ザ・マッカラン(脚本)
〇土手
高校生の時、本気の恋をした────。
その記憶は脳裏にこびり付き────
時々私を翻弄する────。
〇宿舎の部屋
九鼎 好恵(うぅ、寝過ぎたか・・・)
九鼎 好恵(い、家に帰らなきゃ・・・)
明日は望みもしない、39歳の誕生日である
九鼎 好恵(お母さん、ありがとう・・・)
九鼎 好恵(39だけに・・・)
九鼎 好恵(って笑えねーなー、おい)
〇玄関内
九鼎 好恵「ただいま〜」
「ちょっと、今日は帰ってこないんじゃなかったの!?」
「い、いや、帰らない筈だったんだよ・・・」
「どうすんのよ、こんな格好!!」
「ど、どうするって・・・とりあえず、隠れて」
「こ、こんな所に入れって言うの!?」
〇綺麗な部屋
九鼎 好恵「聞こえてますけど?」
女の子「・・・」
九鼎 好恵「松野くん」
九鼎 好恵「セックスし終わったら、そのベッド、 粗大ゴミに出しといてね」
松野「好恵さんは?」
九鼎 好恵「暫くはホテルで過ごすよ」
九鼎 好恵「大丈夫、なんとなくそんな気はしてた」
松野「ずっと言いたかったけど、好恵さんさ、」
松野「可愛げないよ!」
松野「女として終わってるよ!」
九鼎 好恵「・・・」
松野「やっぱり、女の子は若い方が良いっての よく分かるもん!!」
九鼎 好恵「へぇ」
九鼎 好恵「君、何歳?」
女の子「に、24歳です」
九鼎 好恵「じゃあ、後14年後に捨てられるよ」
九鼎 好恵「ご愁傷様」
九鼎 好恵「さっさと別の男探した方が良いんじゃない?」
松野「あ、好恵さん!!」
〇黒背景
ムカつく
ムカつくムカつくムカつく
〇シックなバー
九鼎 好恵「他人の家に転がり込んだ分際で、何様よ!!」
望深「お、お客様」
望深「ご、ご注文は何になさいますか?」
九鼎 好恵「う、ウィスキーのロックで!」
望深「こちらのメニューの種類がありますが」
九鼎 好恵「じゃあ、マッカランで」
望深「かしこまりました」
九鼎 好恵(高いけど、明日誕生日だし、奮発しちゃえ)
望深「どうぞ」
九鼎 好恵「どうも・・・」
九鼎 好恵(なんかこの人、見たことあるなぁ・・・)
望深「大変だった様ですね」
九鼎 好恵「えぇ、まぁ・・・」
九鼎 好恵「お店に誰も居なくて良かったです」
望深「まぁ、本来なら閉店時間ですから」
九鼎 好恵「大丈夫ですか!?急いで飲みますね!!」
望深「焦る必要はありませんよ」
望深「男は少しぐらい悪い方がモテるでしょう?」
九鼎 好恵「・・・」
望深「指先が震えてるよ」
望深「俺のこと、思い出した?」
〇土手
高校生の時、本気の恋をした────。
その記憶は脳裏にこびり付き────
時々私を翻弄する────。
九鼎(高校生)「あっつーい!!」
望深(高校生)「うるせ〜」
九鼎(高校生)「この暑いのに、短ラン着てるアンタの精神が 理解できんわ」
望深(高校生)「やっぱり、ヒロシがカッコいいからさ」
九鼎(高校生)「私は絶対トオルくん派!!」
望深(高校生)「所詮、顔だろ?」
九鼎(高校生)「違いますぅー」
望深(高校生)「それ以外に何があんだよ?」
九鼎(高校生)「・・・」
望深(高校生)「キュウ?」
望深(高校生)「なんか、顔、赤くない?」
九鼎(高校生)「うるっさい!!」
望深(高校生)「キュウ、じっとして」
望深(高校生)「頭に虫がついてる」
九鼎(高校生)「嘘!!」
望深(高校生)「大きい虫だから、目、瞑って」
優しく触れた感触と
私の指先に絡む温度が
頭の奥の方を刺激する────
背中を伝う汗は
彼が舌先を絡めた時により一層増えた
九鼎(高校生)「ちょっと!!」
九鼎(高校生)「なんなのよ、もう!」
望深(高校生)「・・・」
望深(高校生)「悪ぃ、キュウ!」
望深(高校生)「俺、どうかしてたわ!」
望深(高校生)「忘れて」
九鼎(高校生)「あ、望深!」
嫌だった訳じゃない────
寧ろ女として意識されて嬉しかった───
けれど、彼が私の腰を引き寄せる
力加減に驚いたのも事実だった────
〇シックなバー
九鼎 好恵「老けたね」
望深「お前もな」
九鼎 好恵(アレから気まずくなったんだよな・・・)
九鼎 好恵「ねぇ」
望深「うん?」
九鼎 好恵「やっぱり、女は若くなきゃ・・・ 価値がないのかな?」
望深「なんだ?」
望深「誘ってんのか?」
九鼎 好恵「違うよ!」
望深「若い方が良いって言われたんだな」
九鼎 好恵「・・・そう、よ」
望深「試してみようか?」
九鼎 好恵「あ・・・」
あの時の力任せなキスとは違う────
労う様な優しさを含んだキス────
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以前、読ませていただいておりましたが、一話の内容を忘れてしまっていたので、再読です😅
マッカランって聞いたことはあるけど、なんだっけ?といった具合で、私はお酒を飲まないので詳しくないのですが、大人なストーリーの導入に合ったカッコいいタイトルですよね!✨
続きも読ませていただきます😊
語彙力ないので、もう、なんといっていいか…。
とにかく、好きです…。
私は主人公が30代40代の恋愛を書いたことがないので、すごく勉強になります。
「憎しみと愛」というテーマで、こんな素敵な大人ラブが読めるとは……!
歳を重ねた年長者だからこその、二人の台詞が胸にぐっと入ってきました。諦めたり、ぐっと飲み込んできたヒロインだからこそ、彼の言葉と優しさに絆されていく……ヒロインにとっては素敵な40代の幕開けになったのではないかな、と思いました。