ものぐさな名探偵 ~つまらない依頼はお断り~

HALPIN

7.招かれざる結論(脚本)

ものぐさな名探偵 ~つまらない依頼はお断り~

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〇綺麗な会議室
  コンコンッ
功刀絢花「おっ、来たな!」
功刀絢花「入って来いよ!」
宏斗「急に呼び出してなんだよ!」
宏斗「俺、夏休みの宿題やってたんだぜ!」
功刀絢花「いいだろ」
功刀絢花「疑いは晴らしてやったんだからさ」
宏斗「それを言われると辛いよな」
宏斗「それで、何の用だよ?」
功刀絢花「竜について聞きたいんだ」
宏斗「まだ竜の話してんの?」
宏斗「あれは俺の見間違いだって!!」
功刀絢花「でも、パソコンで見てみたらさ・・・」

〇SNSの画面
功刀絢花「ほら、こんなに」
功刀絢花「あの日、空飛ぶ何かを見たってやつが 何人もいるんだ!」
宏斗「本当だ!」
功刀絢花「竜とかスカイフィッシュとか いろいろあるけどな」
功刀絢花「見たのはお前だけじゃないんだ」
功刀絢花「だから、どんな竜を見たかを聞かせてくれ」

〇綺麗な会議室
宏斗「うーん」
宏斗「たしか、ヘビみたいな細長い竜だった」
功刀絢花「ヘビか竜かどっちだよ!」
宏斗「にょろにょろしてるけど」
宏斗「足があったような気もするんだよな」
功刀絢花「形ははっきりしてたのか?」
宏斗「分からない・・・」
功刀絢花「じゃあ、色は分かるか?」
宏斗「それなら分かるぜ!」
宏斗「白だったよ」
宏斗「黒い部分もあったけどな」
功刀絢花「やっぱりな!」
宏斗「やっぱりって?」
功刀絢花「花火の日の空に何かが飛んでた」
宏斗「別に花火みたいに光ってはなかったぜ」
功刀絢花「そうじゃねぇよ」
功刀絢花「花火の後、白っぽい物と言えば?」
宏斗「あっ、煙か!」
功刀絢花「ああ、多分な」
功刀絢花「細くたなびいた煙が ヘビやら竜やらに見えたんだ!」
宏斗「うーん」
宏斗「そう言われれば、そんな気も・・・」
功刀絢花「だろ?」
功刀絢花「まあ、本物の竜を見つけられなかったのは残念だけどな」
功刀絢花「ひとまずは、謎は解けたってことだ」
宏斗「でも・・・」
功刀絢花「えっ?」
宏斗「いや、何でもない」
宏斗「用が済んだのなら、俺は帰るぜ」
宏斗「宿題の途中だからさ」
功刀絢花「ああ、呼び出して悪かったな」
宏斗「ホントだよ」
宏斗「これくらい電話でも良かったじゃん」
功刀絢花「会って話したほうがいいんだよ」
宏斗「探偵の決まり?」
功刀絢花「まあ、そんなとこだ」

〇綺麗な会議室
功刀絢花「そろそろ次の時間だな・・・」
  コンコンッ
功刀絢花「どうぞ」
愛那「事件は解決したの?」
功刀絢花「はい、おそらく」
功刀絢花「これから伺うお話次第ですけどね・・・」
愛那「じゃあ、あの女が犯人だって 証拠がみつかったのね?」
功刀絢花「いえ、そうじゃなくて」
愛那「・・・」
功刀絢花「真梨香さんでしたっけ?」
功刀絢花「お疑いの女性には会いました」
愛那「それで?」
功刀絢花「疑う気持ちは分かります」
功刀絢花「たしかに怪しい人でした」
愛那「でしょ!」
功刀絢花「でも、やっぱり彼女には犯行不可能です」
功刀絢花「2kmも離れた場所から背中を押すなんて」
功刀絢花「どう考えても無理ですから・・・」
愛那「それを、どう可能にしたのかを 調査して欲しいんじゃないの!!」
功刀絢花「近しい人が死んで しかもそれが自殺だったとしたら」
功刀絢花「受け入れられない気持ちは想像できます」
功刀絢花「いっそ誰かに殺害されていたとしたら その相手を恨むことができる」
功刀絢花「でも、自殺だと 苦しみに気づいてやれなかったことを 後悔し続けなくてはいけませんから・・・」
愛那「仮にあの女が犯人じゃなかったとして 自殺とは限りませんよね」
愛那「他の犯人だって考えられます」
功刀絢花「それは最初にあなた自身が 否定してましたよね?」
愛那「でも、自殺と決めつける理由は何なの?」
功刀絢花「これを見てください」
愛那「花火大会・・・?」
功刀絢花「何か思い当たることはありませんか?」
愛那「・・・」
愛那「この花火大会って・・・」

〇花火
愛那「綺麗ね!」
優一「ああ、来てよかったな」
愛那「うん」
愛那「そう」
愛那「これは確か・・・」
愛那「初めてのデートで行った花火大会」

〇綺麗な会議室
愛那「思い出しました」
愛那「昔、二人で行った花火大会です」
功刀絢花「やっぱり」
愛那「あの日は、それと同じ花火大会の日でした」
功刀絢花「優一さんはきっと 屋上から花火を見ていたんだと思います」
功刀絢花「最期のひとときを惜しみながら」
愛那「・・・」
功刀絢花「・・・」

〇体育館の屋上
優一「・・・」
優一「綺麗だな・・・」
優一「・・・」
優一「あの頃は楽しかったな・・・」
優一「どうしてこうなっちゃったのかなぁ・・・」
優一「もう、どうでもいいや」
優一「ごめんな、愛那・・・」
優一「さようなら・・・」
  ドサッ・・・

〇綺麗な会議室
功刀絢花「おおよそ、そんな感じだと思います」
愛那「そうですか・・・」
功刀絢花「ご満足いただけるような調査結果じゃなくてすみません」
愛那「いえ、いいんです」
愛那「ありがとうございました・・・」
功刀絢花「何だか気の毒だな・・・」
功刀絢花「しばらくはあのまま思い込ませておいたほうが、愛那さんには良かったのかな」
功刀絢花「せめて、悲しみから立ち直るまでは・・・」
功刀絢花「・・・」

〇綺麗な会議室
功刀絢花「・・・」
吉良誠一郎「もしもし」
功刀絢花「・・・」
吉良誠一郎「もしもし、絢花ちゃんだよね?」
功刀絢花「うん・・・」
吉良誠一郎「どうしたの?」
功刀絢花「いや」
功刀絢花「今日の仕事はどうだった?」
吉良誠一郎「まあ、忙しかったけど」
吉良誠一郎「そういえば 愛那さんの件はどうなったの?」
功刀絢花「なら疲れてるよな・・・?」
吉良誠一郎「へっ?」
吉良誠一郎「ああ、仕事のこと?」
功刀絢花「疲れてるならいいんだ」
吉良誠一郎「どういうこと?」
吉良誠一郎「そりゃあ、仕事終わりだし 僕もそれなりに疲れてるけどさ」
吉良誠一郎「絢花ちゃんの方が元気ないよ」
功刀絢花「なあ、誠一郎」
功刀絢花「もし良かったらだけどさ・・・」
功刀絢花「今から会えないかな・・・」
吉良誠一郎「今から!?」
功刀絢花「いや、無理ならいいんだけどさ」
吉良誠一郎「いいよ!」
吉良誠一郎「どこに行けばいいかな?」
功刀絢花「で、でも、明日も仕事だろ?」
吉良誠一郎「そんな気遣いなんて 絢花ちゃんらしくないよ」
功刀絢花「失礼な!」
吉良誠一郎「それより、どこで会うの?」
吉良誠一郎「事務所?」
吉良誠一郎「それとも・・・」
功刀絢花「いつものとこ」
吉良誠一郎「分かったよ いつものところね!」
吉良誠一郎「30分くらいかかるから 先に行って何か食べてなよ!」

〇ファストフード店
吉良誠一郎「そうか、そんな結末になったのか・・・」
功刀絢花「私のしたことは正しかったのかな?」
吉良誠一郎「分からないけど」
吉良誠一郎「絢花ちゃんは、探偵としてするべきことを しただけなんじゃないかな?」

〇ファストフード店の席
功刀絢花「探偵としてするべきこと・・・」
吉良誠一郎「うん」
功刀絢花「でも、愛那さんは調査のために 100万円も払ったのにさ」
功刀絢花「そのせいで、より悲しい思いをしたんだ」
吉良誠一郎「仕方ないよ」
功刀絢花「だけど!」
吉良誠一郎「だからって 嘘をつくわけにはいかないだろ?」
吉良誠一郎「絢花ちゃんが調査して そのうえで出した結論だったら」
吉良誠一郎「ちゃんと報告するべきだよ」
功刀絢花「・・・」
吉良誠一郎「愛那さんも納得してくれたんだろ?」
功刀絢花「うん・・・」
吉良誠一郎「冷めないうちに飲みなよ」
功刀絢花「・・・」
吉良誠一郎「ともあれ、これで事件は解決だね」
功刀絢花「小骨が喉に引っかかったみたいに パッとしない気分だけどな」
吉良誠一郎「竜もいなかったしね」
功刀絢花「そうだな・・・」
功刀絢花「はぁ・・・」

〇駅前広場
吉良誠一郎「雨になっちゃったね」
功刀絢花「ああ」
吉良誠一郎「天気予報では 朝まで降らないって言ってたんだけどな」
功刀絢花「・・・」
吉良誠一郎「当てにならないものだね」
功刀絢花「天気予報!?」
吉良誠一郎「えっ?」
功刀絢花「天気予報だ!」
功刀絢花「それくらい確認しておくんだった!」
吉良誠一郎「なんだい急に?」
功刀絢花「私は大きな見落としをしてるかもしれない」
吉良誠一郎「見落としって?」
功刀絢花「竜の正体は、煙なんかじゃない!」
吉良誠一郎「竜の正体?」
功刀絢花「ああ、きっとそうだ」
功刀絢花「調べてみる価値はある!」
功刀絢花「引っかかってた小骨が取れた気がするぜ」
吉良誠一郎「どうしたんだよ!」
功刀絢花「悪いな。私はもう帰るよ!」
吉良誠一郎「もう! 急に呼び出しておいて・・・」
功刀絢花「ごめんな 埋め合わせはするからさ」
吉良誠一郎「別に」
吉良誠一郎「いいよ、そんなの」
吉良誠一郎「絢花ちゃんが元気になってくれてよかった」
功刀絢花「・・・」
吉良誠一郎「どうしたの?」
功刀絢花「今日は来てくれてありがとな」
功刀絢花「誠一郎のおかげで気づけたよ」
功刀絢花「誠一郎がいなかったら、間違ったまま 事件を終わらせるところだった・・・」
吉良誠一郎「よく分からないけど お役に立てたならなによりだよ」
功刀絢花「ったくよ」
功刀絢花「せっかく事件が解決したと思ったのに」
功刀絢花「誠一郎のせいでふりだしだぜ!」
功刀絢花「この雨と同じだな!」
吉良誠一郎「親父ギャグ・・・かな?」
功刀絢花「じゃーな」
吉良誠一郎「やれやれ」

次のエピソード:8.竜のイタズラ

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