ヒーローごっこ

結城 直人

読切(脚本)

ヒーローごっこ

結城 直人

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〇古いアパート
  大阪(某所・夏)

〇古いアパートの部屋
  人生~楽ありゃ
  
  苦~もあるさ~
社長「・・・いいなぁ」
オルトス「おい!ちゃんとカバーしてくれよ!」
ポキ「今ちょっと無理・・・ あっごめん死んだわ、骨なったわ」
エンヴ「前髪伸びてきたなぁ なぁ?それで切ってくれん?」
ブリング「・・・どこを?」
マッカウ「ただいま~ご飯買ってきたよ~」
モナコ「お箸! ちゃんと入れてきたよね?」
マッカウ「ウモ~~~~ウ!」
モナコ「ごまかすな!」
モナコ「また忘れたの!? お箸買うのもきついのに」
社長「紋所を目に入れる? 怖いなこの集団・・・」
マッカウ「はい、これは二人に」
「・・・なんで焼き鳥なんよ」
マッカウ「はいこれはオルフェに」
オルフェ「馬肉かい! 他あったやろ!」
モナコ「ねぇ社長! こんな生活いつまで続けるんですか!」
社長「ならパトロールでも行くか仕事とってきてよ」
モナコ「パトロール行ってどうするのよ そもそも怪人倒すために作った会社でしょ?」
オルトス「しかし怪人などいやしまへん」
ケッコウ「どちらかというと人間にとっては僕らが怪人だよね?」
社長「・・・」
  大阪、南に拠点を構える(株)怪人社
  異世界の住人である彼らはこの星を気に入り、人間と共存する方法を日々模索していた。
  そして社長より提示されたその手法とは──
社長「か、か、怪人倒すっていうか、人間に危害を及ぼす生物を倒すって話だからね」
エンヴ「めっちゃ怪人社って名前にしとるけどな」
ポキ「そう責めないであげようよ、社長は地球に怪人がいると高を括ってたんだよ」
シロ「ヒーローショー見て勘違いしちゃったんだってさ、早とちりだよね」
社長「だからさ、ちゃんとプランBに切り替えたじゃない」
オルトス「それがこの害虫駆除の仕事でっか?」
社長「・・・人間に危害を及ぼす生物」
オルフェ「そこからどう共存に繋げますのん?」
社長「・・・」
ケッコウ「逃げたよ・・・」

〇商店街
モナコ「ねぇ?なんで拠点を大阪に置いたんだろ? 普通、首都の東京じゃない?」
ブリング「社長曰く大阪の人間は人との距離が近いから仲良くなれる可能性が高いんじゃないかって」
モナコ「だから人じゃないんだって」
魚屋「おーい兄さん、姉さん~」
ブリング「どうも玄さん もうかりまっか?」
魚屋「ぼちぼち・・・ってわけにもいかんわ 最近はでっかい店に客とられて特に厳しい」
モナコ「そういう時代よ これからは困ったもの同士が助け合っていかないと生きていけないのかもね」
魚屋「姉さんいい事言った! 待ってました!」
モナコ「はい?」
魚屋「また仕事頼めないかな? その・・・つけでさ」
ブリング「えっ? この前駆除したばかりじゃないですか?」
魚屋「この季節、わしらの様な店にはとめどなくやつらがやってくる そちらの社長さんには本当助かってるよ わしらのヒーローだ」
モナコ「そんな事言って、うちらも同じで厳しいんだからね!」
魚屋「これからは困ったもの同士が・・・なんだったかなぁ~?」
モナコ「うぐっ・・・」

〇広い公園
モナコ「くそ、やられたよ また暫く金欠だよ」
ブリング「いいじゃない、代わりにこんなに沢山お刺身もらったんだし」
モナコ「でもこんな事続けてても意味ないじゃない」
ブリング「けど今回の事で気づいたことがあるんだ お金ってさ、つまるところ信用だよね」
モナコ「何よ難しい事言って、お金はお金でしょ?」
ブリング「そうなんだけど、みんながあの紙切れに記載された金額分の信用があるから作用してるんだと思うんだ」
モナコ「何が言いたいのよ」
ブリング「僕らはさっきお金を使わずこのお刺身を手に入れた 僕らが本当に仕事を請け負うかわからないのに」
モナコ「まぁ言われてみれば・・・」
ブリング「でもみんながみんなそうはいかない だからお金に価値の共通認識を与えてそれをみんなが信用する事で社会は機能してるんだよ」
モナコ「あ~もうややこしい! だから何が言いたいのって!」
ブリング「社長の考え方は基本的に正解なんだ」
ブリング「自分たちの能力を使って人間の役に立つ事ができれば、信用もそれが付加されたお金も入ってくる」
モナコ「だから怪人はいないんだって!」
ブリング「いるじゃない ケッコウが言ってたでしょ?」
モナコ「?」

〇古いアパートの部屋
ケッコウ「なるほど、つまり僕らが怪人を演じるってわけだね?」
モナコ「そうそ! 私達でヒーローとヒールを分けてさ 必ずヒーロー側を勝たせるって構図にすればさ!」
ポキ「自作自演をするってわけね 賢いなモナコ」
モナコ「ふふん よく言われる」
ブリング「・・・」
社長「よくぞ気づいた皆の者! あえて私が言わなかったその手法を自身で導き出せるかとてもとても心配だったが、見事君たちは──」
モナコ「なんでさっそくチーム分けをしようかと思うんだけど」
社長「・・・」
モナコ「ヒーローチーム発表!」
  私!
  ブリング!
  シロ!
  エンヴ!
モナコ「そしてヒールチーム!」
  オルトス!
  ポキ!
  ケッコウ!
  最後にマッカウ!
オルトス「異議あり! なんでわしらが悪役やねん!」
ポキ「そうだそうだ! 横暴だ!」
エンヴ「しゃーないやん、おまえらええ感じにドラクエの敵みたいな風体やねんからさ」
モナコ「あなたも結構ギリだけどね」
マッカウ「それだったら僕ら一生日の目見れないじゃないか!」
ブリング「それについては案があるんだ 漫画アニメの方式を使うのさ」
ケッコウ「漫画アニメ? ドラゴンボールみたいな?」
ブリング「そうそう! 例えばドラゴンボールなら敵だったピッコロやベジータが強敵が現れるたび共闘するようになるでしょ」
ポキ「つまり僕らと戦った後、より強力な怪人を出してきて一緒に倒して信頼を上げて行くって算段か」
エンヴ「けど人数に限界があるやんか? どうやって続けんねんな?」
社長「それは問題ないよ 上手くいけば星から仲間をどんどん派遣させたらいいんだから、むしろ理想の形だね」
シロ「決まりだね じゃあこれから作戦を決めて行こうか」
モナコ「社長にもヒールやってもらいますからね」
社長「ええ・・・」
オルフェ「いや俺わい!!」

〇空
  一方その頃──

〇落下する隕石

〇源泉

〇センター街
サラリーマン「みんな逃げろ! バケモンだ!」
女子高生「いやぁ! こないでよ!」
警察官「みなさん早く非難してください!」
オルフェ「ふはっはっは! そんなものが効くわけなかろう! 我は馬肉の王オルフェ様だぞ!」
オルフェ「・・・」
オルフェ「なんだ馬肉の王って・・・ 誰だよ脚本書いてるの」
  控えおろう!
オルフェ「おっきたきた」
エンヴ「これまでの数々の悪行! 見過ごすわけにはいかん!」
オルフェ「まだ何もしてへんねんけどな」
エンヴ「この紋所が目に・・・ ちょちょっとタイム!」
エンヴ「なぁ紋所って何よ?」
オルフェ「俺に聞くなよ 書いたの社長やろ?」
エンヴ「なんかやりとりが時代劇やない?」
子供①「・・・」
オルフェ「とりあえずやってる感じ出してくれ」
エンヴ「了解・・・」
エンヴ「くらえ必殺、ファイヤーストレートナックル!」
オルフェ「痛っ!」
エンヴ「すまん 加減がようわからん」
オルフェ「そこちゃうねん! 今ナックルっていいながら蹴ったぞ!」
シロ「大丈夫かなこれ」
モナコ「幸先不安だわ」
  その後彼らは不器用ながらもヒーローごっこを続ける日々を重ね──

〇公園通り
オルトス「ふはははは! 退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ!」
ポキ「なんか聞いた事あるなぁ・・・」
  皆の存在は徐々に人々に認知されてゆく。

〇繁華な通り
ケッコウ「く・・・ここまでか」
マッカウ「加勢に来たぞ!」
ケッコウ「おお! 昨日の敵! かたじけない!」
マッカウ「気にするな今日の友!」
  いつしかこの壮大なヒーローごっこは街の名物になってゆき──

〇モヤイ像
「おおおおお!!」
  皆は人々の信頼と人気を獲得していくのであった。

〇商店街
肉屋女将「お兄ちゃんらー こっち、こっちー」
「どうもお肉屋さん えっ?」
肉屋女将「これもってきな、沢山入れてあるからみんなで食べておくれ」
「あざっす!」

〇広い公園
子供①「ねぇヒーロー! 悪者倒す必殺技教えてよ!」
エンヴ「ええで ええで まず相手にパンチ出させると思わせといて蹴りかますっていうな──」
ポキ「それヒールがやる事でしょ・・・」

〇古いアパート
大家「いいんだよ 君達から家賃なんてもらえないよ また怪人きたら頼むよヒーロー」
社長「すいません・・・」
  ちょっと気まずいなぁ・・

〇古いアパートの部屋
オルトス「いや~ともあれうまいこといったなぁ」
オルフェ「街歩いてたら英雄扱いやからな 気持ちええわ~」
シロ「これで生活も困る事なさそうだね」
モナコ「テレビ取材もあるって噂だよ」
ポキ「ほんと? 歯矯正しとこかな」
マッカウ「あれ? そういえば社長は?」
ブリング「自治会の集まりに行ってるよ 社長も最近は忙しそうだよ」
ケッコウ「もしもしこちら怪人社・・・ えっ?」
モナコ「どうしたの?」
ケッコウ「今怪人が暴れてるから来てくれって通報が」
シロ「今日はオフの日だよね?皆ここにいるし あっエンヴがいないや」
エンヴ「いや~でたでた めっちゃでっかいう〇こでたわ インスタあげたらよかったか」
モナコ「みんないる、どういう事?」

〇荒廃したセンター街
アグニ「ヴェヴェヴェ!」
肉屋女将「お、お助け~~!」
魚屋「誰か!消防!いやヒーローを呼んでくれ!」
ブリング「なんだよあいつ」
オルフェ「仲間・・か?」
モナコ「にしてはやりすぎよ」
エンヴ「ちゃうで! あいつ俺らの仲間やない!」
オルトス「ほんまか!? じゃあ普通に侵略に来た怪人?」
ポキ「それはそれでチャンスだよ! ここでみんなで一緒にやっちゃってさらに信用を獲得するんだ!」
マッカウ「よし! じゃあ僕からいくよ! 上腕二頭筋トルネードクラッシュ!」
マッカウ「ウモォォォウ!」
マッカウ「熱っつ! 熱っ!」
ケッコウ「マッカウ! くそ! くらえ! 手羽先クロー!」
ケッコウ「ウケココココ!!」
アグニ「・・・」
ケッコウ「熱っつ! 焼き鳥なる!  ちゃんとした焼き鳥になる!」
オルトス「大丈夫か焼き鳥!」
オルトス「くそ! 火には氷だ!」
オルトス「くらえ! マヒャドーマ!」
エンヴ「なんかパクってへん?」
オルトス「ふ、防がれた・・・ そして熱っ!」
ポキ「強すぎるよ・・・」
ブリング「泣き言言うな! 俺達はこの街のヒーローなんだよ!」
ブリング「くたばれ!バケモノ! 必殺四則演算!」
ブリング「うぉぉぉぉ熱い! 熱痛い!」
モナコ「ブリングでも勝てないなんて・・・」
シロ「もうだめだ・・・」
オルフェ「そうや! おまえ火やねんからいけるんとちゃうか?」
エンヴ「ふふふ待ってましたその言葉!」
エンヴ「おいそこの燃えてるやつ! 俺にはおまえの攻撃は通じないような気がする!」
ポキ「大丈夫かあいつ・・・」
エンヴ「くらえ必殺! ファイヤーストレートナックル!」
「とみせかけての蹴りぃぃぃ!!」
アグニ「・・・」
エンヴ「・・・あっ言ったらバレますよね~」
エンヴ「痛い! 熱くないけど痛い!」
魚屋「だめだ・・・終わりじゃ ヒーロー達でも勝てないなんて」
アグニ「ヴェヴェヴェヴェ!」
ブリング「やばい! モナコ逃げろ!」
モナコ「イやぁぁぁぁ!」
社長「・・・」
「社長~~~!」
ブリング「良かった間に合った・・・」
社長「ごめんねちょっと長引いちゃって」
社長「自治会長がさ、お孫さんの自慢話を延々と聞かせてくるんで付き合うのに大変だったんだよ」
社長「しかもさ──」
エンヴ「いやシャチョさん! そんなんええからそいつはよなんとかしてくれや!」
アグニ「ヴェヴェヴェヴェ! ゴロズ!」
社長「今ので汚れたスーツの代金は、君の犠牲で得る信用ポイントでチャラにしてあげるよ」
アグニ「・・・」
「やった・・・」
「助かった~~!!」
社長「これにて一件落着!」
エンヴ「そこは金さんなんかい・・・」

〇シックなバー
マスター「それが人類と怪人の共存の始まりだったんだよ」
「へ~そんな事があったんだぁ」
マスター「大昔の文献だから確証はないけどね」
マスター「あ~バイト もう遅いから仕事上がっていいよ!」
アルバイト「あざっす! 明日早いんで助かるっす!」
怪人客「その文献ってそこで終わってるの?」
女性客「確かに気になるよねぇ」
マスター「ふふ勘がいいね。 実はその怪人の襲来以後次々と新たな怪人が押し寄せて来たようなんだ」
怪人客「まじ!?」
女性客「それで?それで?」
マスター「その話はまた今度来てくれたときにね」
「え~!」

〇古いアパートの部屋
マスター「・・・」
  人生~楽ありゃ~
  
  苦~もあるさ~
  
  涙の後には虹が出る~
マスター「・・・」
マスター「いつ見ても素晴らしい なぁみんな・・・」
  終わり

コメント

  • 全ての怪人の見た目&イメージどおりのキャラ設定や会話のやり取りが素晴らしいうえに、その設定を余すことなく活かし切ったストーリーで感心しました。紅一点のモナコがアクセントになっていますね。時代劇を愛する社長のオトボケ感も素敵。

  • もはや社長だけでも良い気が…。
    まぁヒーローはヒーローとして生きていかねばなりませんしね…。
    所々出てくるパロディも含めてとても面白かったです!

  • 社長さん強すぎww そして小ネタ満載で笑いました。必殺四則演算ってww このエピソードが人間と怪人の共生のスタートだったとするのなら、その過程でどのようなことがあったのか想像するのも楽しいですね!

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