音色を探して

72

誕生日(脚本)

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〇女性の部屋
みあ「アリサ、アリサ、聴いて。私やっぱり猫だった。朝起きたら全部思い出したの~」
  ・・・アリサは驚きながら、明らかに困っていた
アリサ「みあはもうお酒飲まない方がいいかもね」
  伝わっていない
みあ「えー、違うもん。私は音楽好きの白い猫「リサ」それが私だったんだもん」
  あれっ?今度は私が疑問に思った。私は誰なんだろう。何故か急に苦しくなり、座り込んでしまった
アリサ「みあっ、みあっ・・・ねぇ、大丈夫?」
みあ「アリサ、私は誰なの?本当に猫だった記憶はあるの。でも私は人間で「みあ」だし」
  私は今までにないくらいの混乱をしていた。そしてアリサも何かを感じてくれたようだった
アリサ「みあ。今日はお店休みな。それで岡田さんを呼んで、3人でお話しよ。私もスーパー休むから」
  アリサの提案は嬉しかったが、アリサには迷惑をかけたくなかった。だから仕事終わりに「春近し」を借りて話し合う事にした

〇レトロ喫茶
  パパマスター、マママスターにも相談すると、その日のお店は17時で閉めてくれる事になった
  岡田さんもアリサも合流しやすい時間で、カモミールにも迷惑をかけない時間で話終えると判断したのだ
  私は私の記憶の話をした。音楽好きの白猫の時の記憶。お姉ちゃんや旦那さんの事
  小野リサやマデリン・ペルー等のアーティストの歌も、その記憶の中に入っていた事
  ある素敵な音楽を聴いていた時に、首輪が切れてしまった事
  そして翌日、首輪を買いに行く途中に車の事故に遭い、気がついたら病院のベッドで寝ていた事を

〇レトロ喫茶
マママスター「ねぇ、みあさんは今幸せ?」
  私・・・私はたくさんの仲間に囲まれている。困っている時には話を聴いてくれる人達がいる
  パパマスターの料理は美味しいし、マママスターとの演奏も楽しかった
  アリサとケンさんと3人で初めてお食事をした時は、何故かとってもドキドキワクワクした
  皆と過ごした時間はとても幸せだった
みあ「マママスター、私は毎日が大好き。皆の事が好きだし、素敵な音楽の事をたくさん知る事も大好きなの」
  私は自分が幸せに生きている事に気がついた
マママスター「じゃあ、みあさんは今のみあさんでいいんじゃない?」
マママスター「そうだ、病院で目覚めた日を誕生日にしようか?」
アリサ「いいじゃん、いいじゃん誕生日。で、みあはいつ1歳なの」

〇水玉
  何故か私以外の全員が笑だした
みあ「えーっ。何で皆そんなに笑うの~」
岡田さん「だってアリサさんが、みあさんの事を1歳なんて言うから」
マママスター「でも1歳でもいいかもね。みあさんの誕生日は私達みんなが出会った年にもなるから」
マママスター「みあさんの誕生日の度に、私達皆のお祝いが出来るじゃない」
  なんかいいように楽しまれているようだが、いつもの私、いつもの皆になったような気がした
みあ「いいよ、私1歳でも。そのかわり、ちゃんと皆でお祝いしてね、私の1歳の誕生日なんだから」
  私が感じていた苦しさは、いつの間にか楽しい事に変わっていった
アリサ「ところで岡田さん、みあが病院で目覚めたのはいつなんですか?」
岡田さん「そういえばもうそろそろかも。調べて分かったら連絡しますね。記念すべく1歳の誕生日ですからね」
  話がまとまってきた時、嬉しさと心地よい照れを感じた
みあ「あの~。私の猫だった頃に聴いた歌。今日の最後に皆も聴いて」
  私はスマホで、インディゴガールズの「ghost」を流した。それからさらに30分程盛り上がった後、その場は解散となった

〇アパートのダイニング
  数日後、カモミールに岡田さんがやってきた
岡田さん「二人とも、みあさんの誕生日になる日を調べたわよ。今日から約3週間後。その日は調度日曜日よ」
  それから私達は、誕生日に何をしようか話し合った
  まず、どこか行きたいところがあるか。それに食べたいものや、やってみたい事など
みあ「うーん。食べたいものはパパマスターの料理。行ってみたい場所は・・・」
みあ「そうだ、テレビで見たオルゴールの博物館。確か湖の近くにあった」
  有名な場所らしく、行き先もすぐに決まった
アリサ「でも、あそこに行くには車があった方が良いんだよね。ケンさんは車を持ってないしなぁ」
岡田さん「私もその日は日中お仕事があるの」
  そう言いながら「春近し」に連絡をしてくれた岡田さん。問題をあっさりと解決してくれた
  マスター達が車を出してくれる事になり、お弁当も作ってくれる事になったから
  マスター達の車は六人乗り。なので、私、アリサとケンさん、ミモザさん、マスター達の六人で行く事になった

〇商店街
  誕生日前の日曜日、私は1人で中古CD屋さんに行った。岡田さんからお金を貰って、誕生日のドライブ用の音楽を買いにきたのだ
  アリサはケンさんと仲良くなっていた。誕生日の日には、たくさんからかってあげる予定だ
  この日の私はとってもラッキーだった。インディゴガールズのCDが二枚も買えた
  ghostが入っているCD。それとその次に出たというCD。この日は他に、カルチャークラブや、小野リサのCDも買った
  小野リサの事を知らないアリサのために。せっかく名前も似てるんだからと

〇車内
  私の誕生日当日。今日は楽しいドライブだ。パパマスターのお弁当もある
  この日用事のある雪乃さんは、夕食から合流。岡田さんや木下さんと、カモミールでお祝いの準備をしてくれるそうだ
  恥ずかしがり屋のケンさんは、少し緊張していたけど
  車の中の音楽は、もちろん私が担当。私が主役なのだから当然だ。
  アリサに聴かせたい小野リサのCDは、昼下がりのような音楽なので、帰りに聴く事を考えていた
  まずはカルチャークラブの軽快な音楽からスタート
  そしてインディゴガールズのCD。ghostが入っていない方のCDは、この日に初めて聴く事に決めていたから楽しみだった
  会話に盛り上がるケンさんとアリサ。ミモザさんは少しうとうと。私はインディゴガールズのCDの歌詞カードを見つめていた
  うっとりとする歌。最高に幸せな時間だった

〇橋の上
  車から降りた後も、オルゴール博物館やパパマスター特性のお弁当等、何から何まで楽しかった
  湖も初めてだったので、車は駐車場に止めて、そのまま皆で散歩もした
  パパマスターとマママスターはもちろんの事、アリサとケンさんもなんだかほほえましかった
  ミモザさんも自分なりに、皆と過ごす時間を楽しんでいた
  私は皆が楽しんでいる事が、何よりも嬉しかった
  橋の上で風を感じ、遠く下に広がる湖を見ながら、私達は普段よりも大きな声を出して、はしゃいでいた
  普段より大きな声?
  急に変な気持ちたなった
  私の耳が良く聴こえている。まるで猫だった時のように。遠くの音も聞こえる。遠くから走ってくる、バイクの音も

〇幻想空間
  かなり遠くを走っているバイク。きっと私達がいる橋を通過していく。だけど、このスピードで大丈夫なのだろうか
  何故か不安な気持ちになった
  皆は気がついていないようだったが、バイクは段々近くに迫ってきていた
  そして全員がそのバイクを認識した時、バイクはコーナーを曲がりきれずに転倒した
  運転手は投げ出され、バイクだけが私達の方に向かってきていた
  調度アリサがいるところに
みあ「アリサ、危な~い」
  私は体当たりをして、アリサを突飛ばした。そして私はバイクにぶつかった。衝撃で宙に浮き、そのまま橋の外へと飛ばされた

〇宇宙空間
  なぜか時間がゆっくり流れはじめた
  頭のなかでは猫だった頃に幸せだった事、人間になってから幸せだった事が映像として流れていた
  そして音楽もちゃんと流れている。今日初めて聴いて大好きになった曲
  インディゴガールズの「language or the kiss」・・・私はとても幸せだ
  でもアリサは・・・なんかゴメン。悲しい気持ちに包まれた時、また一つの映像が見えた
  そっか・・・ありがとう・・・

〇橋の上
アリサ「みあーっ」
  動かなくなった体が、そのまま湖に沈んでいった

次のエピソード:a li sa

コメント

  • 白昼夢のような幸せな時間の中にふと、旅の終わりの気配を感じる。みあ……どうなっちゃうの。

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