誰が為の愛

米子

一話 誕生日おめでとう(脚本)

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米子

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〇黒背景
  ときめきは
  安心になって
  特別も
  日常に変わって
  それでも
  一緒にいるんだと思ってた、ずっと
  見えも、測れもしないのに
  ”愛”なんて
  不確かなものを信じていた

〇綺麗な部屋
サヤカ「え?」
直人「だから、別れよう。俺達」
サヤカ「ま、待って」
サヤカ「なんでアパートの 契約更新の話が急に別れ話に?」
直人「いい機会だと思ったんだ」
直人「俺達、ずるずると 長く付き合って来ちゃっただろ?」
直人「お互いの年齢考えると 決断は早い方がいいと思って」
サヤカ「ずるずるって、そんな言い方」
サヤカ「私、嫌だよ」
サヤカ「なんか理由があるなら話してよ」
直人「サヤは」
直人「しっかりしてて仕事もできるし」
直人「俺は釣り合わないよ」
サヤカ「なにそれ」
サヤカ「ずっと一緒にいて 今更そんなこと言うの?」
直人「・・・・・・」
サヤカ「ほんとに? 本気なの?」
直人「ああ」
直人「ごめん」
サヤカ「部屋はどうする?」
直人「俺が出る、もとはサヤの部屋だし」
直人「家具も使って」
サヤカ「・・・あっそ」
直人「俺、今から実家帰るよ」
サヤカ「今から!?」
直人「サヤも1人で考える時間必要だろうし」
直人「2週間後くらいに荷物取りくるから」

〇綺麗な部屋
サヤカ「・・・はぁ」
サヤカ(家族、みたいに思ってたんだけどな)
サヤカ(こんなあっけなく終わるんだ)

〇綺麗な部屋
サヤカ「うっ」

〇綺麗な部屋
サヤカ「もう、朝か」
サヤカ「仕事行かなきゃ」

〇雑誌編集部
サヤカ(お昼だ)
サヤカ(今日が、平日でよかった)
サヤカ(仕事してるほうが気が紛れていい)
「サヤちゃんっ」
同期の恩田「もうお昼だよ?」
サヤカ「恩田、おつかれ」
同期の恩田「ね、見て見て!!!」
サヤカ「ん?」
サヤカ「指輪? 似合ってる」
同期の恩田「婚約指輪なの!」
サヤカ「えーー? いつの間に?」
同期の恩田「えへへ」
サヤカ「飲み会でも何も言わなかったじゃん」
サヤカ「びっくりした」
サヤカ「婚約指輪、かぁ」
サヤカ(いいなぁ、恩田)
サヤカ「おめでと!」
サヤカ「今度話聞かせてね」
同期の恩田「うん!」
同期の恩田「あのね」
同期の恩田「サヤちゃんには、わざと黙ってたの!」
同期の恩田「焦らせたくて!」
サヤカ「え」
同期の恩田「サヤちゃん 余裕そうに仕事取ってくるでしょ?」
同期の恩田「私いつも負けてるから」
同期の恩田「何でもいいから勝って 驚かせたかったの」
サヤカ「そ、そうだったの」
同期の恩田「ね、焦った~?」
同期の恩田「今度写真みせるね!!」
サヤカ「う、うん」
サヤカ「あ、じゃあ私午後商談だから そろそろ出るね」
同期の恩田「行ってらっしゃーい」

〇街中の道路
サヤカ(はぁ、何あれ)
サヤカ(きっつい性格)
サヤカ(そんな勝手に対抗心向けなくたって)
サヤカ(こっちはもうボロボロだよ)
サヤカ(・・・・・・)
サヤカ(あーあ)
サヤカ(今すぐ世界滅亡しないかな)

〇オフィスビル前の道
  〇■株式会社

〇小さい会議室
取引先の人「へぇ、そんな事も可能なんだ」
サヤカ「ええ、リードタイムの短さは 弊社の強みですので」
取引先の人「うーん」
取引先の人「じゃあ、見積りもらえる?」
サヤカ「は、はい!」
取引先の人「藤堂さんの熱意に負けた 上にも前向きに話しとくから」
サヤカ「ありがとうございます」

〇街中の道路
サヤカ(嬉しい)
サヤカ(地道に商談続けてきて良かった)
サヤカ(この調子で、次も)
  サヤちゃんて余裕そう
サヤカ「あ」
  しっかりしてて仕事もできるし
サヤカ(大きい案件決まって、嬉しい時も)
サヤカ(会社では、顔に出さないようにしてた)
サヤカ(その分、直人の前では はしゃいじゃったな)
サヤカ(私がいけなかったのかな)

〇渋谷のスクランブル交差点
サヤカ「──はい 全て終わったので直帰します」
サヤカ「お疲れ様です」
  ピッ
サヤカ(疲れた、帰ろ)
サヤカ(この辺り、久々に来たけど)
サヤカ(混んでるな)
サヤカ「ん」
サヤカ(直人!?)
サヤカ(隣は、誰?)
サヤカ「・・・・・・」
サヤカ(私達は終わったんだ、関係ない)
サヤカ(普通に考えて後輩とかでしょ)

〇繁華な通り
サヤカ(これは尾行でも ストーキングでもない!)
サヤカ(偶然道が同じだけ)
サヤカ(そう、通行人)

〇ラブホテル
サヤカ「は!?」
サヤカ「入ってった」
サヤカ「はは、あ、そう」
サヤカ「そういうご関係で」

〇繁華な通り
サヤカ(おかしいと思った)
サヤカ(あんなセリフみたいな別れ文句)
サヤカ(他の女がいるなら、そうって言えよ)
サヤカ「帰ろ」
サヤカ(お風呂入って、美味しい物食べて)
サヤカ(・・・無理)
サヤカ(あの部屋に、1人で帰るなんて無理)
サヤカ(まずい)
サヤカ(こんなとこで泣くな)
サヤカ(どっかお店入ろ)

〇シックなバー
サヤカ「うっ、ぐっ、くそっ」
サヤカ「死ねっ!!!」
サヤカ「・・・・・・」
サヤカ「ううぅ〜」
???「なんて物騒なこと言ってるの?」
サヤカ「うるせぇっ!!」
サヤカ「は!!」
サヤカ「す、すみません!」
サヤカ「彼氏と別れて、荒んでて、つい」
???「別れたの、恋人と?」
サヤカ「はい」
???「それは・・・辛いね」
サヤカ「簡単に言わないでよ」
サヤカ「あなたに何がわかるの?」
???「わかるよ」
???「息苦しくて、何もかも嫌になって」
???「この世なんか滅べばいいって思う気持ち」
サヤカ「今の私だ」
???「・・・わかるよ」
サヤカ「うぅ」
???「あなた、名前は?」
サヤカ「サヤカです」
???「──そう、サヤカ」
???「僕はミタカ」
サヤカ(僕? 何この人、女性だよね?)
ミタカ「話してみてよ、何があったか」

〇シックなバー
サヤカ「──で、そしたらっ」
サヤカ「その眼鏡で、巨乳な、かわいい子と」
サヤカ「直人が、らっ、らぶ」
サヤカ「らぶほっ・・・」
ミタカ「釣り合わない、なんて綺麗事並べて」
ミタカ「ほんとは彼の浮気だったんだね」
サヤカ「そうっ! はっきり言いもしないで」
ミタカ「非道い男だね」
ミタカ「じゃあさ、その元彼」
ミタカ「──殺しちゃおうか」
サヤカ「──え」
サヤカ「・・・・・・」
ミタカ「っふ、ははっ、やだなぁ」
ミタカ「冗談だよ? 冗談」
ミタカ「死ねー、なんて言ってるから」
サヤカ「そう、ですよね」
サヤカ「びっくりしちゃって」
ミタカ「冗談のついでに いいストレス解消法を教えてあげる」
ミタカ「奥のテーブル行こ?」

〇ジャズバー
ミタカ「僕は」
ミタカ「人には3種の死があると思う」
ミタカ「当ててみて?」
サヤカ「え、3種?」
サヤカ「普通に死ぬのと、あとは」
サヤカ「あ!」
サヤカ「人に忘れられ──」
ミタカ「今はそんな優しい話じゃないよ」
ミタカ「いい?」
ミタカ「まずは肉体的な死」
ミタカ「言葉通り、心臓が止まること」
ミタカ「2つ目は精神的な死」
ミタカ「体は元気でも、心が死んでる状態」
ミタカ「3つ目は社会的な死」
ミタカ「世間から干される事かな」
ミタカ「じゃあ、始めよう」
サヤカ「何するの?」
ミタカ「はい、これ」
ミタカ「どうやったら、元彼が 3つの死の状況になるか」
ミタカ「考えて書き出してく」
ミタカ「例えば、ナイフで刺したり」
ミタカ「SNSで嘘の情報を流したり 会社に名指しでクレームいれたり」
ミタカ「色々な方法を考えて」
ミタカ「紙の上で」
ミタカ「何回も葬る」
サヤカ「うわぁ、物騒な遊び」
ミタカ「気が引ける?」
サヤカ「まさか!」
サヤカ「よーし、くたばれ直人!!」

〇ジャズバー
サヤカ「あはは、はい、死んだ~」
サヤカ「はぁー、うける 直人どんだけ死ぬのよ」
ミタカ「すっきりした?」
サヤカ「とっても!」
サヤカ「はははは・・・」
サヤカ「はぁ・・・」
ミタカ「どうしたの?」
サヤカ「ずっと、好きで」
サヤカ「大切だったのに」
サヤカ「たった1日で憎しみになっちゃうんだ」
ミタカ「・・・・・・」
サヤカ「私の愛って、なんだったんだろ」
サヤカ「私、これからどうすんだろ」
サヤカ「家族とか子供とかいる子も多いのに」
サヤカ「また誰かと出会って、一から関係作って」
サヤカ「できる気がしないよ」
ミタカ「サヤカ・・・」
サヤカ「苦しい」
サヤカ「っう」
ミタカ「明日は、仕事?」
サヤカ「うん」
ミタカ「じゃあ、もう帰ろう。タクシー呼ぶから」

〇タクシーの後部座席
「──ほら、しっかり! 家はどこ?」
「ああ、もう」
ミタカ「すみません、とりあえず駅まで」
ミタカ「サヤカ! 住所は?」
サヤカ「ん~? これ」
ミタカ「じゃあ、ここに向かうよう頼むからね」
ミタカ「誕生日、来週なんだ」
サヤカ「そっ!」
サヤカ「プロポーズされるかと思ってた」
サヤカ「馬鹿だよね~」
サヤカ「はは」
ミタカ「そんな風に言うのやめなよ」
ミタカ「自分で、自分を卑下しないで」
サヤカ「だって」
ミタカ「そうだ」
ミタカ「今日のバーね、奥に個室があるの」
ミタカ「実はケーキもあるんだ」
サヤカ「へぇ」
ミタカ「予約しておくよ、10月10日」
ミタカ「お祝いしよう! 新しいサヤカの人生」
ミタカ「あれ、寝ちゃった?」

〇黒背景
  覚えておいてね?
  ねぇ、サヤ──

〇綺麗な部屋
サヤカ「──ん?」
サヤカ「・・・あれっ、家?」
サヤカ「──っ、頭痛い」
サヤカ「どうやって帰ってきたんだっけ」
サヤカ「もうこんな時間」
サヤカ「ん?何このメモ」
  10/10 誕生日祝い
  個室 ミタカ
サヤカ(そうだ、ミタカさん)
サヤカ(昨日まで知らなかった人が)
サヤカ(誕生日祝ってくれるなんて)
サヤカ(・・・変なの)
  ぐぅぅぅ
サヤカ「そっか、昨日の夜から何も食べてない」
サヤカ「これでいいか」
  もぐ、もぐ
サヤカ(こんなボロボロでも)
サヤカ(お腹すくんだ)
サヤカ「・・・おいし」
サヤカ(こんな死にそうなのに)
サヤカ(食べて、会社行って、生きてる)
サヤカ(私)
サヤカ(失恋じゃ死なないんだな)
サヤカ(あーあ)
サヤカ(直人の事、好きだったな)

〇繁華な通り
  1週間後

〇シックなバー
「あの、予約の」
マスター「ミタカ様ですね、奥へどうぞ」

〇レストランの個室
サヤカ「気合い入れすぎたかな?」
ミタカ「ううん、似合ってる」
「乾杯」
ミタカ「誕生日おめでとう」
サヤカ「ありがとう」
サヤカ「この前の事も、何てお礼を言ったらいいか」
サヤカ「今日は、私に奢らせてね」
ミタカ「主役が何言ってんの」
ミタカ「はい、これ」
サヤカ「え!?」
サヤカ「なんか、申し訳ないな」
ミタカ「いいんだよ」
ミタカ「開けて?」
サヤカ「うん」
サヤカ「え」
サヤカ「きゃぁぁぁ」
ミタカ「しーっ」
サヤカ「な、何これ」
ミタカ「静かに」
ミタカ「これ、読んでみて」
  8 日、〇〇区アパートの室内で
  20代女性の遺体が発見
  凶器は見つかっておらず
  部屋は施錠されていた
  頭部には鈍器で殴られたような痕があり
サヤカ「鈍器・・・」
ミタカ「この女性、誰だと思う?」
ミタカ「眼鏡で、胸の大きいかわいい子」
サヤカ「嘘でしょ」
ミタカ「サヤカの考えた通りに」
ミタカ「殴ってきた」
サヤカ「あ、あんた、どういうつもり」
ミタカ「どういうつもり?」
ミタカ「サヤカの為だよ」

〇マンションの共用廊下
  彼女の後をつけて
  部屋のドアを開けた時に
  背後から殴る
  彼女は慌てて部屋に逃げて
  鍵を閉めた
  だから密室

〇レストランの個室
ミタカ「”直人”は部屋の鍵を持ってるかな?」
サヤカ「え」
ミタカ「毛髪でも指紋でも、体液でも」
ミタカ「何でもいい」
ミタカ「何か彼を関連付ける物が部屋にあれば」
ミタカ「世間は彼を疑うよ」
ミタカ「精神的、社会的な死」
ミタカ「まだあと一種類、残ってるけどね」
サヤカ「いい加減にして!」
サヤカ「帰る!」
サヤカ「二度と関わらないで!」

〇繁華な通り

〇綺麗な部屋
サヤカ「はぁ、はぁ」
サヤカ「どうなってんの」

〇白いバスルーム
サヤカ「指についた血が落ちない」
サヤカ「ん?!」
サヤカ「あの金槌」
サヤカ「私の指紋がついてるじゃん」

次のエピソード:二話 許せなかった

コメント

  • やばいやつきたーーーー! !  
    こういうヤバい人の登場堪らなく好きです。というか、これ実は、取れないからペンキとかないですか? トマト祭行ったやつとかじゃなくて? 嘘だと言ってぇえー。と現実逃避しかけます。

  • うわあああミタカ、何者ですかー!!😱

  • 途中まではマウント取り合い合戦でも始まるのかと思っていましたが強烈な展開でした😱まさかの容疑者に……。愛が憎しみになってしまいましたが、憎しみにも程度があるのかもしれませんね。
    ミタカは一体何者なんでしょう? 続きも楽しませていただきます!

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