アイドル*シンドローム

蚊ネコ

Part2:永遠のアイドル(脚本)

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〇劇場の舞台
  ──無名のグループにいたその女の子は、
  とても華やかで、一瞬で、惹きつけられた。
  可愛くて、純粋で、夢に溢れてて、
  つまらない私の心とは、真逆だと思った。
  ──気付いたらオトナになって、
  ただ売れたくて必死で、
  お金で買えるものしか信じれなくなった
  私とは、全然違う。
  ──だから、ジャマだった。
  夢のない、真っ黒な心に染まった、
  捻くれた自分を浮き彫りにされるのが怖かった。
  さっさと消えてほしかった。
  ──だから、あの日、
  勝手に自滅してザマアミロって、
  そう思ったんだ。
  我ながら夢のない、最低最悪のアイドルだ。

〇部屋のベッド
要紗羅「・・・う・・・カ、スミ・・・ 私・・・ごめ・・・ ごめ・・・なさっ・・・」
花純「ん? 何か、言ったカナ?」
花純「あっ、そうそう! ね、この衣装、覚えてる? 私とララちが初めて出逢った時の服なの」
花純「って、覚えてるわけないよね・・・えへへ」
花純「今着るとちょっと大きいんだよねっ まぁ、17才の頃が1番食べ盛りだったからかなぁ〜」
花純「ねっねっ私、まだ似合うと思う!? 今年29の私でも、大丈夫かなっ」
花純「ララちもまだまだデビュー衣装似合うと思うんだぁ!」
花純「私、あの衣装大好きでねっ、 当時は自分で同じ衣装作って、 こっそりコスプレしてたくらいっ」
花純「ねっ、絶対まだ似合うよ! ララちはいつテレビで見かけても、今だって、ずっとキラキラしてるしっ!」
要紗羅「ねぇ・・・アンタ、なんなの・・・?」
花純「えへへ・・・カスミンですっ★」
要紗羅「・・・・・・」
要紗羅「いい加減っどいてよっ!?」
花純「わわっ」
花純「・・・フフッ・・・」
要紗羅「ッ!!」
花純「やーだよ。 どかないヨ?」
花純「だって、ようやく捕まえたんだから」
花純「・・・ララち、急に私のことブロックして、音信不通になるんだもん」
花純「どうにかコンタクト取ろうとしたって、 相手は既に、私とはもう、雲泥の差がある有名人だし・・・」
花純「だから・・・もう、諦めて、 またひっそり応援する生活に、戻ろうかなって・・・」
要紗羅「・・・”応援”・・・?」
花純「うん。 私は、アイドルだった以前に、ずっとずっと、永遠にララちの大ファンだから」
花純「だから・・・私は別に・・・ どうなったっていいし・・・」
花純「クズな大人に騙されて、汚されて・・・ 一生輝けない、ボロボロな人間になったって・・・」
花純「それでも、ここまでなんとか歩いて来られたのは、ララちがずっと、芸能界に残っていてくれてたからで・・・」
花純「ララちが笑顔で、キラキラして、歌ってくれているなら、もう、なんでもいいかなって・・・だから・・・」
要紗羅「・・・っ・・・ そんな・・・そんなわけ・・・」
要紗羅「そんなわけねぇだろ!? 私はアンタのこと騙して、 アンタを蹴落としたんだ!!」
要紗羅「だから、アンタも、 ”あの時”みたいに、私のことを嵌めてみせたんだろ!?」
花純「・・・”あの時”・・・?」
要紗羅「未成年の男子使って、まんまと釣り上げて、このまま脅して、復讐したいだけなんだろ!?」
花純「脅し、なんか、しないよ? 私は・・・私が、ここに来た理由は・・・」
要紗羅「応援だとか永遠だとかうぜぇから!! 騙されてアイドル人生潰された恨みがあんだろ!?」
要紗羅「「復讐」にきたならきたって!! さっさとそうハッキリ言ってよ!!」
花純「ねぇ・・・ララち・・・」
要紗羅「なんだよ!?」
花純「”騙した”とか、”嵌めた”とか、 なに・・・? 何のこと・・・?」
花純「ララち・・・?」
要紗羅「・・・ッ・・・」
花純「私を騙したのは、あのプロデューサー・・・ そして、あのクズを、陰で動かしてた奴は、 きっと別にいる」
花純「・・・でも、それは、ララちじゃないよね? だから、ララちは悪くないよっ」
花純「ていうか、さ・・・そんな話は別に、もーどーでもいいんだ。 私が言いたいのは、そんなことじゃない」
花純「復讐なんか、何も考えてない」
花純「オマエ、勝手にアイドル辞めんじゃねーよカス!!!!」
要紗羅「は・・・はぁ!?」
花純「魅力もない、取り柄もない、生きてる価値ない・・・ そんなゴミみたいな人生が、サララちゃんの歌と笑顔で救われたんだ!!」
花純「そんな生きる希望が、いつまで待ってもステージに立ってくれないことが、私にとってどれだけ苦痛なのか!! わかってんの!?」
花純「・・・私には、なにもない・・・ ずっとずっと、ララち以外に・・・何も・・・」
花純「だから早く歌えよ!! タレント活動なんていーから、 アイドルとして、ステージに立てよ!!!!」
要紗羅「た・・・立てるわけっ・・・ねーだろっ!!!!」
要紗羅「・・・ねぇ、なんで・・・? ステージになんか、今更もう、立てるわけない・・・そんな需要、もうないってわかんないの・・・?」
花純「・・・・・・・・・」
要紗羅「・・・カスミ・・・?」
花純「・・・そう・・・」
要紗羅「・・・ぁっ・・・!!」
花純「そっか・・・ ステージ、もう、立てないのかぁ・・・ それならさ・・・」
花純「一緒に・・・」
花純「一緒に、イコウ・・・?」
要紗羅「・・・は・・・?」
要紗羅「ぅ・・・ぐ・・・・・・」
花純「ぎゅっぎゅっギューって♪ 力は弱めず♪ きゅんきゅんキュンって♪ さーせーてーよっ・・・」
花純「・・・・・・・・・」
花純「ララち、私、やっと伝えられるね? ララちにずっと、聞いてほしかったんだ・・・」
花純「今も昔もずっと変わらない。 ・・・私の夢はね・・・?」

  「アイドル同士」で、
  アナタと同じステージに立つこと。
  その、たった一つだけなんだ。
  少しだけ、そこで待ってて。
  すぐ、迎えにいくからね?

〇テーブル席
  【元人気アイドル・要紗羅(32)・自宅で不審死】
  【身元不明の女性とコスプレ心中!?】
  【デビュー当初のアイドル衣装を纏う、衝撃の不可解事件】
眞仁「・・・うーん・・・ こういうのを、「執着」っていうのかな・・・?」
眞仁「・・・まぁ、でも・・・」
眞仁(やっぱりサラちゃんは、ずっと、 「誰かの前ではキラキラしてた」ってことだよね?)
眞仁「・・・アイドルって、スゴいなぁー・・・」
眞仁(身体もキレイだったし・・・)
眞仁「・・・・・・」
眞仁「ハイハーイ。 ヒマヒマなハートにマヒする愛をっ♡ リアル・レンタル未成年・マヒトですっ♡」
眞仁「・・・なんちって☆ お疲れ様でーす」
眞仁「すいませんってー。 別に、思ってませんよ? 自分のこと、アイドルだなんて」
眞仁「ただの”一般”未成年のボクじゃ所詮、 誰かの「永遠」になれるほどのカリスマ性はありません」
眞仁「・・・はい? 新規のお客さんですか? えっと、どんな人ですか?」
眞仁「え・・・ また・・・アイドル?」
眞仁「しかも現役!?」
眞仁「はーい、ボリューム気をつけまーすっ」
眞仁「・・・ふぅん・・・ マッチングアプリで、 ”エグい遊び”をして・・・ねぇ・・・」
眞仁「フッ・・・ ボクは別に、これまで通り、 仕事であればなんでもお引き受けしますよ」
カフェ店員「・・・お待たせしました。 アイスフルーツティーです」
カフェ店員「・・・・・・」
カフェ店員「ウチの店のクッキー、そのお紅茶に合うんです・・・ いつも、よく来てくれるから・・・ 良かったら食べて?」
眞仁「ハイッ」
眞仁「・・・あ、もしもし? はい。了解です。 任せてください」
眞仁「・・・ボクってさ、 誰かのアイドルにはなれないけど、 ”素人芸”にはそこそこ定評のある「高校生」なんで」
  ──to be continued──

次のエピソード:Part3:退屈と非日常

コメント

  • ((((;゜Д゜)))
    狂気にまみれたサララ編ですね。
    2人の狂気が、お互い噛み合わないままに重なり合う様は、見ていてゾッとしました!

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