2話 呪いの剣(脚本)
〇葬儀場
神代 ことり(かみしろ ことり)「古鞘(こさや)おじいちゃん・・・・・・」
神代 ことり(かみしろ ことり)「覚悟はしていたけれど、 やっぱり悲しいよ・・・・・・」
介護士さん「ことりちゃん。 ちょっと良いかしら?」
神代 ことり(かみしろ ことり)「ふぇ、貴女は確か、 古鞘おじいちゃんの介護士さん。 どうかされましたか?」
介護士さん「古鞘さんが遺言でね、形見をことりちゃんにあげたいって言ってたの」
神代 ことり(かみしろ ことり)「えっ!?」
介護士さん「葬儀が落ち着いてから、遺品の整理をするからことりちゃんも終わったら居間に来てね」
神代 ことり(かみしろ ことり)「古鞘おじいちゃんの形見。 アタシ、大切にするからね」
〇古風な和室(小物無し)
葬儀後
神代 ことり(かみしろ ことり)「うわぁ、立派な刀ですね・・・・・・」
介護士さん「女の子に遺品として渡す物として刃物はどうかと思うけれども・・・・・・」
介護士さん「ことりちゃん。いらなくなったらいつでも連絡して頂戴ね」
介護士さん「いくら遺言とはいえ、女の子に刃物を渡すのは気が引けるから・・・・・・」
神代 ことり(かみしろ ことり)「大丈夫です!私、剣道部だったので、刀の扱い方にはある程度慣れていますから」
神代 ことり(かみしろ ことり)「ありがとうございます。介護士さん。 古鞘おじいちゃんの剣、一生大事にします!」
介護士さん「ありがとう、ことりちゃん。 天国に行かれた古鞘さんも、きっと喜んでいるわ」
介護士さん「それじゃあ私は他の人の案内もしなきゃいけないから、これで失礼するわね」
神代 ことり(かみしろ ことり)「はい、ありがとうございました!」
〇女性の部屋
神代 ことり(かみしろ ことり)「古鞘おじいちゃん。こんな立派な剣を持っていたんだ」
神代 ことり(かみしろ ことり)「上身(かみ)に所々黒いまだら模様がついているけれど、他の部位は新品みたいに綺麗」
神代 ことり(かみしろ ことり)「一体いつ、造られた剣なんだろう?」
姉さん、入ってもいい?
神代 ことり(かみしろ ことり)「蘭丸? ちょっと待っててねー」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「僕が大人しく待ってあげると思ってんの?ノックしてあげただけでも有り難く思いなよ」
神代 ことり(かみしろ ことり)「もう、蘭丸!!姉弟だからって許される事と許されない事があるんだよ!!」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「大丈夫だよ、姉さん。僕はイケメンだから何でも許されるんだよ」
神代 ことり(かみしろ ことり)「アタシはアンタの事をイケメンだとは一ミリも思ってないわよ!!」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「姉さんがそう思ってなくても世間は僕の事をイケメンだと思っている。これは事実だ」
神代 ことり(かみしろ ことり)「私の主張も事実として受け止めなさいよ!!」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「まぁ、そんな事より」
神代 ことり(かみしろ ことり)「そんな事で済まさないで!!」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「フザケた事に親父が珍しく今日は早く帰れるって連絡が来やがった。だから今日は出前でも取るかって話になったよ」
神代 ことり(かみしろ ことり)「わーい。アタシ、ピザが食べたい♪」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「何がわーいだ!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「今日はお葬式に行ってきたから、晩御飯どうしようか悩んでいたから丁度良かった♪」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「あぁ、古鞘さんの・・・・・・」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「何その刀。香典返し?」
神代 ことり(かみしろ ことり)「な訳あるかい!!これは遺品よ、頂いたの!!」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「なーんかヤな感じ・・・・・・」
神代 ことり(かみしろ ことり)「アンタの毒舌に比べたら可愛いもんよ!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「それよりもお父さん帰ってくるなら、急いで出前を取らないと・・・・・・。蘭丸、色々手伝って頂戴!!」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「はぁ・・・・・・。メンドくさ」
その日の夜
〇屋敷の大広間
???「一体私達が何をしたっていうの!?」
???「お前達が【────】である事が罪だ」
???「くっ、臭い!!何よこれ!!」
???「私達が住む国には火刑というものがある」
???「ぎゃあぁあぁああ!!」
???「た、タダでは死なない!!お前も道連れだ!!」
???「ぁあぁあああ!!」
???「哀れな女だ。名刀・絶で逝ける事。光栄に思うが良い」
???「あ・・・・・・」
姉上ぇえ!!
〇女性の部屋
神代 ことり(かみしろ ことり)「ぴゃっ!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
神代 ことり(かみしろ ことり)「今の、夢?」
神代 ことり(かみしろ ことり)「なんかイヤな夢だったなぁ。お水でも飲んで落ち着こうかな」
〇おしゃれなリビングダイニング
神代 健治(かみしろ けんじ)「ことり、こんな時間にどうした?」
神代 ことり(かみしろ ことり)「あ、お父さん。 ちょっと嫌な夢を見ちゃって・・・・・・」
神代 ことり(かみしろ ことり)「お父さんこそ、ここで何してるの?」
神代 健治(かみしろ けんじ)「実は父さんも夢見が悪くてね。溜めていた映画でも見ようと思っていたんだ」
神代 ことり(かみしろ ことり)「へー!!どんな夢だったの!?」
神代 健治(かみしろ けんじ)「夫婦の家に火を付けて、奥さんを斬る夢だ」
神代 ことり(かみしろ ことり)「私の見た夢と殆ど内容が一緒だね」
神代 ことり(かみしろ ことり)「でも私の時は姉弟だったような・・・・・・」
神代 健治(かみしろ けんじ)「ことりも良ければ映画、一緒に見るかい?」
神代 ことり(かみしろ ことり)「うん、そうだね。何だか今日は眠れそうに無いし、映画見ようかな」
神代 ことり(かみしろ ことり)(父娘で一緒の夢を見るって、そんな事あり得るのかな?)
〇綺麗な図書館
神代 ことり(かみしろ ことり)「はぁ、完璧寝不足だよ・・・・・・。 もう少しで新学期が始まるのに・・・・・・」
神代 ことり(かみしろ ことり)「にゃんちゅう!?」
神代 志恩(かみしろ しおん)「どうした。元気が無いな」
神代 ことり(かみしろ ことり)「お兄ちゃん!? どうしてここにいるの!?」
神代 志恩(かみしろ しおん)「野暮用だ。お前こそどうした? 図書館に来るなんて珍しいじゃないか」
神代 ことり(かみしろ ことり)「丁度良いところに!! お兄ちゃん、力を貸して!!」
神代 志恩(かみしろ しおん)「一体どうした?訳を話せ」
〇綺麗な図書館
神代 志恩(かみしろ しおん)「成る程 家族揃って奇妙な夢を見始めた訳か」
神代 ことり(かみしろ ことり)「どう、お兄ちゃん。 何か分かった?」
神代 志恩(かみしろ しおん)「生活環境と共用する情報や体験が多ければ、同じ夢を見るという事はあるかもしれんが」
神代 志恩(かみしろ しおん)「俺達の親父は仕事が多忙だ。 家にいる事は滅多に無い」
神代 志恩(かみしろ しおん)「だから親父がお前と同じ夢を見るという事は有り得んのだよ」
神代 ことり(かみしろ ことり)「でも、現実には起こっているんだよ?」
神代 志恩(かみしろ しおん)「同じ夢を見始めたのはいつ頃だ?」
神代 ことり(かみしろ ことり)「確か、三日前だったかな?」
神代 志恩(かみしろ しおん)「三日前か・・・・・・ 何か変わった事がなかったか?」
神代 ことり(かみしろ ことり)「そういえば、古鞘さんのお葬式があって、 形見で剣を頂いたよ!!」
神代 志恩(かみしろ しおん)「剣か・・・・・・」
神代 志恩(かみしろ しおん)「一旦場所を変えよう。 俺について来い」
〇中央図書館
ピッ。
神代 ことり(かみしろ ことり)「もしもし蘭丸。どうかした?」
姉さん!!助けて!!
このままじゃあ、僕
父さんに殺される!!
〇高級一戸建て
神代 志恩(かみしろ しおん)「これは・・・・・・!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「家の中から刀を振り下ろす音が聞こえる!!」
神代 志恩(かみしろ しおん)「家の中は危険だ!!お前はここにいろ!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「絶対やだ!!」
神代 志恩(かみしろ しおん)「なっ・・・・・・!?」
神代 ことり(かみしろ ことり)「蘭丸とお父さんがまだ中にいる!! 助けに行かなくちゃ!!」
〇おしゃれなリビングダイニング
鎧兜「お前【────】だな。 【────】はこの国には不要だ」
鎧兜「排除する!!」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「チッ!!親父がいきなり姉さんの部屋を漁ったかと思えば、甲冑野郎に変身するし僕を殺そうとするし、一体何なんだよ!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「蘭丸!!」
神代 蘭丸(かみしろ らんまる)「姉さん!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「もう大丈夫だからね!! アンタの事は私が必ず守ってあげるからね!!」
鎧兜「ほう。その様な棒切れで我に刃向かうとは良い度胸だ」
鎧兜「良かろう。我の名剣・絶で相手してやろう かかって来い」
神代 ことり(かみしろ ことり)(怖い。体が震える)
神代 ことり(かみしろ ことり)(でも蘭丸は、何でも出来るお兄ちゃんじゃなくて、何も出来ない私を頼ってきてくれた)
神代 ことり(かみしろ ことり)「見せてやろうじゃない!! 姉の底力ってヤツを!!」
おりゃああ!!
鎧兜「ふんぬ!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「ぴぇ!!竹刀が天井に突き刺さった!!」
鎧兜「フン、愚か者め。そんな棒切れで我を倒そうなぞ、片腹痛いわ!!」
鎧兜「グオッ!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「今だ!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
鎧兜「ぐぉおお!! 我の刀がぁ!!力が抜ける!!」
神代 健治(かみしろ けんじ)「うぅん・・・・・・。 僕は一体何をしていたんだ・・・・・・?」
神代 ことり(かみしろ ことり)「ふぇえん!! おとうさーん!!」
〇神社の本殿
神主さん「すまない。 この剣には呪力が感じられない」
神代 ことり(かみしろ ことり)「そんな訳ありません!! この剣を持ったらお父さんの姿が変わって、蘭丸や私に襲い掛かってきたんですよ!!」
神代 ことり(かみしろ ことり)「まぁ、姿が変わったところを見たのは、弟の蘭丸の方ですけど・・・・・・」
神主さん「儂も可愛らしいお嬢さんの言う事なら、信じてあげたいけれど、呪力が無い物は祓いたくても祓えんよ」
神主さん「正確に言うなら、お嬢さんがその剣の呪縛を知らぬ間に封印したんじゃよ」
神代 ことり(かみしろ ことり)「えっ!?」
神主さん「お嬢さんのご両親の何方かその道の人かな?」
神代 ことり(かみしろ ことり)「いいえ。父も母も普通の人だと思いますけど・・・・・・」
神主さん「まぁ、突然変異という可能性も無くはない」
神主さん「その道の先輩として忠告しておこう」
神主さん「一度怪異に関わった者は大なり小なり、運命からは逃れる事は出来ん」
神主さん「怪異と縁切りをするか。 それとも、怪異に立ち向かうか」
神主さん「怪異との縁切りをすれば、怪異に関わる事柄全てを忘れる事になる」
神主さん「だが、この令和の時代、怪異に立ち向かえる者はほんのひと握りとなってしまった」
神主さん「この意味をよく考えて、君なりの答えを出しなさい」
〇神社の本殿
これが私と神具・絶との出会い
そして私が初めて、
怪異に関わった出来事でもある
ここから私は、
【神童・志恩の妹】から、
【神代ことり】の物語が始まる