エピソード7(脚本)
〇広い公園
小石川糸「・・・・・・」
恭子「・・・・・・」
小石川糸「じゃあ今度は私から!」
恭子「望むところ!」
小石川糸「私を呼ぶ誰か 小さく淋しく悲しい声が 生まれた時から頭の中で どこかで知らない声がする」
小石川糸「天 元 躰 神通力!!!」
恭子「きゅあああああ~」
恭子「・・・・・・」
小石川楽哉「あ、恭子ちゃんが元の姿に戻った!」
小石川噴気「いやそれよりも今糸が使った呪文って・・・」
「勝敗がつきました。第十七代恋師を、小石川糸に襲名いたします」
〇明るいリビング
小石川喜一「そうか・・・祈り紙の恭子ちゃんを破って」
小石川哀史「糸が恋師になったとはね」
小石川喜一「恭子ちゃん、大丈夫か? 顔色が悪いけど」
恭子「大丈夫。まだちょっとふらつくけど」
小石川糸「なんかごめんね、恭子ちゃん」
恭子「ううん・・・。私の力が足りなかっただもん、しょうがないよ」
恭子「手加減して負けてもらっても、ぜんっぜん嬉しくないし」
小石川糸「それならいいんだけど」
小石川喜一「ちょっと・・・というかすごく気になるのが」
小石川噴気「マスターオブ恋師のことだろう?」
小石川喜一「ああ。なあ糸、そのマスターオブ恋師ってどんな声をしていた?」
小石川糸「どんな感じって?」
小石川喜一「なんとなく懐かしい・・・とか?」
小石川糸「そう言われればそんな気もしたような気はするけど・・・」
小石川噴気「じゃあ・・・やっぱり」
小石川喜一「ああ。可能性は高い」
小石川糸「もうなんなの喜一にぃも噴気にぃも! なにが言いたいのかわかんないよ!」
小石川喜一「糸の前の恋師が、オレたちの母さんだった」
小石川糸「うん」
小石川噴気「恋師の引継ぎは、普通前任の恋師から、次期恋師へのバトンタッチ。直接、行うのが普通なんだ」
小石川喜一「でもオレたちの母さんは一年前、失踪したよな」
小石川糸「ちょっと旅行にでかけてきますって書置きだけ残して」
小石川噴気「母さんがいなくなったと思ったら父さんまで、モロッコに行っちゃったよな」
小石川糸「うん。お父さん、お母さんがいなくなってさびしかったんだと思う」
小石川喜一「そうだな。で、父さんとは我が家の通信手段、糸電話の術でいつでも話すことができる」
小石川噴気「でも母さんとはこの一年、一度も連絡が取れていないよな、糸電話で」
小石川喜一「今、母さんは糸電話の術を使えない状況にあると考えるのが普通じゃないか?」
小石川糸「えっ?」
小石川噴気「考えたくはないが、母さん・・・」
小石川喜一「生きていないかもしれない・・・」
小石川糸「なに言ってんのよ、喜一にぃまで!」
小石川噴気「マスターオブ恋師は・・・」
小石川糸「マスターオブ恋師がなに?」
小石川喜一「現世での恋師不在の時のみ、死んだ術師の中から選ばれて代行を務める」
小石川噴気「現世の恋師が不在ということは・・・」
小石川喜一「オレたちの母さんはもう・・・」
小石川糸「!!!!!」
小石川噴気「えっ? ってマジか!? 母さん!? あっ、今スピーカーにするから」
「ハッピーバースデー、糸~♪ みんなも元気にしてる~?」
小石川喜一「はあ~? てか母さん、なんでこのタイミング?」
小石川噴気「てかなんで普通の電話にかけてくるかな? 糸電話の術を使えばタダなのに!」
「それはね、私がもう糸師でも恋師でもないからで~す。糸電話の術は、使えませ~ん」
小石川噴気「はあ???」
「去年ね、返納しちゃったのよ~、能力」
小石川喜一「返納って、高齢ドライバーの運転免許証じゃあるまいし」
小石川糸「お母さん!」
小石川糸「私ね、恋師になったんだよ」
「そう! 糸はなりたかったのよね、恋師に?」
小石川糸「うん!」
「じゃあ、おめでとう! お母さんはね、糸が恋師になっても、ならなくてもどっちでもいいの
あなたが元気でいつも笑っていられるのであれば、本当にどっちでもいいのよ」
小石川噴気「あれ? オレたちはてっきりマスターオブ恋師が、死んだ母さんだと思ってたんだけど!?」
小石川喜一「母さんの声じゃないとしたら、あれは・・・」
「それは直接、マスターオブ恋師から聞くといいわ・・・って言っても、彼女の声を聞けるのは糸だけだから、あなたが
心の中で彼女に話しかけて、聞いた言葉をみんなに伝えてあげてちょうだい」
小石川糸「あ、はい。マスターオブ恋師さん、マスターさん。聞こえますか? あなたはいったい・・・えっ? えええええ~~~!!!」
小石川噴気「なんだよ、でっかい声、出して」
小石川糸「喜一にぃ! 恭子ちゃんを呼んできて!」
小石川喜一「あ・・・ああ」
小石川糸「恭子ちゃん、聞いてね。久しぶりね、恭子、お母さんです」
恭子「えっ?」
小石川糸「去年、糸ちゃんのお母さんが恋師を返上したことで、あの世の術師の中から恋師の代行者を決めることになったの」
小石川糸「糸ちゃんのお母さんが強く推薦してくれたこともあって、私が選ばれました」
小石川糸「自分がどうしてもなりたかった恋師になれて、私は今とても幸せです。恭子には私の夢をおしつけてしまってごめんなさい」
小石川糸「マスターオブ恋師になって、あなたとこうして話をすることもできたしね」
小石川糸「もういいのよ、恭子。これからあなた自身がなりたいものを見つけてね。あなたが幸せになることを心から祈っているわ」
恭子「お母さん・・・」
小石川糸「・・・・・・」
小石川噴気「そういうことだったのか」
恭子「糸、ありがとう。糸のお母さんもありがとうございます」
「どういたしまして。私もね、そろそろ普通のおばさんに戻りたいところだったからちょうど良かったのよ」
小石川哀史「心配したよ。それで母さん、今どこに?」
「モロッコよ」
小石川糸「えええ~?」
小石川噴気「父さんと一緒?」
「そう、追いかけてきちゃった。そういえば新婚旅行も行ってないのよね。せっかくだからこっちでもう少しラブラブするわ」
小石川糸「お母さん! 前にお母さんに教えてもらった呪文で勝つことができたの、私!」
「あの呪文で!? そりゃ~スゴいわ、糸」
小石川糸「えっ?」
「ごめんね~、あの呪文ね。百恵ちゃんの『赤い運命』あれをちょこちょこって変えただけのナンチャッテ呪文なのよ」
小石川噴気「あっ、そうか! それでどこかで聞いたことがあると思ったんだオレ」
「糸、よく聞いてね。呪文なんてね、本当はなんでもいいの。それこそ秋茄子は嫁に食わすな、でも
ちちんぷいでもなんでも。要は言葉じゃなく、その呪文を発しているときの術師の気持ち!
今回、恭子ちゃんに糸が勝ったのだとしたら、糸の方がほんのちょっと気持ちが強かった。
それだけよ・・・って釈迦に説法よね。能力を返納したただの人間の私が言うことじゃないけど」
小石川糸「お母さん・・・。 恭子ちゃんのお母さんをなりたかった恋師にするために・・・そのために」
「それはちがうわ。私が私のなりたい者になった、それだけよ」
小石川糸「・・・はい」
「もうしばらくここにいてお父さんと一緒に帰るから、その時までみんな、元気でいるのよ」
小石川噴気「は~い」
〇新橋駅前
恭子「・・・頭では、わかっているけど」
恭子「それでもやっぱり悔しい!」
恭子「恋師になりたかった・・・」
恭子「私はこの先、なにを・・・。 なにを目標に生きていけばいいんだろう」
「さぞかし、つらいだろうな」
恭子「えっ?」
「つらいだろう、かなしいだろう。うらめしいだろうな」
恭子「・・・・・・」
「そのつらさを取り除いてやろうか?」
恭子ちゃんのこれからが心配です。続きが気になります。
糸ちゃん、勝利おめでとう〜!
あら、糸ちゃんのお母さん生きてたんですか!びっくり😆楽しいお母さんだな♪「返納」って(爆)そっか〜普通のおばさんに戻れて良かったね❤「赤い運命」知りませんでした😅
いよいよ最終ボスの登場ですね。楽しみです😍🥰