8.竜のイタズラ(脚本)
〇個人の仕事部屋
功刀絢花「えっと・・・ 花火があった日の風向きは・・・」
功刀絢花「南西の風、風力は3か・・・──」
功刀絢花「やっぱりそうだ!」
功刀絢花「竜の目撃談のあった場所は 花火会場の南側・・・」
功刀絢花「南西から風が吹く日に 煙が流れて来るはずがない!」
功刀絢花「あれっ?」
功刀絢花「ここが優一さんの会社で・・・」
功刀絢花「ここは与志之さんの家で・・・」
功刀絢花「ここが真梨香さんの家・・・」
功刀絢花「なるほど、そういうことか!」
功刀絢花「何が、決めつけはよくない、だ・・・」
功刀絢花「何が、思い込みはいけない、だ・・・」
功刀絢花「勝手に思い込んで決めつけてたのは 私自身じゃねーか!」
功刀絢花「だけど ようやく全ての輪郭がつかめてきたぜ」
男性「なんだ?」
功刀絢花「柊木警部、お久しぶりです」
男性「また厄介ごとか?」
功刀絢花「やだなぁ」
功刀絢花「私を何だとおもってるんですか?」
男性「疫病神だろ?」
男性「可愛らしい外見のくせに 中身は悪魔よりもずる賢い」
功刀絢花「酷いなぁ・・・」
男性「くだらない話より要件を言え!!」
功刀絢花「ちゃんと聞いてくれるんですね」
男性「要件による!」
男性「だが、まぁ お前には世話にもなっているからな」
男性「善処はさせてもらうつもりだ」
功刀絢花「いえいえ、お気になさらず」
男性「良く言うぜ」
男性「ことあるごとに 人の弱みに付け込んでくるくせに」
功刀絢花「その代わり、解決できなかった事件を いくつも解決してあげてますよね?」
男性「その話はよせ」
功刀絢花「警部までに出世できたのは いったい誰のおかげでしたっけ?」
男性「早く要件を言え!」
功刀絢花「花火大会の日に、家や車に石を投げつけるイタズラがありましたよね?」
男性「ああ」
功刀絢花「犯人は特定されていないとか」
男性「そうだ」
功刀絢花「その事件の資料を見せてください!」
男性「捜査情報をか・・・?」
功刀絢花「別にたいした事件じゃないし なんとかなりますよね?」
男性「だがなぁ」
功刀絢花「明日の朝までにメールでお願いします」
男性「いや、待て」
男性「だったら明日の朝に行く」
男性「情報漏洩の証拠が残るのはまずい」
男性「必要な物はその場で見てくれ」
功刀絢花「もちろん、それでもいいですよ」
男性「それと、資料のコピーは禁止だぞ!!」
功刀絢花「はい」
功刀絢花「では明日、よろしくお願いします」
男性「場所は例の店でいいな?」
功刀絢花「はい、私はどこでもいいですよ」
男性「じゃあ、9時に例の店だ」
功刀絢花「これでよし」
〇寂れた雑居ビル
柊木正道「くっ、はぁはぁ・・・」
柊木正道「思いのほか会議に時間がかかったな・・・」
柊木正道「あいつはもう来てるだろうな」
〇シックなカフェ
功刀絢花「・・・」
功刀絢花「やっと来た!」
功刀絢花「おい、遅いぞ!」
功刀絢花「9時って言ったのはそっちなのに」
柊木正道「いや、すまんすまん」
柊木正道「会議が長引いたんだ」
功刀絢花「連絡くらいしろよな」
柊木正道「店員さん!」
柊木正道「とりあえず水を一杯!」
店員「どうぞ、お水です!」
柊木正道「ああ、すまん」
ゴク、ゴクッ・・・
柊木正道「それから、二人分、ブレンドを頼む」
功刀絢花「パンケーキも一つ!」
店員「かしこまりました」
功刀絢花「おごれよ 遅刻したんだから!」
柊木正道「ああ、ここは出すよ」
柊木正道(頼みを聞いてやってるのは こっちなんだがな)
〇シックなカフェ
柊木正道「これが、見たがっていた資料だ」
功刀絢花「どれどれ」
功刀絢花「ふーん」
柊木正道「何か分かったのか?」
功刀絢花「ああ、予想通りだ」
柊木正道「予想?」
功刀絢花「こいつを見てくれ」
柊木正道「これは?」
功刀絢花「地図も知らんのか?」
柊木正道「そうじゃない」
柊木正道「何の地図かと聞いているんだ」
柊木正道「小さく印が書き込まれているようだが」
功刀絢花「赤い印が、竜の目撃談があった地点だ」
柊木正道「竜だと?」
功刀絢花「ああ、ドラゴンだよ」
柊木正道「サッパリ分からん」
柊木正道「ドラゴンなんて実在するはず・・・」
功刀絢花「いいから聞け!」
功刀絢花「それでな、ここではイタズラ事件もあった」
柊木正道「そんな届けは入っていないぞ!」
功刀絢花「ああ、私の独自情報だからな!」
功刀絢花「まぁ、第四の事件だな」
柊木正道「それで、何が言いたい?」
功刀絢花「ここに、警察がつかんでいた 3件の事件があった場所の印をつける」
功刀絢花「どうだ、分かるだろ!」
柊木正道「全ての印が、ほぼ一直線上にある!」
功刀絢花「つまり イタズラの犯人は竜だったってわけさ」
柊木正道「そんな馬鹿な・・・」
功刀絢花「それで、一つ確認したいんだけど」
柊木正道「なんだ?」
功刀絢花「イタズラで投げ込まれたのは 普通の石か?」
柊木正道「コンクリート片のような石だったな」
柊木正道「ほら、そこに写真があるだろ?」
功刀絢花「平べったい石と、このごつごつしたのと 塩化ビニル製のパイプか・・・」
柊木正道「パイプの長さは40センチほどだ」
功刀絢花「写真だけじゃ分からないな」
柊木正道「何がだ?」
功刀絢花「質感と言うか・・・」
功刀絢花「たとえば表面がベタベタしていたとか」
柊木正道「ベタベタかどうかは分からんが」
柊木正道「接着剤が付着していたと報告がある」
柊木正道「ほら、ここだ!」
功刀絢花「そうか・・・」
柊木正道「ちなみに蛍光塗料の成分も検出されている」
功刀絢花「イタズラにしては入念に調べたんだな」
功刀絢花「警察はヒマなのか?」
柊木正道「馬鹿言え」
柊木正道「忙しくてみんな退職願をポケットに 忍ばせながら働いてる始末だ」
功刀絢花「じゃあ、どうしてこんなに詳しく?」
柊木正道「一日に3件、連続してイタズラがあった」
柊木正道「引っかかるって言ったやつがいるんだ」
功刀絢花「何か大きな事件のにおいがすると?」
柊木正道「まぁ、そういうことだな」
功刀絢花「警察の中にも優秀な人間がいるもんだな」
功刀絢花「そいつは見どころがあるぜ!」
柊木正道「お褒めにあずかり光栄だな!」
功刀絢花「ちっ・・・ 自分のことだったのかよ!!」
柊木正道「お前に認めてもらえるとはね」
功刀絢花「はいはい」
功刀絢花「今回は良くやったな」
柊木正道「だが、このイタズラが どう大きな事件に関係するんだ?」
功刀絢花「それはこれから調べるんだよ」
柊木正道「・・・」
功刀絢花「もう聞きたいことは聞けたから 帰ってくれていいぞ!」
柊木正道「それはないだろう 呼びつけるだけ呼びつけておいて」
功刀絢花「辞めたくなるほど忙しいなか ありがとうございました」
功刀絢花「ほら、仕事があるんでしょうから この辺りでお引き取りを」
柊木正道「まったく勝手な奴だ」
功刀絢花「多分だけど 近々また世話になるから」
功刀絢花「そのつもりで、よろしくな!」
柊木正道「はぁー いつもいつも、お前には振り回されるな」