Riverside Baron ~蓬莱番外地~

山本律磨

GoToフェス!(4)(脚本)

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山本律磨

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〇川沿いの道
  『帝都大学学生、逆木理(さかぎおさむ)の水死体が浮浪者によって発見されたのがちょうど爆発事件の翌日の深夜』
  『体内から多量のアルコールが検出されたことにより、死因は泥酔の末川に転落したものと確定された』
最上「つまりは事故と」
伝八「衣類も明らかに夜遊び帰りって感じだったしな」
猪苗代「実家は北海道ですので捜査の意味がありません。やはり人となりを探るとなると大学の方になるでしょう」
伝八「おいおいここにきてまさかの探偵モノか」
伝八「ただでさえ中だるみの最中だってのによ」
最上「だ、誰に何の話をしているんだ?」
猪苗代「ご安心を、私が中だるませません」

〇古い大学
猪苗代「と、いう訳で逆木が専攻していた帝都大学理工学部にやって参りました」
猪苗代「どうしますか?」
  『はなす』
  『しらべる』
  『推理する』
  『タバコを吸う』
伝八「なあ、今更そういう遊戯(ゲーム)小説感出しても新規読者は掴めねえと思うぜ」
最上「だから誰に何の話をしているんだ?」
  『ばしょいどう』
伝八「へいへい」

〇漫画家の仕事部屋
村西博士「逆木君か。みかけによらず実に優秀な生徒だったよ」
村西博士「理工学だけではなく語学や文学にも興味をもっててね」
村西博士「開拓者精神溢れる純粋純朴な男だった」
村西博士「だがその溢れる好奇心が彼の人生を歪めてしまった」
村西博士「ある意味、帝都に来ない方が幸せだったのかも知れん」
最上「そ、それはどういう意味ですか」
猪苗代「ちょ、ちょっと待って下さい村西博士」
最上「なにか気付いた事でも?」
猪苗代「あれはもしや・・・」
村西博士「うむ、測天學である」
猪苗代「あ、あれが東洋初の人造人間・・・」
村西博士「そんな堅苦しいものではない。ロボットと気軽に呼んでくれたまえ」
村西博士「人に隷属するのではなく人に友愛と感動を与えるエンターテイメントロボ。それが、測天學だ」
最上「猪苗代君、この機械と爆発事件と何か関係が?」
猪苗代「いえ、興味本位です!」
最上「だろうな!」
伝八「だから中だるませねえでくれよ」
伝八「デ~ンデ~ンデ~ン♪もいいから」
最上「逆木の人生が歪んだとは?」
村西博士「帝都には情報がありすぎる。思想、芸術、そして享楽。北海道の純朴な青年は瞬く間にその情報の海に溺れていった」
村西博士「いや、溺れぬように自分に都合のいい情報だけを縁(よすが)にしていったのやも知れん」
最上「革命運動」
村西博士「真っ当な道を投げ出し酒池肉林に埋没することを革命と呼ぶならそうだろう」
最上「酒池肉林とは・・・」
伝八「ようやく繋がったぜ。少尉、あんたに手を貸してよかった」
最上「え?」
伝八「根室清濁だな」
村西博士「いかにも。学内に入り込み思想活動を行う不逞の遊び人がいる事は問題になっていたのだが」
村西博士「若い連中と我々では動きの早さが違う」
最上「根室清濁とはそういう男だったか」
伝八「黒死病を流行らせたのが鼠だとは、及びもつかねえもんさ」
伝八「机にかじりつてるお偉方ほどな・・・」
最上「・・・」

〇組織のアジト
ゴロツキ「だから、無い袖は振れねえんだよ」
蓬莱合唱団「金を貸す時だけ優し気な態度で接して取り立てる時は鬼の所業」
蓬莱合唱団「大体、御堂組がいつ俺らを守ってくれたってんだ?」
ゴロツキ「ああ、所詮口先ばかりの連中だ」
根室「そうそれが侠客の本性。奴らこそ君達善良な都民に寄生しあまつさえ苦しめるダニのような人間だ」
根室「奴らを駆除するには一人の力では無理だ。だからこそ団結が必要になる。僕はその話をしているんだよ」
アーチスト「確かに芸術とは理解されぬものだが、一方で数の力に押し潰されるものではある」
下等遊民「文学もそうだ。愚かな大衆や権力の頂に立つ老害が全ての価値観を決定する」
根室「惜しいな。君達のような優れた人間が貧民窟で朽ち果てるなんて」
アーチスト「く、朽ち果てる?」
下等遊民「ははは。違いますよ。僕は今、社会経験を積むためにあえて人生の有給休暇を」
根室「来ないよ。君達が認められる日なんて」
「・・・」
根室「本当は分かってるんだろう?今のままじゃ一生何も変わらないって」
根室「貧民窟に追いやられ、馬鹿にされ虐げられ誰にも顧みられず死んでゆく」
根室「それが辛いから、苦しいから、寂しいから集まっている」
根室「いや、群れているだけか」
「・・・」
「・・・」
根室「ところで君達を蔑ろにした奴らは今どこで何をしているだろうな」
根室「出世しているかも知れない。才能を発揮しているかも知れない。温かい家庭を築いているかも知れない」
根室「そして奴らは訳知り顔でこう勝ち誇るんだ」
根室「『自分は努力したのだ!』・・・と」
根室「笑わせるな」
根室「たかだか運に恵まれただけの輩が、他人の機嫌を取っていただけの輩が、家柄や容貌に恵まれただけの輩が!」
根室「この国は何も変わっていないのだ!江戸、鎌倉、いや平城京平安京の頃から何も!」
根室「今こそ全ての格差を根絶する時!でなければ君達の人生は無となるだろう!」
根室「群れる時は終わった!団結するのだ!」
根室「羨む時は終わった!行動するのだ!」
トラ「何も持ってない俺達だからこそ、この国を変えられるんだ!」
デンキ「自由だ!団結だ!勝利だ!革命だ!」
「自由・・・団結・・・」
「勝利・・・革命・・・」

〇漫画家の仕事部屋
伝八「美しきけものたちは組織のレベルに足らぬ人間を弾く。まあ好意的に言えば自浄作用を働かせている」
伝八「だが根室はむしろ手前より劣った人間ばかりを、少なくともヤツがそう判断した人間ばかりを集める」
伝八「そういう輩を何と呼ぶ?」
猪苗代「詐欺師」

〇組織のアジト

〇漫画家の仕事部屋
伝八「さあ、一応こんな感じでそこそこ中だるませずに進んだようだな」
猪苗代「少尉、最後のコマンドをお願いしまします」
最上「こ、コマンド?」
  『犯人は?』
最上「あ、ああ。なるほどね」
最上「西村博士。逆木理は理工学部の中でも秀才だったようですが・・・」
最上「爆発物の製造などは行えたでしょうか?」
村西博士「ここでは左様なものは教えておらん」
村西博士「だが独学で学ぶとすれば彼にとっては雑作もなかっただろう」
最上「決まりだ」
最上「爆発事件の実行犯は逆木理。そして彼は、その翌日に死んだ」
最上「来栖川司令を暗殺する為に、あろうことか叛徒を操った『黒幕』がいるとすれば実に都合よく・・・」
最上「司令が死んで一番得をする男」
最上「口うるさい上司を亡きものとし地位と名誉と権力を手に入れこの僕を騒々しくて緊張感のない下町に左遷させた男」
最上「即ち真犯人は大泉副司令だ!」
最上「逆木理は何らかの形で根室清濁と出会い、根室は何らかの形で大泉副司令と出会い、大泉は何らかの形で根室を介し逆木を操り」
最上「そして来栖川閣下を暗殺したのだーっ!」
猪苗代「少尉。バッチリキメているところ水を差しますが状況証拠にすらなっていません」
伝八「ただの憶測と逆恨みをよくそこまで自信満々に発表出来るな」
猪苗代「あと何らかが凄く多くて気持ち悪いです」
最上「だって今の所それしか答えが出せないじゃないか!」
猪苗代「勿論それで充分です」
最上「へ?」
伝八「あとはその憶測を一つ一つ立証して逆恨みを晴らしゃいいだろ」
最上「でも根室と大泉司令の繋がりなんて、我ながら荒唐無稽すぎる推理で」
伝八「荒唐無稽かどうかは、根室をふんじばってコッチが判断すりゃあいい」
伝八「『疑わしきは決めつける』それが帝都警視庁のやり方だ」
猪苗代「事実の扉を開くには多少の無理無体は必要でありますです」
猪苗代「大泉憲兵司令の野心と逆木理のヒロイズムが、根室清濁なる鼠を通して来栖川暗殺という形で繋がっている」
猪苗代「高尚な真実より陳腐な事実。世の中とは得てしてそういうものです」
伝八「まずは詐欺師野郎からだ。必ず見つけ出して洗いざらい吐かせてやる」
「決まりだ!」
最上(悪徳刑事と悪徳記者め・・・)
最上(閣下・・・私はどんどん汚れていっております)

〇組織のアジト
根室「ふふふふふ・・・」
根室「くくくくく・・・」

次のエピソード:GoToフェス!(5)

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