フリをする〜死廻り怪遊戯

ワタ鉛

エピソード1(脚本)

フリをする〜死廻り怪遊戯

ワタ鉛

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〇学校の部室
  チャイムが鳴る前に各自席を立った。
  三人はダッシュで学校の二階。
  狭い倉庫部屋に入る。
  放課後。
  三ヶ島と吉野(ヨッシー)、照明の三人は所属しているオカルト部で最後のじゃれ合いをするつもりだった。
  オカルト研究部は部員が後一人足らず間もなく廃部予定だ。
  たった1人だが今日までに集まらなければ廃部という学校の決まりだ。
  勿論一日で探せるはずも無い。だから今日は最後の活動日だった。
三ヶ島悠也「なんかさおもしれーネタない!? もしかしたらここで楽しそうに盛り上がってたら、誰か来そうじゃん? 私も入れてーってさ」
吉野(あだ名)ヨッシー「ないねー。ネタもないし策もない。 友達にも全部当たったけど、いまどきオカルトとかダセーって取り付く島なしだよ」
照明「部員増やすようなの今まで散々やってきたしな。ビラ配り、SNS、クラスで話題攫ってついでに部活紹介、etc・・・オール没」
三ヶ島悠也「なんかねーかな・・・(棒)」
照明「ねーだろ(棒) そもそも学内中に当たったんだぜ。 この怪しい部活皆知ってんだ。既知だ」
  雑談していると気付けば放課後のチャイムが鳴り──程なくして鳴り止む。
  外はまるで異世界の様にシンとして人気がない。
  しかし直ぐにも静寂を切り裂いて声が聞こえてきた。中学の生徒たちが雪崩の様に校舎の外に吐き出されていく。
吉野(あだ名)ヨッシー「で、さ。例のアレ。もっかいやってみる? 最後なんだし、さ? ね?」
照明「・・・またかよ」
吉野(あだ名)ヨッシー「やろうやろう!」
三ヶ島悠也「え? まさかお前らあれ?」
吉野(あだ名)ヨッシー「そうそう! 私は信じてないんだけど、信じてないからその根拠のない噂、叩きのめしたいじゃん? 昨日、三ヶ島がいない時に!」
  そう──この三人が設立したオカルト部はオカルトをただ意味もなく探し愛でる部活ではない。
  化学の力で解明──はまだ知識がないとしても、化学的な考察をし、又は論理的に答えを出し謎を解明、研究する部活なのである。
三ヶ島悠也「昨日・・・ 誰がやった? ・・・えーとつまり、誰が誰のふりをしてた?」
吉野(あだ名)ヨッシー「私だよ!」
三ヶ島悠也「・・・」
吉野(あだ名)ヨッシー「噂通り私が照明のフリをしてさ。ほら、万が一本当だったら迷惑かかるしょ。な訳無いけど、一応保険保険!」
吉野(あだ名)ヨッシー「って言っても完全になり切るとか無理だし面倒臭いじゃん。 だから名前を変えたの」
三ヶ島悠也「・・・そうか。 ・・・わかった」
三ヶ島悠也「・・・すまん。 俺はもういいや。パスするわ つか、帰るわ」
吉野(あだ名)ヨッシー「え!? なんで? 早過ぎない? 最後の部活だよ? もっと話そうよ」
照明「いなくなっちまった・・・」
吉野(あだ名)ヨッシー「謎〜〜い!!」

〇寂れたドライブイン
三ヶ島悠也「はあはあはあはあ・・・」
三ヶ島悠也「いない・・・よな? 追いかけてきてないよな?」
三ヶ島悠也「・・・とりあえずなんとかなった。 いやでも・・・」
三ヶ島悠也「あいつら・・・今日までか。 ・・・チッ。 くそ・・・」
三ヶ島悠也「でもこれで今はもう俺からヘイト外れてる筈だ・・・ 少しの間、自由の身・・・か」
三ヶ島悠也「くそ・・・悪く思うなよ。 俺は・・・こんなとこで終わる訳にいかねーんだよ・・・」
  次第に夜が近くなる。
  蝉の声と共に辺りの木々がザワッと騒めいた。
  三ヶ島の計画はいみじくも成功した。
  噂がある。
  昔からあるような、いかにもな噂だ。
  昔ある人物がイジメを苦に自殺した。
  よくある話だ。
  イジメをしていた人物もメディアに叩かれて何処かで自殺したらしい。
  これもメディアが報じていた。
  勿論続きがある。
  二人の死後──身近で死があったり何故か遠く離れた場所でも人が死んだ。
  これは噂だがその時その遠い地で死んだのは二人。
  彼らは事件の事をネタにしてごっこ遊びをしていたらしい。
  それから次、その次と、各地でそんな死が続いた。
  いつしかそれは噂になり、ひっそりと人伝に広まりつつあった。
  事件の元になった死には幾つかの分類がある。事件の関係者達の死。誰かのフリをしただけで死を遂げた人達。
  その背後にはいつもある人物がいた。
  それが三ヶ島だった。
三ヶ島悠也「昨日のいつやったかが問題だけど、恐らく夕方以降だな。 あいつら付き合ってるから、夜に泊まってって可能性も。 つまり──」
三ヶ島悠也「もうここは離れるしかねー。 また親父に無茶言うしかねー。 ・・・くそ」
  噂は誰かのフリをして一定期間過ごすと、された人物も一緒に死ぬというものだ。
  各地でひっそりとそんな死が幾つもあった。
  勿論皆が皆あの事件を元に不謹慎な遊びに興じていたわけではない。
  ある者に命じられて誰かのフリを実行に移した。
  それも命じた人物ですら当初は疑心暗鬼だった。
  最初の頃は気のせいという事にしていた。
  突然の心停止、交通事故、殺人、自殺。
  それに自分が関与している様な感覚で彼は今、三桁目の被害者が出る事に怯えていた。
三ヶ島悠也「・・・くそ。くそくそ。 無事でいろよお前ら・・・ くそッ!!」
  三ヶ島は走っていた。
  自宅に向けて。
  もう何人死んだかわからない。
  自分が生き延びる為に。

〇村に続くトンネル
三ヶ島悠也「はあはあはあはあ」
  夜。
  梟が鳴いていた。
  田舎の森の中に街灯はなく、月明かりと蛍の光を頼りに自宅に走る。
  三ヶ島の家は村外れの森の奥にあった。
  家賃は月1万円。
  築80年のボロ屋だ。
  転校した学校の皆にはお化け屋敷と言われた。

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