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きせき

エピソード34-白色の刻-(脚本)

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〇教会の控室
夕梨花「まさか、こんな動画があるなんて・・・・・・」
夕梨花「防犯カメラは壊したんですけどね」
明石青刻「まぁ、防犯カメラは1つしか設置できないなんて法律ないですしね」
夕梨花「・・・・・・それで、これからどうしますか?」
明石青刻「どうする? とは?」
夕梨花「確かに毒針は私が用意しました。しかし、私は設置を思い留まりました」
夕梨花「私は何の罪に?」
夕梨花「ああ、器物損壊と未必の故意なんかは認められてしまうかも知れませんね」
  そう・・・・・・だ。
  彼女の言う通り、秋川さんに毒針を刺している映像や、
  秋川さんに毒針を刺すように脅迫している映像ではない。
  彼女の殺人の立証は難しいかも知れない。
  すると、青刻さんは言った。
明石青刻「でも、このことが公になれば、貴方を明石家におくことは難しいでしょう」
明石青刻「場合によっては朝兄さんにも何らかの処分が下るかも知れない」
夕梨花「そう・・・・・・ですね」
明石青刻「僕としては今、このことを公にしたくないので、貴方にはおとなしくしてもらいましょう」
夕梨花「ううっ・・・・・・」
  一瞬、息苦しそうな夕梨花さんの声が聞こえると
  彼女はソファへと倒れ込む。
  今はまだ意識が混濁している段階だろうが、
  次第に意識が失われていくのだろう。
黒野すみれ「青刻さん・・・・・・お礼を言うべきなんでしょうね」
黒野すみれ「(おそらく、蒼帝城で握らせたこれで私の行動を把握してたんだろうな)」
黒野すみれ「(意識を奪うのはやり過ぎな気もしてるけど・・・・・・)」
明石青刻「・・・・・・そうですね。動けなくするのはちょっとやり過ぎな気もするんですけど、」
明石青刻「長くて効力は2、3時間ですし、医療用のもので非合法なものではありません」
明石青刻「彼女に抵抗されると、最悪、僕ら2人ともあの世に旅立つってこともあるかと思ったので」
明石青刻「それに・・・・・・彼も今、帰ってきたところですしね」
黒野すみれ「朝刻さん?」
明石朝刻「青刻・・・・・・本当に彼女が俺を当主にしようとして、こんなことを?」
  そう言うと、朝刻さんは再生が終わったタブレットを
  見つめた。
明石青刻「えぇ、先程、朝兄さんに送った映像は本当に起こったことです」
明石朝刻「そうか・・・・・・」
  そう呟くと、朝刻さんは夕梨花を抱きかかえる。
明石朝刻「すみません。黒野さん、今日の食事会は欠席させてください」
明石朝刻「彼女を部屋に連れていきたいですし、その、色々、受け入れられなくて・・・・・・」
黒野すみれ「あ、はい・・・・・・」
明石朝刻「ありがとうございます。失礼します」
黒野すみれ「やっぱり、防犯カメラは2台、あったんですね」
明石青刻「2台・・・・・・そうですね。ある意味では?」
黒野すみれ「ある意味では?」
明石青刻「まぁ、それはひとまずおいておいてまだ真相には続きがあります」
  そう言うと、青刻さんはまたタブレットを操作する。
  そこには私もよく知る友人と会ったことはないが、
  少しだけ知る彼が映っていた。

〇大きな日本家屋
物部トキ「あ、昂さん!!」
秋川「ふふ、どうやら、行き違いになってしまったみたいですね」
物部トキ「いえいえ、青刻君のお屋敷の方にまで行ってもらってみたいですみません」
秋川「いえいえ、こちらこそ物部家のお嬢様にご足労いただいて?」
物部トキ「ふふふ」
秋川「ふふふ」
「ハハハっ!!!」
秋川「それでは、こちらはお返しいたしますね」
物部トキ「ありがとうございます。食堂に忘れたのを思い出すまでに時間、かかっちゃって」
物部トキ「ちょうど食堂の外の廊下を通りかかったエマさんに聞いたら、」
物部トキ「秋川さんが拾ってくださったようでございますって教えてくれて・・・・・・」
秋川「すみません。本当はすぐに青刻様のお屋敷の方へ向かえば良かったんですけど、」
秋川「いつも乗っている車が少し調子が悪くて・・・・・・」
物部トキ「車が?」
秋川「あ、でも、そんな大したことはなかったんで、別の車を手配して向かったら」
秋川「玄田さんにこちらの方までトキ様をお乗せしてきましたと言われて」
物部トキ「そうです。そうです」
物部トキ「今の季節は紫陽花が綺麗だから胡蝶庵の手前で降ろしてもらったんですよ!!」
秋川「それは、それは・・・・・・紫陽花はいかがでしたか?」
物部トキ「とても綺麗でしたよ♪ あの紫陽花も昂さんがお手入れしてるんですよね」
秋川「えぇ、ただ、今年までで見納めでしょうね」
物部トキ「え? 紫陽花って何年か咲くって聞いたことあるんですけど、もう咲かないんですか?」
秋川「あぁ、実は、あの紫陽花は皆、古い株なんですよ」
秋川「私がこちらに植えかえて、剪定してからもう10年以上経ちます」
秋川「花を全くつけなくなった株も出てきたので、今年限りの命でしょう」
物部トキ「そう、なんですか・・・・・・」
秋川「すみません。少ししんみりした空気になりましたね」
秋川「もうすぐ、食事ですから本邸の方までお送りいたしましょう」
物部トキ「あ、そうだ。これって知ってますか?」
物部トキ「実はさっき、夕梨花さんを見かけたんですけど、かなり慌てて」
秋川「夕梨花さんが?」
物部トキ「はい。だから、夕梨花さんのものかも知れないですし、」
物部トキ「もしかしたら、昂さんか春刻君のものかも知れないなって思って・・・・・・」
秋川「・・・・・・。すみません、私のものではないですが、私に貸してくださいませんか?」
物部トキ「あ、はい。どうぞ」
秋川「そうですね。春刻様のものでもなさそうですが、」
秋川「私から春刻様や夕梨花さんに聞いてみましょうか」
物部トキ「あ、でも、私が拾ったのに・・・・・・」
秋川「いえいえ、どの道、彼にも彼女にも近いうちにお会いしますし、」
秋川「トキ様は食事をされたら、今日はお帰りになるんでしたよね」
物部トキ「はい。久し振りの明石家なので、本当はもう少しゆっくりしたかったんですけど、」
物部トキ「明後日は絶対、大学に行かないといけなくて」
秋川「そうなんですね。学校はいかがですか?」
物部トキ「えぇ、去年と違って、ちょっと忙しくなってきましたけど、楽しくやってますよ」
秋川「・・・・・・」
物部トキ「昂さん?」
秋川「あ、春刻様は少しのんびりされているからどうなのかなと思ってしまって・・・・・・」
物部トキ「あぁ、でも、春刻君は就活もないですし、」
物部トキ「論文も余裕だろうからゆっくりなんだと思いますよ?」
秋川「そうだと良いのですが・・・・・・」
秋川「もし、彼の身に何かあったら、その時はトキ様、助けてあげてくださいね」
物部トキ「あ、はい。勿論。でも、私なんかより春刻君を支えられる人はいますけどね」
秋川「トキ様より?」
物部トキ「えぇ、春刻君はずっと好きな人がいるんですよ」
物部トキ「悔しいけど、彼女を支えられるのも春刻君だけだと思います」
秋川「そんな方がいらっしゃるのですね。私もいつか会ってみたいです」
物部トキ「えぇ、彼女は私の自慢の友達なんですよ。いつか、昂さんにも紹介できたら嬉しいです」
秋川「えぇ、私も春刻様が心を寄せて、トキ様の自慢の友人である女性に会ってみたいですね」

〇黒
  だから、あれが最後の会話になるなんて思わなかった。

〇ラブホテルの部屋

〇地下室

〇教会の控室
黒野すみれ「(トキがあれを拾った?)」
  私はいつか自身が死にかけた物体を思い出す。

〇大きな日本家屋

〇教会の控室
黒野すみれ「(そして、それはトキの手から秋川さん・・・・・・)」
黒野すみれ「(いや、夏坂さんの手に渡った)」

〇風流な庭園

〇教会の控室
黒野すみれ「やっぱり、夏坂さんも夕梨花さんに後ろめたく感じてたりしたのか?」
明石青刻「と、言いますと?」
黒野すみれ「あ・・・・・・」
  私はつい、考えていたことをポロリと呟いてしまう。
  何でもない・・・・・・と言うには青刻さんという相手は
  相手が悪すぎた。
黒野すみれ「あ、夏坂さんは余命幾許もなかった」
黒野すみれ「もしかしたら、夕梨花さん・・・・・・白城百合香に悪いと少なからず思ったのかも」
黒野すみれ「なんて・・・・・・」
  確かに、夏坂さんがまだまだ生き続けられるなら
  これからも春刻を支える為に死を選ぶような真似を
  しなかっただろう。

〇風流な庭園
  しかも、あの春刻のことを死なせないように、と
  生きて、傍にいることを選ぶだろうと思う。

〇教会の控室
明石青刻「成程、確かに彼は少しうっかりしているところもあるから」
明石青刻「なかなか1人残して逝くなんて、夏坂さんも気が気じゃなかったでしょうね」
明石青刻「今となっては夏坂さんの本心は分かりかねますが、」
明石青刻「ある意味、彼女に悪いと思っていたのかも知れません」
黒野すみれ「これは白城桃香さんの封筒・・・・・・」
  そこには夏坂さんが何度か、白城桃香さんのいる
  更生施設に足を運んでいたという記述があった。
黒野すみれ「(夕梨花さんは知らなかったのか・・・・・・)」
黒野すみれ「(あぁ、でも、仮に知ってても、気持ちが抑えられる訳じゃないな)」

次のエピソード:エピソード35-鴇色の刻-

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