ものぐさな名探偵 ~つまらない依頼はお断り~

HALPIN

5.誤解と和解(脚本)

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〇田舎のショッピングモール
功刀絢花「・・・」

〇ショッピングモールのフードコート
功刀絢花「おっ、来た来た!」
功刀絢花「おーい、こっちだ!」
与志之「なんじゃ? こんなところに呼びつけおって」
宏斗「聞きたいことって何だよ?」
宏斗「げっ、あのじいさん!」
与志之「悪ガキめ!」
功刀絢花「まあまあ」
功刀絢花「落ち着いてください」
功刀絢花「今日は二人に聞きたいことと お話することがあってお呼びしたんです」
功刀絢花「とりあえずこれでもどうぞ」
与志之「ああ、すまん」
功刀絢花「はい、少年も!」
宏斗「ありがと」
与志之「それで、話とは?」
宏斗「俺がやったんじゃないって 証拠が見つかったのか?」
功刀絢花「いや、まだ証拠までは・・・」
功刀絢花「でも、同じ日に同じようなイタズラが 多発していたことが分かりました」
与志之「他の家にまでやっておったのか?」
宏斗「俺、そんなことしてないよ!!」
功刀絢花「私の話をちゃんと聞いてください」
与志之「ああ」
功刀絢花「警察から聞いた話によると 石などが投げ込まれたのは3件です」
功刀絢花「1件は窓が割れ、1件は車に命中」
宏斗「もう1件は?」
功刀絢花「庭先にビニルパイプが落ちていたそうです」
与志之「それで、犯人は?」
功刀絢花「まだ不明です」
功刀絢花「ただし・・・」
功刀絢花「投げ込まれた3件の家は直線距離でも最大 1kmほど離れています」
功刀絢花「与志之さんのお宅も含めて 全てを回ろうと思うと道のりは3km以上」
功刀絢花「にもかかわらず 石が投げ込まれたほぼ同じ時刻だそうです」
与志之「まったく同じ時間なのか?」
功刀絢花「いえ、数分の誤差はあるようですが」
功刀絢花「午後9時30分ごろということでした」
功刀絢花「実際には9時30分から10時の間でしょう」
与志之「なるほど・・・」
宏斗「俺が塾帰りに竜を見つけたのも ちょうどそのころだ!!」
功刀絢花「それでですね」
功刀絢花「仮に全てが同一犯だとすると」
功刀絢花「宏斗少年には犯行不可能です」
与志之「・・・」
功刀絢花「車かバイクのような移動手段がないと 3kmの道のりを数分で走れませんからね」
宏斗「ほら、俺の言ってる通りだろ!」
与志之「たまたま同じ日に似た被害があっただけ ということは無いのか?」
功刀絢花「たまたま、その日に集中して 器物破損のイタズラがあった・・・」
功刀絢花「ありえなくはないですけど」
功刀絢花「4件も偶然が重なるとは 考えにくいと思います」
功刀絢花「関連性を疑った方が自然かと」
与志之「ふむ・・・」
功刀絢花「それはそうと、問題は竜だ!」
宏斗「はぁ?」
功刀絢花「疑いを晴らしてやったんだ 竜についてもっと詳しく聞かせてくれよ!」
宏斗「別にいいけど・・・」
宏斗「前に話したことくらいしか・・・」
与志之「待て!!」
与志之「ワシはまだ納得しておらんぞ!」
功刀絢花「えっ?」
与志之「他の3件は関連していても ウチのは別件ということもありえ・・・」
  キャー
「なんだ?」
与志之「悲鳴のようだな」
功刀絢花「ああ」
宏斗「あっちからだ!!」

〇ショッピングモールの一階
功刀絢花「なんだ?」
功刀絢花「何があったんだ?」
麻里香「この人が、私のスカートの中を・・・」
功刀絢花「この人?」
利男「そ、そんな・・・」
利男「誤解です!」
与志之「じゃあ、その手に持ってるのは何じゃ?」
与志之「そのスマホで盗撮したんじゃろ?」
功刀絢花「たしかに、カメラが起動状態だな」
利男「違いますよ!」
警備員「どうされました?」
与志之「ここに盗撮魔がおるんじゃ!」
利男「だから、違いますよ」
麻里香「警備員さん、捕まえてください 本当にこの人は私のスカートの中を」
警備員「落ち着いてください」
警備員「まずは、そのときの状況を・・・」

〇空港のエスカレーター
麻里香「私はそこのエスカレーターに 乗っていたんです」
麻里香「でも、そのとき視線を感じて・・・」
麻里香「ここのエスカレーターガラスが透けてて 下からのぞかれることがあるんです」
麻里香「だから、それだと思って下を見たら」
麻里香「この人がこっちにスマホを向けて 写真を撮ってたんです」
麻里香「それで悲鳴を上げたら」
麻里香「人が集まってきて・・・」

〇ショッピングモールの一階
利男「だから、俺はやってない!」
麻里香「言い逃れるつもりですか?」
警備員「そのスマホを渡しなさい!!」
利男「なんでそんなこと!」
利男「俺の話を聞けよ!」
功刀絢花「・・・」
功刀絢花「なあ、向こうの壁にあるのってさ」
宏斗「んっ?」
功刀絢花「あの人形だよ」
宏斗「ああ、あれ!」
功刀絢花「たしか人気アニメのキャラだよな?」
宏斗「そうだぜ」
宏斗「このモールの夏イベントで 期間限定で展示されてるんだ!」
功刀絢花「なるほどな」
警備員「ほら、スマホを見せなさい!」
利男「嫌だよ!」
功刀絢花「見せてやれよ」
功刀絢花「そうしたらすぐに解放されるんだし」
利男「でも・・・」
功刀絢花「恥ずかしがるなよ 自分の趣味に自信を持てって」
利男「・・・」
功刀絢花「あの人形と並んで自撮りしてたんだろ?」
利男「・・・はい」
警備員「人形?」
功刀絢花「ああ、この人は、展示されている人形と ツーショットを撮ってたんだよ」
利男「今しか一緒に写真を撮れないから」
麻里香「でも、たしかにカメラを私の方に向けて」
功刀絢花「人形の横に並んでインカメラを使うと」
功刀絢花「ちょうどエスカレーターを写しているように見えるだろ?」
麻里香「本当だ・・・」
警備員「スマホの写真も・・・」
警備員「人形と、ツーショットばかりでした」
警備員「盗撮はありません」
利男「だから言ってるだろ・・・」
警備員「すみませんでした 大変失礼なことを・・・」
麻里香「ごめんなさい」
利男「まぁ、分かってくれればいいよ」
功刀絢花「一件落着だな!」
与志之「まさか本当に誤解じゃったとは」
功刀絢花「そういうもんさ」
功刀絢花「人間は思い込んだら なかなか自分の考えを変えられない」
与志之「なぁボウズ 本当に石を投げ込んでいないのか?」
宏斗「だから、そう言ってるだろ!」
与志之「嘘だったとしても 素直に謝れば責めはせんぞ」
宏斗「やってないことに謝りたくないよ!」
与志之「そうか・・・」
与志之「ならば、謝るのはワシの方か・・・」

〇田舎のショッピングモール
与志之「疑ってすまんかったな」
与志之「お前さんを信じることにするよ」
宏斗「当たり前だろ。俺はやってねぇもん」
与志之「探偵さんにも世話になった」
功刀絢花「別に・・・」
宏斗「ありがとな、探偵の姉ちゃん!」
功刀絢花「そんなことより竜だよ!」
宏斗「まだ竜のこと言ってるのか?」
功刀絢花「お前が見たんだろ?」
宏斗「でも、竜なんていない気がしてきた」
宏斗「あれも思い込みだったのかも」
功刀絢花「・・・!?」
功刀絢花「なんだ、誠一郎からか・・・」
吉良誠一郎「もしもし、絢花ちゃん?」
功刀絢花「なんだよ」
吉良誠一郎「ちゃんと仕事してる?」
功刀絢花「ああ、当然だろ!」
吉良誠一郎「そんなこと言って 竜探しばっかりしてるんじゃないの?」
功刀絢花「い、いや・・・」
吉良誠一郎「さっき、ウチの不動産屋にまで 愛那さんが連絡してきたよ・・・」
吉良誠一郎「調査は順調かって」
功刀絢花「で?」
吉良誠一郎「昨日のことを話したんだけどさ」
愛那「夫が自殺するはずありません!」
愛那「ちゃんと調査してないんでしょ!!」
吉良誠一郎「だってさ・・・」
功刀絢花「まあ、身内の自殺がショックなんだろうな」
功刀絢花「だから、どうしても認めたくないんだ」
吉良誠一郎「かもしれないけど ちゃんと調査はしないと・・・」
吉良誠一郎「お金はもらっちゃってるんだし」
功刀絢花「ああ」
吉良誠一郎「ちゃんと調べましたって証拠のために 現場とかの写真を撮っといたら?」
功刀絢花「そうだな」
吉良誠一郎「それから、容疑者というか・・・」
吉良誠一郎「死んだ旦那さんの浮気相手にも 一度は会っておいた方がいいと思うよ」
愛那「夫の浮気相手の女には会いましたか?」
愛那「あの女に会えば分かるはずです」
愛那「こいつが犯人だ、って!!」
吉良誠一郎「って言ってたから・・・」
功刀絢花「ったくよー」
功刀絢花「面倒な依頼を受けやがって」
吉良誠一郎「じゃあね ちゃんと愛那さんの件も調査しなよ!」
功刀絢花「ごめんな、少年」
功刀絢花「別の仕事が入った」
功刀絢花「竜探しはまた今度だな」
宏斗「竜なんて探すより、ちゃんと働けよな!」
功刀絢花「お前が持ってきた依頼だろ」
功刀絢花「やる気のない依頼人は困るな」
宏斗「やる気のない探偵のほうが もっと困ると思うぜ!」
宏斗「そっちの依頼人も助けてやれよ」
宏斗「俺を助けてくれたみたいにさ!」
宏斗「じゃーな!」

次のエピソード:6.偶然の一致!?

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