bilincat−バイリンキャット−

×××

4話【ラブリー米】(脚本)

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〇池袋駅前
  大輝は池袋駅前に立ち、ソワソワしていた。
山都大輝(小夏ちゃん・・・何で俺なんて誘ってくれたんだろ?)
山都大輝(俺・・・てっきり嫌われてるとばかり思ってたんだけどな・・・)
山都大輝(やっぱりクロが言ったみてぇに気のせいだったのかな?)
風間小夏「山都さん!」
山都大輝「あ!小夏ちゃ──」
山都大輝「ってその格好・・・どうしたの?」
風間小夏「ああ!コレですか?」
山都大輝「それ・・・エプロン?」
風間小夏「さっきまでお料理の準備してて」
風間小夏「そのまま来ちゃいました!あはは!」
山都大輝「は・・・はぁ・・・」
山都大輝(やっぱちょっと変わってんだよなぁ・・・小夏ちゃんって!)

〇スーパーの店内
風間小夏「山都さん・・・」
山都大輝「どうしたの?小夏ちゃん!元気無いね?」
風間小夏「私またやっちゃいました・・・」
山都大輝「やっちゃった?」
風間小夏「さっきお客さんから『板こんにゃく』の場所聞かれたんですよ・・・」
山都大輝「こんにゃく・・・ああ、こんにゃくね」
風間小夏「でもなぜか私、板だけしか頭になかったみたいで」
風間小夏「『かまぼこ』の所に案内しちゃって・・・」
風間小夏「そしたらなんか・・・ムッ!とされちゃって」
山都大輝「ああ!かまぼこに板あるしね・・・」
風間小夏「もう・・・私ドシばっかり・・・」
山都大輝「いやいや!人には間違いあるからさ!」

〇スーパーの店内
風間小夏「山都さぁぁぁぁん!」
山都大輝「ど、どうしたの?」
風間小夏「私・・・また」
山都大輝「やっちゃったの?」
風間小夏「お客さんに『今日は何時までなの?』って聞かれたんですよ」
山都大輝「はぁ・・・」
風間小夏「私てっきり、定時の時間聞かれたんだ!とばかり思って」
風間小夏「15時までてす!」
風間小夏「って答えたら、お客さんは『営業時間』のつもりで聞いてたみたいで」
風間小夏「めっちゃ恥ずかしかったんですぅ」
山都大輝「あっさりと個人情報話すのはまずいとは思うけど」
山都大輝「ま、まぁ、そのお客さんも主語が無いから分かりづらいよ」
風間小夏「私・・・いつも・・・」
山都大輝「俺だってそう聞かれたら定時の時間の話だと思うって!」
山都大輝「あんまり自分を責めちゃだめだよ!」

〇池袋駅前
山都大輝(でも・・・そういうトコがまた可愛いんだよな・・・)
山都大輝(なんか放って置けないというか・・・)
風間小夏「今日はありがとうございます!」
山都大輝「いや・・・お礼なんて・・・」
山都大輝(むしろ礼を言いたいのはコッチだよ)
山都大輝「でもさ・・・電話でも言ってたけど、急にどうしたの?」
風間小夏「いや・・・それは・・・」
山都大輝「だってホラ!職場じゃ俺を避けてるようにかんじちゃったからさ・・・」
山都大輝「てっきり嫌われてるのかと・・・」
風間小夏「そんな事ないですよ!」
風間小夏「何と言うか・・・ちょっとだけ恥ずかしかったというか、照れてたと言うか・・・」
山都大輝「恥ずかしい?」
山都大輝(そうか!そうか!俺の事を意識するあまりに!ってヤツだったのか!)
山都大輝(可愛いじゃん小夏ちゃん!めっちゃ可愛いじゃん小夏ちゃん!)
風間小夏「そんな事より早く行きましょ!」
  小夏は大輝の手を握る。
山都大輝(ち・・・近い!)
山都大輝(やばい!まじでやべぇよ!)
山都大輝(このまま小夏ちゃんの家に行ったら、理性を保てる自信がねぇ・・・)
山都大輝「小夏ちゃん・・・ちょっと近くないかな?」
風間小夏「あ・・・すいません」
風間小夏(バカ!バカ!バカ!私のバカ!)
風間小夏(山都さんを『変に勘違い』させちゃったかな?)
風間小夏「すいません・・・私ったら・・・」
山都大輝「いや・・・いいんだよ」
風間小夏「・・・・・・」
山都大輝「・・・・・・」
風間小夏「なら行きましょうか!」
山都大輝「あ・・・あぁ・・・」

〇ファンシーな部屋
山都大輝(可愛い部屋だな・・・)
山都大輝(それに何だか良い匂いもする・・・)
風間小夏「もうすぐで準備できますから!」
山都大輝「なんか手伝おうか?」
風間小夏「大丈夫です!山都はお客さんですから!」
風間小夏「ゆっくりしててください!」
山都大輝(そうか!そうか!こんな所で体力使って欲しくねぇんだな!)
山都大輝(後からうんと体力使う事になんだからな!)
山都大輝(意外に情熱的なのかな?)
風間小夏「でも山都さん?そのリュックって何ですか?」
山都大輝「いや・・・これはアレだよ・・・」
山都大輝「備えあれば憂いなしって言うし・・・」
風間小夏「ふー・・・ん」
風間小夏(あんまり良く分かんないけど、まぁ確かにいざって時に困ったりするからね)
風間小夏「変なこと聞いてすいません!」
山都大輝「いや、いいんだよ!」
山都大輝(中身とかみられたら、体目的だと思われたりしたらアレだからな)

〇ファンシーな部屋
風間小夏「おまたせしましたー!」
山都大輝(ついに来たか!小夏ちゃんの手料理!)
  テーブルの上に小夏の手料理が次々と並べられていく
山都大輝「わぁ!すげーなぁ!店で出てくる料理みたいだよ!」
山都大輝「小夏ちゃんってこんなに料理上手かったんだ!全然知らなかったよ!」
風間小夏「張り切って作っちゃいました!」
風間小夏「ちょっと量・・・多かったですかね?」
山都大輝「ううん!そんな事ないって!このぐらいペロリだよ!」
風間小夏「よかったぁ!いっぱい作りましたから!」
風間小夏「お腹いっぱい食べてくださいね!」
山都大輝「うん!ありがたくいただきます!」

〇ファンシーな部屋
山都大輝「じゃあいただきます!」
  大輝は箸を手にし、出された手料理を口に運ぼうとしたその時──
風間小夏「あっ!ちょっと待って!」
山都大輝「え?なに?どうしたの?」
風間小夏「私が食べさせてあげますから!」
  小夏はそう言うと、大輝から橋を奪い、手料理の大輝の口に運ぶ。
山都大輝「いや!いいって!自分で食べるから・・・」
風間小夏「遠慮しないでください!」
風間小夏「はい!あ〜ん」
山都大輝(え・・・小夏ちゃんって・・・こういう感じの事するタイプだったの?)
山都大輝(でも・・・悪い気はしないな・・・)
山都大輝「じゃあ遠慮な──」
  『じゃあ遠慮なくいただきます』大輝がそう口にしようとした時
  大輝の視界が食材とらえた
山都大輝「え?なに?コレ・・・」
山都大輝「人参がハート型になってる・・・」
風間小夏「あ!気づいてくれました?」
風間小夏「さすが!山都さん!」
山都大輝「随分と込んでるんだね・・・」
風間小夏「ほら!このお茶碗のごはんも見てください!」
山都大輝「ごはん?」
  大輝が小夏に言われるがままに、茶碗によそわれたご飯を見る。
山都大輝「え?なに?コレ!」
山都大輝「米粒ひと粒ひと粒がハート形になってる!」
風間小夏「すごいでしょ!このごはん!」
山都大輝「め・・・珍しいご飯だね・・・」
風間小夏「これ!私が作ったんですよ!」
山都大輝「つ・・・つくった?」
風間小夏「手作業でひと粒ひと粒、ハート形に変形させたんですぅ!」
風間小夏「なづけて『ラブリー米』」
山都大輝(なにその緻密な作業かつ狂気に満ち満ちた作り方!)
山都大輝(どんなトコに労力使ってんの?)
山都大輝「へぇ・・・す・・・凄いね・・・」
山都大輝(やっぱこの子・・・おかしいわ)
風間小夏「あ!安心してくださいね!ちゃんと手袋してやりましたから!」
山都大輝(そういう事じゃないんだよな・・・)
山都大輝「はぁ・・・」

〇ファンシーな部屋
風間小夏「気持ち悪いですか?」
山都大輝「え?気持ち悪いって?」
風間小夏「このお料理・・・引いてます?」
山都大輝(やべ!顔に出ちゃってた?)
山都大輝「いや・・・そんな事は・・・」
風間小夏「絶対に嘘だ!キモいって思ってる顔してたもん!」
風間小夏「わぁぁぁぁぁん」
山都大輝「いや・・・そんな風に思ってないって!ホント!」
風間小夏「絶対に嘘!キモいって思ってる!引いてる!」
風間小夏「わぁぁぁぁぁん」
山都大輝「いや、ホントに嬉しいから!」
風間小夏「ホント・・・ですか?」
山都大輝「うん!誰かに手料理ふるまってもらえて嬉しいよ!」
山都大輝「誰かの手料理食べるなんて、ここ数年なかったからさ」
山都大輝「すげぇ嬉しいよ!」
風間小夏「・・・・・・」
山都大輝「だから泣かないでって!ね?」
風間小夏「山都さんがそう言うなら・・・」
山都大輝「お腹すいたから、早く食べたいなぁ!小夏ちゃんの手料理!」
風間小夏「はい!いっぱい食べてください!」
山都大輝「うん!いただくよ!」

〇ファンシーな部屋
山都大輝「ふぅ〜!食った!食った!」
風間小夏「おいしかったですか?」
山都大輝「うん!すげぇ美味かったよ!」
山都大輝「小夏ちゃん!こんな料理が上手いならいい奥さんになれそうだね!」
風間小夏「褒めすぎですよ!」
山都大輝「でもさ・・・」
風間小夏「はい?何ですか?」
山都大輝「なんで俺なんかの為にこんな事してくれたの?」
風間小夏「あ・・・それは・・・」
山都大輝「それは?」
風間小夏「山都さんの事が・・・」
山都大輝「俺の事が?」
風間小夏「・・・・・・」
山都大輝(好き?)
風間小夏「可哀想に思えちゃって・・・」
山都大輝「そうだよね!分かるよ!俺の事が好──」
山都大輝「ん?」
山都大輝「可哀想?可哀想ってなんの事?」
風間小夏「だって山都さん・・・」
風間小夏「猫ちゃんを人に見立てて会話するくらい寂しいんですよ?」
山都大輝「・・・・・・」
山都大輝(すげー勘違いされてたァァァァァ)
山都大輝(ああ!そういう風に見えてた?)
山都大輝(猫を人に見立てて会話するくらい寂しいって何?)
山都大輝(俺そんなヤツに見えてたの?)
山都大輝(こんな勘違いされるくらいなら、ヤバいヤツって思われた方がいくらかマシだぞ!おい!)
山都大輝「あ、いや、あれは別にそう言う・・・」
風間小夏「でも恥ずかしい事じゃないと思いますよ?」
風間小夏「私もぬいぐるみに話しかける事ありますから」
山都大輝(なんかソレ・・・違う)
山都大輝「え?俺の事が好きとかじゃなくて?」
風間小夏「なんで私が山都さんの事を好きになるんですか?」
山都大輝(はいィィィィィ!人生で一番傷つく言葉いただきましたァァァァァ!)
山都大輝「そ・・・そうだよね・・・あはは」
風間小夏「もぅ!山都さんおもしろい!」
山都大輝「・・・・・・」

〇ファンシーな部屋
山都大輝「じゃ・・・じゃあ・・・俺・・・帰るね・・」
風間小夏「はい!今日はわざわざありがとうございました!」
山都大輝「い・・・いや・・・そんな・・・」
風間小夏「また寂しくなったら、私が手料理ふるまってあげますから!」
山都大輝「あ・・・う・・・うん・・・」
風間小夏「山都さんはひとりじゃありませんから!」
山都大輝「あ・・・う・・・うん・・・」
風間小夏「じゃあ夜道気をつけて先ださいね!」
山都大輝「あ・・・う・・・うん・・・」
山都大輝「じゃ・・・じゃ・・・お・・・おつかれ・・」
風間小夏「はい!また職場で!お疲れ様です!」
山都大輝「・・・・・・」

〇住宅街
山都大輝「・・・・・・」
山都大輝「あは・・・あはは・・・」
山都大輝「俺・・・かっこわりぃ・・・」
山都大輝「自分一人で舞い上がって・・・」
山都大輝「情けねぇ・・・」
山都大輝「何が恋だよ・・・」
山都大輝「全部全部・・・」
山都大輝「爆ぜろォォォォォォォォォ!」

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