埋葬(脚本)
〇平屋の一戸建て
<犬の動く死体>は、頭に銃弾を受けて横倒しになり、すぐに動かなくなった。
念の為、近付いてもう一発、弾丸を撃ち込んでおく。これで完全に頭の中の器官は破壊できた筈だ。
その様子を、リリア・ツヴァイは何とも言えない表情で見ていた。胸が締め付けられるような感覚を味わってるのが私にも分かる。
完全に怪物と化したものであっても、犬は人間にとっては本当に古くからの<友達>であり
<仲間>とも言える存在だったことが影響しているんだろうか。
しかし、いくら犬や人間の体を持っていても、こいつらは犬でもなければ人間でもない。そのどちらでもない<何か>だ。
博士はその<何か>そのものをこの星の住人の一種だと思っていたようだけど、
私にはそのような認識は与えられていないからやはり理解できない。
リリア・ツヴァイが気にしているので、私はその家のガレージにあったシャベルを使って庭に穴を掘り、
そこにただの死骸となった犬を埋葬した。その上で、柵の一部を剥ぎ取って墓標代わりに突き立てておく。
こんなことをしなくても骨さえ残さず分解されるんだから放っておけばいいんだけど、
人間の感覚としてはこうした方が納得がいくらしい。
〇木造のガレージ
ガレージには自動車があったものの、
もう一台止められるだけのスペースがあったのでリアカーをそこに置いた。雨が降ったりしても大丈夫なようにだ。
日も傾いてきたし、今日はこのままこの家に泊まることにする。
〇平屋の一戸建て
玄関のドアは開いたままだったので、ちょうどよかった。玄関が開いていたから、中で発症したとしても外に出ていけたんだろう。
〇古い畳部屋
中には人間も姿も<塵の山>もなかった。
ただ長いこと放置されていたから当然の、うっすらと埃が積もった人間の為の居住空間があっただけだった。
管理用のAIの反応もない。見れば、AI用のサーバーの電源が切られていた。
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