竜と夜明けの彼方まで

白星ナガレ

ep.7 すくいの掌(脚本)

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〇荒廃した街
ラノ「僕は助けたいんだ・・・君のこともね」
ラノ「僕の声が聞こえるなら、返事をして!」
竜「何故、言葉、わかる? ──妙な人間」
ラノ「それは僕の方こそ聞きたいよ」
ラノ(雲の国ではルディ以外の竜の言葉は わからなかったのに、どうして・・・)
チューニャ「もしかして、さっきから怪物と 話してるの? 本当にあなた何者?」
ラノ(チューニャは竜の言葉を理解してない・・・ 僕にだけ聞こえてるのか?)
ラノ「理由はわからないけど、僕に君の言葉が わかるのは本当だよ! だから信じて──」
竜「・・・人間、信じない 魔法、使って、私を傷つける!」
竜「早く、ここから立ち去れ──!」
ラノ(炎が・・・巻き込まれる!)
ラノ(剣で振り払えば──!)
チューニャ「な、何して・・・ 建物が吹き飛んだけど・・・?」
ラノ「そ、そこまでやるつもりは・・・」
竜「やはり、人間、危険な生き物!」
ラノ(もう一度、次は慎重に──!)

〇荒廃した街
ラノ(うまく炎を払えた・・・!)
竜「妙な剣・・・私、負けない」
ラノ(もう一度・・・!)
チューニャ「は、張り合ってる・・・あの怪物と・・・」
チューニャ「巻き込まれたら絶対死ぬ・・・ 私はクレム様を助けなきゃいけないの!」
竜「魔法使い、逃がさない・・・!」
ラノ「チューニャ!」
ラノ(まずい、つい、力が入った・・・! 竜は?)
ラノ(け、怪我・・・僕のせいで──!)
ラノ「ごめん、すぐ手当てを・・・どうしよう チューニャ! 君の魔法で・・・」
チューニャ「・・・」
ラノ(気を失ってる・・・! 爆風に巻き込まれたんだ・・・)
ラノ「ごめん──!」
竜「人間・・・人間め・・・ いつか、必ず・・・」
ラノ「ま、待って!」
ラノ(・・・竜、どこか行っちゃった・・・)
ラノ「ごめん──ごめん、二人とも・・・」
ラノ(助けるなんて言っておいて 全然ダメじゃないか・・・!)
ラノ「・・・」
ラノ(──後悔してる場合じゃない・・・ まだクレムが待ってる!)
ラノ「薬草を持って、チューニャを連れて ちゃんと帰るんだ・・・」
ラノ(気絶した人間って、こんなに重いのか・・・)
ラノ(目の前がチカチカする・・・)
ラノ(そういえば僕、傷がまだ・・・)

〇黒

〇城の客室
ラノ「・・・また、この部屋・・・」
ラノ「そうだ・・・僕、竜もチューニャも 助けられなくて──」
チューニャ「あ・・・」
ラノ「チューニャ!」
ラノ「──ごめん」
ラノ「君を助けるなんて言って・・・ ちゃんと助けられなくて、ごめん」
チューニャ「・・・なんなの、それ」
ラノ「君の頭の包帯・・・その怪我、 僕が剣を制御しきれなかったせいだ」
チューニャ「──謝られるの、ムカつく」
ラノ「え・・・」
チューニャ「私のことを 自分が助けて当然だと思ってるところも、」
チューニャ「私のことを助けたのに 助けられなかったとか言うところも、」
チューニャ「私より先に謝るところも、ムカつく!」
ティカ「コラ」
チューニャ「い、いったぁぁ・・・」
ラノ「い、いつからそこに・・・誰?」
ティカ「医師のティカだ」
チューニャ「なんで急に叩くのよ!」
ティカ「お前がたわけているからだ」
ティカ「寝てろと言ったのに勝手に出歩き 別の患者にちょっかいをかけて・・・」
ティカ「医師としての目線を抜いても、お前・・・ 命の恩人にかける言葉じゃなかっただろう」
チューニャ「ティカには関係ないでしょ! ムカつくものはムカつくの!」
ティカ「勝手に付き人を騙ってラノに同行し、 救われて、挙げ句の果てに暴言か・・・」
ラノ「付き人を騙って・・・?」
ティカ「本当は私が一緒に行く予定だったんだ」
ティカ「私なら薬草を見分けられるし あの地の事情もよく理解しているからな」
ティカ「それをこいつは勝手に・・・ 話を盗み聞きして先回りしたんだ」
ティカ「後を追ってよかったよ お前たち、道端に仲良く転がってたんだぞ」
ティカ「ラノがチューニャを守るようにしてな・・・ 怪我の具合からしてもそういうことだろう」
ラノ「それは・・・」
ティカ「詳細は後でいい・・・それよりチューニャ お前、本当に他に言うことないのか?」
チューニャ「・・・」
チューニャ「・・・・・・」
チューニャ「・・・・・・・・・」
チューニャ「ごめんなさい・・・」
チューニャ「ラノ・・・ひどいことして、ごめんなさい」
チューニャ「でも!」
チューニャ「ムカつくのには変わりないから! 助けてくれてくれてありがとう!」
ティカ「情緒がめちゃくちゃだな」
ラノ「いや・・・僕の方こそありがとう」
チューニャ「・・・えっ? 今、私に言ったの?」
ラノ「そうだよ・・・ 仕掛け魔法から助けてくれたでしょ?」
ラノ「色々教えてくれたしね ありがとう、チューニャ」
チューニャ「・・・」
ラノ「・・・僕、なんか変なこと言った?」
チューニャ「・・・本当にムカつく 確かに助けたよ? 助けたけどさ」
チューニャ「あれは、つい! やっちゃっただけで! ラノを助けたかったわけじゃないの!」
ラノ「・・・僕が助かったのは変わりないよね?」
ティカ「ラノ、それ以上何も言うな・・・ チューニャは面倒な奴なんだ」
チューニャ「そもそも私、ラノのこと信用してないから! 何者なのか全然わからないし!」
チューニャ「そんな奴に救われたのがムカつくの! 私だけじゃなくてクレム様まで・・・!」
ラノ「クレム・・・」
ラノ「クレムは大丈夫なの?」
ティカ「ああ、薬草のおかげでな」
ラノ「よかった・・・!」
チューニャ「私の方がクレム様のこと心配してたもん!」
ティカ「いい加減にしろ、お前・・・ そういえば国王陛下がお前を探してたぞ」
チューニャ「え・・・国王様が?」
ティカ「ありがたいお話があるそうだ よかったな」
チューニャ「あ・・・頭が痛くなってきたな~ 寝てた方がいいかも~」
ティカ「馬鹿なこと言ってないで さっさと行け」
チューニャ「ぐすん・・・」
ティカ「さて、ラノ お前には話しておきたいことがあるんだが」
ティカ「ひとつ、先に確かめたい・・・ お前とクレムの関係はよくわからんが」
ティカ「ラノ、お前はクレムの正体を知っているか?」
ラノ「クレムの・・・正体?」

次のエピソード:ep.8 本当の君

コメント

  • みんな助かって一安心!ラノの純粋な心が、周りに少しずつ影響を与えていくのが良いですね^^チューニャとも、この先いいコンビになる予感がします。
    ラノと竜のバトルも迫力ありました。炎VS剣撃、参考にさせて頂きます!

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