剣を求める者(脚本)
〇魔界
ザン「コーッ!」
骸骨騎士「ぐああっ!?」
怪人、ザンは骸骨騎士を切り捨てると、
彼が持っていた剣を奪い取る。
ザン「これで・・・27本・・・」
幹部「ザン! また貴様か!」
幹部「我らの仲間をまたも斬るとは!」
ザン「オレは・・・貴様らの仲間になったつもりはない」
幹部「なにい!?」
ザン「言っていたはずだ。 オレはただ、剣を求める者だと」
ザン「それでもと、頼まれたから ここにいるにすぎない」
ザン「世界征服など、オレにはどうでもいい」
幹部「ぐぐ・・・」
ザン「オレは次の獲物を探す。 邪魔をするなよ」
幹部「この・・・出来損ない怪人が!」
〇地下の部屋
ザン「・・・」
ザン(出来損ない・・・か。 確かにそうだ)
ザン(オレは生まれた時から剣を求めている。 剣に飢えている)
ザン(頭に浮かぶのは、 ただ、100の剣を集めることのみ)
ザン(だが、最近になって気づいた)
ザン(100の剣を集めた後、 オレは何を求め生きるのだろう、と)
ザン「!」
ザン「ベル・・・」
ベル「また、怒られたみたいね、ザン」
ザン「何のようだ?」
ベル「貴方の様子を見てくるよう頼まれたのよ」
ザン「フン・・・」
ベル「でも貴方も、剣のこと以外を考えるのね?」
ザン「・・・見ていたのか」
ベル「ええ。 貴方らしくない。隙だらけだったわよ?」
ベル「他の人が見たら殺っちゃうくらい」
ザン「その時はその時だ」
ベル「もう・・・」
ザン「用は済んだだろう。帰れ」
ベル「ザン、私は貴方の味方よ」
ザン「・・・どうだか」
〇空き地
ザン「血が騒ぐ・・・。 強力な剣が・・・近くにある・・・」
剣を持つ者「・・・」
ザン「! 貴様の、その剣は・・・」
剣を持つ者「・・・」
剣を持つ者「何故、我が剣を求める?」
ザン「それが──」
ザン「オレの生きる理由だからだ!」
剣を持つ者「・・・」
ザン「ぐあっ!」
剣を持つ者「哀れだな・・・」
ザン「なに・・・?」
剣を持つ者「そう生まれさせられたとはいえ、 求めること以外に意味を見出だせない、か」
剣を持つ者「ただ意味もなく求めるだけでは 我からこの剣を奪うことはできない」
ザン「黙れ!」
剣を持つ者「無駄なことを・・・」
ザン「があああっ!」
剣を持つ者「今は去れ。 また相応しい時に相手をしてやる」
ザン「ま、て・・・」
〇魔界
幹部「ハハハ、こっぴどくやられたようだな、ザン」
ザン「・・・」
幹部「これに懲りたら、 少しは大人しくしているのだな!」
幹部「な、なにをする!?」
ザン「黙れ、斬られたくないならな」
幹部「う、わ、わかった。 さっさと行ってしまえ」
幹部「ふう・・・。全く懲りていない。 いや、怒りに火が付いたか・・・」
幹部「あれで、我が世界征服に役立てればな」
〇地下の部屋
ザン(剣を求める意味・・・? それがわかれば、オレも苦労しない)
ベル「ザン」
ザン「またか。何の用だ」
ベル「私も、貴方のために考えたいの」
ザン「余計なことは──」
ベル「貴方ひとりで見つかるの?」
ザン「・・・」
ザン「好きにしろ」
ザン「・・・」
ベル「・・・」
ザン「浮かばん」
ベル「強さを求めるから、とか?」
ザン「それはもとからだ」
ベル「あら、そうなの。 じゃあ──」
ベル「私を、守るため。というのは?」
ザン「・・・」
ベル「・・・」
ベル「ちょっと! なんとか言ってよ!」
ザン「本気で言っていたのか?」
ベル「半分くらい本気よ!」
ザン「・・・そうか」
ザン「ベル」
ベル「な、なに?」
ザン「お前のことは嫌いじゃない」
ベル「!」
ザン「だが、それが剣を求める理由にはならない」
ベル「そ、そう・・・」
ザン「ただ、何もないよりはマシか」
ベル「!」
ザン「少し、剣を振ってくる」
ベル「いってらっしゃい」
〇古い競技場
ザン「ハッ!」
ザン「フッ!」
ザン「・・・誰だ」
ザン「貴様っ!」
剣を持つ者「ふ、怒りに燃えてはいるが 前回とはまるで違う剣だ」
ザン「・・・!」
剣を持つ者「求める理由。 見つかったか?」
ザン「・・・まだ完全ではない」
ザン「だが、それでも。 オレは剣を求めるしかない」
ザン「貴様を斬ってな!」
剣を持つ者「ほう・・・」
ザン「フン・・・!」
ザン「ハア・・・ハア・・・」
剣を持つ者「・・・」
ザン「・・・何故、追撃してこない」
剣を持つ者「我には貴様を殺す理由はない」
ザン「・・・」
剣を持つ者「む、剣を納めるのか」
ザン「あんたはオレにはまだ早いらしい」
ザン「消えてくれ」
剣を持つ者「フ。また会おう」
ベル「ザン!」
ザン「ベル、見ていたのか・・・」
ベル「すごかったわ。今の勝負!」
ザン「だが、まだオレは奴に到底及ばなかった」
ベル「でも、すごかったの!」
ザン「わかったから、それ以上近づくな」
ベル「照れてるの?」
ザン「違う!」
〇魔界
幹部「ちっ、ザンめ・・・」
幹部「ベルをたぶらかしおって」
研究者「ザンが気にくわないですかな?」
幹部「貴様か。全くだ」
幹部「あんな言うことを聞かないやつを 作り出しおって!」
研究者「剣を求めるのに特化している。 悪くないではありませんか」
幹部「だが奴はベルを・・・」
研究者「ならベル様を理由すればよい」
幹部「なに?」
研究者「これを・・・」
幹部「これは魔剣・・・」
研究者「これをベル様に持たせれば」
幹部「ザンはベルを斬らざるを得ない、 というわけか」
〇地下の部屋
数日後
ザン「最近、ベルを見ないな」
ザン「・・・ふ、オレには関係ないか」
研究者「ザン」
ザン「博士、何の用だ」
研究者「ふ、お前が求める剣の情報を やろうと思ってな」
ザン「なに・・・?」
研究者「ここに行ってみるがいい」
ザン「・・・?」
〇闘技場
ザン「ここか。 確かに強力な剣の気配がする」
ザン(だが、なんだこの感じは・・・)
「アアアァァッ!」
ザン「!」
ザン「ベル!?」
ベル「アアアァァ!」
ザン「ベル、何をする!?」
ザン「あの剣。 凄まじい力を感じる」
ザン「ベルはあれに操られているのか・・・」
ザン「あの剣を弾けばーー うっ!?」
ザン「剣を奪え・・・」
ザン「だ、黙れ・・・」
ザン「奴を殺し、剣を奪え・・・」
ザン「殺す必要は・・・」
ザン「今までの剣も殺して奪ってきた」
ザン「!」
ザン「さあ、殺せ・・・!」
ザン「があああっ!」
ベル「アアアァァ!」
ザン「ぐううっ」
ベル「ああっ・・・」
ザン「ベ・・・ル・・・」
ベル「ザン・・・」
ザン「!」
ザン(ベルを・・・救わなくては・・・)
ザン「それでいいのか・・・?」
ザン「黙れ!」
ザン「黙るのは貴様よ」
ザン「ぐううっ!」
ベル「ザン・・・。 構わないわ。私を・・・斬って」
ザン「ベル?」
ベル「貴方が斬らなくても、どうせ私は死ぬわ」
ベル「だから──」
ザン「黙れ!」
ザン「オレは、オレの意思でお前を助ける!」
ザン「止めてくれるな!」
ベル「ザン・・・」
ザン「貴様にそんな権利はない」
ザン「権利はオレが決める!」
ザン「ぐ、がががっ!」
ザンの中で2つの意志がせめぎあう。
ザンの意思は剣を止めようと
謎の意思はベルごと斬ろうとする。
ザン「があああっ!」
ザン「があああっ!」
ザンが剣を振り上げ迫る。
そして──
to be continued・・・
普通は最初に願望があって目的ができるのに、ザンは目的のみだから願望を模索しなくてはならない。相当な苦しみだと思いますが、人格が分裂するほどまでとは驚きました。死に瀕したベルを前にしてどちらのジンが勝利するのか、迫真のクライマックスシーンがすごかったです。
剣に取りつかれたように追い求め続けるザンの情熱がとても魅力的でした。その情熱が行き過ぎることなく、理性で大切な人を守れると願いたいです。
嗚呼〜!良いところで終わりましたね。早く続きが見たい。ザンが弁慶に思えました。100本の剣を集めるまではやめられません。ガンバレ!