Part3:退屈と非日常(脚本)
〇コンサートの控室
瀬田維尾奈「・・・・・・」
【元人気アイドル・要紗羅(32)・自宅で不審死】
瀬田維尾奈「・・・やっべぇー・・・ 先輩、ちょーやっべぇー・・・」
瀬田維尾奈「ふっ・・・」
瀬田維尾奈「これが、人生のオーラスってヤツ・・・?」
瀬田維尾奈「いい年こいて、こんなのヤバすぎ、恥ずかしすぎっ・・・」
瀬田維尾奈「・・・あ、メッセ・・・ また、”釣れてる”・・・」
瀬田維尾奈「・・・ 『ちょっと加工っぽいけど、カワイイお顔だね。仕事はなにしてるの?一度、お会いしてみたいかナ。』」
瀬田維尾奈「何目線の何様だよきっしょ・・・ウケる・・・」
『こんにちはっ。
メッセージありがとうございます♪
17才で、地下アイドルやってます♡』
瀬田維尾奈「・・・っと。 コレで、送信っ」
瀬田維尾奈「にひひっ」
「イオナー、何してるの? もう移動の時間だよ! センターなんだからボケっとしないで携帯しまう!」
瀬田維尾奈「ハーイッ イオにゃ、今日もがんばりま〜っ♪」
〇シックなリビング
栞「・・・・・・」
瀬田維尾奈「えとっ、今日は生放送で新曲初披露ということで、とっても緊張したけどっ・・・ なんとかパフォーマンス成功して良かったですっ」
瀬田維尾奈「これからも私達エビルズをよろしくニャンッ イオにゃピースっ♡」
栞「・・・全然・・・ 可愛くなんかないじゃない・・・」
〇テレビスタジオ
プロデューサー多部「ちゃんイオおつかれ〜 アフタートークの収録もバツグンだったよ〜」
瀬田維尾奈「・・・うぃーっす」
プロデューサー多部「それと伝言で、ちゃんイオの控室なんだけど、訳あって1つ下の階に変更したんだって」
瀬田維尾奈「へぇ・・・了解です」
プロデューサー多部「・・・相変わらずオフだと塩だねぇ〜 えっ、オレにだけ? もしかしてオレにだけ塩?」
瀬田維尾奈「・・・ていうか多部プロ、ニュース見てないんスカ?」
プロデューサー多部「・・・あー・・・サラっち?」
プロデューサー多部「まぁ実際、ちょっと後味悪かったから、どうにか触れずに振る舞おうとしてたわな・・・」
プロデューサー多部「一応、君の事務所のパイセンだもんね? そりゃ、触れないほうが不自然極まりないよなぁ〜ごめんごめん」
プロデューサー多部「まぁ・・・こんな悲しいこと、もう二度と起きないためにもさ、オレ達は前向いて、ファンのために真摯に良い音楽届けていこっ?」
プロデューサー多部「それじゃあ、この辺で・・・」
瀬田維尾奈「ストップストップ。多部プロ」
瀬田維尾奈「”後味悪い”って・・・ パイセンに、なんかしてたんスカ? やましくないなら、答えられるっすよね?」
プロデューサー多部「・・・んー・・・ やましくはないよ? ただ、訳あって、今日あったサラっちの仕事、ドタキャンしてたってだけで・・・」
瀬田維尾奈「・・・へぇ。 それは、しょうがないっスよね。 ドタキャンなんて、この業界ならよくあることだし」
プロデューサー多部「・・・ハハ。 18にしちゃオトナな物言いだけど、オレはそー言ってくれるちゃんイオ、マジ天使だって思うわ」
瀬田維尾奈「18はもうオトナっすよ」
プロデューサー多部「ははっ、ませてるねぇ〜」
プロデューサー多部「ちゃんイオもさ、何か悩みあったらオレにいつでも相談してよね? それじゃね〜」
瀬田維尾奈「ちーっす・・・」
瀬田維尾奈「・・・・・・」
瀬田維尾奈(アイツ・・・どーせ、マクラしてくれた新人アイドル使うために、ドタキャンしたんだろ・・・)
──ほんとオトナって、くだらない。
〇SNSの画面
『可愛いけど、この子も年齢的に年内卒業かな』
『ついに最推しまでスキャンダルかよ。冷めた。おりるわ。』
『やっぱりストイックに、マジメにアイドルやってる子をずっと推してたいよな。』
『サララまじか・・・昔推してたからわりと衝撃だな』
『ていうかこの人、まだタレントしてたのかwアイドルに未練ありまくりの33才はつらw』
『要紗羅、デビュー衣装で心中って・・・いくらなんでもキツすぎではw』
ファンだってくだらない。
アンタたちみんな、
”同じステージ”に立てる器量のひとつもないクセに。
くだらないことばっか文字にしてて、
恥ずかしくないのだろうか?
みんなみんな、くだらない。
こんな場所で、大人になったって、
ずっとキラキラしていられるわけがないんだ。
〇ネオン街
アンネ「・・・・・・」
アンネ「・・・なんだよオジサン・・・」
アンネ「・・・はぁ? ”急用ができた”・・・!?」
アンネ(あと・・・あと少しの我慢で・・・ ”叶う”かもなのに・・・)
「『マリ』・・・ちゃん・・・?」
アンネ「・・・ッ・・・」
アンネ「・・・うっ・・・腕!! 離してっ・・・!!」
男A「ようやく見つけた!! やっとの再会だね!? キミのことだから、またココに現れるって思ってたんだ!!」
男A「ポケットの名刺がなくなっていたから・・・おかしいと思ったんだ!! よくも私の会社に、余計な電話を入れてくれたね!?」
男A「また違うターゲットと待ち合わせなのかな!? 大人をからかって、脅迫して遊ぶのはよくないよねぇ!? ねぇ!?」
アンネ「・・・・・・ン?」
「そこの男!! 退け!!!!」
男A「うぐっ・・・!?」
アンネ「・・・・・・」
眞仁「シマッタ・・・ 「禁書」をどこかに、落としてしまった・・・」
アンネ「あ、あの・・・ こ、これ、ですか・・・?」
眞仁「ああ!!!!」
眞仁「さ、さ、さ・・・ 触らせて、しまった・・・”人間”に・・・」
眞仁「どうしてこんなことに・・・ 人間は決して巻き込むなと・・・ あれほど師匠に釘を刺されてたのに・・・なんという失態・・・」
アンネ「・・・あの・・・ さ、さよなら・・・」
眞仁「待って」
眞仁「・・・こうなってしまった以上、ボクは君への責任を取らなきゃいけない」
アンネ「・・・はい・・・?」
眞仁「わけも全部、話す。 まずは少し、二人きりの時間がほしい・・・」
アンネ「? ? ?」
アンネ「・・・ぅぁ・・・ぅ・・・」
〇レトロ喫茶
アンネ「う、”ウソ”・・・?」
眞仁「なんかボク、退屈そうな後ろ姿を見つけると、つい非日常をお届けしたくなる呪いにかかっていて」
アンネ「・・・ひにち・・・じょう・・・?」
眞仁「あ・・・楽しくなかったかな・・・?」
アンネ「・・・・・・・・・」
アンネ「ぷっ・・・」
アンネ「あははっ、確かに、楽しくなってたかも・・・」
アンネ「そっか・・・ こういう気持ちにさせるのが、アイドルの仕事・・・なんだよね・・・・・・」
眞仁「・・・キミって・・・」
眞仁「・・・・・・」
アンネ「・・・?」
眞仁「あぁ、ごめん。 えっと、アイドルとかって聞こえたから。 推しがいるとか、そーいう話?」
アンネ「ふっ・・・ まぁ、推しも、いるけど・・・」
アンネ「アタシ・・・推しのアイドルと仲良くなりたくて、だから今、似たような活動を頑張ってるっていうか・・・」
眞仁「・・・ていうことは、キミももしかして、アイドル?」
アンネ「その・・・ま、まだまだ、その子に比べると全然知名度もない・・・ ペーペーの地下アイドルなんだけどさぁ・・・」
眞仁「あ、ごめん・・・電話・・・ ほんのちょっとだけ席外すね?」
アンネ「・・・はぁ・・・ あたし、初対面の男子に何ペラペラ喋ってるんだか・・・」
アンネ「オジサンとばっか喋ってたから、反動でめちゃくちゃキラキラして見えちゃうのかも・・・」
アンネ(そういえばイオちゃん・・・ まだ既読つけてくれないな・・・)
アンネ(さっきのオジサンのことも・・・ 一応伝えとこうかな・・・)
〇街中の道路
栞「・・・もしもし・・・」
栞「・・・・・・そう・・・ 瀬田維尾奈、ちゃんと”誘拐”してくれたのね」
栞「私が来るまで、絶対に逃がさないように」
──あのガキは、大人の手で、潰さなきゃ。
絶対ニ、ユルサナイ。
新章突入ですが、不穏さは継続ですね!w
眞仁くんの正体がますますわからなくなってきました、素性から日常生活まで全て気になってきます…