エピソード1(脚本)
〇宇宙空間
「あっ! 流れ星!」
「新年早々流れ星が見れるなんて・・・ いいことがありそう」
〇黒
2000年1月1日.ちょうど日付けが変わる頃、流星群が夜空を横切った。
〇黒
それが、全ての始まりだった──
〇渋谷のスクランブル交差点
カイジン1「・・・あ・・・が・・・」
「キャーッ!!」
「うわっ!? 何だあれ!!」
〇黒
身体が崩れる症状が出た男性は、後に日本初の『カイジン』発症者と呼ばれるようになる
〇川沿いの公園
モブ1「うぃ〜、飲んだら飲むな、飲むなら乗るなってか〜? タクの運ちゃん、シカトしやがって〜!」
ぶちゅっ
モブ1「ん?何だ? ウンコでも踏んづけたか?」
・・・ア・・・ア・・・
モブ1「な、何だ? 何か聞こえたか?」
モブ1「・・・聞き間違い、だよな?」
カイジン2「・・・ア・・・ア・・・アーァ・・・」
モブ1「ひっ・・・ひぃ! ば、バケモノ!!」
〇炎
「きゃあぁぁぁっ!」
「か、火事だ! 救急──じゃなくて、消防に連絡だ!」
「ね、ねぇ! あそこに誰かいる!」
カイジン3「・・・タ・・・スケ・・・」
〇炎
〇地球
この現象は、全世界を混乱の渦に陥れた──
〇黒
各国はそれぞれ対策を打ち出し、その中で日本はその現象をを『カイジン』と呼び、隔離政策をとることになった。
〇黒
そして2022年、現在──
〇一人部屋
──あぁ、もう朝か。
まだ眠いけど、そろそろ起きなきゃな・・・
ピンポーン
あれ、誰だろ?
宅配便が来るとか、聞いてないけど・・・
〇玄関内
「はーい、どちら様ですか?」
「政府『カイジン』調査員の者です。 『カイジン』発症者について、お話を伺えますか?」
『カイジン』調査員か・・・
これから外に出ようと思ったのに、参ったな
『カイジン』調査員──
それは2000年から発足し、『通常とは異なる』特徴を持つ対象を調査し、『カイジン』化の有無を判断
『カイジン』化ありと判断すれば、隔離措置を行う──
そういう政府役員だ
調査員の調査を断ると、逮捕されるらしいし・・・できれば断りたいけど、仕方ないか
「──分かりました。 今開けますので、少々お待ちください」
〇玄関の外
政府調査員「8時5分、『カイジン』対象者確保!」
「痛って! は?ちょっと待って下さいよ! なんで『カイジン』!? 別に身体が変わったとか、そんな異常起きてませんよ!」
政府調査員「詳しくは隔離施設で話してもらう! 対象を連れていけ!!」
そ、そんな!
〇黒
〇黒
──そして有無を言わさず、調査員達に連絡された・・・
〇殺風景な部屋
──あれから、ここに連れて来られてどれくらい経ったんだろう・・・
話を聞いてもらうどころか、誰とも会えない状態じゃ、『カイジン』じゃないって──信じてもらうどころじゃないよな
「・・・が・・・で・・・は・・・」
・・・なんだ?
珍しく部屋の前から、話し声が聞こえてくるけど・・・
・・・ま、こっちには関係ないか。
出してもらえる様子すらないし・・・
「──ちょっといいかな? 君が──さんかな?」
──えっ、こっちに聞いているのか?
ここにきて、初めて話しかけられたな。
「はい、そうです。 それで、何かありましたか?」
「そう、君が── 今から場所を移して、話しを聞けるかな?」
ようやく話を聞いてもらえるのか。
よかった。
すぐに『カイジン』じゃないと理解してもらって、帰らせてもらおう。
「──はい、すぐに出ます」
〇オフィスの部屋の前
メンデル博士「はじめまして。 私はチャールズ・メンデル。アメリカから来ました。 『カイジン』の遺伝子研究をしております」
「あ、はい、ご丁寧に、どうも。 日本語、お上手ですね」
メンデル博士「・・・」
──あれ、失礼だったかな?
何か、黙ってこっちを見てるけど・・・
メンデル博士「・・・いや、失礼しました。 さぁ、行きましょうか」
〇取調室
窓もない、まるで取り調べ部屋のような部屋に通され、ここに連れて来られた経緯と、特に身体に異変はなく、何かの誤解だと訴えた
メンデル博士「──なるほど、そういうことが・・・」
「ええ、ですから何かの間違いだって、聞いてももらえず──」
メンデル博士「──やはり、気づいていないのですね」
その一言に理由もなく、何か嫌な予感がした。
「えっと、何がでしょうか? 何が理由で誤解を──」
メンデル博士「──先程から、私は一言も『口を開いて』話をしていません。 日本語を話せないので」
「──えっ、嘘ですよね? だって、さっきからスラスラと──」
すると博士は口を開いて、話し始めた。
──流暢な英語で。
思わず聞き返したが、お互いに意味すら理解出来なかったようだ
メンデル博士「──やはり、あなたは相手に自分の思考を伝え、相手の思考を読み解く『カイジン』化が起きてます」
メンデル博士「今、私は一言も口を開いていません。 ですが、あなたには伝わっていますよね? おそらく、発症したのはここ数日前」
メンデル博士「──それこそ、違和感を感じない程、ごく僅かな異変だったのでしょう」
・・・嘘だ。
どうせドッキリか何かだ。
だって身体には何も異変は──
メンデル博士「・・・残念ながら、身体の異変だけではないのですよ、『カイジン』化は」
メンデル博士「現代科学では考えられない、ありえない能力変化が、『カイジン』化なのです。 ──あなたにもこの考えたことは、伝わりますよね」
・・・あ・・・あ・・・
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
ぶっつ、と意識が途切れた──
〇黒背景
・・・あれ、どうしたんだっけ?
今日は平日で、用があって・・・
急に調査員が訪ねて来て・・・
それで──
・・・人・・・届・・・事・・・
──何だ?
自分の頭の中に、別の誰かの考えが、無理矢理入ってくるみたいだ。
ざらざらする感じがする。
気持ち悪い・・・
地球、人、達、よ、この、メッセ、ェジ、が、届、いた、ら──
急に強くなってきた。
やめてくれ!
頭の中に入ってくるな!
地球人達よ!このメッセージが届いたら、今すぐ返事をしてほしい!
君達人類に関わる、急を要する事態だ!
今すぐ返事を!
もう静かにしてくれ!
何も聞きたくない!
考えたくもない!
今すぐ頭の中から出ていってくれ!!
──君は、我々の思念を受信できるのか!
ならば君に、我々が送り出した衛星カプセルと、その理由について伝える!
聞きたくないって、言っているだろう!
早く頭の中から出ていけ!!
そういう訳にはいかない!
地球人類の存亡がかかっているんだ!
──地球人類って、どういうことだ?
〇宇宙空間
──我々は君達の住む地球から、遥か彼方の惑星に住む生命体だ。
我々は自分達の惑星以外に、知的生命体がいないか調査していた
〇宇宙ステーション
その中で天の川銀河内に、君達地球人が制作したと思われる人工物を発見。
衛星探査機と分かり解析。それを媒介に地球環境を調査
〇地球
その結果、『地球人類の滅亡』が極めて近いと判明した
ちょ、ちょっと待って!
『地球人類の滅亡』って何!?
何かの冗談──
残念ながらその根拠になる事象は、既に起き始めている。
それにより半数以上、もしくはほぼ全滅に近く地球人類は確実に死滅する
──人類の半数以上が死滅?
それこそ信じられるか?
最近の異常気象になったって、災害レベルでも何とか生活できてるのに──
その異常が、惑星規模で起き始めている。
小規模の大陸レベルならまだしも、惑星を改変するレベルなら、手の施しようがない
そんな・・・
何とか・・・何とかならないのか!?
我々は君達を救う打開策として、環境に合わせ、遺伝改良を自動で行う機能を持った人工ウィルスを、衛星カプセルで送付した。
そうなのか?
それで人類は助かるのか?
それが地球に来るのはいつ──
──既に届いている。
君が我々と通信可能なのが、その証拠だ。
・・・まさか
〇落下する隕石
そう、地球全土に行き渡るように、成層圏到達次第爆破。
人工ウィルスは上空で飛散し、広範囲に散布された。
地球内の地表からは、流星群などと観測されていると考察される。
ちょっと待て!
じゃあ、こっちの『カイジン』現象は──
〇渋谷のスクランブル交差点
〇川沿いの公園
〇炎
〇黒背景
──君からの通信を解析した。
すまない、我々が送付した人工ウィルスは、地球人の一部には耐えられなかったようだ
一部には、って──
『カイジン』化は死ぬ人も多いし、生きていたとしても社会から離されて、人間扱いされないんだよ!
何でそんなウィルスなんか──
先程も伝えた通り、この先起こる地球環境の急変に、地球人類が耐えられないと判断したためだ
〇荒野
この先起こるであろう干魃による食糧難、
〇滝つぼ
極端な気圧変動による豪雨と、それに伴う洪水、
〇火山の噴火
地殻変動による巨大地震と、火山の活性化、
〇雑踏
今の君達の生態状況ではこれらの異変に順応出来ず、最悪内紛などの内部分裂を起こし、自滅を早める危険性が高い。
・・・だからって、人間辞めてバケモノになる選択肢しかないのか?
人間が人間のまま、生きる方法はないのか?
確かに君の言う通り、人類が何らかの方法で生き延びる手段を得て、我々の遺伝子改良技術を不要とする可能性もあるだろう。
そこで君に聞きたい。
今の地球人類に、我々による遺伝子改良は不要か否かを。
不要であれば、即座に坑人工ウィルスを送付する
〇病院の診察室
──という内容でした。
あれが夢だったのかそうでないのかは、自分でも分かりませんが・・・
──ショックで気を失った後、病室らしきところに運ばれたらしく、目を覚ますと博士がいた。
どうもショックで『カイジン』化の進む人、自殺を図る人が多いらしく、それを危惧しての措置だという。
そう言われても昨日見た、夢かもしれない内容の衝撃に比べれば何とも思わないくらい、感覚が麻痺していた。
正直、信じられないって言うか、信じたくないって言うか・・・
『カイジン』化が起きたってこと事態、信じられませんでしたけど
対話を思考でしようとすること事態が、もう受け入れ始めている証拠なのかもしれない
博士が口を開かないのも、慣れた気がする
メンデル博士「──それで、あなたは何と?」
それに触れてこないことに、優しさを感じた
・・・まだ分からない、と。
急に聞かれても答えられない、と伝えました。
そしたら──
〇黒背景
君の戸惑いは理解できる。
だか猶予は余り残されていない。
人工ウィルスは長い期間定着すると、変異を元に戻せないからだ
地球人が生存するには何が最善か、熟慮して答えてほしい
これは地球人に変化することを押し付けた、我々の謝罪も含めての総意だ
〇病院の診察室
・・・博士、自分達地球人って、今のままで生き残れるですかね?
『カイジン』とは何なのか
『カイジン』の字は──『改めよ、人』だった
前半の流れを読んで「カイジン」の扱い方がウィルス感染者の扱いに似ているなあと思ったので、後半の流れに納得。外面ではなく内側が変化した「カイジン」という描き方もユニークですね。プロローグの流星群が伏線だったり、タイトルが「怪人」ではなくカタカナである理由が最後の決め台詞で判明したりと、全体の構成がよく練られた作品なんだと感心しきりでした。
改めると人と書いて改人という最後のおちというか歯止めに行き着いて、なんとなくストーリーのテーマがわかったような気がしました。私たち地球人を観点を変えて観察すれば、その改人すべき点が明確になるかもですね。
いわゆる怪人モノとは角度の違うアプローチが新鮮で面白かったです❗️