3話【何だか今日いけそうな気がする】(脚本)
〇アパートのダイニング
──数日後──
山都大輝「はぁ・・・」
クロ「まったく!いつまでクヨクヨしてるんだ!」
山都大輝「小夏ちゃんの前でガッツリクロと会話しちまったんだぞ!」
山都大輝「絶対気味悪がられたって!」
山都大輝「それに、心なしか・・・ここ数日、小夏ちゃんに避けられてる気がすんだよ・・・」
〇スーパーの店内
山都大輝「小夏ちゃん!おつかれ!」
風間小夏「はっ!」
山都大輝「ちょ!小夏ちゃん!」
〇スーパーの店内
山都大輝「あのさ小夏ちゃん!店長見てないかな?」
山都大輝「店長に話しておきたい事──」
風間小夏「み、見てないです!」
風間小夏「ごめんなさい!私・・・行かなきゃ!」
山都大輝「・・・・・・」
山都大輝「俺・・・なんかした?」
〇アパートのダイニング
クロ「それは考え過ぎだ!気のせいだ!気のせい!」
山都大輝「てめぇ!他人事だと思ってテキトー言いやがって!」
山都大輝「だいたいな!あん時お前が付いて来なきゃこんなに悩む事も無かったんだよ!」
クロ「仕方ないだろ・・・暇すぎて死ぬかと思ったんだ」
山都大輝「そんな目で見るなよ・・・」
山都大輝「文句言いづれーだろーが!」
クロ「ウルウル」
山都大輝「そりゃお前やり過ぎだ!」
〇アパートのダイニング
山都大輝「なぁ・・・クロよ・・・」
山都大輝「小夏ちゃんがお前の言葉を理解できるようになる魔法みたいなのねーの?」
クロ「そんな都合のいいものはない!」
クロ「そもそも、猫の言葉を理解できるか否かは、この世に生を受けた時点で決まっているんだ」
山都大輝「どういう意味だ?」
クロ「初めて出会った時に言っただろ?」
〇通学路
山都大輝「つーか、何でお前は人の言葉を喋れるんだ?猫だろ?お前は!」
クロ「猫は普段から喋っているぞ?」
山都大輝「はぁ?」
クロ「それを人間の脳は言葉として認識できていない!というだけの事だ!」
山都大輝「ようは、あれか?」
山都大輝「猫は普段から、今のお前みたく、人の言葉を喋ってるけど」
山都大輝「それを人間の脳は言葉として理解できていないから『ニャー』としか聞こえないって事か?」
クロ「その通りだ!」
〇アパートのダイニング
山都大輝「あ・・・そういや言ってたな!そんな事」
山都大輝「脳がどうとかって話だったよな」
クロ「生まれてくる時点で、脳機能の中に猫の言葉を処理できる機能がなければ」
クロ「俺の言葉を人の言葉として認識する事ができないんだ」
山都大輝「先天的って話か・・・」
クロ「そういう事だ!」
山都大輝「ならそういう脳じゃない小夏ちゃんには」
山都大輝「一生分かってもらえないって事かよ・・・」
クロ「まぁそうなるな!」
クロ「後天的に言葉を理解できるようになった事例は今まで聞いた事がないからな」
山都大輝「じゃあ一生変なヤツってレッテル貼られたままって事かよ!クソ!」
クロ「いいじゃないか!ヤマトには俺が居るだろ!」
山都大輝「じゃあ女体化しろ!」
山都大輝「いってー!」
クロ「調子に乗るな!」
〇アパートのダイニング
大輝のスマホに着信が入る
山都大輝「あ・・・電話だ」
大輝はスマホを手に取り画面を確認する
山都大輝「小夏ちゃんからだ!」
クロ「なに!」
山都大輝「何の電話だろ・・・」
山都大輝「確か小夏ちゃんは今日は休みだったよな・・」
クロ「とりあえず出てみたらどうだ!」
山都大輝「言われなくても出るっつの!」
クロ「何をそんなにムキになっているんだ?」
クロ「ヤマトの怒りの沸点は今ひとつ理解し難いな」
山都大輝「はい!はい!言ってろ!」
大輝はクロを奥に押し退け、小夏からの着信に応答する。
クロ「おい!おい!押すな!」
山都大輝「もしもし?」
風間小夏「あ・・・山都さんですか!お疲れ様です!」
山都大輝「おつかれ!」
風間小夏「すいません・・・お休みの日に」
山都大輝「あははは!気にしなくていいよ!」
山都大輝「でもどうしたの?休みの日に電話してくるなんて珍しいね?」
風間小夏「そ・・・それが」
風間小夏「山都さんに聞きたい事があって・・・」
山都大輝「聞きたい事って?」
風間小夏「あの・・・今日ってもう予定とかって入れちゃったりしてますか?」
山都大輝「予定?いや、特には無いけど・・・どうしたの?」
風間小夏「よかったら・・・私の家でごはんでもどうかなぁと思いまして・・・」
山都大輝「え?小夏ちゃんの家でごはん?」
風間小夏「い・・・嫌ですか?」
山都大輝「いや・・・いやなんて事な無いけど・・・」
風間小夏「よかったぁ!」
山都大輝「で、でもどうしたの?急に・・・」
風間小夏「いやぁ・・・なんか一人は寂しくって」
風間小夏「誰かと一緒に食べたいなぁ・・・なんて」
山都大輝「そうだったんだ!俺なんかでよかったら喜んでお邪魔させてもらうよ!」
風間小夏「そう言ってもらえて良かったです!」
風間小夏「なら17時に池袋駅前で待ち合わせでどうですか?」
山都大輝「うん!わかった!」
風間小夏「遅れちゃダメですよ!」
山都大輝「大丈夫だよ!遅れないって!」
風間小夏「じゃあまた後で!」
山都大輝「うん!わかった!」
〇アパートのダイニング
山都大輝「・・・・・・」
クロ「どんな電話だったんだ?ヤマト!」
山都大輝「・・・・・・」
クロ「おーい!ヤマト!」
山都大輝「・・・・・・」
クロ「聞いてるのか!」
山都大輝「あ・・・なんだ?クロ・・・」
クロ(ノーダメージか!)
クロ「そ、その・・・電話の内容だ!どんな話だったんだ?」
山都大輝「ああ・・・それね・・・」
山都大輝「今日は・・・その・・・あれだ!」
山都大輝「帰って来ないかもな・・・おれ・・・」
クロ「なぜだ?」
山都大輝「今日は勝負の日になりそうだからだよ!」
クロ「何だ?発情期か?」
山都大輝「その言い方はきらいだけど、まぁ、そういう事にしとくわ!」
クロ「そうか!そうか!詳しくは分からんが、ヤマトが幸せそうで何よりだ!うん!」
山都大輝「いかん!こうしちゃいられねぇ!」
大輝は風呂場へ駆け込む。
クロ「何を慌てているんだ?」
〇アパートのダイニング
山都大輝「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
プシュ!プシュ!プシュ!プシュ!プシュ!
クロ「う・・・何だ!この匂いは!」
山都大輝「なんだ!香水の匂い嫌いなのか?」
クロ「鼻がもげそうだ・・・」
山都大輝「悪い!悪い!」
クロ「人間はこんな匂いが好きなのか?」
クロ「理解に苦しむ・・・」
〇アパートのダイニング
山都大輝「えっと・・・」
大輝はリュックの中に必要になりそうな物をひたすら詰め込む
山都大輝「よし!こんなもんかな!」
クロ「そんな大荷物が必要なのか?」
山都大輝「まぁ備えあれば憂いなし!って言うからな!」
〇アパートのダイニング
山都大輝「じゃあ!行ってくる!」
山都大輝「カリカリと水はここにあるし、トイレの砂も掃除したからバッチリだな!」
クロ「頑張って来いよ!ヤマト!」
山都大輝「おぅ!まかせとけ!」
山都大輝「あと!絶対についてくるなよ?」
山都大輝「フリとかじゃないからね?ホント!」
クロ「心配するな!大丈夫だ!」
山都大輝「じゃあ!行ってくる!」