7.悪女のママではいられない。その1(脚本)
〇けもの道
シタラ「なんですか、兄と息子を間違えるって! ありえないですよ!?」
???「で、でも間違えちゃったの! 息子にそっくりで驚いちゃって・・・」
???「それに・・・あ、そうだ!」
???「死んだ息子は長男で、 お兄ちゃんって呼んでたから・・・」
シタラ「明らかに今思いついたでしょ!?」
???「思いつきなんかじゃないの! ねえ、あなたは信じてくれるよね?」
シタラ「アルさん、行きましょう? こんな怪しい人、関わっちゃダメです!」
アルバス「──シタラママ、考えてみてくれ」
シタラ「はい?」
アルバス「もし目の前に、死んだはずの大事な人、 それも息子が現れたら──」
アルバス「慌てて言い間違えるのも無理ないぜ! なあ、ママ!?」
???「・・・」
アルバス「ママ?」
???「・・・あ、ママってあたしか」
???「そうそう、間違えるのも無理ない!」
アルバス「だから疑うのはやめようぜ、ママ? 誰しも間違いはあるんだからよ」
シタラ(・・・なに言っても無駄そう)
シタラ「わかりました。疑ってごめんなさい」
???「いいの! リアザも変なこと言っちゃったから」
ブリアザイト「──あ、リアザはリアザだよ! ブリアザイトのリアザなの」
アルバス「俺はアルバスだ。アルって呼んでくれ」
シタラ「私はシタラです」
ブリアザイト「ええ? アルバスにシタラ!?」
ブリアザイト「死んだ息子に娘と同じ名前・・・」
ブリアザイト「すごい偶然──いや、運命かも! きっとあなたたち、生まれ変わりよ!」
シタラ「いや、死んだ人が増えてる──」
ブリアザイト「リアザの家に来てくれる? 張り切っておもてなしするから!」
ブリアザイト「さあこっち! ついて来て!」
アルバス「ママ・・・」
シタラ「アルさん、これはさすがに──」
アルバス「すげえ偶然だな!」
シタラ「・・・そうですね」
〇森の中の小屋
〇英国風の部屋
ブリアザイト「──お待たせ。さあ、飲んで飲んで!」
アルバス「おお! ありがとな、ママ!」
シタラ「良い匂い・・・美味しいですね!」
ブリアザイト「そうでしょ? これ、二人も好きだったの」
アルバス「・・・思い出の味ってことだな」
ブリアザイト「小さい頃から美味しい美味しいって、 たくさん飲んでくれてたから・・・」
アルバス「よし、俺にもたくさん飲ませてくれ! おかわりだ、ママ!」
ブリアザイト「ふふ、二人が帰ってきたみたい・・・」
シタラ(・・・私の疑い過ぎだったかな?)
シタラ(普通にお茶してるだけだし、 さっきは失礼なこと言っちゃった・・・)
ブリアザイト「──ねえ、アルくん 実はこのお茶、たくさん余ってるの」
ブリアザイト「気に入ったなら、少し買ってくれない?」
アルバス「おう、いいぜ! いくらなんだ?」
ブリアザイト「これぐらいの量で・・・ ざっとこんなもんなんだけど・・・」
アルバス「ふむ・・・ちっと高いが、 思い出の味だし、まあ多少は・・・」
シタラ「──ち、ちょっと待ってください!」
シタラ「アルさん、それってどれぐらいの 値段なんですか?」
アルバス「ん? 栄えてる町で、 三か月くらい働けば稼げる額だな」
シタラ「お茶がそんなにするんですか? 結婚指輪じゃないんですよ!?」
アルバス「けど、思い出の味だし・・・」
シタラ「思い出に値段をつけないでください! プライスレスですよ、それは!」
ブリアザイト「お茶がダメなら、そのカップはどう?」
ブリアザイト「実は息子が使ってた物なんだけど、 アルくんになら譲ってもいいかなって──」
シタラ「いい加減にしてください! 反省して損しました・・・!」
シタラ「出会った時から怪しかったんです あなた、アルさんを騙そうとしてますね?」
ブリアザイト「そんな・・・ どうしてそんなこと言うの・・・?」
シタラ「そもそもアルさんとあなたじゃ、 年齢にだって無理があるでしょ!?」
シタラ「あんな大きい息子が いるわけないじゃないですか!」
ブリアザイト「それは──そう、養子だったの!」
ブリアザイト「確かに歳は近かったけど、 リアザとあの子は親子だった・・・」
シタラ「へー・・・そうですか・・・」
シタラ「そのお茶、息子さんが”小さい頃”から 好きだったんじゃないんですか?」
ブリアザイト「・・・り、リアザも子供だったから」
シタラ「なら養子もとれないでしょ! もう、わけわかんなくなってますよ!」
アルバス「──まあまあ、シタラママ」
シタラ「なんで止めるんですか? アルさん、騙されかけてたんですよ!」
アルバス「いや、それはわかったけどよ きっとリアザママにも事情があんだよ」
シタラ「事情があっても、人を騙すなんて・・・」
アルバス「ああ、ダメなことだ。俺だって、 ママに悪いことはしてほしくない」
アルバス「だから、リアザママ──」
アルバス「聞かせてくれないか? なんで、こんなことしてるのか」
〇英国風の部屋
ブリアザイト「人のことをママって呼んだり、 騙されたのに事情を聞こうとしたり──」
ブリアザイト「初めてだよ、あんたみたいなの」
シタラ「さっきまでと、雰囲気が全然・・・」
ブリアザイト「あんなぶりっ子いるわけないでしょ 演技よ、演技!」
アルバス「ならやっぱり、 俺が息子に似てるのも・・・?」
ブリアザイト「嘘に決まってるでしょ」
アルバス「・・・そうか」
シタラ「いや、わかりきってたことですよ」
ブリアザイト「──それで、あたしのこと聞いて どうするわけ?」
アルバス「場合によっちゃ、ママを助ける!」
ブリアザイト「なにそれ? 同情すれば、 ワンチャンあるとか思ってる?」
シタラ(げ、下品だ・・・)
アルバス「実の親子でそんなことしねえよ 俺はママの力になりたいだけだぜ!」
ブリアザイト「・・・シタラ、だっけ? こいつ、いつもこんな感じなの?」
シタラ「ええ、こんな感じです」
ブリアザイト「ふーん・・・そうなの・・・」
ブリアザイト「──そっち、もう一つ部屋があるでしょ」
ブリアザイト「その部屋にさ、あたしのママがいるの ひどい病気だから、それを治したいわけ」
シタラ「そのために、お金が?」
ブリアザイト「そういうこと うつる病気だから、部屋入んないでよ」
アルバス「・・・どれぐらい必要なんだ?」
ブリアザイト「なに、出してくれんの? さっきのお茶の数倍だよ?」
アルバス「ぐっ・・・持ち合わせが・・・!」
シタラ「え? 本当に出す気なんですか!?」
アルバス「ママを思う気持ちはよくわかるからな なんとかしてやりたいんだが・・・」
アルバス「──いや、まだだ! 降物を売ればいくらか足しに・・・」
ブリアザイト「──へえ、アルってスポット荒らし?」
ブリアザイト「それなら、”あれ”もアリかもね・・・」
アルバス「”あれ”?」
ブリアザイト「この時間なら・・・」
ブリアザイト「──ちょうどいいわ、外に出ましょ」
〇森の中の小屋
ブリアザイト「・・・たぶん、そろそろかな」
シタラ「あの、いったいなにが・・・?」
ブリアザイト「──伏せてっ!」
〇空
ピィイイイイ!
〇森の中の小屋
アルバス「──ママっ!」
シタラ「な、なんですかっ!?」
〇レトロ
え? この子を私に?
わあ、すごい・・・本物だわ!
ありがとう、大切に育てるから──
〇森の中の小屋
アルバス「──ママ、大丈夫か? どこか、打ったりとかしてないか?」
シタラ「・・・私、鳥を飼ってたみたいです」
アルバス「なに? あんな感じのか?」
シタラ「いや・・・」
〇空
ピィイイイイイイ!
〇森の中の小屋
シタラ「あんなに速くは飛ばないですけど・・・」
ブリアザイト「──どう、ちゃんと見れた?」
シタラ「あの、リアザさん あれはいったい・・・?」
ブリアザイト「なにって、そうね・・・」
ブリアザイト「一攫千金のチャンス、かしら」