黒色の朱雀

華宮槻乃

契約(脚本)

黒色の朱雀

華宮槻乃

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〇荒れた倉庫
???「・・・・・・なぁ・・・」
???「・・・おい、起きろ」
???「起きろって!」
01号「・・・っ!?」
???「目は覚めたか?」
01号「・・・ダレ、だ」
???「そんなこたぁ、どうでもいいんだよ」
01号「・・・」
???「あ〜・・・めんどくせぇ・・・ カル、だ 俺の名前はカル」
01号「カル、カル・・・覚えタ」
カル「それで?あんた、デイズの怪人の01号サマだろうが なんでこんなとこでぶっ倒れてる」
  ここは第二火薬倉庫
  つい数時間前、この火薬倉庫付近で「デイズ」の怪人が現れたと報告が入ったのだが、生憎プロのオペレーターは出払っていた
  そこで国から「ミスタルリアス学園」に、使えるオペレーターを寄越せ、と要請が入り、カルを含めた数名が事に当たることになった
  のだが・・・
カル「火薬庫に主力突っ込んで大爆発 みんな仲良くオダブツ作戦なんてデイズのアホどもはふざけてるとしか言いようがないが・・・」
カル「だがお前は捨て駒じゃあねぇだろ なにせ、お前はデイズの01号、一番なんだから」
01号「・・・教える、義理ハ、ない」
カル「はぁ・・・これだから怪人は・・・」
01号「・・・」
カル「お前、契約切られてるだろ」
01号「っ・・・ナゼそれヲ」
カル「虫の息状態の01号をこんなとこに放ってる時点でもう見放されてんだろうなってのは誰が見たって分かる」
カル「お前の主人はお前を捨てたんだ もう義理立てる必要もねぇだろ」
01号「・・・カルの・・・言う通リ、ダ」
カル「そうか、なら話せるな?」
01号「・・・アぁ」
01号「・・・ワタシは、ここで死ぬ運命だっタ」
01号「この作戦、ハ、カル達の仲間、ヲ、効率よク減らす、タメ、のものだと、知らされていタが・・・」
01号「本来ノ目的は、違う この作戦ハ、ワタシを・・・ 「欠陥品」ヲ、廃棄する、タメのものダ」
カル「・・・「欠陥品」? お前が?散々国を荒らし回ったお前がか?」
01号「あァ・・・そうダ」
カル「最強と呼ばれた怪人を「欠陥品」呼ばわり? ・・・ますます理解出来ないな」
カル「まぁいい そもそもデイズの馬鹿どもの考えなんて理解する価値もない」
01号「・・・すまない」
  ガコッ・・・ガコッ・・・ガコッ・・・
カル「・・・っ!?」
01号「・・・カル」
カル「・・・声を潜めろ、01号」
01号「・・・分かっ、タ」
カル「なんで怪人が・・・ 音から考えてもかなりの数がいる」
カル(音から推測するに10はくだらない、か・・・ 怪人は群れない、つまり今この倉庫に向かってきているのは・・・)
カル(オペレーターに支配された奴ら だが学園の怪人とオペレーターが俺のことを助けにきた、って考えるのはあまりにも甘ったれてるか)
カル(投入された学園の怪人は火薬爆発作戦のせいで全部逝っちまったが、オペレーターは俺以外全員逃げ出しているし、それに俺は・・・)
カル「・・・チッ」
01号「カル・・・どうカ、したのカ」
カル「・・・なんでもねぇよ」
01号「そうカ」
カル「おい、01号 恐らく・・・いや、確定で外にいる怪人どもはお前の元お仲間だ 大破させた倉庫にこんな仰々しい戦力・・・」
カル「いったい、デイズは何を考えてやがる」
01号「恐らク・・・だが、 ワタシの、生存ヲ確、認しにキた・・・のだロう 今度コそ、死んダか、どうカ」
カル「余程お前のこと殺したいんだな・・・ お前、ほんと何したんだよ・・・」
01号「・・・それ、ハ」
カル「まぁいい それよりも今は、ここからどうやって逃げるかだ」
01号「ワタシ、ヲ、囮にすれバ、安全、だろウ」
カル「却下 折角相手サマが01号を手放したんだぞ? お前は装甲から核ひっぺがしてでも学園に持って帰るからな」
カル(怪人の本体は外装じゃなくて「核」 知能だとか記憶だとかは全て核に集約されている・・・)
カル(つまり、核さえあれば後は装甲と武器を用意してやれば、01号は機能する)
カル(まぁ、01号の強さは装甲による所も大きいから・・・ これは最終手段だな)
01号「っ、カル!」
カル「おい、01号! 声を潜めろって・・・」
カル「おわっ!?」

〇荒れた倉庫
カル「っ!? チッ、火がまた広がり始めた・・・」
01号「カル・・・このままでハ、マズい」
カル「くそっ」
カル「おい、01号! とりあえず、焼け死ぬ前にここを出るぞ!」
01号「了解、しタ」

〇廃倉庫
  ガコッ・・・ガコッ・・・ガコッ・・・
「ふふふっ」
???「これはまた随分派手にやりましたねぇ、01号は 流石に死にましたか?」
カル「ご生憎様、だな 01号は生きてんぞ」
???「っ!?誰だお前は! それより、01号が生きているだと!?」
カル「おう、ほら」
カル「無傷じゃあないが この通りピンピンしてんぞ」
01号「ザル、ド」
ザルド「・・・チッ これは想定の範囲内ではありましたが・・・ 忌々しい、この死に損ないが」
カル「ザルド、ってことは01号の前の契約者か 仮にも契約結んでた主従が会って早々にその反応か? 酷いもんだよ、なぁ?01号」
01号「・・・」
ザルド「いえ、別に欠陥品が生きていたことは構いませんよ 少々手間が増えてしまっただけです」
ザルド「01号 お前はここで確実に処分させていただきます」
  ガコッ・・・ガコッ・・・・・・ガコンッ
「オペレーター“ザルド”からの命令を受諾 戦闘準備開始 10秒後に戦闘体勢に入ります」
ザルド「はははっ! ここにいる怪人は13機 いくら01号とはいえ、手負いの身でどこまで持つかな!?」
カル「まともに動けやしない獲物相手にタコ殴りとは・・・ 趣味が悪ぃな」
01号「カル・・・流石ニ、今のワタシでは・・・」
カル「あぁ、無理だろうな 確実にぶっ壊される」
01号「・・・」
カル「だが、お前がやられるってことは俺も殺されるってことだ それは是非とも避けたい」
カル「01号 俺に攻撃の権限を譲渡出来るか」
01号「譲渡・・・それハ、契約ヲ結ぶ、といウことカ?」
カル「いや、この場限りのものだ」
01号「・・・分かっタ カル、石を」
カル「おう」
01号「オペレーター“カル”に「攻撃」のコントロールを譲渡 これより戦闘準備を始める」

〇廃倉庫
カル「────」

〇廃倉庫
カル「攻撃コントロールだけでこのややこしさか・・・ 流石だな、01号」
ザルド「いやはや・・・馬鹿なガキだ その青目は学園の恥さらしの「カル」だろう?」
ザルド「せいぜい楽しませてくれよ! この欠陥品コンビが!」
「戦闘準備完了 戦闘を開始します」
カル「01号!いけるか!?」
01号「問題ナい 戦闘を開始する」
  ドガンッ!!!!
  バキバキバキッ
怪人たち「胸部の装甲の破損を確認 核エネルギーが20パーセントを切ったため 戦闘不能と判断 機能を停止します」
01号「1体撃破 標的を変更」
カル「・・・っ」
カル(攻撃のモーションの指示は入れていなかった・・・ ただの移動、いや、移動モーションを利用した体当たりか・・・)
カル(いくら知能持ちとはいえ・・・ ぶっ飛んでる・・・)
01号「核エネルギーが残り50パーセントを切りました 機能の一部を放棄し、エネルギーを温存します」
カル(だからといって、01号も限界だ 装甲の破損のせいか、エネルギーの減りが異常)
カル(このままいけば、全機倒す前に01号が力尽きる・・・)
カル(なら)
カル「01号! 1箇所に怪人ども集めろ!」
01号「オペレーター“カル”の命令を受諾 目標を変更する」
ザルド「1箇所に集めてどうすると言うんです? 潔く負けを認めれば、命くらいは助けてあげても良かったのですが・・・」
カル「お前には指1本たりともやらねぇよ!」
カル「01号!準備出来たか!?」
01号「目標を達成しました 待機に移ります」
カル「よし!下がれ!」
カル「おらよっ!」
カル「装甲のユニーク機能を解放! 攻撃モーション1「焔」!」

〇廃倉庫
  ゴォォオオオオオオッ!!!!

〇廃倉庫
カル「っ!!」
カル「あっついな・・・成功したか?」
01号「問題ナい 怪人の、核エネルギー、ノ、反応は、消えてイる」
ザルド「なっ・・・なっ・・・何故だ・・・!?」
ザルド「たかが攻撃モーション1の「焔」だろう!? 何故そんな大きな爆発を引き起こせた!?」
カル「お前・・・ここは何の倉庫か、知らないわけないだろう?」
ザルド「倉庫・・・だと? それは・・・」
ザルド「・・・っ!?」
カル「気づいたか」
カル「そうだ、ここは第二火薬倉庫 もちろん中にあったのは火薬だ」
カル「この袋ん中に燃えなかった火薬詰めて 袋に攻撃することで大爆発させたって訳だ 01号の機能が炎で助かったよ」
ザルド「チッ・・・」
ザルド「01号は欠陥品だ・・・ そんなものは必要ないというのに・・・」
カル「・・・おい、さっきから気になってたんだ お前、何故01号のことを「欠陥品」と呼ぶ?」
01号「・・・っ!カル・・・!」
ザルド「あ?お前・・・」
ザルド「あぁ、なるほど・・・ お前、01号に教えてもらってないのか」
カル「・・・っ、なんだよ・・・ニヤニヤしやがって 気持ちわりぃ・・・」
ザルド「いいですよ、特別に教えてあげます こいつは、01号は」
01号「やめロ、ザルド!」
ザルド「「心」があるんです」
カル「なっ・・・心が・・・ある? いくら、知能持ちだとしても、怪人に心はないはずじゃ・・・」
ザルド「それがこいつにはあるんですよ 何故かは知りませんがね」
ザルド「さて、私はここら辺でお暇させていただきます 01号を処分出来なかったのは痛手ですが・・・仕方ありません」
カル「なっ・・・!お前!」
ザルド「ではさようなら またどこかでお会い出来るのを楽しみにしてますよ」

〇廃倉庫
  シュンっ!

〇廃倉庫
カル「チッ・・・くそっ 逃げられた」
01号「・・・カル」
カル「なんだ?01号」
01号「・・・カル、は、どう思ウ ワタシが・・・怪人ガ、心ヲ、持つこと、ヲ」
01号「ワタシは・・・死ぬノが、怖い、のダ 昔ノ、戦闘のとき、ワタシは・・・ 仲間ノ怪人ヲ、見捨てタ」
01号「生に執着すル怪人ハ・・・不要だト、 だからワタシは、「欠陥品」なのダ」
カル「・・・それで?」
カル「生きたい、死にたくない そう思うのは普通のことだろ」
カル「その感情を怪人が持ってたって 何もおかしくない」
カル「いや・・・」
カル「むしろ、持ってない方がおかしいんだ」
01号「・・・っ!」
カル「なぁ、01号」
01号「なん、ダ」
カル「俺と契約結んでくれねぇか?」
01号「っ・・・ だが、ワタシは、欠陥品ダ」
カル「はっ 悪いな、俺も欠陥品なんだ」
カル「主従関係ってのが嫌なんだ 怪人を道具みたいに扱うのは嫌いだ、って そう言っただけなのにな 俺は欠陥品らしい」
01号「なラ・・・カルは、怪人に、ワタシに、何ヲ求めル」
カル「相棒」
01号「っ!」
カル「怪人との戦いは、少なからず命に危険が及ぶ なら、俺はただの道具に命を預けたいとは思わねぇ」
カル「怪人とオペレーターが対等な関係 俺が求めるのはそれだ」
01号「カルは・・・不思議ナ、オペレーターだナ」
カル「よく言われるよ」
カル「それで、俺の相棒になる気はないか? 01号」
01号「ワタシで、良い、のなラ」
カル「ありがとな」
カル「早速で悪ぃが、契約を始めるぞ」
カル「オペレーター“カル”は契約石「ルリアス」に誓って、ここに怪人と契約す 怪人の名を──」
カル「──朱雀」

〇廃倉庫
朱雀「──朱雀 ワタシの、新しい名・・・」

〇廃倉庫
カル「無事、契約完了だな」
朱雀「あァ」
カル「これからよろしく頼むぞ?相棒」
朱雀「!あぁ・・・よろシく、頼む」
朱雀「・・・ところデ、カル 聞きたイ、のだガ」
朱雀「ナゼ、朱雀、ナノだ? ワタシの体ハ、黒いガ」
カル「あっ・・・あ〜、それはだな・・・」
カル「・・・気が向いたときに教えるよ」
朱雀「そう、カ」
カル(炎出して戦うお前がカッコよかったから・・・なんて、ぜってぇ言わねぇからな)

コメント

  • オペレーターと怪人はいわば主人と奴隷の関係なんですね。そう考えれば、主人が「心のある奴隷と対等にいたい」と言うことがいかに常軌を逸した事なのか理解できました。難所を共に乗り越えたカルと朱雀は無敵の相棒になる予感がします。

  • 怪人が心を持つ。AIのシンギュラリティの暗喩のような、今まで心を持たなかったものが、心を持つ。いつかそのようなことが怒りそうだなと思いました。いつも、悪いのは悪用しようとする人間だなーと、考えさせられました。

  • 人間は心がなければ欠陥なのかもしれませんが、造られたものは心があると欠陥品…理不尽なものですね。
    確かに現実でもAIに侵略される…とか話はありますが、心があるからこそだと私は思いました!

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