秘書室の13人

アビス

エピソード2(脚本)

秘書室の13人

アビス

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〇オフィスのフロア
  終業後
  他の秘書たちが帰る中──
飛田キユ「壁、帰らないの?」
柴崎アカネ「はい お構いなく」
飛田キユ「お構いなくって あなた何言って──」
柴崎アカネ「私、今日は”残業”がありますので」
飛田キユ「残業・・・?」
飛田キユ「壁に向かいすぎておかしくなったんじゃない?」
飛田キユ「ま、いいわ 好きにしなさい」
柴崎アカネ「はーい」

〇オフィスのフロア
  数時間後
柴崎アカネ「雨降ってきましたねー」
飛田キユ「・・・」
柴崎アカネ「飛田センパイ遅くまで大変ですね」
飛田キユ「・・・」
柴崎アカネ「副さんと私たちに挟まれて大変ですよね 仕事も沢山抱えて」
柴崎アカネ「今日”も”22時過ぎちゃいましたね たまには早く帰りたいですよね」
飛田キユ「──今日”も”?」
飛田キユ「あなた 何でそんなことまで知って──」
柴崎アカネ「なーんでも知ってますよ?」
柴崎アカネ「飛田センパイ♡」
飛田キユ「どういう意味よ」
柴崎アカネ「私、元々企画部にいたんです」
柴崎アカネ「そこで部長に教わったんです──」

〇立ち飲み屋
部長「いいか柴崎」
部長「リサーチする時に大事なのはなんだと思う?」
部長「それは──愛だ」
部長「対象を愛せ」
部長「同業他社だろうが ライバルだろうが 目の上のコブだろうが」
部長「要は好きになれってことだ」
部長「好きな物のことならなんでも知りたいはず 調べ尽くせ 調べ尽くしたら新たな疑問が生まれる」
部長「それをまた調べるんだ」
部長「疑問が無くなるまで調べ尽くした時──」

〇オフィスのフロア
柴崎アカネ「対象はきっとお前の味方になってくれる」
柴崎アカネ「そう教わりました」
飛田キユ「柴崎 本当におかしくなっちゃった?」
柴崎アカネ「だから 飛田センパイのことも調べました」
柴崎アカネ「愛をもって」
飛田キユ「・・・何が言いたいの」
柴崎アカネ「苦労しましたよ 飛田センパイ毎日遅くまで残業して プライベートほとんどないんですもん」
飛田キユ「あなたねぇ! プライベートまで調べたってこと?」
柴崎アカネ「はい、全部」
飛田キユ「それ、脅迫のつもり?」
柴崎アカネ「・・・」
柴崎アカネ「脅迫──」
柴崎アカネ「それは最後の手段でした」
柴崎アカネ「飛田センパイの業務内容から調べ初めて 出社退社の時間 昼休みはいつもお弁当」
柴崎アカネ「SNSでのハンドルネームはキユちゃむ」
柴崎アカネ「好きな食べ物は辛いもの」
柴崎アカネ「先週の日曜には1人で北極タンメン食べに行きましたよね」
飛田キユ「そ、そこまで──」
柴崎アカネ「よく完食しましたね 私も挑戦したことありますけど 半分以上残しちゃいました」
柴崎アカネ「その後は1人で映画を見てから──」
柴崎アカネ「あ、あの映画面白かったですね 私も同じスクリーンで一緒に見てましたから 特に主演の──」
飛田キユ「も、もういい! 分かったから!」
飛田キユ「はー・・・」
飛田キユ「私を調べたのは分かった それで──」
飛田キユ「何がしたいの?」
飛田キユ「私が脅迫なんかに負けるとでも?」
柴崎アカネ「今日はいつもお仕事頑張ってるセンパイにプレゼントがあるんです」
飛田キユ「そんなことで私を脅そ・・・ え・・・?」
柴崎アカネ「多分、そろそろ来る頃じゃないかな」
渋谷「よっ、飛田 久しぶり」
飛田キユ「渋谷!」
飛田キユ「なんで──!」
渋谷「そんな怖い顔するなよ飛田ー ありがとな柴崎さん ちょうど困っててさ」

〇超高層ビル
  私は飛田さんのことを徹底的に調べた
  入社してから今に至るまでの経歴に
  仕事の実績
  趣味やプライベートの事
  それに
  入社する前のこと──
  すると
  彼女らしくない事実が分かった

〇古い大学
  有数の有名大学に現役で合格した彼女は
  在学中の成績も優秀
  難関資格をいくつも取得し
  誰もが羨むような企業に就職するものだと誰しもが思っていた
  だが
  彼女はどこにも就職しなかった
  1年間アルバイトで過ごし
  翌年、第二新卒枠で四葉に入社
  当時の知り合いは皆
  なんで就職に失敗したんだろうと思ったそうだ
  だが、彼女にとって
  それは失敗では無かった──

〇超高層ビル
渋谷「こんな会社で働けたらサイコーだろーなー」
飛田キユ「なーに言ってんのよ渋谷」
飛田キユ「四葉みたいな大きな会社に アンタが入れるわけないじゃない」
渋谷「わかんねーぞー? 俺みたいなやつにでもワンチャン」
飛田キユ「ない」
飛田キユ「そもそも遊び呆けててどっこも就職決まってないじゃない」
渋谷「まーな」
渋谷「でも、お前も決まってないって聞いたけど?」
渋谷「たしか、テレビ局受かったって──」
飛田キユ「そ、そんなの噂よ! 噂!」
渋谷「だよなー 流石に女子アナなんていくら飛田でもなれる訳ねーか」
飛田キユ「そ、そーよ」
飛田キユ「ってことでアンタの就活付き合ってあげる」
飛田キユ「まずはエントリーシートの書き方から」
渋谷「めんどくせー 飛田代わりに書いてくれよ」
飛田キユ「バカ言ってないで 1年間、一緒にがんばろっ」

〇水玉2
  そして翌年
  2人は揃って四葉に入社する
  配属希望は渋谷が営業
  その翌日に飛田も営業と提出していた
  その後2人は営業部で働き始める
  渋谷は平均的な成績だったが
  飛田は数年間営業成績トップ
  その手腕が認められ秘書室に異動になった
  だが、2人が付き合っている訳ではなかった
  休みの日も1人で外食に映画
  SNSにも男の陰はない
  それはつまり、どういうことかと言うと
  あの鬼のように怖い飛田さんは──
  超が着くほどの奥手な乙女だったのだ

〇オフィスのフロア
渋谷「最近振られた案件で困ってんだけど力貸して貰えないか?」
飛田キユ「え、えーと・・・」
柴崎アカネ「ほら、飛田さん ご同輩が困ってますよ?」
柴崎アカネ「ビシッと言って差しあげたらどうですか?」
柴崎アカネ「いつも私に言ってるみたいに、ね」
飛田キユ「ちょ、柴崎! あなた余計なこと言わな──」
渋谷「うおー、飛田やっぱりここでも怖いのか」
柴崎アカネ「いえいえ、そんなことないです」
柴崎アカネ「怖いのは愛情の裏返し 仕事に責任感を持って取り組んでる証拠です」
柴崎アカネ「私にとっては最高の先輩ですよ」
柴崎アカネ「ね、飛田センパイ」
飛田キユ「そ、そう・・・よ」
渋谷「やっぱ飛田はすげーな ってことで、昔のよしみでさ」
飛田キユ「分かったわよ 協力する、今度その案件の詳細くれる?」
渋谷「サンキュー 助かる──」
渋谷「あ、そうだ」
飛田キユ「な、なに?」
渋谷「そこの柴崎さんから聞いたんだけど」
渋谷「お前──」
飛田キユ「柴崎から聞いた・・・?」
飛田キユ「いったいなにを──」
渋谷「北極タンメン好きなんだって? 1度行ってみたいと思っててさ」
飛田キユ「──え?」
渋谷「今度の休み、よかったら一緒に行かね?」
飛田キユ「え、えぇ・・・いいけど」
渋谷「よし、約束 資料は今度送っとくわ」
渋谷「それじゃ!」
飛田キユ「ふー」
飛田キユ「柴崎、あなた──」
柴崎アカネ「私、調べに調べたんですよね」
柴崎アカネ「そしたらこうなりました」
飛田キユ「こうなりましたじゃないでしょ」
柴崎アカネ「最初は飛田さんからなにかボロが出ないかと思ったんです」
柴崎アカネ「でも、全然出てきませんでした」
飛田キユ「そうよ やましいことなんてなにもないし」
柴崎アカネ「確かにやましいことはありませんでした」
柴崎アカネ「でも、渋谷さんに繋がった」
柴崎アカネ「それなんで、渋谷さんに話を聞きに行ったら新しい案件の事で困ってたので 飛田さんの名前を出してみました」
飛田キユ「なるほどね・・・」
飛田キユ「ただ──」
柴崎アカネ「どうしました?」
飛田キユ「たしかにあいつは昔からあんな感じだけど」
飛田キユ「部署違いの私に頼りに来るなんて そんなに難しい案件なのかしら」

〇オフィスのフロア
柴崎アカネ「部長、今ってまだ担当決まってなくてややこしそうな案件ってあります?」
部長「どうした、おかしなこと聞くな」
部長「ただ、あるにはあるな」
部長「成功したらデカいが並の営業に任せる訳にもいかねーし」
部長「営業部の部長に頼もうかと思ってたが 生憎と手一杯らしくてな」
部長「失敗する訳にもいかねーから」
部長「案件ごと外部に投げちまおうと思ってる奴ならあるが──」
柴崎アカネ「それ、担当してもらいたい営業さんがいるんです──」
部長「並の営業マンには手が出せねー案件だぞ? 策はあんのか?」
柴崎アカネ「その人が担当してくれれば、多分ですが 超強力なサポートが着きます」

〇オフィスのフロア
  私の根回し通り
  ややこしい案件が渋谷さんに振られ
  困った渋谷さんが頼れる飛田さんに協力を仰ぐというカタチになった
柴崎アカネ「ま、それだけ飛田さんが頼りにされてるって事ですよ」
柴崎アカネ「で、ひとつ相談なんですが」
柴崎アカネ「私はああして渋谷さんと知り合いになりましたが──」
柴崎アカネ「明日からの仕事内容は今まで通りで大丈夫ですか?」
飛田キユ「はー・・・」

〇オフィスのフロア
  翌日
飛田キユ「みなさん、おはよう」
飛田キユ「今日から柴崎には別の仕事をしてもらうことにしたから」
「なにか理由はあるんですかぁー?」
飛田キユ「別にないわよ 私の仕事が忙しいから少し割り振ろうと思っただけ」
「それじゃー序列が変わるんですかぁ? あー私落っこちちゃうー」
飛田キユ「いえ、序列も変わらないわ 柴崎は13番のまま」
飛田キユ「みんなも、私も含めて序列は変わらない」
飛田キユ「ただ、そろそろ壁さんて風習をやめるべきだと思ったの」
飛田キユ「それだけよ」
飛田キユ「文句ある?」
「いーえ、ありませぇーん」
飛田キユ「ってことで、そろそろ社長がお見えよ」
「・・・」
「柴崎さんに飛田さん・・・」
長沼ヤヨイ「なんだか、面白そうなことに なってきたわねぇ~」
  長沼ヤヨイ 10番
  秘書室勤務が1番長い女

〇オフィスのフロア

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コメント

  • 殆どストーカー。しかし、以前の職で培われたスキルを使って現状を打破していく様子は痛快ですね。
    次はナンバーワンになれないお局…手ごわそうですね。

  • ドロドロした女同士の骨肉の争いになるのかと思っていましたが、意外にもハートフルな終わり方でほっとしました!
    壁さん卒業できて良かったです!でも序列は一番下のままなんですね。
    奥手飛田さんの照れが可愛かったです♡本編と関係なさそうですが、渋谷さんとの恋が実るといいなぁ……

  • こんばんは!
    お話一話一話が本当にしっかりしていてきれいに終わってしかもまた気になるキャラクターが出てきましたね!社内の人間関係が繋がっていてとてもリアルだし、解決の仕方も納得でした!楽しく読ませて頂きました✨

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