸田 彩音「・・・・・・」
  スタンプ爆撃していた。
  「おはよう!」というウサギのスタンプをこれでもかと連打。
岸田 彩音「スタ爆って一昔前の女子高生かよ」
姫川 湊「いいだろ、別に・・・」
姫川 湊「お、早速既読ついた」
岸田 彩音「ちなみにどんな人なの?」
姫川 湊「昔入ってたギルドの知り合いでさ、パソコン詳しいんだよ」
岸田 彩音「あーイヴェリコさんみたいなの?」
姫川 湊「そうそう。 ただイヴェリコさんより気難しいかな」
  ふむ。
  イヴェリコさんはハイパーおおらかな人なので、彼(または彼女)を基準に気難しい・・・というと。
岸田 彩音「なるほど、普通の人か」
姫川 湊「まあ、岸田さんよりは普通かな・・・」
岸田 彩音「おい、私が奇行種だとでも?」
姫川 湊「まあそれなりに」
岸田 彩音「・・・・・・「ふっ、おもしれー女」って言ってみて?」
姫川 湊「は??」
岸田 彩音「あ、いやなんでもないっす」

〇電器街
岸田 彩音「グラボにcpu、マザボにメモリ、それから電源、PCケース、あと簡易水冷・・・」
岸田 彩音「うぅ、私のお茄子さんさよなら・・・」
姫川 湊「まあでも仮想PC8個同時起動できるようなスペックにしてあるから大丈夫! 効率的に素材掘りができるね、良かったな!」
岸田 彩音「しねえよ、そんなBANスレスレのこと」
姫川 湊「エッ・・・」
  やってんねえ、お前も。
岸田 彩音「それで次の休みに届いたパーツをみんなで組み立てればいいんだね。どこで組み立てるの?」
姫川 湊「んー、どこにする? 俺の家か岸田さんの家か」
岸田 彩音「・・・私の家に知らない奴が上がり込むの嫌だな、消去法で姫川の家かな。おわった後すぐ飲めるし」
岸田 彩音「いやぁ、また酔いつぶれて可愛いこと言っちゃう姫川見たいなあ・・・」
姫川 湊「あのときの記憶が一切ないんだけど、マジで俺何をしたんだ・・・」
岸田 彩音「・・・・・・聞きたい?」
姫川 湊「やめとく・・・」
姫川 湊「そういえば岸田さん、この後予定は?」
岸田 彩音「ん、ないけど」
姫川 湊「ちょっと行きたい場所があるから付き合ってくれないかな」
岸田 彩音「行きたい場所・・・?」

〇水族館前
岸田 彩音「水族館・・・」
姫川 湊「そ、ナイトアクアリウム。 入場料は俺が出すから、ちょっと見ていかないかい」
岸田 彩音「こんなの、彼女と来いよ・・・」
姫川 湊「多分俺に一生彼女はできないよ。 ──その人に失礼すぎる」

〇水中トンネル
岸田 彩音「わ、わ──」
  大人になってこうもはしゃぐとは。
姫川 湊「ここさ、ドラファンのプレイヤーの中ではちょっとした聖地になっててさ」
岸田 彩音「うん」
姫川 湊「なんとなく、似てないかい?」
岸田 彩音「あっ!」
「マナナンズ水棲生物研究所!」
  ドラゴンファンタジアのダンジョンの中でも屈指の人気を誇るダンジョン。昏くも幻想的で、廃墟の水族館のような風景が印象的だ。
岸田 彩音「ほんっと、お前見た目にそぐわずオタクだな!」
姫川 湊「何を今更!」
  客入りは少ない。
  この現実の水族館に、思い出の場所を重ね笑い合う。
  まるで子供の頃のように。

〇水族館・トンネル型水槽(魚なし)
  ああ

〇水中トンネル
岸田 彩音「もしかして────」
  君が、そうだったのか。
  その言葉を飲み込む。
姫川 湊「何か言った?」
岸田 彩音「ん、なんでもない」
  少しの間の沈黙。
  水槽の中をたゆたう魚を眺める。
岸田 彩音「マリンたそはどんな姫になりたいの?」
姫川 湊「そりゃもちろん、アイドルだとも」
  そういや、姫はエンターテインメントって言ってたな。
岸田 彩音「配信でもしてみたら? 配信で姫プ、囲いと一緒にボス討伐!」
姫川 湊「そして野良いじめからの大炎上か? そんなのどこのVtuberだよ」
姫川 湊「白百合アリスが姫だったとしても、俺は姫は悪いもんじゃないって世に知らしめたいな」
岸田 彩音「ほう、そりゃ面白い試みだね。応援しているよ」
姫川 湊「あとはちょーっと、今面白いことをしているから、楽しみにしててよ」
岸田 彩音「ええ?」
姫川 湊「岸田さんがパソコン組み上がるまでには面白いことになってると思うから、待っててよ」
岸田 彩音「む、サプライズか」
岸田 彩音「面白くなかったら許さんぞ──ん?」
岸田 彩音「あれ、つまり私来週までドラファンできない奴?」
姫川 湊「ん、何度も言ったじゃん。聞いてなかったの?」
岸田 彩音「買い物でハイになってて、パソコンが組み立てられるまでにゲームできないの忘れてた──!!」
姫川 湊「・・・やっぱ岸田さんバカだね?」

〇黒背景
「あぁ──」
「アリスさま、アリスさま・・・!」
  暗い部屋。
  壁ぎっしりに貼られた「彼女」の絵を眺め、恍惚の表情で見つめる。
「ねえ、どうして消えてしまったの」
「あたしはまだあなたのこと、だぁいすきなのに」
「ねえ、あなたは今どこで何をしているの? あたしのこと、少しくらいは──」
「え──」
  画面に映されたランキングに絶句する。
「マリン、たそ・・・? 誰だよ、この女」
「アリスさまが叩き出したマナナンズ水棲生物研究所のソロクリアタイムが更新されてる・・・」
「こんなのに、こんなのに、こんなのに!?」
「許さない、許さない、許さない・・・」
「マナナンズだけじゃない、アリスちゃんがレコードを保持していたもの、どんどん書き換えてる・・・」
「何だよ、何なんだよ──」
「アリスさまのいた痕跡がひとつ、またひとつ消えてってる──」
「何、メール通知・・・? 送り主はだれ、何なの、まったく──」
  <SYSTEM>マリンたそよりメールが届いています。
「マリンたそ・・・!?」
  <MAIL>
  カレンちゃん、
  そろそろ本物の姫ってものを決めませんかぁ?
  Byマリンたそ
「ムカつく、ムカつく──── ルイくん!ルイくん!いる?」
石島 ルイ「なんだよ、レンちゃん・・・」
カレン「このマリンたそって奴、何なの?」
  彼はルイくん。
  ドラゴンファンタジアで出会って、オフ会して同棲にまで至ったあたしの彼氏。ハーフでカッコイイ。
石島 ルイ「ん、まあ調べにいくか・・・」
  ため息交じりで、蓮くんはあたしのパソコンの隣に並べたパソコンでログインする。

〇屋敷の書斎
紅烏「それでカレンちゃん、何すればいいの?」
雛菊カレン「マリンたその情報を調べてほしいの。 ぜったいヤバいやつだもん!」
紅烏「ヤバい?なにがどうして?」
雛菊カレン「あたしのアリスさまの保有レコードをピンポイントで塗り替えてて、面識のないあたしに連絡してきたんだよ!?キモくない!?」
紅烏「ほう、そいつぁキモいなぁ」
  紅烏は昔、アリスさまのギルドにいたらしい。ギルド戦でもそこそこ活躍していたそうな。ずるい、あたしは入れなかったのに。
雛菊カレン「あとマリンたそにPVPで勝てる武器をちょうだい!」
紅烏「それは自分で調達したほうがいいと思うぞ・・・」

〇黒背景
  かくして戦いの火蓋は切って落とされようとしていた。

〇本棚のある部屋
岸田 彩音「へくちっ・・・」
  なんか今日寒気がするなぁ・・・
岸田 彩音「会社行きたくねえ・・・ パソコンないし、死ぬほど働くしかないかぁ・・・」
岸田 彩音「今日も一日がんばるぞい!」

次のエピソード:姫と姫のレコード戦争

コメント

  • 現実ほのぼのからゲーム内では波乱の予感!?

成分キーワード

ページTOPへ