3.似た者同士(最終話)(脚本)
〇ラブホテルの部屋
鈴音「ん・・・・・・」
眞幌「じっとして」
眞幌の細くて長い指が私の手首を押さえ、首筋にキスが這わせられる。
その甘い痺れに眩暈がした。
彼氏には別れを告げてからここに来た。
二股かけるのは嫌だとか、そういう綺麗な理由じゃない。
未来のない彼を吹っ切るきっかけのために、yomoくんに会うことを理由にしたのに過ぎない。
(ずるいのは私だ。一人ぼっちになる瞬間を作るのが怖かったんだ)
それがわかったのは、眞幌といよいよ肌を合わせようとした時だった。
キスが降りてきて、彼の手が太ももに触れた瞬間──
(違う・・・・・・こんなふうになりたかったわけじゃない)
勢いで距離を縮めてみれば、この心の空虚な部分が埋まるかと思ったのに。
真幌に触れられて込み上げてきたのは、言葉にできないほどの自己嫌悪だった。
鈴音「やめ・・・・・・やめて」
眞幌「今更? どうして」
鈴音「どうしても」
見た目よりしっかり筋肉のついた胸を押し返し、私は懇願するように言った。
鈴音「・・・・・・お願い」
すると眞幌は白けたように私から離れてため息をつく。
眞幌「下手だった?」
鈴音「ちがう。私がいけない・・・・・・こんな、らしくないことして」
眞幌「・・・・・・俺のこと知りたいならさ。全部くれないとダメでしょ」
ぐずぐず言っている私の手首を解放し、眞幌は苦笑した。
眞幌「心も、体も、魂も・・・・・・身代わりにするなら全部くれないと」
鈴音「身代わり・・・・・・」
(彼氏のことは言ってなかったんだけどな)
眞幌には私が彼氏とうまく行っていないことは分かっていたようだった
鈴音「怒ってる?」
眞幌「別に・・・・・・」
彼はふうとため息をついてベッドから降りた。
(やっぱり、眞幌にはなんでもバレちゃうんだな)
眞幌「ほんと、鈴音ちゃんて世間知らずだよね」
ずっと余裕のあった眞幌が、初めて苦しげな表情を滲ませた。
鈴音「ごめ・・・・・・んね」
眞幌「謝るとか、変なの」
そう言って、彼は会った時と同じ笑顔を向けてくれた。
眞幌「俺こそ、鈴音ちゃんの期待に応えられなくてごめん」
鈴音「ううん。そんなことない」
涙を拭う私の肩に、彼はガウンを羽織らせてくれた。
眞幌「わかってたんだ・・・・・・俺たちは似てるから」
鈴音「似てる、かな」
眞幌「うん。メッセージ交換してた時から感じてたよ」
床に散らばった服を身につけ直しながら、淡々とした調子で言う。
眞幌「やっぱり、って感じ」
鈴音「やっぱり?」
眞幌「そう。似た感覚の人って同じものを求めてるから、与え合うことができないんだ」
眞幌「鈴音ちゃんも同じ」
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