家(脚本)
〇草原
私達はそれからもひたすら歩いた。気付けば周りの景色が少し変わってきている。
山も随分と近く見える。草原を貫くように大きな河が流れているのも見えた。この辺りでは最も大きな河だった。
道路からでは水面まではよく見えないけれど、今も十分な水量が流れているのは届いてくる音で分かる。
聴覚センサーの感度を上げているからだ。
〇外国の田舎町
ぽつぽつと人家も見える。敢えて便利な街を外れて居を構える物好きな人間が建てたものだった。
でも、人間がいた筈のところということは、当然、<あいつら>がいる可能性が高くなる。
だからその気配を察知する為に、センサーの感度を上げているという訳だ。
さすがに見通しがいいからそこまでしなくても近付いてくればすぐに分かるとは思う。
でも、その辺りをつい用心してしまうのが私達ロボットだ。
山が近付いたこともあってか、空気がさらに湿気を含んだものになったようだ。リリア・ツヴァイにさえ分かるほど。
これも、自然というものなんだろうな。
〇平屋の一戸建て
割と道路に近いところに建てられた人間の家を見る。
誰も住む者もなく捨て置かれたそれは、壊れてはいないもののどこか薄汚れてそれ自体が廃棄物のようにさえ見えた。
いや、実際に廃棄物と同じようなものか。
リリア・ツヴァイがそんな家をじっと見ていることに気付いて、私は問い掛けてみた。
リリアテレサ「行くか?」
センサーにも異常は捉えられない。中にあいつらがいる気配もない。
は、彼女と一緒に道路を外れてその家へと向かった。
簡単な柵で囲まれただけの、いかにもノスタルジックなデザインの木造建築だった。
もっとも、それに使われている材料は現在の建築基準法に則ったものだから、
わざとそういう風にデザインしたものだというのはすぐに分かる。
火災を防ぐ為に建材は全て難燃素材を用いるように決められているから。
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