怪人禁猟区

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怪人禁猟区(脚本)

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〇村に続くトンネル
  ──ゆいが8歳になった頃
ゆい「ねえねえ、パパ! ゆいはいつになったらパパみたいにおっきくなれるの?」
レオン「はは、あと10年はかかるかな?」
ゆい「えー!!長すぎだよー!」
レオン「それだけ可愛い期間が長いんだ、いいことさ!」
ゆい「ゆいもパパとお庭の外にお出かけしたい!」
レオン「駄目だよゆい。お庭の外は、お前みたいな可愛い子を狙う悪魔が沢山いると教えただろ」
レオン「パパが悪魔を全部懲らしめるまで待っておくれよ」
ゆい「えー、あと何年?」
レオン「はは、あと10年はかかるかな?」
ゆい「もうー!!!」

〇テラス席
  ──『オーガニック専門Cafe 奥珠の森』
フレイン「今日のお昼はここにしようか、ドラーク」
ドラーク「おう、いいな!入ろうぜ!」

〇カフェのレジ
カフェ店員「いらっしゃいませ」
ドラーク「ここのヒトカツサンド美味いんだよなぁ!」
フレイン「オーガニック育成された仔ヒト肉を使用しているらしいよ。柔らかくて臭みも少ないよね」
ドラーク「だよな!じゃ、今日もヒトカツサンドセットにすっかな!」
フレイン「ああ、レオンもそろそろ来るらしい」
ドラーク「お、やっとかよ!」

〇テーブル席
ドラーク「やっと来たか!おい引きこもり! 元気にしてたか?」
レオン「やあ、久しぶりだね。 すっかり研究に没頭してしまってね。気がついたら春が夏になっていたよ」
フレイン「全く生真面目だね、君は。 えっと、ヒトの性と生殖機能の研究だっけ?」
レオン「ああ。 我々『怪人』にはなくヒトにある唯一の長所だ。研究が進めば、我々に再び雌雄が生じ、子をなすことも・・・」
ドラーク「よく分かんねぇけどよ、ヒトカツサンド美味いぜ!」
ドラーク「つうかお前、ラボで仔ヒト飼ってるんだろ?折角の食べ頃なのに、実験材料って事か?」
ドラーク「ストレスかけ過ぎたらこっちが死んじまうってのに。よくやるよ、全く」
レオン「まあ、仔ヒト肉なんてこうやっていつでも食べれるじゃないか。折角の生命だ、動物実験倫理に恥じない成果を出してみせるよ」
フレイン「君、ベジタリアンだしね。 まあ、気が変わったらぜひ食べてみなよ。本当に美味しいんだから」
レオン「ああ、ありがとう」

〇黒
  それは今から200年以上前のこと

〇東京全景
  科学進歩をいくら極めようとも、
  人類には常にある問題が生じていた

〇荒廃したセンター街
  ──争いである。
  争いのための兵器は、化学の進歩と共に進化し、最終的にそれは・・・

〇研究所の中枢
  ──遺伝子操作を組み込んだ生物兵器を用いるまでになった。
  2053年、某国の生物兵器研究所にて、それは産まれた。
  『怪人』
  遺伝子操作によりヒトより遥かに優れた身体能力を有しながら、近代兵器を取り扱うための高知能も持つ。
  ヒトの上位互換のような『怪人』が裏切らないように、彼らにはある操作があらかじめ加えられていた。

〇謎の施設の中枢
  ①怪人から雌雄を無くし、生殖を不可能にする。
  逃げ出した怪人が勝手に増殖する事を防ぐ為である。
  ②怪人の近くでヒトが強いストレスを感じると、怪人は発作を起こし死亡する。
  怪人によるヒトへの攻撃や反乱を防ぐ為である。
  この新兵器『怪人』により、人類は戦争の表舞台には立たず、怪人同士の殺し合いの結果が、戦争の勝敗となった。

〇荒廃した街
  荒れ果てた街を彷徨い
  『怪人』達はただただ同胞を殺し続けた。
  何年も

〇荒廃した街
  何年も何年も

〇荒廃した街
  何年も何年も何年も

〇炎
  何年も何年も何年も何年も

〇手
  ──2200年
  堕落の境地に達した人類は、
  あらゆる面倒事を怪人に委ねた。

〇白
  ──2300年

〇異世界のオフィス
フレイン「やれやれ、またレオンはロクに外に出なくなってしまったね」
ドラーク「まあいつも通りだが、全然連絡もつかねぇしな」
ドラーク「よし!ドッキリ突撃ラボ訪問でもやってやるか!」
フレイン「はは、いいね。 僕も1度はラボを見てみたかったんだよね」
ドラーク「うし!決まりな!」

〇村に続くトンネル
  ──ゆいが13歳になった頃
ゆい「お父さん、今日も遅いなぁ。 折角キノコ鍋作ってあげたのに〜!」
ゆい「一人で食べちゃうもん!」
ゆい「あ、やっと帰ってきたー?」
スケルター「ヒト? 何故こんなところに?」
ゆい「うん?私はゆいだよ! お父さんのお友達?」
ゆい「あ、お父さん以外の怪人初めて見た!嬉しい!」
ゆい「お父さんいっつも外出ようとすると怒るんだもん、怖い悪魔がいるって・・・」
  お前みたいな可愛い子を狙う悪魔が沢山いるんだよ
ゆい「・・・・・・・・・」
スケルター「ああ、Dr.レオンの飼っているヒトだな」
スケルター(父親役を演じてるのか、気味が悪い・・・ ベジタリアンで博愛主義者が動物実験をするとこうなるのかね)
ゆい「うん?だから『ゆい』だってば。 もう帰るからね! ついてこないで!」
ゆい「ちょっと手を離してよ! お父さんに言いつけるよ!」
スケルター「Dr.レオンは、国家反逆罪で指名手配になった」
ゆい「え?」
スケルター「研究費の度重なる横領と研究結果の改竄が確認されている。研究費の横流し先は武器商人だ」
ゆい「意味がわからない・・・」
スケルター「ふ、実験動物に無駄話が過ぎたな。 さて、ヒトの仔よ・・・」
スケルター「『全ての憂い事を怪人に委ね、良い夢を』」
「・・・・・・・・・・・・」
スケルター「は!?」
ゆい「え?」
スケルター「は!?!?」
スケルター「どういうこと──」

〇村に続くトンネル
ドラーク「はあ、こっちがドッキリに合いそうな気味悪い場所だな・・・」
フレイン「確かに暗いし静かで不気味だね・・・」
ドラーク「っつギャゃゃゃゃあああ!!!」
フレイン「・・・怪人の肩書も泣いてるよ」
フレイン「っ!」
フレイン「これは!!」
ドラーク「本当にいるじゃねぇか!! 逃げる!逃げるぞ!フレイン!!!」
フレイン「ちょ、ちょっと待ちなって! よく見なよ!」
ドラーク「どっからどうみても死体じゃねぇか!! 何でよく見なきゃいけねぇんだよ!」
フレイン「いや、お化けとかじゃなくて、事件って事だよ! 誰かに殺されたんだ・・・」
フレイン「このバッジ・・・警官か? 何故ここで?」
ドラーク「警官が死んでる!? おい、じゃあレオンは大丈夫なのかよ!?」
フレイン「ああ、心配だ。 すぐにラボに行こう!」

〇怪しい実験室
  ─ヒト性生殖機能・遺伝子研究所
  フレインとドラークがレオンのラボについた時、既にラボは火の海と化していた。
フレイン「この炎は・・・ 研究所の防衛システムみたいだ。 やはり、誰かがレオンのラボに・・・」
フレイン(警官はこの騒ぎで駆けつけた所を殺されたのか・・・?)
フレイン「レオン・・・」
  「ねえ」
  「貴方達はお父さんのお友達・・・?」
フレイン「君は・・・」
ゆい「お父さん、帰ってこないよ・・・」
ドラーク(ヒ、ヒ、ヒトじゃねぇか!! 生きてるの初めて見たぜ・・・)
フレイン「僕達は、ヒトの父親とはお友達ではないよ」
ゆい「私はゆいだよ・・・ そんなに私は『ひと』に似てるの?」
ドラーク「え!?そっくりすぎるんだが!? お前、まさか怪人なのか!?」
ゆい「うーん、怪人だけど、名前はゆいだってば」
ドラーク(訳がわからねぇ!!!)
フレイン「・・・・・・」
フレイン「それが本当なら・・」
フレイン「『全ての憂い事を怪人に委ね、良い夢を』」
「・・・・・・・・・・・」
ドラーク「マジかよっ!!!」
フレイン(飼育用のヒトへの合言葉が通じない⋯ 聞いたら最後、何も苦しむ事なく安楽死する筈が⋯)
フレイン「レオンがヒトを怪人化させたのか・・・? いや、しかし、非力なままのヒトの姿に留める事に何の意味が・・・」
  研究が進めば、我々に再び雌雄が生じ、子をなすことも・・・
フレイン「まさか・・・これが・・・」
ゆい「レオン、お父さんの名前・・・ お父さんのお友達なんでしょ?」
フレイン「お父さんって、レオンの事かい!?」
ドラーク「とりあえずここから出ようぜ! 大爆発しちまいそうだっ!」
フレイン「ああ! 君も行くよ!」
フレイン「レオンは・・・ 大切な君を置いて、死んだりしないさ」
ゆい「・・・うん!」
フレイン(父親か・・・ これから怪人の子を産むためだけの存在になると分かっていながら、なぜ・・・)

〇異世界のオフィス
  ゆいはフレインとドラークに、父が国家反逆罪で指名手配犯になっているらしいと説明した。
  そして、それを説明していた謎の怪人は、レオンに殺されたと。
  レオンはゆいに、暫く身を隠していなさいと伝えると、直ぐにその場を去ってしまった。
  ひとまず3人は落ち着いて話すため、ドラークの家に行く事にした。
フレイン「国家反逆罪って・・・ 怪人が国を治めてから、一度も聞いたことがないよ。一体何をしたって言うんだ?」
ゆい「えーっと、研究費がどうとか?武器商人とか?言ってた気がする」
ドラーク「なあフレイン・・・」
ドラーク「携帯がつながってねぇ・・・ それと、家の電気すらつかねぇ・・・」
フレイン「え!?」
ドラーク「外も見てみろよ・・・ どこも電気がついてねぇぞ・・・」
フレイン「停電だろう・・・大規模な・・・」
ドラーク「雷も落ちてねぇのに・・・?」
ドラーク「っ!誰だ!? 人ん家に勝手に上がるんじゃねぇよ!!」
  『驚かせてすまない、ドラーク』
「あっ!?」
レオン「ゆいっ! 良かった、ここにいたんだな!」
ゆい「お父さん!!」
ゆい「何も説明しないで一人にして・・・ ひどいよ・・・」
レオン「ああ・・・すまない・・・ とにかく時間がなかったんだ。 それに今も・・・」
レオン「フレイン、ドラーク・・・ きっと混乱しただろうに、この子を保護してくれてありがとう!」
レオン「この礼は絶対にどこかで・・・! 今はすまないが・・・」
フレイン「いや、待ってくれ。 君は国家反逆罪で指名手配犯だと聞いている」
ドラーク「おい、フレイン!」
フレイン「君と良く連絡を取っている僕達も疑われると思うんだが、何も説明も無しだなんて、流石に酷いんじゃないのかい・・・?」
レオン「そうだな・・・君の言う通りだ・・・ だが、それについてはもう手が打ってある。君達には決して迷惑はかけない筈だ」
レオン「優しくしてくれた君達に、まともに礼もできない、この無礼者を・・・ 許してくれ・・・」
フレイン「手を打った・・・? まさか、この停電の事か・・・」
フレイン「それとも・・・燃え盛る行政庁の事かな・・・」
ドラーク「え!?」
フレイン「僕は炎の怪人だからね・・・ どこから炎が出ているか位、分かるよ」
ドラーク「・・・よく分かんねぇけどよ。 俺はレオンがやらなきゃいけねぇって思った事が、悪い事だとは思えねぇんだよ」
ドラーク「それで・・・ もしレオンがやろうとしている事が、本当に大馬鹿野郎な事だったらよ」
ドラーク「親友の俺がケリつけなきゃいけねぇんと思うんだわ」
フレイン「・・・・・・」
フレイン「ちがうな・・・」
フレイン「親友の『僕達』だ」
ドラーク「けっ!分かってるな!」
レオン「待ってくれ! 僕個人の問題だ、それこそ親友である君達をこれ以上巻き込めない!」
レオン「頼む・・・ 行かせてくれ・・・」
ドラーク「おいおい、何を勘違いしてんだよ? 俺達はお前と一緒に泣いてやろうってんじゃねぇよ」
フレイン「そうだよ。 いわば君のコントロール役さ」
フレイン「ヒトの言葉にも『孤独は正常な思考を生まない』とあった。衰退した彼らの言葉だ、説得力がある」
ドラーク「よく分かんねぇけど、そういう事だ!」
ドラーク「時間がねぇんだろ! とっとと行くぞ!」
レオン「うう・・・」
ゆい「お父さん、行こう! お友達も一緒なら心強いじゃん!」

〇海辺
  レオンは横領した研究費を武器商人の元へと流していた。
  そう、ヒトである武器商人へと。
  レオンによるヒトの研究、武器商人との取引、生み出されたゆい。
  そして武器商人がいる極東の地、『怪人禁猟区』。
  その真意を知った彼らが、レオンを哀れんだか否か。
  それが判明するのは、2305年、ゆいが18歳の時である。

コメント

  • 怪人の研究者という設定が新鮮に感じられました。ゆいを可愛がっているのかと思えば悪事に手を染めることも厭わず。アンビバレントな魅力にあふれたキャラクターで読者を惹きつけますね。

  • 初めまして。
    何か続きが気になりますね😲
    設定が最高です!!
    怪人達の名前もかっこいいです👍

  • レオンの正体がきになります。悪人のようで愛情深く、善人のようで隠れたルートで組織とつながっている。続きがよめないので、自分の想像にとどめておきます!

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